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 心の病の謎に挑む
 
  1. 累積的な小児期の逆境および青年期の暴力犯罪と成人期早期の自殺の関連
  2. 喫煙を併存するアルコール使用障害に対する医学的管理と組み合わせたバレニクリン(varenicline)の効果:ランダム化比較試験
  3. 犯罪行動の損傷ネットワーク局在
  4. 自閉症における小脳結合性の変化とマウスにおける小脳を介した自閉症関連行動の救済
  5. 自閉特性の潜在構造:成人の自閉スペクトラム指数の分類分析、潜在クラス分析、そして潜在プロフィール分析
  6. 看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供における自閉スペクトラム症の地理的パターン
  7. 治療抵抗性うつ病における経口抗うつ薬を補助する経鼻エスケタミンの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  8. 母親の妊娠前と妊娠中における葉酸およびマルチビタミン・サプリメントの使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクの関連
  9. 双極うつ病への追加療法としての経頭蓋直流刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  10. 米国における小児および青年の自閉スペクトラム症(ASD)の有病率: 2014年~2016年
  11. 閉経移行期の抑うつ症状予防における経皮的エストラジオールと微細化プロゲステロンの有効性:ランダム化臨床試験
  12. 緑色葉野菜の栄養素および生物活性体と認知機能低下:前向き研究
  13. アルコール使用障害を持つ患者の薬物療法に関する米国精神医学会(APA)の診療指針
  14. 精神疾患における解離:解離体験尺度を用いた研究のメタ解析
  15. 結婚と認知症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
  16. 非精神疾患で入院した人における抗精神病薬と誤嚥性肺炎のリスク:コホート研究
  17. 双極性障害に対する補助的光療法:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
  18. 心的外傷後ストレス障害に対する短期の曝露に基づく治療と認知処理療法:ランダム化・非劣性臨床試験
  19. 精神病体験を持つ青年におけるタバコと大麻使用の結合パターン連関
  20. エスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の影響:患者2,087人に基づく前向き研究
  21. 再活性化前のプロプラノロール療法によるPTSD症状の軽減:ランダム化比較試験
  22. 加齢性聴力低下と認知機能、認知障害、および認知症の関連:系統的レビューとメタ解析
  23. 飲酒は伝染するか:飲酒行動の集合性理論のマルチレベル・フレームワークにおける分析
  24. 戦争の10年:派兵米国軍人のPTSD症状の前方視的軌跡と戦闘への曝露の影響
  25. 母の妊娠中のカフェイン摂取と子の11歳時の行動障害:オランダ国民出生コホート研究
  26. 小児と青年における遺伝性の認知能力および精神病理と脳白質特性の関連
  27. 認知的に正常な高齢成人におけるアミロイドβと不安・抑うつ症状の経時的関連
  28. ホルモンによる避妊とうつ病の関連
  29. ホルモンによる避妊と自殺企図および自殺の関連
  30. 注意欠如・多動症(ADHD)の症状次元の因子構造
  31. 青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(START):実践的ランダム化比較・優越性試験
  32. 持続性かつ重度の産後うつ病と子供のアウトカムの関連
  33. うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する
  34. 英国のプライマリー・ケアにおいて重篤な精神疾患を持つ人のコレステロールと心血管系リスクを軽減する介入の臨床的有効性と費用対効果:クラスターランダム化比較試験
  35. 青年および若年成人における精神病性障害の初回診断後の死亡率
  36. 精神病スペクトラムの幼年期から成人前期の認知発達経過
  37. アルツハイマー病のための高性能血漿アミロイドβバイオマーカー
  38. 可溶性γセクレターゼ修飾薬は、アルツハイマー病のβアミロイド病理を減弱させ、プレセニリン1の立体構造変化を誘導する
  39. イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、地域社会での非致死的自傷の発生率(自傷の氷山モデル)の後方視的研究
  40. アルコール使用障害について、その配偶者間の類似性の起源
  41. 妊娠中のメチルフェニデートとアンフェタミンの使用と先天性奇形の関連:妊娠と安全性に関する国際研究コンソーシアムからのコホート研究
  42. 卵巣抑制後に起こる月経前不快気分障害の症状は、卵巣ステロイドの持続的定常レベルでなく、そのレベルの変化で誘発される
  43. 統合失調症を持つ人における精神病理変数、個人的資質、状況関連因子、日常生活機能の間の相互作用:ネットワーク解析
  44. 米国における成人のDSM-5うつ病とその特定用語の疫学
  45. スウェーデン男性における小児期の感染症と知能指数および成人の非感情病性精神病の関連:住民ベースの縦断的コホートおよび相関研究
  46. 初回エピソード精神病に対する初期抗精神病薬治療中の、海馬萎縮と精神病未治療期間および分子バイオマーカーの関連
  47. 胎児超音波検査と自閉スペクトラム症の関連
  48. 米国、オンタリオ、オーストラリアにおける高齢成人のベンゾジアゼピン使用:2010-2016年
  49. 認知症症状に対する抗精神病薬および他の薬剤に関するプライマリ・ケア医の見解
  50. 非認知症成人における生体利用可能なクルクミンの記憶と脳アミロイドおよびタウへの効果:18カ月の二重盲検プラセボ比較試験
  51. 精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と社会的回避に対する待機リスト対照と比較した仮想現実ベースの認知行動療法:単盲検ランダム化比較試験
  52. 自傷後の若者に対する系統的家族療法の従来の治療と比較した有効性:実際的な第3相・多施設共同・ランダム化比較試験
  53. 過渡的就労と比較したエビデンスに基づく援助付き雇用の心的外傷後ストレス障害を持つ退役軍人の定職獲得に対する効果:ランダム化臨床試験
  54. フィンランド全国双極性障害患者コホートにおける再入院の予防に対する薬物治療の実社会での有効性
  55. 精神病を持つ患者の行動、臨床、および複数様式の画像の表現型間の多変量関連
  56. 若者の苛立ちと不安の神経メカニズムを識別する潜在変数法
  57. 統合失調症における突然死
  58. 中高年成人において座って行う行為は内側側頭葉の厚さの減少と関連する
  59. 統合失調症と乳癌の発症リスクの関連:メタ解析
  60. アルコール性の大脳皮質傷害における加齢・薬物依存・C型肝炎併存の役割
  61. うつ病の家族リスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカー
  62. うつ病を持つ患者における脳皮質変化と再発の関連
  63. 小児期の易刺激性および抑うつ/不安気分のプロフィールと青年期の自殺念慮・企図の関連
  64. 精神病への早期介入サービスと、初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の自殺率の関連
  65. 早期精神病のための早期介入サービスと従来の治療の比較:系統的レビュー・メタ解析・メタ回帰
  66. 抗コリン薬と認知症のリスク:ケースコントロール研究
  67. ADHD-200 Global Competition:個人の特徴データを用いたADHD診断は、安静時fMRI測定を凌駕し得る
  68. レジスタンス運動トレーニングの有効性と抑うつ症状の関連:ランダム化臨床試験のメタ解析とメタ回帰分析
  69. 米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法と薬物療法の費用対効果
  70. うつ病または双極性障害を持つ人および健常対照における筋力と認知の関連
  71. 血族結婚と子孫の精神病理:住民全体データの関連研究
  72. MEMO+:軽度認知障害を持つ人の認知訓練と心理社会的介入の有用性・継続性・効果
  73. 臨床的高リスク状態外で精神病を予測することは可能か:精神疾患の非精神病リスク症候群の系統的レビュー
  74. 低中所得国における都市化の程度(urbanicity)と精神病の関連
  75. イングランドにおける個人および地域の社会経済的要因と認知症発症率の関連:イングランド加齢縦断研究における12年の経過観察からのエビデンス
  76. ベトナム戦争時代の双生児における抑うつ症状と心拍変動の関連:縦断的双生児研究
  77. うつ病および不安症と自己免疫性甲状腺炎の関連:系統的レビューとメタ解析
  78. 統合失調型障害から統合失調症への移行と物質使用障害の関連
  79. 精神病への移行期の非組織的な脳回形成ネットワーク特性
  80. うつ病を持つ成人における抗うつ薬とベンゾジアゼピンの新規併用と、その後のベンゾジアゼピンの長期使用:2001~2014年の米国調査
  81. 双極うつ病に対する付加的高照度光療法:ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
  82. 認知症の独立したリスク因子としての中年期の不安診断への支持:系統的レビュー
  83. 患者一人の予測のための計算神経画像戦略
  84. 精神医学における優先課題の状況分析、第1部:疾患分類と診断、第2部:発病機序と病因
  85. 精神疾患発症後の凶悪犯罪を含む犯罪被害のリスク:警察データを用いたデンマーク国民登録研究
  86. 成人うつ病の急性期治療に関する21の抗うつ薬の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  87. 高齢中国人における日常の知的活動と偶発認知症のリスク低下の関連
  88. 初めての妊娠中絶および出産と抗うつ薬処方の関連調査
  89. 妊娠中および産後期のリチウム内服戦略
  90. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激試験のプラセボ反応:系統的レビューとメタ解析
  91. 加齢における脳の認知的健康のための運動:量の評価についての系統的レビュー
  92. 精神病性(妄想性)うつ病と自殺企図:系統的レビューとメタ解析
  93. 初回エピソード精神病を持つ若年青年のミスマッチ陰性電位とP3a振幅:ADHDとの比較
  94. 妊娠高血圧と子における神経発達症リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
  95. 世界におけるサルコペニアの有病率:一般人口における研究の系統的レビューとメタ解析
  96. 地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニア
  97. サルコペニアと認知障害:系統的レビューとメタ解析
  98. サルコペニアはうつ病と関連するか:観察研究の系統的レビューとメタ解析
  99. サルコペニアと一般精神疾患:脳機能に対する骨格筋の調整的役割の可能性
 

累積的な小児期の逆境および青年期の暴力犯罪と成人期早期の自殺の関連
    Björkenstam E et al. JAMA Psychiatry. Published online December 13, 2017.
    Association of Cumulative Childhood Adversity and Adolescent Violent Offending With Suicide in Early Adulthood.

    論文要約:
    <重要性>
     小児期の逆境(childhood adversity、CA)は成人期早期の自殺リスクの増加と関連するが、それは青年期の不適応的軌跡によって説明されるかもしれない。青年期の暴力的犯罪(violent offending)は自殺と関係するものの、小児期の逆境と自殺の関連における役割についてはほとんど分かっていない。
    <目的>
     青年期の暴力的犯罪が、小児期の逆境と成人期早期の自殺の関連を媒介するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この5から9年に及ぶ追跡期間を持つ住民ベースの縦断コホート研究には、1984年から1988年にスウェーデンで生まれた476万1,103人が含まれた。自殺に関して研究母集団が、20歳時から2013年12月31日まで前向きに追跡された。データ分析は1984年1月1日から2013年12月31日に実施された。
    <曝露>
     登録に基づく小児期の逆境には、親の死亡、親の物質乱用と精神疾患、親の犯罪、親の別離、公的扶助の受容、児童福祉の介入および居住地不定が含まれた。青年期の暴力的犯罪(violent offending)は、15歳から19歳の年齢において暴力犯罪(violent crime)の有罪判決を受けることとして定義された。
    <主要評価項目>
     2013年末までの20歳以降(1984年に生まれた場合は2004年から、1988年に生まれた場合は2008年から)の自殺リスクの推定値が、発生率(incidence rate ratios、IRRs)および95%信頼区間としてポアソン回帰分析(Poisson regression analysis)を用いて計算された。調整は人口統計学データおよび精神疾患についてなされた。加えてロジスティック回帰を用いた2値媒介分析が用いられた。
    <結果>
     全部で47万6,103人(23万1,699人 [48.7%] が女性)が研究に含まれた。暴力的犯罪の有罪判決を受けなかった人と比べて受けた人は、全ての小児期の逆境により多く曝露された。累積的な小児期の逆境は、有罪判決を受けなかった若者(調整済IRR, 2.4; 95%信頼区間, 1.5-3.9)、および受けた若者の自殺リスクと関連し、有罪判決を受けた若者のそれはより高かった(調整済IRR, 8.5; 95%信頼区間, 4.6-15.7)。青年期の暴力的犯罪は、小児期の逆境と自殺の間の関連を一部媒介した。
    <結論と関連性>
     小児期の逆境の既往があり青年期に暴力的犯罪を行う人は、より高い自殺リスクを持つ。小児期の外在化行動を予防して非行的行動を持つ若者を支援する介入は、小児期の逆境に関連する自殺を防ぐ潜在力があるかもしれない。

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喫煙を併存するアルコール使用障害に対する医学的管理と組み合わせたバレニクリン(varenicline)の効果:ランダム化比較試験
    O’Malley SS et al. JAMA Psychiatry. Published online December 20, 2017.
    Effect of Varenicline Combined With Medical Management on Alcohol Use Disorder With Comorbid Cigarette Smoking: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     アルコール使用障害を持つ人の喫煙率は高い。禁煙に対する認可された治療法であるバレニクリン酒石酸塩(varenicline tartrate)は飲酒と喫煙の両方を減少させるかもしれない。
    <目的>
     アルコール治療を求めるアルコール使用障害と喫煙を併せ持つ患者のための医学的管理付きのバレニクリンの有効性を検証して、禁煙に対する二次的効果を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この第2相・無作為化・二重盲検・並行群・プラセボ対照試験は、2012年9月19日から2015年8月31日に2つの外来クリニックで実施された。適格とされた参加者はアルコール依存の基準を満たし、かつ週に2回かそれ以上の大量飲酒(男性については5杯以上、女性については4杯以上)を報告した人であった。
     131人の参加者が、性別と場所によって層別化されてバレニクリンまたはプラセボに無作為に割り付けられた。すべての分析はintention-to-treat形式でなされた。データ分析は2016年2月5日から2017年9月29日に実施された。
    <介入>
     バレニクリン酒石酸塩1㎎を1日2回、およびマッチさせたプラセボ錠を16週続けた。医学的管理は服薬アドヒアランスを強化し、続いて飲酒を変えるための4週間の支援が行われた。
    <主要評価項目>
     9週と16週の多量飲酒日の百分率(percentage of heavy drinking days、PHDD)、9週と16週の非多量飲酒日(no heavy drinking days、NHDD)、および13週と16週の禁煙延長(prolonged smoking abstinence)。
    <結果>
     131人の参加者のうち39人(29.8%)が女性で92人(70.2%)が男性、平均(標準偏差)年齢は42.7(11.7)歳、最も多く(69人 [52.7%])の回答者が自身の人種/民族を黒人と認識していた。64人の参加者がバレニクリンに、67人の参加者がプラセボに無作為割り付けされた。
     バレニクリン-プラセボ間、性別間、および場所間でPHDDの平均変化に有意な差を認めなかった。しかし、PHDDについて性別-時間の有意な治療交互作用があり(F1,106 = 4.66; P = .03)、それはプラセボと比較してバレニクリンが、男性において対数変換後PHDDをより大きく減少させたことを示していた(ベースラインからの変化の最少二乗平均差, 0.54; 95% CI, −0.09 to 1.18; P = .09; Cohen d = 0.45)が、女性ではより少ない減少にとどまった(ベースラインからの変化の最少二乗平均差, −0.69; 95% CI, −1.63 to 0.25; P = .15; Cohen d = −0.53)。
     男性について、NHDDはプラセボでは47人のうち3人であったのに対して、バレニクリンでは45人のうち13人(29%)であった(Cohen h = 0.64; 95% CI, 0.22-1.03)。一方、女性については、NHDDはプラセボでは20人のうち5人(25%)であったのに対して、バレニクリンでは19人のうち1人(5%)であった(Cohen h = −0.60; 95% CI, −1.21 to 0.04)。
     バレニクリンを使用した場合は64人の参加者のうち8人(13%)が禁煙の延長を成し遂げたが、プラセボを使用した場合は禁煙した人はいなかった(P = .003; Cohen h = 0.72; 95% CI, 0.38-1.07)。
    <結論と関連性>
     医学的管理を伴うバレニクリンは男性の大量飲酒を減少させ、全サンプルにおいて禁煙を増加させた。バレニクリンはこれら二重の行動上の健康リスクを持つ男性において改善を促進すると考えられるかもしれない。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT01553136

    コメント:バレニクリン (varenicline) はα4β2ニコチン受容体の部分作動薬で、ニコチンよりも弱いニコチン受容体への刺激作用を持ち(ウィキペディア)、日本でも禁煙補助薬として処方されます。

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犯罪行動の損傷ネットワーク局在
    Darbya RR et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS). Published online December 18, 2017.
    Lesion network localization of criminal behavior.

    論文要約:
     脳損傷の後、かつて正常であった患者が時に犯罪行動を起こす。稀とはいえ、これらの症例が犯罪性の神経生物学的基盤に比類なき洞察を与えることがある。この点で我々は、犯罪行動と時間的関連が知られている損傷の系統的マッピングを提示する。損傷部位は空間的に異質であって、内側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、および両側側頭葉内の異なる位置が含まれた。単一の脳領域が損傷されている症例はなかった。損傷誘発症状は損傷位置と結合している単に損傷位置そのものではない部位から起こり得るので、我々は各々損傷位置に機能的に結合している脳領域も同定した。この損傷ネットワークマッピングと呼ばれる技術は、最近、様々な損傷誘発性障害において症状形成に関わる領域を同定している。
     全ての損傷が同じ脳領域ネットワークに機能的に結合していた。この犯罪性関連の結合パターンは、他の4つの神経精神症状を引き起こす損傷とは全く異なっていた。このネットワークには、道徳性、価値に基づく意思決定、および心の理論に関わる領域が含まれたが、認知制御と共感性に関わる領域は含まれなかった。最後に我々は、自身の結果を脳損傷と犯罪行動の時間的関係が示唆されるが確定的ではない23症例からなる別のコホートで再現した。我々の結果は「犯罪者の損傷は異なる脳の位置に発生するが、特定の安静状態ネットワークに局在する」ことを示し、これは犯罪行動の神経生物学へ洞察を与える。

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自閉症における小脳結合性の変化とマウスにおける小脳を介した自閉症関連行動の救済
    Stoodley CJ et al. Nature Neuroscience 2017; 20: 1744-1751.
    Altered cerebellar connectivity in autism and cerebellar-mediated rescue of autism-related behaviors in mice.

    論文要約:
     小脳、特に半球部の右第1脚(Right Crus I、以下‘RCrusI’)の異常が、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders、ASD)において一貫して報告されている。RCrusIはASDに関与する回路と機能的に結合しているものの、RCrusI機能不全のASDへの寄与はいまだ不明である。
     この点において、神経学的機能が正常なヒトにおけるRCrusIのニューロモデュレーションは下頭頂小葉との機能的結合性の変化をもたらし、ASDを持つ子供はこの回路の非定型的な機能的結合性を示した。非定型的なRCrusIと下頭頂小葉との構造的結合性もまた、プルキンエ細胞TscI ASDマウスモデルで明らかであった。
     加えて、マウスにおける化学遺伝学的に媒介されたRCrusIプルキンエ細胞の活動抑制は、ASD関連の社会的・反復的・限定的行動を生成するのに十分であり、一方でRCrusIプルキンエ細胞の刺激は、プルキンエ細胞TscI ASDマウスモデルにおける社会性の障害を救済した。
     まとめると、これらの研究はASD関連行動におけるRCrusIの重要な役割示している。さらに、ASDマウスモデルにおける社会的行動の救済は、ASDにおける小脳ニューロモデュレーションの治療上の潜在能力を調べる価値があることを示唆する。

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自閉特性の潜在構造:成人の自閉スペクトラム指数の分類分析、潜在クラス分析、そして潜在プロフィール分析
    James RJ et al. J Autism Dev Disord 2016; 46: 3712-3728.
    The Latent Structure of Autistic Traits: A Taxometric, Latent Class and Latent Profile Analysis of the Adult Autism Spectrum Quotient.

    論文要約:
     自閉特性は連続体に沿って作動すると広く考えられている。この仮定を検証するために、成人の自閉スペクトラム指数(Autism Spectrum Quotient)データの分類分析(taxometric analysis)が実施されが、結果はそれを支持せず、高い重症度を持つタクソン(taxon)が特定された。
     これをより理解するために、6つの明確なサブタイプの存在を示す潜在クラスと潜在プロフィールのモデルが推定された:1つはいかなる自閉特性も見込まれる可能性が無いもの、1つはいわゆるシステム化(syetemising)の行動に関係するもの、WingとGouldによる自閉症の三つ組み(autistic triad)の複数要素を支持する3つのグループ、そしてサイズおよびプロフィールにおいて以前に特定されたタクソンと類似する1つのグループである。これらの分析はAQ(拡張が許されるなら自閉特性)がカテゴリー的構造を持つことを示唆する。本結果はAQデータの分析と解釈にとって重要な意味を有する。

    コメント:‘システム化’は、『共感する女脳、システム化する男脳(サイモン・バロン=コーエン 著,‎ 三宅真砂子 翻訳、NHK出版 2005年』 にある共感としばしば対比される思考パターンの特徴です。

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看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供における自閉スペクトラム症の地理的パターン
    Hoffman K et al. Am J Epidemiol 2017; 186: 834-842.
    Geographic Patterns of Autism Spectrum Disorder Among Children of Participants in Nurses' Health Study II.

    論文要約:
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)の有病率が上昇している可能性と、それが地理的に異なることを示すデータがある。我々は原因または診断に関係する社会的環境的要因についての仮説を構築するために、看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供において居住場所とASDの関連を調査した。分析には1989年から1999年に生まれた13,507人の子供(ASDを持つ子供は486人)に関するデータが含まれた。我々はASDと誕生時および(診断時の平均年齢により近い)6歳時の居住場所の関係を探索した。米国各地のASDオッズを予測するために、一般化加法モデル(generalized additive models)が使われた。
     ニューイングランド地方に生まれた子供は、米国の他の地域で生まれた子供と比べて50%多くASDと診断される傾向があった。このパターンは母親の年齢、誕生年、子供の性別、自治体収入、または有害大気汚染への出生前曝露の地理的変動によって説明されなかった。6歳時の居住地住所を使用しても結果は同じであったが、有意に少ないASDオッズを持つ地域は南東部に観察され、そこではASDを持つ可能性のある子供の数は半分であった。これらの結果は、診断的要因が空間パターンを生成している可能性を示すが、他の環境的要因が分布に影響している可能性を除外することはできなかった。

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治療抵抗性うつ病における経口抗うつ薬を補助する経鼻エスケタミンの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Daly EJ et al. JAMA Psychiatry. Published online December 27, 2017.
    Efficacy and Safety of Intranasal Esketamine Adjunctive to Oral Antidepressant Therapy in Treatment-Resistant Depression: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     うつ病(major depressive disorder、MDD)患者のおよそ3分の1は市販の抗うつ薬に反応しない。
    <目的>
     治療抵抗性うつ病(treatment-resistant depression、TRD)患者における経鼻エスケタミン塩酸塩(intranasal esketamine hydrochloride)の有効性、安全性、および用量反応を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この第2相・二重盲検・二重ランダム化・遅延開始・プラセボ比較の研究は、2014年1月28日から2015年9月25日に複数の外来患者照会センターで実施された。研究は4段階から構成された:1)スクリーニング、2)各々1週間の2つの期間からなる二重盲検期(第1日~第15日)、3)任意の非盲検治療(第15日~第74日)、4)治療後追跡調査(8週)。
    うつ病のDSM-IV-TR診断と2種類かそれ以上の抗うつ薬に対する反応が不十分であった病歴(つまりTRD)を持つ126人の成人がスクリーニングされた。そのうち67人が無作為化され、60人が2つの二重盲検期を終了した。結果の評価にはintent-to-treat分析が使われた。
    <介入>
     二重盲検第1期では、参加者は3:1:1:1に、週2回のプラセボ(n = 33)、エスケタミン28㎎(n = 11)、エスケタミン56㎎(n = 11)、エスケタミン84㎎(n = 12)に無作為化された。二重盲検第2期では、中等度から重度の症状を持つ28人のプラセボ治療を受けた参加者は1:1:1:1に4つの治療機関の一つに無作為化された。軽度の症状を持つ人は継続してプラセボを受けた。研究の間、参加者は既存の抗うつ治療を継続した。非盲検期では、投与回数が週2回から週1回に、その後は2週に1回に減らされた。
     主要有効性エンドポイント(the primary efficacy end point)は、Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総得点のベースラインから第8日(各々期間)の間の変化であった。
    <結果>
     67人の参加者(38人が女性、平均[標準偏差]年齢は44.7 [10.0] 歳)が有効性分析と安全性分析に含まれた。3つ全てのエスケタミン群におけるMADRS総得点の変化(プラセボとの最小二乗平均[標準誤差]差)は、有意な(P < .001)上行性用量反応関係(ascending dose-response relationship)をもってプラセボより優れていた(エスケタミン28 mg: −4.2 [2.09], P = .02; 56 mg: −6.3 [2.07], P = .001; 84 mg: −9.0 [2.13], P < .001)。非盲検期間に投与回数を減らしたとしても、抑うつ症状の改善は持続するようであった(−7.2 [1.84])。
     二重盲検期間にエスケタミンの治療を受けた56人の参加者のうち3人(5%)とプラセボを受けた参加者の0人が、非盲検期間に57人の参加者のうち1人(2%)が研究の中止につながった有害事象を経験した(失神、頭痛、解離症候群、および子宮外妊娠が各々1事象)。
    <結論と関連性>
     この今まで初めてのTRDに対する経鼻エスケタミンの臨床研究において、抗うつ効果の発現は迅速かつ用量依存的であった。より低頻度の投与回数でも、反応は2か月間持続するようであった。結果はより大規模な試験での追加調査を支持する。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov identifier: NCT01998958

    コメント:以前に『うつ病の自殺念慮の急速軽減のためのケタミン:ミダゾラム対照ランダム化臨床試験』(Michael F et al. Am J Psychiatry, Published online: December 05, 2017.Ketamine for Rapid Reduction of Suicidal Thoughts in Major Depression: A Midazolam-Controlled Randomized Clinical Trial.)を紹介しました。今回は経鼻投与されたエスケタミン(esketamine)です。これはS型(左旋性)の光学異性体で、非競合的NMDA受容体アンタゴニストとして働くそうです(in Esketamine by Wikipedia)。

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母親の妊娠前と妊娠中における葉酸およびマルチビタミン・サプリメントの使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクの関連
    Levine SZ et al. JAMA Psychiatry. Published online January 3, 2018.
    Association of Maternal Use of Folic Acid and Multivitamin Supplements in the Periods Before and During Pregnancy With the Risk of Autism Spectrum Disorder in Offspring.

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の妊娠前および妊娠中における葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントの使用は、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクを上昇させるか?
    <結果>
     この45,300人の子から構成される症例対照コホート研究において、母親の妊娠前および/または妊娠中のビタミン・サプリメントの使用と子のASDリスクの減少の間に、統計学的に有意な関連が見出された。
    <意義>
     妊娠前と妊娠中に特定されたビタミン・サプリメントを使用した女性に生まれた子供におけるASDリスクの減少は、重要な公衆衛生上の意義を持ち、あり得るメカニズムとしてはエピジェネティクな(後成的)修飾がある。

    論文要約:
    <重要性>
     妊娠前および妊娠中の母親の葉酸およびマルチビタミン・サプリメント使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクとの関連は不明である。
    <目的>
     妊娠前および妊娠中の母親の葉酸およびマルチビタミン・サプリメント使用と、子のASDリスクの関連を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     ASDのリスクについて、2003年1月1日から2007年12月31日の間に生まれた45,300人のイスラエル人の子供が、その誕生から2015年1月26日まで追跡された。症例はASDと診断されたすべての子供、対照は全生産児の33%を構成する無作為標本であった。
    <曝露>
     母親のビタミン・サプリメントは葉酸(vitamin B9)、マルチビタミン・サプリメント(Anatomical Therapeutic Chemical A11 codes vitamins A, B, C, and D)、および妊娠前と妊娠中の期間の曝露に関するあらゆる混用に分類された
    <主要評価項目>
     母親のビタミン・サプリメントと子のASDリスクの関連が、交絡因子について調整を行ったCox比例ハザードモデルに適合させることで、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を用いて定量化された。結果の頑強性を検証するために感度分析が実施された。
    <結果>
     研究中の45,300人の子供(22,090人が女子、23,210人が男子;経過観察終了時における平均[標準偏差]年齢は 10.0 [1.4] 歳)のうち、572人(1.3%)がASD診断を受けた。
     母親の妊娠前の葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントへの曝露は、妊娠前に曝露されなかった場合と比較して、子におけるより低いASDの可能性と統計学的に有意に関連した(RR, 0.39; 95% CI, 0.30-0.50; P < .001)。
     母親の妊娠中の葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントへの曝露は、妊娠中に曝露されなかった場合と比較して、子におけるより低いASDの可能性と統計学的に有意に関連した(RR, 0.27; 95% CI, 0.22-0.33; P < .001)。
     対応するRRの推定値は以下の通りであった:母親の妊娠前の葉酸への曝露(RR, 0.56; 95% CI, 0.42-0.74; P = .001)、母親の妊娠中の葉酸への曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)、母親の妊娠前のマルチビタミン・サプリメントへの曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)、母親の妊娠中のマルチビタミン・サプリメントへの曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)。どの感度分析も結果は概ね統計学的有意のままであった。
    <結論と関連性>
     葉酸とマルチビタミンのサプリメントへの妊娠前と妊娠中の曝露は、それに曝露されなかった母親の子との比較において、子のASDリスクの減少と関連した。

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双極うつ病への追加療法としての経頭蓋直流刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Bernardo Sampaio-Junior et al. JAMA Psychiatry. Published online Dec 27, 2017.
    Efficacy and Safety of Transcranial Direct Current Stimulation as an Add-on Treatment for Bipolar Depression: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     双極うつ病に対するより有効で認容性のある介入が必要であり、経頭蓋直流刺激(Transcranial direct current stimulation、tDCS)は単極うつ病に対して重大な有害事象なく期待できる結果を示した新規の治療法である。
    <目的>
     双極うつ病の追加療法(add-on treatment)としてtDCSの有効性と安全性を確認する。
    <設計・設定・参加者>
     無作為化・シャム(sham)比較・二重盲検の試験(the Bipolar Depression Electrical Treatment Trial [BETTER])が、2014年7月1日から2016年3月30日まで、外来サービスを行う単独のセンターにおける研究目的に実施された。
     参加者には、安定した薬理学的治療を受けていて、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HDRS-17)スコアが17点以上である抑うつエピソードの双極Ⅰ型またはⅡ型障害の成人59名が含まれた。データ分析はintention-to-treatサンプルで行われた。
    <介入>
     平日に毎日30分、2ミリアンペア、陽極-左前頭前部、陰極-右前頭前部の実(active)またはシャム(sham)tDCSセッションを10回。その後、6週までは2週間ごとに1セッション。
    <主要評価項目>
     6週におけるHDRS-17スコアの変化。
    <結果>
     研究に参加した59人の患者(40人[68%]が女性)の平均(標準偏差)年齢は45.9(12)歳であった。双極Ⅰ型障害の36人(61%)と双極Ⅱ型障害の23人(39%)が無作為化され、52人が試験を終えた。
     Intention-to-treat分析において、実tDCS条件の患者はシャムを受けた患者より有意に優れた改善を示した(βint = −1.68; 治療必要数, 5.8; 95% CI, 3.3-25.8; P = .01)。累積反応率はシャム群より実tDCS群のほうが高かったが(67.6% vs 30.4%; 治療必要数, 2.69; 95% CI, 1.84-4.99; P = .01)、寛解率に違いはなかった(37.4% vs 19.1%; 治療必要数, 5.46; 95% CI, 3.38-14.2; P = .18)。
     実治療群でより高かった(54% vs 19%; P = .01)皮膚の局所的発赤を除いて、治療により発生した感情の反転を含む有害事象は両群で似ていた。
    <結論と関連性>
     この試験において経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation、tDCS)は、小規模の双極うつ病サンプルについて、有効かつ安全で、認容性のある追加介入であった。次の試験はtDCSの有効性をより大規模なサンプルで調べるべきである。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT02152878

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米国における小児および青年の自閉スペクトラム症(ASD)の有病率: 2014年~2016年
    Guifeng Xu, et al. JAMA 2018; 319: 81-82.
    Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among US Children and Adolescents, 2014-2016.

    論文要約:
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)は重大な神経発達症であり、当事者、家族、そして社会に相当の負担を与える。以前の調査は、過去20年間に米国の小児および青年のASD有病率が着実に増加していることを報告してきた。しかしながら、自閉症と発達障害のモニタリング(the Autism and Developmental Disabilities Monitoring、ADDM)ネットワークによる最も新しい推定値は、2000年の0.67%から2010年の1.47%までの一貫した増加を記録した後に、2012年に初めてASD有病率の頭打ち(1.46%)を報告した。この研究で我々は、2014年から2016年の米国における小児および青年の現在のASD有病率を推定するために、国民代表データを分析した。
     適格とされた3歳から17歳の国民健康面接調査(National Health Interview Survey、NHIS)2014-2016の全参加者のうち、28人(0.09%)はASD診断に関する情報の欠損のため除外された。包含された30,502人の小児と青年の中で、711人がASD診断を有すると報告された。ASDの重み付け有病率は2.47%(95%信頼区間、2.20%-2.73%)であった。
     男子の有病率は3.63%(95%信頼区間、3.19%-4.08%)、女子はそれは1.25%(95%信頼区間、0.99%-1.51%)、ヒスパニック系の小児・青年は1.82%(95%信頼区間、1.42%-2.22%)、非ヒスパニック系白人の小児・青年は2.76%(95%信頼区間、2.39%-3.13%)、非ヒスパニック系黒人の小児・青年は2.49%(95%信頼区間、1.69%-3.29%)であった。3年の報告期間を通した有病率は、2014年は2.24%(95%信頼区間、1.89%-2.59%)、2015年は2.41%(95%信頼区間、1.98%-2.84%)、2016年は2.76%(95%信頼区間、2.20%-3.31%)であった(P for trend = .11)。

    コメント:この報告によると米国における最近のASD推定有病率は安定化の傾向が見てとれますが、3年間という短期の観察ですので、「傾向性が統計学的に有意ではなかった」としても結果は予備的と考えるべきでしょう。より長期のモニターが必要です。

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閉経移行期の抑うつ症状予防における経皮的エストラジオールと微細化プロゲステロンの有効性:ランダム化臨床試験
    Gordon JL et al. JAMA Psychiatry, published online: January 10, 2018.
    Efficacy of Transdermal Estradiol and Micronized Progesterone in the Prevention of Depressive Symptoms in the Menopause Transition: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     12カ月の経皮的エストラジオールと間欠的微細化プロゲステロンは、閉経移行期および閉経後早期における抑うつ症状の発症を予防する点においてプラセボより有効か。
    <結果>
     172人の閉経前後期および閉経後早期にある女性を含むこのランダム化臨床試験において、プラセボを用いた女性の32.3%が臨床的に意味のある抑うつ症状を発症したが、経皮的エストラジオールと間欠的微細化プロゲステロンを用いた女性で抑うつ症状を発症したのは17.3%であった。
    <意義>
     更なる研究で確認されれば、閉経移行期および閉経後早期に生じる臨床的に意味のある抑うつ症状のリスク増加を軽減するホルモン療法を、臨床家は考慮するかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     閉経移行期および閉経後早期は、臨床的に意味のある抑うつ症状のリスクが2から4倍高い。ホルモン療法がこの時期の抑うつを有効に管理する可能性を2,3の研究が示唆しているものの、我々の知る限り、ホルモン療法が閉経前後期および閉経後早期の抑うつ症状の発症を予防し得るか否かを検証する研究は行われていない。
    <目的>
     経皮的エストラジオール(transdermal estradiol、TE)と間欠的微細化プロゲステロン(intermittent micronized progesterone、IMP)の併用(TE+IMP)の、当初は正常気分であった閉経前後期および閉経後早期の女性における抑うつ症状の発症予防に対する有効性を調べること。第二の目的は、TE+IMPの有益な気分効果を予測するベースライン特性を特定すること。
    <設計・設定・参加者>
     ノースカロライナ大学・チャペルヒル校において2010年10月から2016年2月に行われた二重盲検・プラセボ比較ランダム化試験。参加者は正常気分にある閉経前後期および閉経後早期の一般住民女性で、年齢は45歳から60歳。
    <介入>
     12カ月間の経皮的エストラジオール(一日0.1 mg)または経皮的プラセボ。加えて3か月ごとに、実薬TEを受ける女性には経口微細化プロゲステロン(一日200㎎を12日間)が、プラセボを受ける女性にはそっくりのプラセボ錠が投与された。
    <主要評価項目>
     Center for Epidemiological Studies–Depression Scale (CES-D)スコアが、ベースライン、無作為化後の1カ月、2カ月、4か月、6カ月、8か月、および12カ月に評価された。臨床的に意味のある抑うつ症状は、CES-Dスコアで少なくとも16点と定義された。
    <結果>
     172人の参加者のうち、130人(76%)が白人で70人(19%)がアフリカ系米国人、平均家計所得は$50,000から$79,999であった。平均年齢は51歳、43人が臨床的に意味のある抑うつ症状を呈した。プラセボに割り付けられた女性は、TE+IMPに割り付けられた女性よりも多く、介入期において少なくとも一度は16点以上のCES-Dスコアを示し(32.3% vs 17.3%; odds ratio [OR], 2.5; 95% CI, 1.1-5.7; P = .03)、介入期を通して平均CES-Dスコアが高かった(P = .03)。
     ベースラインの生殖期は治療効果を減弱させた(β, −1.97; SEM, 0.80; P for the interaction = .03)。これはプラセボに対するTE+IMPの気分利得が、閉経移行早期(β, −4.2; SEM, 1.2; P < .001)の女性では明確であったが、閉経移行後期(β, −0.3; SEM, 1.1; P = .92)または閉経後(β, −0.3; SEM, 1.1; P = .92)の女性ではそうではなかったことによる。試験参加に先立つ6カ月間におけるストレスとなるライフイベントも、平均CES-Dスコアに対する治療効果を減弱させたが、これはTE+IMPの気分利得がライフイベントの数が多くなるほど増加したことによる(β, 1.22; SEM, 0.40; P = .003)。
     ベースラインのエストラジオール水準、ベースラインの血管運動症状、うつ病の既往、および虐待の既往は、治療効果を弱めることはなかった。
    <結論>
     当初は正常気分であった閉経前後期および閉経後早期の女性における抑うつ症状の発症を予防する点において、12カ月のTE+IMPはプラセボより有効であった。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子: NCT01308814)

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緑色葉野菜の栄養素および生物活性体と認知機能低下:前向き研究
    Morris MC et al. Neurology, published online: December 20, 2017.
    Nutrients and bioactives in green leafy vegetables and cognitive decline: Prospective study.

    論文要約:
    <目的>
     関連性の背後にある生物学的メカニズムの理解を深めるために、我々はビタミンK(フィロキノン、phylloquinone)、ルテイン(lutein)、βカロテン(β-carotene)、硝酸塩(nitrate)、葉酸(folate)、ケンペロール(kaempferol)、そしてαトコフェロール(α-tocopherol)を含む緑色葉野菜の主要な栄養素および生物活性体と認知機能低下の個別的関係を調べた。
    <方法>
     これは、食物摂取頻度質問紙に回答して平均4.7年にわたって2つ以上の認知機能評価を受けた、記憶と加齢プロジェクト(the Memory and Aging Project)の参加者960人(年齢:58~99歳)に関する前向き研究である。
    <結果>
     年齢、性別、教育、認知的活動への参加、身体的活動、喫煙、シーフードとアルコールの消費を調整した線型混合モデルにおいて、緑色葉野菜の摂取はより遅い認知機能低下と関連した。摂取が最高四分範囲(中央値:1日1.3回)にある人の低下率はより遅いか(標準化単位β = 0.05, p = 0.0001)、11歳若い年齢のそれと同等であった。
     個々の栄養素および生物活性体の頻回の摂取は、βカロテンを除いて、より遅い認知機能低下と個別に関連した。調整済モデルにおいて、最低に対する最高四分範囲の摂取の低下率は以下であった:フィロキノン(β = 0.02, p = 0.002)、ルテイン(β = 0.04, p = 0.002)、葉酸(β = 0.05, p < 0.001)、αトコフェロール(β = 0.03, p = 0.02)、硝酸塩(β = 0.04, p = 0.002)、ケンペロール(β = 0.04, p = 0.003)、βカロテン(β = 0.02, p = 0.08)。
    <結論>
     およそ1日に1度、フィロキノン、ルテイン、硝酸塩、葉酸、αトコフェロール、そしてケンペロールを豊富に含む緑色葉野菜と食物を摂取すれば、加齢に伴う認知機能低下を遅らせることができるかもしれない。

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アルコール使用障害を持つ患者の薬物療法に関する米国精神医学会(APA)の診療指針
    Reus VI et al. Am J Psychiatry, published online: January 05, 2018.
    The American Psychiatric Association Practice Guideline for the Pharmacological Treatment of Patients With Alcohol Use Disorder.

    ガイドラインによる推奨:
    <治療目標>
    • アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder、AUD)を持つことが疑われる患者の精神医学的初期評価において、タバコ、アルコール、および処方薬と市販薬を含む他の物質の現在および過去の使用を評価する。(1C)
    • 精神医学的初期評価において、アルコール乱用の存在と重症度を同定するために定量的な行動評価(例、CAGEまたはAUDIT-C)を含める。(1C)
    • 初期評価と実施中の治療において、持続的に上昇するアルコール摂取水準を特定するために生理学的バイオマーカーを用いる。(2C)
    • 患者の併存疾患(例、物質使用、身体および精神障害)を評価する。(1C)
    • 患者とAUD治療(例、禁酒、減量、またはアルコール使用を控えること)の初期目標を確定し、患者の診療録に目標を記録する。(2C)
    • 治療目標の初期設定に、患者の法的義務についての議論を含めて記録する。(2C)
    • 最初の議論に持続的なアルコール使用の自己および他者へのリスクに対する影響を含め、その議論を記録する。(2C)
    • AUDを持つ患者は、エビデンスに基づく非薬理学的および薬理学的介入を含む実証的で包括的な患者中心の治療計画を持つべきである。(1C)

    <薬物療法の選択>
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、ナルトレキソン(naltrexone)またはアカンプロセート(acamprosate)を提供する。
    • アルコール摂取の減量、または禁酒達成の目標を持っている。
    • 薬物療法を望む、または単独の非薬理学的治療に反応しない。
    • これら薬剤の使用について禁忌ではない。(1B)
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、ジスルフィラム(disulfiram)を提供する。
    • 禁酒達成の目標を持っている。
    • ジスルフィラムを望む、あるいはナルトレキソンとアカンプロセートに不耐または反応しない。
    • ジスルフィラムの内服中にアルコールを摂取するリスクを理解することができる。
    • この薬剤の使用について禁忌ではない。(2C)
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、トピラマート(topiramate)またはガバペンチン(gabapentin)を提供する。
    • アルコール摂取の減量、または禁酒達成の目標を持っている。
    • これら薬剤を望む、あるいはナルトレキソンとアカンプロセートに不耐または反応しない。
    • これら薬剤の使用について禁忌ではない。(2C)

    <特定の薬剤を使用しない推奨>
    • 抗うつ薬が適用の併存疾患があるのでなければ、AUDに対して抗うつ薬を使用しない。(1B)
    • 「急性のアルコール離脱の治療をしている、あるいはベンゾジアゼピンが適応の併存疾患がある」のでなければ、ベンゾジアゼピンを使用しない。(1C)
    • 「ベンゾジアゼピンを用いて急性のアルコール離脱を治療している、あるいは薬物療法を正当化する併存疾患がある」のでなければ、AUDを持つ妊娠中または授乳中の女性には薬理学的治療を用いない。(1C)
    • 重度の腎機能障害を持つ患者には、アカンプロセートを使用しない。(1C)
    • 軽度から中等度の腎機能障害を持つ患者の第1段階の治療として、アカンプロセートを使用しない。(1C)
    • 肝炎または肝不全を持つ患者には、ナルトレキソンを使用しない。(1C)
    • オピオイドを使用している人、またはオピオイドに対する要求が予期される症例には、ナルトレキソンを使用しない。(1C)

    <AUDの治療と併存するオピオイド使用障害>
    次の人にはナルトレキソンを処方する。
    • オピオイド使用を止めて、アルコール使用を止めたいか減らしたいと望む。
    • ナルトレキソンの開始に先立つ臨床的に適切な時期に、オピオイド使用を止めることができる。(1C)

    *各薬剤の簡便な説明
    ナルトレキソン(naltrexone):オピオイドμ受容体拮抗薬で、飲酒の“報酬効果”を阻害。
    アカンプロセート(acamprosate、商標名レグテクト):中枢神経系に作用し飲酒欲求を抑制。
    ジスルフィラム(disulfiram、商標名ノックビン):アルコールの代謝途中で生じるアセトアルデヒドが蓄積することによる不快から飲酒を抑止(嫌酒薬)。
    トピラマート(topiramate)、ガバペンチン(gabapentin):いずれも抗てんかん薬。

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精神疾患における解離:解離体験尺度を用いた研究のメタ解析
    Lyssenko L et al. Am J Psychiatry 2018; 175: 37-46.
    Dissociation in Psychiatric Disorders: A Meta-Analysis of Studies Using the Dissociative Experiences Scale.

    論文要約:
    <目的>
     解離(dissociation)は複雑かつ精神病理に遍在する構成概念である。解離症状は様々な精神疾患に存在し、高水準の解離を持つ障害に限らず重い疾病負担と低い治療反応性に結び付けられてきた。このメタ解析は、様々な種類の精神疾患において解離体験尺度(Dissociative Experiences Scale)を用いて評価された解離の有病率と分布について系統的なエビデンスに基づく研究を提供し、初期のメタ解析を更新する。
    <方法>
     1,900を超える原著論文がスクリーニングされ、19診断カテゴリーの15,219人から構成される216論文がメタ解析に含まれた。
    <結果>
     最も高い平均解離スコアを示したのは解離性障害(平均スコア>35)で、心的外傷後ストレス障害・境界性パーソナリティ障害・変換症/転換性障害(平均スコア>25)が続いた。身体症状症、物質関連障害および嗜癖性障害群、食行動障害および摂食障害群、統合失調症、不安症/不安障害、強迫症/強迫性障害、および大抵の感情障害も15を超える平均解離スコアを示した。双極性障害は最も低い解離スコアを示した(平均スコア=14.8)。
    <結論>
     本結果は、全範囲の精神疾患における解離症状の注意深い精神病理学的評価の重要性を明確に示している。

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結婚と認知症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
    Sommerlad A et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry, published online: 28 Nov 2017.
    Marriage and risk of dementia: systematic review and meta-analysis of observational studies.

    論文要約:
    <背景>
     結婚していることはより健康的な生活習慣行動とより低い死亡率と関連し、生涯経過に関連する要因を介して認知症のリスクを低下させるかもしれない。婚姻状態と認知症の発症リスクの関連研究の系統的レビューとメタ解析を行った。
    <方法>
     婚姻状態と認知症の関係を報告する当該研究について、医学データベースを検索してその分野の専門家と連絡を取った。方法論上の質を評点し、結婚していることと比較した死別、離婚、または生涯独身であることの相対リスクを要約するために変量効果メタ解析(random-effects meta-analyses)を実施した。メタ回帰を用いた副次層別解析で、結果に対する臨床的・社会的背景と研究方法の影響を調べた。
    <結果>
     我々は812,047人の参加者からなる15の研究を含めた。結婚していることと比較して、生涯独身の人(相対リスク=1.42 :95% CI 1.07~1.90)と死別した人(相対リスク=1.20:95% CI 1.02~1.41)は認知症のリスクが上昇していた。離婚した人との関連はなかった。さらなる分析によると、低い教育は死別した人においてリスクと一部交絡し、不良な身体健康は生涯独身の人においてリスクを上昇させた。認知症診断を確定するために臨床登録を用いた研究と比較して、すべての参加者を臨床的に調べた研究では、未婚であるとリスクがより高かった。
    <結論>
     結婚していることは、死別した人や生涯独身の人より認知症の低いリスクと関連し、それはまた日常臨床診療において過小診断されている。未婚の人における認知症予防は教育と身体健康に焦点が当てられるべきであり、修正可能なリスク因子としての社会参加の見込まれる効果を検討すべきである。

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非精神疾患で入院した人における抗精神病薬と誤嚥性肺炎のリスク:コホート研究
    Herzig SJ et al. J Am Geriatr Soc 2017; 65: 2580-2586.
    Antipsychotics and the Risk of Aspiration Pneumonia in Individuals Hospitalized for Nonpsychiatric Conditions: A Cohort Study.

    論文要約:
    <背景と目的>
     抗精神病薬の承認適応外使用(Off-label use)は病院では一般的であり、せん妄の管理に最も頻繁に行われる。抗精神病薬は地域住民と老人ホームにおける誤嚥性肺炎と関連付けられてきたが、入院者における関連は調査されていない。我々は入院中の抗精神病薬への曝露と誤嚥性肺炎の関連を調べた。
    <設計・設定>
     前向きコホート研究・大規模な大学医療センター
    <参加者>
     2007年1月から2013年7月の成人の全入院。我々は外の病院への移送、48時間より短い入院、および精神科入院を除外した。
    <測定>
     抗精神病薬使用は、抗精神病薬の投与に対する調剤料として定義された。誤嚥性肺炎は入院時には存在しない誤嚥性肺炎の退院時診断コードに基づいて定義され、診療録を閲覧することで妥当性が確認された。一般化推定方程式(generalized estimating equation、GEE)が43の潜在的交絡因子を制御するために用いられた。
    <結果>
     本コホートには146,552入院(年齢中央値は56歳、39%が男性)が含まれた。抗精神病薬は10,377入院(7.1%)に使われた(80%が非定型、35%が定型、15%が両方)。誤嚥性肺炎は557入院(0.4%)で生じた。誤嚥性肺炎の発症率は曝露されなかった人では0.3%、抗精神病薬に曝露された人では1.2%であった(オッズ比 = 3.9, 95%信頼区間 = 3.2-4.8)。
     調整後も抗精神病薬への曝露は誤嚥性肺炎と有意に関連した(調整済オッズ比 = 1.5, 95%信頼区間 = 1.2-1.9)。似たような結果が、傾向スコアを用いた分析とせん妄または認知症を持つ人に限った分析で示された。関連の大きさは定型(調整済オッズ比= 1.4, 95%信頼区間= 0.94-2.2)および非定型(調整済オッズ比= 1.5, 95%信頼区間= 1.1-2.0)抗精神病薬で類似していた。
    <結論>
     参加者特性の広範な調整をしても、抗精神病薬はより高い誤嚥性肺炎のリスクと関連した。病院で抗精神病薬を処方する際には、このリスクを考慮すべきである。

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双極性障害に対する補助的光療法:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
    Sit DK et al. Am J Psychiatry, published online: October 03, 2017.
    Adjunctive Bright Light Therapy for Bipolar Depression: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     双極性障害を持つ患者には、反復性うつ病、気分症状の残遺、および治療選択肢の制約がある。有望な予備的データを構築するために、著者らは双極性障害に対する真昼の補助的光療法の有効性を調べる6週間のランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験を実施した。その目的は寛解率、抑うつ症状のレベル、気分極性の切換を確定し、睡眠の質を調査することである。
    <方法>
     本研究には、安定した用量の抗躁薬を受けている双極Ⅰ型またはⅡ型障害を持つ抑うつ状態の患者が含まれた。軽躁病または躁病、混合症状、または急速交代を持つ患者は除外された。患者は7,000ルクスの明白光(N=23)、または50ルクスの暗赤プラセボ光(N=23)を用いた治療に無作為に割り付けられた。症状は非定型うつ病の付録つきHAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)のための構造化面接ガイド(the Structured Interview Guide for the Hamilton Depression Scale With Atypical Depression Supplement、SIGH-ADS)、躁病評価尺度(the Mania Rating Scale)、およびピッツバーグ睡眠質問表(the Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いて毎週評価された。寛解はSIGH-ADSスコアが8点以下と定義された。
    <結果>
     ベースラインにおいて両グループは中等度の抑うつ症状を呈したが、軽躁病または躁病の症状は認めなかった。プラセボ光グループと比べて明白光で治療したグループは、4から6週において有意に高い寛解率を達成し(22.2% 対 68.2%; 調整済オッズ比= 12.6)、エンドポイントにおいて有意に低い抑うつスコアを示した(14.9 [標準偏差= 9.2] 対 9.2 [標準偏差= 6.6]; 調整済β= -5.91)。気分極性の切換は観察されなかった。睡眠の質は両グループで改善し、有意な群間差はなかった。
    <結論>
     この研究データは、双極性障害に対する真昼の光療法の有効性を支持する強固なエビデンスを提供する。

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心的外傷後ストレス障害に対する短期の曝露に基づく治療と認知処理療法:ランダム化・非劣性臨床試験
    Sloan DM et al. JAMA Psychiatry, published online: January 17, 2018.
    A Brief Exposure-Based Treatment vs Cognitive Processing Therapy for Posttraumatic Stress Disorder: A Randomized Noninferiority Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     心的外傷後ストレス障害の治療において、短期の曝露に基づく治療(Brief Exposure-Based Treatment)は時間集約的な認知処理療法(cognitive processing therapy)に劣らないか。
    <結果>
     心的外傷後ストレス障害の診断を受けた126人からなるこのランダム化・非劣性臨床試験において、筆記による(written)5回の曝露療法で治療された人と認知処理療法で治療された人は、大きな効果量をもって有意に改善した。かなりの用量差にも関わらず、筆記による曝露療法は認知処理療法に劣らなかった。
    <意義>
     本結果は、筆記による曝露療法と認知処理療法は心的外傷後ストレス障害の治療に有効であり、心的外傷後ストレス障害は5回の心理療法で効率的に治療できるエビデンスを提供する。

    論文要約:
    <重要性>
     筆記による曝露療法(written exposure therapy、WET)は5回のセッションからなる介入法で、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)を効率的に治療することが示されてきた。しかし、この治療は認知処理療法(cognitive processing therapy、CPT)といったPTSDの第1選択の治療と直接比較されたことはない。
    <目的>
     PTSDを持つ患者においてWETがCPTに非劣性であるか否かを確定すること。
    <設計・設定・参加者>
     2013年の2月28日から2016年11月6日に退役軍人医療施設で行われたこのランダム化臨床試験では、退役軍人と非退役軍人の成人126人がWETまたはCPTに無作為に割り付けられた。包含基準はPTSDの主診断と安定した薬物療法、除外基準はPTSDの心理療法を実施中、自殺の高リスク、精神病の診断、および不安定な双極性障害であった。分析はintent-to-treatを基本として行われた。
    <介入>
     CPTに割り付けられた参加者(n = 63)は12セッションの治療を受け、WETに割り付けられた参加者(n = 63)は5セッションの治療を受けた。書面の説明を含むCPTプロトコールは、週1回60分のセッションにおいて個別に配布された。最初のWETセッションは60分、残りの4セッションは40分を要した。
    <主要評価項目>
     主要評価項目はPTSD臨床診断面接尺度 DSM-5版(the Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)の総スコアで、非劣性は10ポイントと定義された。盲検化された評価が、ベースラインと最初の治療セッション後の6週、12週、24週、36週に行われた。治療からの脱落も調べられた。
    <結果>
     126人の参加者(66人が男性で60人が女性;平均[標準偏差]年齢は43.9 [14.6]歳)について、各々の評価期間において、WET条件のPTSD症状の改善はCPT条件の改善に劣ることはなかった。最大の治療間差は24週の評価で観察された(平均差, 4.31ポイント; 95%信頼区間, –1.37 to 9.99)。WET条件はCPT条件より脱落が有意に少なかった(4 [6.4%] vs 25 [39.7%]; χ21 = 12.84, Cramer V = 0.40)。
    <結論と関連性>
     WETはよりセッション数が少ないにも関わらず、PTSD症状を軽減する点においてCPTに劣ることはなかった。本結果はWETがPTSDに対して効果的、かつ患者と治療提供者の負担を軽減してこれまで言われてきたPTSD治療への障壁を乗り越える効率的なPTSD治療であることを示す。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子: NCT01800773)

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精神病体験を持つ青年におけるタバコと大麻使用の結合パターン連関
    Jones HJ, et al. JAMA Psychiatry, published online: January 17, 2018.
    Association of Combined Patterns of Tobacco and Cannabis Use in Adolescence With Psychotic Experiences

    キーポイント:
    <疑問>
     青年のタバコと大麻使用のパターンは後の精神病体験の発症と異なる形で関連するか。
    <結果>
     この3,328人の青年から構成される縦断的コホート研究で、交絡因子の調整前は、大麻使用とタバコ使用の両方が後の精神病体験に関連するエビデンスが見いだされた。しかし、調整後は、タバコのみの使用については関連がかなり低下したものの、大麻との関連は依然一貫していた。
    <意義>
     青年期に大麻またはタバコを用いると後の精神病体験のリスクが上昇するが、精神病体験との関連はタバコより大麻の喫煙でリスクがより大きい。

    論文要約:
    <重要性>
     タバコ使用の精神病に対する潜在的因果効果の懸念があるが、疫学研究では大麻使用と比べて交絡因子の影響を最小化する試みが十分なされてこなかった。
    <目的>
     タバコと大麻使用のパターンとそれに前後する精神病体験の関連を調べて、これらのパターン間で交絡因子の影響を比較すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、追跡開始時に14,062人の子供が含まれたエイボン(英国Avon州)親と子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children)からのデータを用いた。データは収集開始時の1990年9月6日から定期的に収集され、2016年8月8日から2017年6月14日に分析された。タバコと大麻使用のデータは、物質使用の縦断的クラスを特定する縦断的潜在クラス分析(longitudinal latent class analysis)を用いて要約された。クラスと18歳時の精神病体験の関連が評価された。
    <曝露>
     分析モデルによって、曝露は物質使用の縦断的クラス、または12歳時の精神病体験であった。
    <主要評価項目>
     ロジスティック回帰が、物質使用の縦断的クラスと後の精神病体験の発症の関連を調べるために使用された。
    <結論>
     14歳から19歳までのタバコと大麻の使用について少なくとも3回の評価を受けた5,300人の参加者(56.1%が女性)から、縦断的クラスが生成された。広範な潜在的交絡因子を調整する前は、未使用者(65.9%)と比べて、早期発症・タバコ単独使用(4.3%)、早期発症・大麻使用(3.2%)、および後期発症・大麻使用(11.9%)が後の精神病体験の増加と関連する強いエビデンスを認めたが(omnibus P < .001)、後期発症・タバコ単独使用(14.8%)は関連がなかった。
     交絡因子の調整後は、関連は早期発症・タバコ単独使用との関連がかなり低下したものの(未調整オッズ比 [OR], 3.03; 95% CI, 1.13-8.14; 調整済OR, 1.78; 95% CI, 0.54-5.88)、早期発症・大麻使用(調整済OR, 3.70; 95% CI, 1.66-8.25)と後期発症・大麻使用(調整済OR, 2.97; 95% CI, 1.63-5.40)との関連は依然一貫していた。
    <結論と関連性>
     この研究における我々の結果は、青年期に大麻またはタバコを用いると後の精神病体験のリスクが上昇するが、タバコ使用より大麻使用について相当に強固な疫学的エビデンスが存在することを示す。

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エスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の影響:患者2,087人に基づく前向き研究
    Jukić MM et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.
    Impact of CYP2C19 Genotype on Escitalopram Exposure and Therapeutic Failure: A Retrospective Study Based on 2,087 Patients.

    論文要約:
    <目的>
     抗うつ薬のエスシタロプラムは、多様な性質を持つCYP2C19酵素によって主に代謝される。著者らは大規模な患者集団において、エスシタロプラムの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の効果を調べた。
    <方法>
     CYP2C19の遺伝子型が確定された2,087人患者から得た全部で4,228の薬剤服用後10から30時間のエスシタロプラム血清濃度測定が、オスロ(ノルウェー)のDiakonhjemmet病院にある薬剤監視データベースデータから後方視的に収集された。患者はCYP2C19の遺伝子型に基づき、不活化をもたらす遺伝子型(CYP2C19Null)と機能獲得変異アレル(CYP2C19*17)に群分けされた。エスシタロプラムへの曝露(エンドポイント:用量に見合う血清濃度)と治療の失敗(エンドポイント:エスシタロプラムの最終測定後1年以内の他の抗うつ薬への切換)の群間差が、多変量混合モデルとカイ二乗分析で評価された。
    <結果>
     CYP2C19*1/*1群と比べて、エスシタロプラム血清濃度はCYP2C19Null/Nullでは3.3倍、CYP2C19*Null/*1群では1.6倍、そしてCYP2C19Null/*17群では1.4倍有意に高かった。一方、エスシタロプラム血清濃度はCYP2C19*1/*17群では10%、CYP1C19*17/*17群では20%有意に低かった。
     CYP2C19*1/*1群と比べて、エスシタロプラムから他の抗うつ薬への1年以内の切換は、CYP2C19Null/Null群、CYP2C19*1/*17群、そしてCYP1C19*17/*17群ではそれぞれ3.3倍、1.6倍、そして3.0倍多かった。
    <結論>
     抗うつ薬治療の切換で評価した場合、CYP2C19遺伝子型はエスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対して相当な影響を持つ。結果は、エスシタロプラム療法の個別化に対するCYP2C19遺伝子型判定の潜在的な臨床的有用性を支持する。

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再活性化前のプロプラノロール療法によるPTSD症状の軽減:ランダム化比較試験
    Brunet A et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.
    Reduction of PTSD Symptoms With Pre-Reactivation Propranolol Therapy: A Randomized Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     著者らは心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)の症状軽減において、想定される再固定阻害法としてのノルアドレナリンβ受容体阻害薬プロプラノロールの影響下で実施されたトラウマ記憶の再活性化の有効性を評価した。
    <方法>
     これは長期持続性のPTSDと診断された60人の成人における6週間の二重盲検・プラセボ比較・ランダム化臨床試験である。6週連続で週に1回行われた短期の記憶再活性化セッションの90分前に、プロプラノロールまたはプラセボが投与された。臨床家評価PTSD尺度(the Clinician-Administered PTSD Scale、CAPS)と患者評価のPTSDチェックリスト-ストレス因特定版(the patient-rated PTSD Checklist-Specific、PCL-S)の両方のPTSD症状を軽減させる点において、プラセボを用いたトラウマ再活性化と比べてプロプラノロールを用いたトラウマ再活性化に有意な治療効果を示すと予測した。
    <結果>
     治療前の値で調整(分散分析)した治療後CAPSスコアの推定群間差は、統計学的に有意な11.50であった。群内の治療前後の効果量(コーエンのd値)はプロプラノロールで1.76、プラセボで1.25であった。PCL-Sについては、混合線型モデルで推定される時間と群の交互作用は週に平均2.43ポイントの減少を示し、プラセボより全部で14.58ポイントの有意差を認めた。治療前後の効果量はプロプラノロールで2.74、プラセボで0.55であった。両評価項目ごとのプロトコル分析は類似の有意な結果を示した。
    <結論>
     再固定化仮説によって示唆された治療プロトコルである再賦活化前のプロプラノロールは、PTSDに対する新規の有効な治療のようである。様々なトラウマ母集団において長期間追跡する再現研究が必要である。

    コメント:プロプラノロールは既存の効果が実証されている心理療法との併用下で検証されました。βブロッカーは不安に対してしばしば使われたものでしたが、精神医学・医療では昔の知見のリバイバルが時々ありますね。

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加齢性聴力低下と認知機能、認知障害、および認知症の関連:系統的レビューとメタ解析
    Loughrey DG et al. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg, published online: Dec 7, 2017.
    Association of Age-Related Hearing Loss With Cognitive Function, Cognitive Impairment, and Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要約:
    <重要性>
     加齢性聴力低下(age-related hearing loss、ARHL)と認知低下および認知症との関連についての疫学研究は、これまで一貫性を欠く結果を導き出してきた。ARHLが臨床的認知症アウトカムのリスク因子である可能性があることから、この関連を明確にすることには意義がある。
    <目的>
     ARHLと認知機能、認知障害、および認知症の関連を、系統的レビューとメタ解析を通して調査し推定すること。
    <データ源と研究選択>
     データベースの開始から2016年4月15日までのPubMed、Cochrane Library、EMBASE、および SCOPUSの検索が、潜在的な適格研究について収集した研究と個人ファイルの相互参照をしながら行われた。キーワードには聴力、認知、認知症、およびアルツハイマー病が含まれた。論文査読のある学術専門誌に発表され、客観的評価項目が用いられているコホート研究と横断研究が含まれた。症例対照研究は除外された。
    <データ抽出と統合>
     1人の査読者がデータを抽出し、もう一人がデータを確認した。両査読者は独立に研究の質を評価した。推定値は変量効果(random-effects)メタ解析を用いて集約(pool)された。研究レベルの特性について、サブグループ分析とメタ回帰(meta-regression)分析が行われた。
    <主要評価項目>
     純音聴力検査(pure-tone audiometry)だけで測定された聴力低下、および認知機能、認知障害、および認知症の客観的評価結果。認知機能アウトカムは相関係数(r値)に、認知障害と認知症はオッズ比(OR)に変換された。
    <結果>
     12か国からの40の研究が我々の包含基準を満たした。このうち、推定20,264人の新規参加者を含む36の新規研究がメタ解析に導入された。変量効果モデルを用いて最大限に調整された集約効果量によれば、すべての認知機能領域においてARHLとの小さいながら有意な関連が見いだされた。
     横断研究では、認知障害(OR, 2.00; 95% CI, 1.39-2.89)と認知症(OR, 2.42; 95% CI, 1.24-4.72)について有意な関連が見出された。前向きコホート研究では、認知障害(OR, 1.22; 95% CI, 1.09-1.36)と認知症(OR, 1.28; 95% CI, 1.02-1.59)について有意な関連があったが、アルツハイマー病ではなかった(OR, 1.69; 95% CI, 0.72-4.00)。追加分析では、研究・人口統計、・音響測定・分析に関する因子が認知機能と関連した。
     血管性の機能障害と言語的コミュニケーションの障害が、聴力低下と認知低下の関連に寄与するのかもしれない。
    <結論と関連性>
     加齢性聴力低下は、認知低下、認知障害、および認知症の有望なバイオマーカーであり、修正可能なリスク因子である。認知に対する治療との関係を調べ、この関連性の背後にある可能な因果メカニズムを探求する更なる研究とランダム化臨床試験が必要である。

    コメント:アイルランドはTrinity College Dublinの医学研究者らの研究です。加齢性聴力低下とアルツハイマー病および血管性認知症との個別の関連は認められなかったことがむしろ興味深いです。

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飲酒は伝染するか:飲酒行動の集合性理論のマルチレベル・フレームワークにおける分析
    Bräker AB and Soellner R. Alcohol Alcohol 2017; 52: 692-698.
    Is Drinking Contagious? An Analysis of the Collectivity of Drinking Behavior Theory Within a Multilevel Framework.

    論文要約:
    <目的>
     問題飲酒の様々な有病率を持つ国々において、問題となる青年のアルコール使用に関する行動伝染の効果を分析すること。
    <方法>
     25の欧州諸国の12から16歳、7から9学年の48,215人からのネストされたデータ(48.5%が男性、平均13.83歳)が、階層一般線型モデル化シーケンス(hierarchical general linear modeling sequences)を用いて研究された。最後に、主仮説を検証するためにアウトカムとしての切片モデル(intercept-as-outcome model)が構築された。
    <結果>
     マルチレベル分析(multilevel analyses)は、問題のあるアルコール使用者になることに対する個人のリスク因子:年長(OR = 2.02)、男性(OR = 1.41)、現地生まれ(OR = 1.32)の有意な効果を立証した。国レベルの予測因子「アルコール使用者の割合」に関しても、行動伝染の効果が確認された(OR = 1.05)。
    <結論>
     アルコール使用行動に関する伝染効果は、環境予防対策への関心を求める。(青年の)アルコール使用に対する公衆の許容度を低下させることで、欧州諸国における問題のある青年のアルコール使用者の平均割合が減るかもしれない。

    コメント:マルチレベル分析とは、階層構造をもつデータもしくはネストされたデータを適切に分析するための統計手法のことです(『保健医療従事者のためのマルチレベル分析活用ナビ』、診断と治療者 2013年)。階層構造というのは、本論文でいえば1次レベルは青年個人、2次レベルは個人が属する国となります。最下位と最上位の間の中間レベルの数次第では、3レベル、4レベル・・・になることもあります。

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戦争の10年:派兵米国軍人のPTSD症状の前方視的軌跡と戦闘への曝露の影響
    Donoho CJ et al. Am J Epidemiol 2017; 186: 1310-1318.
    A Decade of War: Prospective Trajectories of Posttraumatic Stress Disorder Symptoms Among Deployed US Military Personnel and the Influence of Combat Exposure.

    論文要約:
     心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)は、軍人と退役軍人によくある精神疾患である。PTSDの臨床経過は個人により様々であり、症状発展のパターンはいまだ明確に記述されていない。先行研究は、便宜サンプル、短期の追跡期間、および戦闘関連のトラウマを説明できないことから限界を有する。
     戦闘への曝露がある派兵軍人と、曝露がない派兵軍人におけるPTSD症状の軌跡を調べるために、我々は2001年から2011年のミレニアムコホート研究(the Millennium Cohort Study)に参加した8,178人の米国軍人から成る住民ベースの代表サンプルからのデータを用いた。潜在成長混合モデル(latent growth mixture modeling)を用いて、PTSD症状の軌跡が全サンプル、および戦闘に曝露された人と曝露されなかった人の各群において決定された。
     全般的に見れば、回復力に富む(resilient)、前から存在(pre-existing)、新規の発症(new-onset)、ほどほど安定(moderate stable)の4つのPTSDの軌跡が特徴付けられた。すべての軌跡を通して、戦闘に派遣された軍人は1回の派遣の後でさえ、戦闘に派遣されなかった軍人から分岐した。前者はまた全般的により高いPTSD症状を持っていた。モデルに基づけば、10年の期間で戦闘への曝露がない人の90%弱が回復力に富む軌跡を示したのに対して、戦闘への曝露がある人では80%であった。
     結果は「PTSD症状の臨床経過は画一的でない発展パターンをとり、戦闘への曝露は不良な精神健康と一様に関連する」ことを明示している。

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母の妊娠中のカフェイン摂取と子の11歳時の行動障害:オランダ国民出生コホート研究
    Hvolgaard Mikkelsen S et al. J Pediatr 2017; 189: 120-127.
    Maternal Caffeine Consumption during Pregnancy and Behavioral Disorders in 11-Year-Old Offspring: A Danish National Birth Cohort Study.

    論文要約:
    <目的>
     母親の妊娠中のコーヒーと茶からのカフェイン摂取と子供の行動障害の関連を調べる。
    <研究デザイン>
     我々は、1996年から2002年のオランダ国民出生コホートに登録された47,491人の子供を研究した。母親のコーヒーと茶の摂取に関するデータが、妊娠15週と30週に収集された。子供が11歳の時に、子供、両親、および先生が子どもの強さと困難さアンケ-ト(the Strength and Difficulties Questionnaire)に回答した。我々は子の行動障害のリスク比(RR)を推定した。
    <結果>
     妊娠15週に妊婦の3%および4%が、1日8カップ以上のコーヒーまたは茶を摂取した。妊娠15週における母親の1日8カップ以上のコーヒーの摂取は、多動-不注意症(RR 1.47; 95% CI 1.18-1.83)、素行-反抗挑発症(RR 1.22; 95% CI 1.01-1.48)、およびあらゆる精神疾患(RR 1.23; 95% CI 1.08-1.40)のリスク増加と関連した。妊娠15週における母親の1日8カップ以上の茶の摂取は、不安-抑うつ障害(RR 1.28; 95% CI 1.09-1.52)と、あらゆる精神疾患(RR 1.24; 95% CI 1.11-1.40)のリスク増加と関連した。15週における1日のコーヒー摂取が増えるほど、多動-不注意症のリスクが高くなった。
    <結論>
     妊娠15週における母親のコーヒーと茶からの高いカフェイン摂取は、子の11歳児の行動障害と関連した。我々は「カフェインへの曝露が胎児脳に影響を与えて、以降の人生における行動障害をプログラムする」可能性を考えている。胎児脳は妊娠30週より15週において、カフェイン曝露に対してより感受性が高いようだ。

    コメント:欧州10カ国におけるコーヒー消費と死亡率を調べて、多様な原因による死亡リスクの低下を報告した研究(Gunter MJ, et al. Ann Intern Med 2017; 167: 236-247)がありましたが、妊娠中はコーヒーや茶の飲み過ぎに注意すべきかもしれません。

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小児と青年における遺伝性の認知能力および精神病理と脳白質特性の関連
    Dag Alnæs, et al. JAMA Psychiatry, published online January 24, 2018.
    Association of Heritable Cognitive Ability and Psychopathology With White Matter Properties in Children and Adolescents

    キーポイント:
    <疑問>
     脳の構造的結合性は、若者の精神症状の予測に感受性のある診断横断的表現型か。
    <結果>
     748人の子供、青年、および若年成人から成るこの横断研究で、一般的で連続的な症状スコアは脳白質パターンと関連し、一般精神病理が若者における遺伝的特性であることが分かった。
    <意義>
     この結果は、精神疾患への罹患脆弱性が亢進した人の人生早期において同定可能かもしれない診断横断的表現型としての脳の結合不全を意味する。

    論文要約:
    <重要性>
     多くの精神疾患は青年期に現れるが、それはこの時期に付与される脳の可塑性(brain plasticity)の潜在力に対する代償を反映しているのかもしれない脳の結合不全(brain dysconnectivity)は、診断カテゴリーにわたる共通因子として提案されてきた。
    <目的>
     脳の結合不全は亢進した罹患感受性と精神疾患の症状を持つ青年における診断横断的表現型である、とする仮説を究明すること。
    <設計・設定・参加者>
     我々は2009年11月1日から2011年11月30日に、フィラデルフィア神経発達コホート(the Philadelphia Neurodevelopmental Cohort)における8歳から21歳の6487人における臨床症状と認知機能を調べ、その参加者の748人からの脳拡散MRIを解析した。
    <主要評価項目>
     次元的精神病理スコアを発生させるために独立成分分析(independent component analysis)が、その遺伝性を推定するために全ゲノム複雑特性分析(genome-wide complex trait analysis)が用いられた。複数様式の融合(multimodal fusion)がfractional anisotropy、mean diffusivity、radial diffusivity、L1 (拡散テンソル画像の第1固有値)、mode of anisotropy、および線維束方向、構造的結合密度といった拡散MRI計量値と、それらの一般精神病理および認知との関連を同時にモデル化した。
    <結果>
     729人(8歳から22歳、平均[標準偏差]年齢は15.1[3.3]歳、343人[46%]が女性)での10倍の相互検証(cross-validation)と並べかえ検定(permutation testing)を用いた機械学習は、一般精神病理レベル(r = 0.24, P < .001)と認知(r = 0.39, P < .001)の有意な関連を示した。前頭-側頭結合性と鉤状束の交差線維を反映する脳白質パターンが、両特性と最も関連する特徴であった。
     広範囲の臨床領域と認知テスト得点を通した単変量解析は、その診断横断的重要性を確認した。一般精神病理(16%; SE, 0.095; P = .05)と認知因子(18%; SE, 0.09; P = .01)の両方が遺伝性であり、負の遺伝相関を示した。
    <結論と関連性>
     次元的で遺伝性の認知と精神病理の一般因子が特定の脳白質特性と関連することは、「結合不全が亢進した罹患感受性と精神疾患の症状を持つ人における診断横断的で脳に基盤を有する表現型である」ことを示唆する。

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認知的に正常な高齢成人におけるアミロイドβと不安・抑うつ症状の経時的関連
    Longitudinal Association of Amyloid Beta and Anxious-Depressive Symptoms in Cognitively Normal Older Adults
    Donovan NJ et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.

    論文要約:
    <目的>
     前臨床的アルツハイマー病における抑うつ症状の役割を理解するためには、認知的に正常な高齢成人におけるアルツハイマー病の蛋白病理と抑うつ症状の時間的関係を明確にすることが重要である。本研究の目的は、認知的に正常な高齢成人サンプルにおける脳アミロイドβとうつ病および抑うつ症状クラスターの縦断的測定の関連を調べることである。
    <方法>
     全部で270人の地域社会に暮らす認知的に正常な高齢者が、皮質アミロイドβの蓄積を測定するピッツバーグ化合物B(Pittsburgh compound B、PiB)を用いた陽電子断層撮影(positron emission tomography、PET)をベースライン時に、30項目の高齢者用うつ尺度(30-item Geriatric Depression Scale、GDS)による評価を毎年受けた。
     著者らは個別の変数減少・混合効果モデル(separate mixed-effects models with backward elimination)において経時的(1から5年、平均3.8年)に、GDS総得点およびアパシー・快感消失(apathy-anhedonia)、不快気分(dysphoria)、不安・集中困難(anxiety-concentration)の3つのGDS項目クラスターの平均スコアで計算されるGDSスコアまたはGDSクラスターを予測因子として、連続的にPiB結合を評価した。
     事前の予測因子には、PiB結合、年齢、性別、Hollingshead得点(訳注:社会経済的地位の評価)、American National Adult Reading Test得点(AMNART、訳注:単語の読みを介した病前知的機能の評価)、アポリポプロテインEのε4の保有状況、うつ病の既往、およびそれらの時間との交互作用が含まれた。
    <結果>
     うつ病の既往を調整すると、より高いPiB結合は経時的なGDSスコアのより高い増加率を予測した。うつ病の既往とAMNARTスコアと時間の交互作用を調整すると、より高いPiB結合はまた、不安・集中困難スコアのより急峻な増加率を予測した。集中困難の項目を除いた不安スコアを推定する事後モデルにおいて、PiB結合と時間の交互作用は依然として有意であった。
    <結論>
     より高いアミロイドβ負荷は、認知的に正常な高齢者の経時的な不安・抑うつ症状の増加と関連する。先立つうつ病の既往は、より高い症状評点と関係するが経時的悪化とは関係しない。これらの結果は、上昇したアミロイドβレベルと不安・抑うつ症状の悪化の直接的および間接的関連を示唆し、発現している神経精神症状が前臨床的アルツハイマー病の早期徴候を表しているとする仮説を支持する。

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ホルモンによる避妊とうつ病の関連
    Skovlund CW et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 1154-1162.
    Association of Hormonal Contraception With Depression.

    キーポイント:
    <疑問>
     ホルモン避妊の利用はうつ病の治療と関連するか?
    <結果>
     デンマークに住む100万人を超える女性の全国前向きコホート研究において、抗うつ薬の初めての使用とうつ病の初めての診断のリスクの増加が、様々なタイプのホルモン避妊の利用者に見出され、その率は青年で最も高かった。
    <意義>
     健康管理の専門家は、これまで比較的知られていなかったこのホルモンによる避妊の有害作用に注意すべきである

    論文要約:
    <重要性>
     世界中の数百万人の女性がホルモンによる避妊を利用している。一部の女性の気分に対するホルモン避妊の影響の臨床的証拠があるにも関わらず、ホルモン避妊の使用と気分変調の関連は不適切に取り組まれたままである。
    <目的>
     ホルモン避妊の利用が、後の抗うつ薬使用と精神科病院におけるうつ病診断と正の関連を持つか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この全国前向きコホート研究では、デンマークにおける国民処方登録(the National Prescription Register)と精神疾患中央研究登録(the Psychiatric Central Research Register)のデータを結合した。デンマークに住む15歳から34歳のすべての成人と青年の女性が、うつ病の既往、抗うつ薬処方への支払い、他の主要な精神科診断、癌、静脈血栓、または不妊治療の有無について、2000年1月1日から2013年12月まで追跡された。データは1995年1月1日から2013年12月31日に収集され、2015年1月1日から2016年4月1日まで分析された。
    <曝露>
     ホルモンによる様々な様式の避妊法の使用
    <主要評価項目>
     時間的に変化する共変量を用いて調整された発生率比(incidence rate ratios、RRs)が、初めての抗うつ薬使用と精神科病院における初めてのうつ病診断について計算された。
    <結果>
     全部で106万1,997人の女性(平均 [標準偏差] 年齢、24.4 [0.001] 歳; 平均 [標準偏差] 追跡期間, 6.4 [0.004] 年)が分析に含まれた。未使用者との比較において、すべてを含めた経口避妊薬の使用者の初めての抗うつ薬使用のRRは1.23(95% 信頼区間, 1.22-1.25)であった。プロゲステロンのみを含む経口避妊薬の使用者の初めての抗うつ薬使用のRRは1.34(95% 信頼区間, 1.27-1.40)、ノルエルゲストロミン(norgestrolmin)避妊パッチの使用者では2.0(95% 信頼区間, 1.76-2.18)、膣リングの使用者では1.6(95% 信頼区間, 1.55-1.69)、そしてレボルエルゲストロミン(levonorgestrolmin)子宮内避妊システムの使用者では1.4(95% 信頼区間, 1.31-1.42)であった。うつ病診断についてはほぼ同じか若干低い推定値が見いだされた。相対リスクは年齢が高くなるに従い概ね低下した。
     すべてを含めた経口避妊薬を用いた青年(年齢範囲:15から19歳)の初めての抗うつ薬使用のRRは1.8(95% 信頼区間, 1.75-1.84)、プロゲステロンのみを含む経口避妊薬を用いた青年では2.2(95% 信頼区間, 1.99-2.52)であった。
     ホルモン避妊の使用開始後6カ月に、初めての抗うつ薬使用のRRは最高1.4(95% 信頼区間, 1.34-1.46)となった。対照群をホルモン避妊未経験者に変更した場合、すべてを含めた経口避妊薬使用者の推定RRは1.7(95% 信頼区間, 1.66-1.71)に上昇した。
    <結論と関連性>
     特に青年におけるホルモン避妊の利用は後の抗うつ薬の使用と初めてのうつ病診断に関連し、これはホルモン避妊利用の潜在的有害作用としてのうつ病を示唆する。

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ホルモンによる避妊と自殺企図および自殺の関連
    Skovlund CW et al. Am J Psychiatry, published online: November 17, 2017.
    Association of Hormonal Contraception With Suicide Attempts and Suicides.

    論文要約:
    <目的>
     この研究の目的は、ホルモン避妊の利用者における自殺企図と自殺の相対リスクを評価することであった。
    <方法>
     著者らは、15歳前に精神疾患の診断、抗うつ薬の使用、またはホルモン避妊の使用がなく、1996年から2013年にわたる研究期間中に15歳になったデンマークのすべての女性の全国前向きコホート研究において、ホルモン避妊の利用と自殺企図および自殺の関連を評価した。全国登録から、ホルモン避妊の利用、自殺企図、自殺、および潜在的交絡変数について個別に更新された情報が提供された。研究期間中の精神疾患の診断または抗うつ薬使用は、ホルモン避妊の利用と自殺企図の間の潜在的介在因子であると考えられた。ホルモン避妊未経験者と比較した場合の、ホルモン避妊使用者の自殺企図と自殺の調整済ハザード比が推定された。
    <結果>
     50万人に及ぶ女性(平均年齢21歳)が平均8.3年追跡され(390万人年)、6,999件の初めての自殺企図と71件の自殺が特定された。ホルモン避妊の利用経験がない女性と比較した場合、現在および最近の使用者の相対リスクは自殺企図については1.97(95% 信頼区間=1.85–2.10)、自殺については3.08(95% 信頼区間=1.34–7.08)であった。
     自殺企図の推定リスクは、すべてを含めた経口避妊薬については1.91(95% 信頼区間=1.79–2.03)、プロゲステロンのみを含む経口避妊薬については2.29(95% 信頼区間=1.77–2.95)、膣リングについては2.58(95% 信頼区間=2.06–3.22)、避妊パッチについては3.28(95% 信頼区間=2.08–5.16)であった。ホルモン避妊薬の使用と初めての自殺企図の関連は、使用2カ月で最高となった。
    <結論>
     ホルモン避妊の利用は後の自殺企図および自殺と正の関連を持ち、青年期の女性は最も高い相対リスクを有する。

    コメント:2016年に同じ著者らは「ホルモンによる避妊とうつ病の関連」(Skovlund CW et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 1154-1162)を報告しています。

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注意欠如・多動症(ADHD)の症状次元の因子構造
    Parke EM et al. Psychol Assess 2015; 27: 1427-37.
    Factor structure of symptom dimensions in attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD).

    論文要約:
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)症状が、不注意と多動性/衝動性の2次元と、多動性と衝動性が分離した3次元のどちらで最もうまく特徴付けられるかについては合意がない。この問題に対処するために、本研究はADHDを持つ400人の子供および青年においてADHD症状評価の2因子モデルと3因子モデルを調べることで、背景にあるADHDの症状次元を解明した。
     18項目から成るDSM-IVの基準Aの各々に対する ADHD症状評価が、標準化された症状評価尺度を用いて母親から得られた。2つまたは3つの潜在構造のどちらが18症状を最もうまく説明するかを調べるために、確認的因子分析(confirmatory factor analysis、CFA)が使用された。
     CFAの結果は、2因子モデルより3因子モデルが優れていることを示し、不注意、多動性、衝動性の固有の臨床表現型を表す以前の研究と一致する明確な3症状次元を支持する。これら3領域を識別することは、ADHDを持つ子供の行動アウトカムの予測に役立つかもしれない。

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青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(START):実践的ランダム化比較・優越性試験
    Peter Fonagy et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 119–133.
    Multisystemic therapy versus management as usual in the treatment of adolescent antisocial behaviour (START): a pragmatic, randomised controlled, superiority trial

    論文要約:
    <背景>
     青年の反社会的行動(antisocial behaviour)は重大な健康および社会問題である。米国における研究は、多重システム療法(multisystemic therapy)がそのような行動とこのグループによる刑事犯罪数を減らすことが示された。しかし、米国以外での結果は曖昧である。我々は、青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(management as usual)の有効性と費用対効果を評価することを目的とした。
    <方法>
     我々はイングランドで18カ月の多施設共同・実践的ランダム化比較・優越性試験を行った。適格とされた中等度から重度の反社会的行動を示す11歳から17歳の参加者は、複数の状況における過去の困難を示す少なくとも3つの重症度基準と、反社会的行動に関する5つの全般的選択基準の一つを満たした。治療施設、性別、研究登録時の年齢、および反社会的行動が出現した年齢で層別化して、家族を従来の管理法(management as usual、MAU)または3から5カ月の多重システム療法+その後のMAUのいずれかに、確率的最小化法(stochastic minimisation)を用いて均等(1:1)に無作為割り付けした。研究助手と研究者は治療割り付けについて隠蔽されたが、参加者に隠蔽することはできなかった。主要評価項目は18カ月時点のout-of-home placement(訳注:法律用語で家庭外での生活とケア)であった。一次解析には、そのデータが利用可能な無作為割り付けされた全参加者が含まれた。この試験は登録済で(ISRCTN77132214)、試験の追跡は今も進行中である。
    <結果>
     2010年2月4日から2012年9月1日に1,076家族が9つの複数機関の委員会に照会され、そのうち684家族がMAU(n=342)または多重システム療法+その後のMAU(n=342)に割り付けられた。18カ月の時点で、out-of-home placementにある参加者の割合はグループ間で有意な差はなかった(多重システム療法群、13% [43/340];MAU群、11% [36/335];オッズ比 1.25、95% 信頼区間 0.77–2.05;p=0.37)。
    <解釈>
     結果は、多重システム療法が従来の管理法に勝る、中等度から重度の反社会的行動を示す青年に最適な介入法として使用されることを支持しない。
    <資金>
     Department for Children, Schools and Families, Department of Health.

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持続性かつ重度の産後うつ病と子供のアウトカムの関連
    Elena Netsi et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Association of Persistent and Severe Postnatal Depression With Child Outcomes

    キーポイント:
    <疑問>
     持続性と重症度のレベルが異なる産後うつ病と、長期的な子供のアウトカムとの関連はどのようなものか?
    <結果>
     この様々なレベルの産後うつ病を持つ9,848人の女性と8,287人の子供の観察研究において、持続性ではないが強度が中等度または高度である産後うつ病に罹患した女性の子供と比較して、持続性で重度の産後うつ病に罹患した女性の子供は、3歳半までの行動上の問題、および青年期における数学の成績不良とうつ病のリスクが高かった。さらに、持続性の産後うつ病に罹患した女性は、少なくとも出産後11年までに、重大な抑うつ症状を体験しやすかった。
    <意義>
     高レベルの抑うつ症状を体験し続ける傾向があること、子供の発達が不良となるリスクが高いことから、持続性で重度の産後うつ病を持つ女性の治療が優先されるべきである。
    論文要約:
    <重要性>
     母親の産後うつ病(postnatal depression、PND)はよくある疾患で、有害な子供のアウトカムと関連する。これらの効果は不可避であるが、最も高リスクな人を特定することが重要である。先行研究は有害なアウトカムはPNDが重度で持続性である場合に増加することを示唆しているが、これを体系的に調べた研究はない。
    <目的>
     持続性と重症度のレベルが異なるPNDと、長期的な子供のアウトカムの関連を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この観察研究のサンプルは、英国におけるエイボン州(Avon)親子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children)の参加者から構成された。PNDの重症度の3つの閾値―中等度(moderate)・高度(marked)・重度(severe)は、自己評価式のエジンバラ産後うつ病評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale、EPDS)を用いて定義された。EPDSスコアが出生後の2カ月および8か月において閾値を超えている場合に、うつ病は持続性(persistent)であると定義された。
     これら重症度と持続性の各分類について、次のことが調べられた:1)その後のEPDSスコアの推移(出産後21カ月から11年の間の6時点)、2)子供のアウトカム―3.5歳時の行動上の問題、16歳時(卒業時)の数学の成績、および18歳時のうつ病。データ解析は2016年7月12日から2017年2月8日に行われた。
    <主要評価項目>
     ラター総合的問題尺度(the Rutter total problems scale)を用いて評価された3.5歳時の子供の行動上の問題、校外の全国公開試験の記録から抽出された16歳時(卒業時)の数学の成績、および臨床面接スケジュール改訂版(the Clinical Interview Schedule–Revised)を用いて診断された18歳時の子供のうつ病。
    <結果>
     サンプル中の9,848人の母親について、出産時の平均(標準偏差)年齢は28.5(4.7)歳であった。8,287人の子供のうち4,227人(51%)が男子、4,060人(49%)が女子であった。
     3つのすべての重症度レベルについて、持続性でないPNDを持つ女性、およびEPDS閾値を超えるスコアを持たない女性と比較して、持続性PNDを持つ女性は出産後11年まで抑うつ症状の上昇を示した。持続性の有無に関係なく、PNDは子供の行動障害のリスクを倍にした。子供の行動障害のオッズ比(OR)は、中等度のPNDでは2.22(95% CI, 1.74-2.83)、高度のPNDでは1.91(95% CI, 1.36-2.68)、重度のPNDでは2.39(95% CI, 1.78-3.22)であった。重度のPNDの持続が子供の発達にとって特に重要であり、3.5歳時の行動上の問題(OR, 4.84; 95% CI, 2.94-7.98)、16歳時の数学の低成績(OR, 2.65; 95% CI, 1.26-5.57)、および18歳時のうつ病の高い有病率(OR, 7.44; 95% CI, 2.89-19.11)のリスクを相当増加させた。
    <結論と関連性>
     持続性かつ重度のPNDは子供のすべての測定に関して、有害なアウトカムのリスクを上昇させる。出産後早期と後期の両方でうつ病の基準を満たすことは、特に気分障害が重度である場合、持続する傾向がある複数の有害な子供のアウトカムのリスク上昇と関連するうつ病に対するヘルス・ケア専門家への警告となる。このグループに対する治療を優先すべきである。

    コメント:このような持続する産後うつ病に対しては、次の介入研究が最近発表されています:『うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する』(Alan Stein et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 134–144)。

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うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する
    Alan Stein et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 134–144.
    Mitigating the effect of persistent postnatal depression on child outcomes through an intervention to treat depression and improve parenting: a randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     母親の産後うつ病は出産の10から15%に引き続いて起こり、子供の広範囲な否定的アウトカムと関連する。子供のリスクは産後うつ病が持続する場合に特に増加する。我々は、養育についてのビデオ・フィードバック療法(video-feedback therapy、VFT)+産後うつ病に対する認知行動療法(cognitive behavioural therapy、CBT)による介入と、対照治療としての漸進的筋弛緩法(rogressive muscle relaxation、PMR)+同じCBTが、2歳時の子供のアウトカムを改善するかどうか調べることを目的とした。
    <方法>
     この2並行群デザインの個別にランダム化された比較試験において、我々はオックスフォード(英国)から50マイル以内に住む産後4.5から9カ月の18歳以上の女性から構成される地域住民サンプルを募集した参加者は全員、現在まで少なくとも3か月間は続いているうつ病の診断基準を満たし、妊娠35週以降に生まれた重大な新生児合併症のない出生体重2,000グラム以上の新生児を持っていた。中央サービスを通して、女性はVFTまたはPMRのいずれかに、子供の性別、気質、年齢、社会経済的地位、およびうつ病の重症度のバランスを取りつつ、最小化アルゴリズムを使って無作為に割り付けられた。両群ともうつ病に対するCBTを受けた。
     主要評価項目は、2歳時における子供の認知発達、言語発達、行動上の問題、およびアタッチメント形成であった。子供が1歳に満たない時期には11回の在宅治療セッションがあり、2年目には2回の追加セッションが加わった。評価者は治療の群分けに対して隠蔽され、全ての解析はintention-to-treat(ITT)の原則に従って行われた。この試験はISRCTN registry(ISRCTN07336477)に登録されている。
    <結果>
     2011年3月18日から2013年12月9日に、我々は144人の女性を無作為に各群72人に割り付けた。主要評価項目データは、62から64人(86から89%)のVFT参加者、および67から68(93から94%)のPMR参加者について利用可能であった。
     子供のアウトカムに群間差はなく(認知発達、調整後の差 −1.01 [95% CI −5.11 to 3.09]、p=0.63;言語発達、1.33 [–4.16 to 6.82]、p=0.63;行動上の問題、−1.77 [–4.39 to 0.85]、p=0.19;アタッチメント形成、0.02 [–0.06 to 0.10]、p=0.58)、両群とも全評価項目について非臨床的標準値に近い得点を達成した。6つの重大な有害事象、すなわちVFT群で5つ(2名の参加者において)、PMR群で1つ発生したが、治療とは無関係であった。
    <解釈>
     持続する産後うつ病の子に対する影響は重大な公衆衛生上の問題であるが、両方の治療群についてうつ病からの継続的寛解を認め、子供の発達アウトカムは正常範囲にあった。観察された子供への肯定的アウトカムを説明する正確な機序を、この研究から確定することはできない。
    <資金>
     Wellcome Trust

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英国のプライマリー・ケアにおいて重篤な精神疾患を持つ人のコレステロールと心血管系リスクを軽減する介入の臨床的有効性と費用対効果:クラスターランダム化比較試験
    David Osborn et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 145–154.
    Clinical and cost-effectiveness of an intervention for reducing cholesterol and cardiovascular risk for people with severe mental illness in English primary care: a cluster randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     精神病を含む重篤な精神疾患を持つ人は、心血管疾患のリスクが高い。我々は重篤な精神疾患を持つ人々において、総コレステロール濃度と心血管疾患リスクの低下に対するプライマリー・ケアでの介入の効果を評価することを目的とした。
    <方法>
     我々はこのクラスターランダム化試験を、一般診療をクラスター単位として、イングランドの一般診療において行った。我々は4つのブロックサイズを持つコンピュータ生成のランダム系列を用いて、一般診療に重篤な精神疾患を持つ40人以上の患者を、1:1の比で無作為に割り付けた。治療割り付けは研究者に対しては隠蔽されたが、患者と一般診療スタッフには隠蔽されなかった。コレステロール(CHO)値が高い(5.0 mmol/L)、または総CHO/HDLコレステロール比が4.0 mmol/Lである、あるいは1つ以上の修正可能な心血管疾患のリスク因子を有する重篤な精神疾患(統合失調症、双極性障害、または精神病)をもつ30歳から75歳の参加者を含めた。適格な参加者は、無作為化前に各診療所で募集された。
     Primrose介入は訓練を受けたプライマリー・ケアの専門家による、心血管疾患予防についてのマニュアル化された介入(言い換えれば、スタチンの継続、食事または身体活動レベルの改善、節酒、または禁煙)を含む(12回以下の)受診から構成された。従来の治療(treatment as usual、TAU)には、スクリーニング結果のフィードバックのみを含めた。主要評価項目を12カ月時の総コレステロール値、主要経済分析項目を医療費として、intention-to-treat解析を用いた。試験はCurrent Controlled Trialsに登録されている(ISRCTN13762819)。
    <結果>
     我々は2013年12月10日から2015年9月30日に一般診療所を募集し、2014年5月9日から2016年2月10日に参加者を募集して、76の一般診療所と327人の参加者をPrimrose介入(一般診療所、38;患者、155)または従来の治療(treatment as usual、TAU;一般診療所、38;患者、172)に無作為に割り付けた。12カ月時の総コレステロール値データは、Primrose介入群においては参加者137人(88%)、TAU群においては参加者152人(88%)について利用可能であった。12カ月時の平均総コレステロール値は両群で違いがなかった(Primrose介入群、5.4 mmol/L [SD 1.1];TAU群、5.5 mmol/L [1.1];平均差、0.03 [95% CI −0.22 to 0.29];p=0.788)。この結果は事前に決められた支持分析(pre-agreed supportive analyses)で変わらなかった。
     平均コレステロール値は12か月間で減少し(Primrose群、−0.22 mmol/L [1.1];TAU群、−0.36 mmol/L [1.1])、全医療費(Primrose群、£1286 [SE 178];TAU群、£2182 [328];平均差、−£895 [95% CI −1631 to −160];p=0.012)と精神科入院費(Primrose群、£157 [135];TAU群、£956 [313]; 平均差、−£799 [95% CI −1480 to −117];p=0.018)は、TAU群よりPrimrose介入群の方が少なかった。6件の重大な有害事象(病院への入院)と1人の死亡がPrimrose群(n=7)に、3人の死亡を含む23件の重大な有害事象がTAU群(n=18)に発生した。
    <解釈>
     12カ月時の総コレステロール値は、Primrose群とTAU群で違いはなかった。おそらく、クラスターデザイン、TAU群での良いケア、短期の介入、またはスタチン処方の最適化が理由と思われる。Primrose介入とより少ない精神科入院の関連は、潜在的な費用対効果として重要かもしれない。
    <資金>
     National Institute of Health Research Programme Grants for Applied Research.

    コメント:クラスターランダム化比較試験とは無作為割り付けを個人単位ではなく、施設や地域といったより上位の単位で行う試験のことです(cluster randomized controlled trial、cRCT)。

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青年および若年成人における精神病性障害の初回診断後の死亡率
    Simon GE et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Mortality Rates After the First Diagnosis of Psychotic Disorder in Adolescents and Young Adults.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病性障害の初回診断後の死亡リスクはどの程度増加するのか?
    <結果>
     精神病性障害の初回診断を持つ16歳から30歳の人(n=11,713)からなる住民ベースのコホート研究において、全死亡率は10,000人あたり54.6人であったのに対して、保健医療制度の外来患者のそれは10,000人あたり6.7人であった。外傷と中毒が、精神病性障害を持つ患者における全死亡の半分を説明した。
    <意義>
     精神病性障害の初回診断後の3年間は、外傷と中毒による自殺と他の死亡の高リスク期間である可能性がある。

    論文要旨:
    <重要性>
     精神病性障害を持つ人は死亡率が高く、最近の研究は診断直後の著明な増加を示唆する。
    <目的>
     精神病性障害の初回診断後の全死亡率と原因別死亡率を調べるために、住民ベースのデータを利用する。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、5つの州の800万人以上を担当する5つの統括保健医療制度からの記録を利用した。2009年9月30日から2015年9月30日に精神病性障害の初回生涯診断を受けた16歳から30歳の人と、年齢、性別、健康保険制度、および診断年を一致させた2つの対照群は、外来受診をした全員(一般外来群)と、単極うつ病の初回診断を受けた全員(単極うつ病群)から選ばれた。
    <曝露>
     外来患者、救急部、入院設定のいずれでも良い統合失調症、統合失調感情障害、精神病症状を持つ気分障害、または他の精神病性障害の初回記録診断。
    <主要評価項目>
     インデックス診断または受診日から3年以内の死亡(健康保険制度の電子健康記録によって確認済)、保険金請求、および州の死亡率記録。
    <結果>
     精神病性障害の初回診断を受けた全11,713人(男性、6,976人 [59.6%];女性、4,737人 [40.4%];16-17歳、2,368人 [20.2%]、18-30歳、9,345人 [79.8%])は、35,576人の外来診療利用者、および単極うつ病の初回診断を受けた23,415人とマッチされた。
     初回診断後の年の間、あらゆる理由による死亡率は精神病性障害群では1万人あたり54.6(95% CI, 41.3-68.0)であったのに対して、単極うつ病群では1万人あたり20.5人(95% CI, 14.7-26.3)、一般外来群では1万人あたり6.7人(95% CI, 4.0-9.4)であった。人種、民族、および慢性身体疾患の既往で調整後、一般外来群と比較した精神病性障害群の死亡の相対ハザードは、自傷行為による外傷または中毒については34.93(95% CI, 8.19-149.10)、他の型の外傷または中毒については4.67(95% CI, 2.01-10.86)であった。心疾患または糖尿病による死亡のリスクは、精神病性障害と一般外来群で有意差なかつた(ハザード比、0.78;95% CI、0.15-3.96)。
     診断後1年目と3年目の間に、精神病性障害群のあらゆる理由による死亡率は1万人あたり54.6から27.1に、外傷と中毒による死亡率は1万人あたり30.6人から15.1人に減少した。しかし、どちらの率も一般外来群(あらゆる理由については1万人あたり9.0人、外傷と中毒については1万人あたり4.8人)より3倍高い状態を維持した。
    <結論と関連性>
     早期死亡率の増加は、初発精神病を体験している若者への系統的介入の重要性を強調する。臨床医は精神病性障害の初回診断後の自殺リスクの上昇に注意すべきである。

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精神病スペクトラムの幼年期から成人前期の認知発達経過
    Josephine Mollon et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Course of Cognitive Development From Infancy to Early Adulthood in the Psychosis Spectrum.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病性障害、精神病体験、およびうつ病を持つ人の幼児期から成人前期の認知機能の経過はどのようなものか?
    <結果>
     4,322人の参加者を含む、18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳の時の認知機能に関するこの縦断的出生コホートにおいて、精神病性障害を持つ人はIQの低下が大きく進行性であり、作業記憶といった特定の認知機能における発達上の成長が遅延していることが示された。
    <意義>
     精神病性障害の起源には力動的発達過程が関与する。それは広範な認知機能に影響を及ぼし、生涯の最初の20年間に絶え間なく増加する機能不全を引き起こす。

    論文要旨:
    <重要性>
     精神病性障害を持つ大抵の患者は重度の認知障害を経験するが、この生涯の発症と経過は依然として不明確である。さらに、他の精神疾患における認知機能の経過のほとんどは調べられていない。
    <目的>
     精神病性障害、精神病体験、およびうつ病を有する人における全般的および特定の認知機能の経過を追跡し記録すること。
    <設計・設定・参加者>
     エイボン親と子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children、ALSPAC)は、イングランドのエイボン州における1991年4月1日から1992年12月31日までの全生児出生から構成される前向きコホート研究である。解析は2015年9月から2016年7月に行われた。18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳時の認知検査、および18歳時の精神医学的評価を受けた参加者が含まれた。
    <主要評価項目>
     精神病性障害、うつ病を伴う精神病、精神病体験、およびうつ病を有する人が対照と比較された。評価項目は18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳時の全検査IQ、言語性IQ、非言語性IQ、および8歳と20歳時の処理速度、作業記憶、言語、視空間能力、注意の測定であった。
    <結果>
     次に述べる人数が、この縦断的出生コホート研究の分析に利用可能であった:511人 (男性238人 [46.6%])、18カ月時 (平均 [標準偏差] 年齢, 1.53 [0.03] 歳);483人 (男性229人 [47.4%]) 、4歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 4.07 [0.03] 歳);3,930人 (男性1679人 [42.7%])、8歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 8.65 [0.29] 歳);3,783人 (男性1686人 [44.6%])、15歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 15.45 [0.27] 歳);257人 (男性90人 [35.0%])、20歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 20.06 [0.55] 歳)。
     精神病性障害を持つ人は、幼児期(18カ月)から成人期(20歳)の間に継続的に増加する全検査IQ(変化の効果量 [ESΔ] = −1.09, P = .02)、および非言語性IQ(ESΔ = −0.94, P = .008)の欠陥を示した。うつ病群は、幼児期から成人期の間に小さいながら増加する非言語性IQ(ESΔ = −0.29, P = .04)の欠陥を示した。
     精神病性障害群は、8歳と20歳の間に処理速度(ESΔ = −0.68, P = .001)、作業記憶(ESΔ = −0.59, P = .004)、および注意(ESΔ = −0.44, P = .001)の測定の発達遅延(より遅い成長)を示し、言語(ES = −0.87, P = .005)と視空間能力(ES = −0.90, P = .001)の測定の遅延は大きく固定的であった。一方、うつ病を伴う精神病、および精神病体験群における認知欠損については、弱いエビデンスしかなかった。
    <結論と関連性>
     この点において結果は、「精神病性障害の起源には力動的発達過程が関与し、それは言語的・非言語的能力に影響を及ぼし、生涯の最初の20年間に絶え間なく増加する機能不全を引き起こす」ことを示す。これら発達過程は、うつ病を伴う精神病やうつ病といった他の精神疾患では現れない。

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アルツハイマー病のための高性能血漿アミロイドβバイオマーカー
    Akinori Nakamura et al. Nature, published online: January 31, 2018.
    High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer’s disease.

    論文要約:
     アルツハイマー病の病態修飾療法(disease-modifying therapies)は、疾患の最も早期かつ軽症な段階において最大の有効性が期待されることから、その臨床試験を促進するためには補助となるバイオマーカーの情報が必要である。アルツハイマー病の最初期の病理学的特徴である脳内アミロイドβの蓄積を同定するための唯一妥当性が確認された方法は、アミロイドβの陽電子放出断層撮影法(amyloid-β positron-emission tomography、PET)、または脳脊髄液中のアミロイドβの測定である。したがって、侵襲性が最小で費用対効果が高い血液を用いるバイオマーカーが望まれる。多大な努力にも関わらず、我々の知る限り血液を用いるアミロイドβマーカーの臨床的有用性の妥当性を検討した研究はない。
     ここに我々は、質量分析法(mass spectroscopy、訳注:その開発により田中耕一氏が2002年のノーベル化学賞を受賞)と免疫沈降法の併用による高性能血漿アミロイドβバイオマーカーの測定を明示する。アミロイドβ前駆タンパク(APP)669–711とアミロイドβ(Aβ)1–42の比、Aβ1–40とAβ1–42の比、およびそれらの合成の、個人における脳アミロイドβの陽性または陰性状態を予測する能力がアミロイドβ-PET画像によって確定され、2つの独立データセット、すなわち発見用データセット(discovery:日本、n = 121)、および妥当性データセット(validation:オーストラリア、n = 252:炭素11でラベルされたピッツバーグ化合物-B (PIB)-PETを用いて診断された111人と、他の放射性リガンドを用いて診断された141人)を用いて検証された。両データセットには、認知的に正常な人、軽度認知障害の人、そしてアルツハイマー病を持つ人が含まれた。
     すべてのテストバイオマーカーは、脳アミロイドβの蓄積を予測する上で高い性能を示した。特に合成バイオマーカーは、両データセットにおいて非常に高い受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic、ROC)曲線(Area Under Curve、AUC)を示し(discovery:96.7%、n = 121; validation:94.1%、n = 111)、PIB-PETを真理基準として用いた場合の正確度はほとんど90%に等しかった。さらに、テストバイオマーカーはPETのアミロイドβ蓄積、および脳脊髄液のAβ1–42レベルと相関した。
     この結果は、個人レベルでの脳アミロイドβの蓄積を予測する点で、血漿バイオマーカーの潜在的な臨床的有用性を示す。これら合成バイオマーカーはまた、現行の技術を凌ぐ費用便益と拡張性を有しており、より広範な臨床利用と効率的な集団スクリーニングを実現する可能性を秘めている。

    コメント:テレビ報道され話題になりましたが、血液で診断可能なら本当に素晴らしいです。

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可溶性γセクレターゼ修飾薬は、アルツハイマー病のβアミロイド病理を減弱させ、プレセニリン1の立体構造変化を誘導する
    Raven F et al. EBioMedicine 2017; 24: 93-101.
    Soluble Gamma-secretase Modulators Attenuate Alzheimer's β-amyloid Pathology and Induce Conformational Changes in Presenilin 1.

    論文要約:
     アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)における中核的病因事象は、アミロイドβ42(Aβ42)ペプチドの蓄積であり、βおよびγセクレターゼによってアミロイドβ前駆タンパク(amyloid-β precursor protein、APP)から切り出されることでそれは生成される。我々はAβ42レベルを優先的に減少させる一種の可溶性2-アミノチアゾールγセクレターゼ修飾薬(2-aminothiazole γ-secretase modulators、SGSMs)を開発したが、家族性AD(familial AD、FAD)変異を発現しているAD動物と細胞におけるSGSMsの効果、およびγセクレターゼ修飾の機序はほとんど不明のままであった。
     この点について、FAD変異を発現している動物と細胞を用いてSGSMの代表的スキャフォールド(scaffold:足場)の一つSGSM-36を調べた。SGSM-36はαおよびβセクレターゼのAPPプロセシングにも、Notchプロセシングにも影響を与えることなく、Aβ42レベルを優先的に減少させた。さらに細胞ベースの蛍光寿命イメージング(Fluorescence Lifetime Imaging)顕微鏡分析を用いることで、γセクレターゼ複合体内にSGSM-36の接近を可能とするアロステリック部位を特定した。まとめると、本研究結果はこの種のSGSMsの機序について洞察を提供して、そのAD治療に対する潜在能力を強化する。

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イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、地域社会での非致死的自傷の発生率(自傷の氷山モデル)の後方視的研究
    Galit Geulayov et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 167–174.
    Incidence of suicide, hospital-presenting non-fatal self-harm, and community-occurring non-fatal self-harm in adolescents in England (the iceberg model of self-harm): a retrospective study.

    論文要約:
    <背景>
     若者の致死的および非致死的自傷の相対的発生率については、ほとんど知られていない。我々は、イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、および地域社会での非致死的自傷の発生率を推定した。
    <方法>
     イングランドにおける12~17歳の青年の致死的および非致死的自傷の10万人年あたりの発生率を推定するために、我々は国民死亡統計(2011年1月1日から2013年12月31日)、イングランドにおける自傷の多施設共同研究に由来する5病院の病院監視データ(2011年1月1日から2013年12月31日)、および学校調査からのデータ(2015年)を利用した。また、これら発生率を自傷の氷山モデル(the iceberg model of self-harm)の観点から記述した。
    <結果>
     2011年から2013年に、12~17歳の171人の青年(男性が119人 [70%]、15~17歳が133人 [78%])がイングランドにおいて自殺により死亡し、1320人の青年(女性が1028人[78%]、15~17歳が977人[74%])が非致死的自傷の後に研究病院を受診した。2015年に調査を受けた5,506人の青年のうち、322人(6%)が過去1年の自傷を報告した。 12~14歳においては、自殺によって死亡した全男子について、109人が自傷後に入院し、3,067人が地域社会での自傷を報告した。一方、自殺によって死亡した全女子について、1,255人が自傷後に入院し、21,995人が地域社会での自傷を報告した。
     15~17歳においては、男性の全自殺について、120人の男性が自傷のために病院を受診し、838人が地域社会で自傷した。一方、女性の全自殺について、919人の女性が自傷のために病院を受診し、6,406人が地域社会で自傷した。絞首または窒息が最もよくある自殺の方法で(171のうち125 [73%])、自己服用による中毒(self-poisoning)が自傷後の病院受診の主たる理由であり(1195のうち849 [71%])、自分を切りつけること(self-cutting)が地域社会での自傷の主たる方法であった(322のうち286 [89%])。
    <解釈>
     非致死的自傷に対する致死的自傷の比は、男性と女性の間、および12~14歳の青年と15~17歳の青年の間で異なり、特に地域社会における自傷を報告する女性の数が多かった。我々の結果は、青年について十分な資源を持つ地域社会、病院ベースの精神保健サービス、および学校ベースの予防に対するより多くの投資の必要性を明示している。
    <資金>
     英国保健省

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アルコール使用障害について、その配偶者間の類似性の起源
    Kendler KS et al. JAMA Psychiatry, published online February 7, 2018.
    The Origin of Spousal Resemblance for Alcohol Use Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     アルコール使用障害について、そのリスクを配偶者間で類似させる要因は何か?
    <結果>
     この住民ベースの登録研究において、既婚者におけるアルコール使用障害の初回発症リスクの増加は、その配偶者のアルコール使用障害の発症後に大きく、かつ急速であった。アルコール使用障害を持つ、または持たない一連の配偶者と結婚した人(その順序は問わない)のアルコール使用障害のリスクは、配偶者にアルコール使用障害の登録がある場合は顕著に増加し、配偶者にアルコール使用障害の登録がない場合は減少した。
    <意義>
     既婚者のアルコール使用障害のリスクは、その配偶者のアルコール使用障害の存在に直接的かつ因果的に影響を受ける傾向がある。

    論文要約:
    <重要性>
     アルコール使用障害(alcohol use disorder、AUD)のリスクについて配偶者は互いによく似るが、この関連の原因はいまだ不明である。
    <目的>
     最初の結婚においては、片方の配偶者における初めてのAUD登録とそのパートナーの登録リスクの関連を縦断的に調査し、複数回の結婚をした人では、AUDを持つ配偶者から持たない配偶者への移行(またはその反対への移行)の際のAUD登録リスクの変化を探索すること。
    <設計・設定・参加者>
     1960年~1990年の間にスウェーデンに生まれ、研究追跡期間の終了までに結婚していた人を特定するために、スウェーデンの全住民登録が使用された。本研究には、最初の結婚前にAUDの登録履歴はないが、結婚中に配偶者の1人にAUDの登録履歴を認める8,562人の既婚ペアと、最初の配偶者にはAUD登録がないが、2人目の配偶者にはAUD登録がある、あるいはその反対の複数回の結婚をした4,891人が含まれた。最終統計解析は2017年8月15日から9月1日に行われた。
    <曝露>
     配偶者のAUD登録の発生、または履歴。
    <主要評価項目>
     国民医療、犯罪、調剤登録制度におけるアルコール使用障害の登録。
    <結果>
     8,562の初婚ペア(5,883人の女性発端者と2,679人の男性発端者; 結婚時の平均 [標準偏差] 年齢, 29.2 [5.7] 歳)において、妻のAUD登録のハザード比は、その夫の最初のAUD登録の直後は13.82であったが、2年後には3.75に低下した。夫のAUD登録のハザード比は、その妻の最初のAUD登録後は9.21であったが、2年後には3.09に低下した。
     複数回の結婚をした4,891人(1,439人の女性と3,452人の男性; 最初の結婚の平均 [標準偏差] 年齢, 25.5 [4.2] 歳)において、AUDを持つ配偶者との最初の結婚からAUDを持たない配偶者との二度目の結婚へ移行した人のAUD登録のハザード比は、女性で0.50(95% CI, 0.42-0.59)、男性で0.51(95% CI, 0.44-0.59)であった。AUDを持たない配偶者との最初の結婚後、AUDを持つ配偶者と二度目の結婚をした場合のAUDのハザード比は、女性で7.02(95% CI, 5.34-9.23)、男性で9.06(95% CI, 7.55-10.86)であった。
     二度目から三度目の結婚に移行した場合は、これらのパターンは若干弱められた。最初の結婚前の、または最初の結婚と二番目の結婚の間のAUD登録で調整すると、リスクの変化は最小となった。
    <結論と関連性>
     配偶者の最初のAUD登録に引き続く結婚相手のAUD登録リスクの上昇は、大きく、かつ迅速であった。AUD登録を持つか持たない一連の配偶者との結婚では、その順番はどうであれ、結婚相手にAUD登録が有るときは相当上昇し、AUD登録が無いときは低下した。これらの結果は、既婚者のAUDのリスクは、その配偶者のAUDの存在に直接的かつ因果的に影響を受けることを示唆する。

    コメント:アルコール使用障害のリスクに関して、夫婦間にこのような現象があるなんて知りませんでした。

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妊娠中のメチルフェニデートとアンフェタミンの使用と先天性奇形の関連:妊娠と安全性に関する国際研究コンソーシアムからのコホート研究
    Huybrechts KF et al. JAMA Psychiatry 2018; 75: 167-175.
    Association Between Methylphenidate and Amphetamine Use in Pregnancy and Risk of Congenital Malformations: A Cohort Study From the International Pregnancy Safety Study Consortium.

    キーポイント:
    <疑問>
     中枢刺激薬による注意欠如・多動症の治療の子宮内曝露に関連する先天性奇形のリスクはどれくらいか?
    <結果>
     US Medicaid Analytic eXtract (2000-2013) にネストされた180万の妊娠を含むこのコホート研究の結果は、Nordic Health registries (2003-2013) における別の250万の妊娠についての初期安全性シグナルを再現する形で、メチルフェニデート使用と関連する心奇形の潜在的リスクのわずかな増加を示唆するが、この種の奇形のリスクは、アンフェタミンについては認めなかった。メチルフェニデートもアンフェタミンも、奇形全般のリスクの上昇とは関連しなかった。
    <意義>
     この研究は生殖年齢および妊娠早期の女性において、注意欠如・多動症についての代替的治療戦略の危険と便益を計りにかける場合に、重要な情報を提供する。

    論文要約:
    <重要性>
     妊娠中および予期せず妊娠するかもしれない生殖年齢の女性の間で急速に増えている中枢刺激薬の使用を考えると、その安全性をもっと理解する必要がある。
    <目的>
     中枢刺激薬の子宮内曝露と関連する先天性奇形のリスクを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     2000年から2013年の米国Medicaid Analytic eXtractにネストされた米国Medicaid保険の加入者集団のコホート研究で、Nordic Health registries (2003-2013)(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、およびスウェーデン)を用いて、Medicaid Analytic eXtract で特定された安全性シグナルの追跡を行ったもの。米国における保険適用が明確な1,813,894の生児出生妊娠と、ノルウェーの5つの地域における別の2,560,069の生児出生妊娠が含まれた。背景にある精神疾患と他の潜在的交絡因子を考慮して、相対リスクが推定された。米国とノルウェーのデータに関する相対リスクの推定値が、固定効果メタ解析法を用いて統合された。本研究は2015年7月1日から2017年3月31日に実施された。
    <曝露>
     妊娠第1期中に調剤されたメチルフェニデートとアンフェタミン。
    <主要評価項目>
     主要な先天性奇形と心奇形の下位群。
    <結果>
     米国のデータでは、評価された1,813,894妊娠のうち、中枢刺激薬に曝露されなかった新生児では1,000当たり35.0の先天性奇形を持つと診断されたのに対して、メチルフェニデートについては新生児1,000当たり45.9、アンフェタミンについては新生児1,000当たり45.4の先天奇形が診断された。心奇形については、リスクはそれぞれ新生児1,000当たり12.7 (95% CI, 12.6-12.9)、18.8 (95% CI, 13.8-25.6)、15.4 (95% CI, 12.5-19.0)であった。
     メチルフェニデートの調整済相対リスクは、任意の奇形については1.11 (95% CI, 0.91-1.35)、心奇形については1.28 (95% CI, 0.94-1.74)であった。アンフェタミンのリスクは、任意の奇形については1.11 (95% CI, 0.91-1.35)、心奇形については1.28 (95% CI, 0.94-1.74)と増加を認めなかった。
     結果は、未測定の交絡因子の代用を考慮に入れ、曝露と評価項目の定義の特異度を高めた感度分析で確認された。2,560,069の妊娠を含むノルウェーのデータを用いたメチルフェニデートについての分析の再現では、心奇形の相対リスクは1.28 (95% CI, 0.83-1.97)、統合推定値は1.28 (95% CI, 1.00-1.64)となった。
    <結論と関連性>
     これらの結果は、メチルフェニデートの子宮内曝露と関連する心奇形のリスクの小さな増加を示唆するが、アンフェタミンについてはそうではなかった。この情報は、生殖年齢および妊娠早期の女性の注意欠如・多動症について代替的治療戦略の危険と便益を計りにかける場合に重要である。

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卵巣抑制後に起こる月経前不快気分障害の症状は、卵巣ステロイドの持続的定常レベルでなく、そのレベルの変化で誘発される
    Schmidt PJ et al. Am J Psychiatry 2017; 174: 980-989.
    Premenstrual Dysphoric Disorder Symptoms Following Ovarian Suppression: Triggered by Change in Ovarian Steroid Levels But Not Continuous Stable Levels.

    論文要約:
    <目的>
     月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder、PMDD)の症状は卵巣抑制によって消退し、卵巣ステロイドの投与によって誘発されるが、その症状はPMDDを持たない女性の卵巣ステロイドレベルと区別できない程度のレベルでも起こる。したがって、症状は卵巣ホルモンレベルの急性変化、または背景にある1日1回未満で生じる(infradian)感情“ペースメーカー”の発現を許す役割を持つ臨界域値を超える定常レベルによって引き起こされる可能性がある。著者らはどちらの状態がPMDDを誘発するか確定することを試みた。
    <方法>
     本研究にはPMDDを持つ22人の女性(30歳から50歳)が含まれた。GnRH(訳注:gonadotropin-releasing hormone、性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト(作動薬)で誘発された卵巣抑制(leuprolide、ロイプロリド)の2~3カ月後に症状の寛解を体験し、その後に1カ月間の(参加者のみの)単盲検のプラセボ投与、その後に3カ月間の混合エストラジオール/プロゲステロンの継続投与(continuous combined estradiol/progesterone、どちらも卵巣ステロイドホルモン)を受けた12人の女性。主要評価項目は、クリニック受診中に2週間毎に回答された月経前緊張尺度・他者評価および自己評価(Rating for Premenstrual Tension observer and self-ratings)であった。混合モデルについて多変量・反復測定の分散分析(multivariate repeated-measure ANOVA)が用いられた。
    <結果>
     月経前緊張尺度の自己評価および他者評価スコアは、ロイプロリド単独、プラセボの1カ月、の最終月、エストラジオール/プロゲステロンの2カ月目、および3カ月目と比べて、混合エストラジオール/プロゲステロンの1カ月目の間は有意に増加した(より症状が強い)。ロイプロリド単独、プラセボの1カ月、エストラジオール/プロゲステロン投与の2カ月目と、3カ月目の間の症状重症度に有意差はなかった。最後に、エストラジオール/プロゲステロン投与の2カ月目と3カ月目の月経前緊張尺度スコアに違いはなかった。
    <結論>
     結果は、エストラジオールとプロゲステロンの定常状態のレベルではなく、低から高へのレベル変化がPMDD症状の発現に関連することを明示している。排卵直前のステロイドレベルの変化を緩和させる治療的工夫を、さらに研究する必要がある。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00005011.

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統合失調症を持つ人における精神病理変数、個人的資質、状況関連因子、日常生活機能の間の相互作用:ネットワーク解析
    Galderisi S et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Interplay Among Psychopathologic Variables, Personal Resources, Context-Related Factors, and Real-life Functioning in Individuals With Schizophrenia: A Network Analysis.

    キーポイント
    <疑問>
     統合失調症を持って地域で生活する人において、日常生活機能、精神病理変数、認知、個人的資質、および社会人口学的変数は互いにどのように関係するか。
    <結果>
     この統合失調症を持つ740人のネットワーク解析において、機能容量と日常生活技能が最も中核的相互接続ノードであり、陽性症状は最も疎な相互接続ノードであった。日常生活機能は、異なる領域に属するいくつかの変数と接続していた。
    <意義>
     機能容量と日常生活技能の高い中心性は、日常生活に関連する課題の遂行能力を改善することが、統合失調症に対するあらゆる治療的介入の中核であることを示唆し、ネットワークノードの接続パターンは、統合失調症を持つ人に対する個別的介入の実施を支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     症状と機能の回復に関連する要因のより深い理解は、統合失調症を持つ人のための個別化された治療計画の設計に役立つ。これは地域で生活する統合失調症を持つ人の大規模サンプルで認知・精神病理・心理社会的変数間の関連を調べるために、ネットワーク解析を用いた今まで初めての研究である。
    <目的>
     データ駆動型アプローチを用いて、統合失調症を持つ人の精神病理変数、認知機能障害、機能容量、個人的資質、自己認知されたスティグマ、および日常生活機能の間の相互作用を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この多施設共同横断研究には、26の大学精神科クリニック、および/または精神保健部門が含まれた。2012年3月1日から2013年9月30日の間に施設の外来部門に継続受診した患者から、抗精神病薬治療によって安定している全部で921人の地域に住むDSM-IV統合失調症の診断を持つ人が集められた。統計解析は2017年7月1日から9月30日に行われた。
    <主要評価項目>
     精神病理変数、神経認知、社会認知、機能容量、日常生活機能、レジリエンス、スティグマの自覚、動機付け、サービス利用を含めた測定。
    <結果>
     27の研究測定についての完全データを持つ740人の患者(221人が女性で519人が男性; 平均 [標準偏差] 年齢, 40.0 [10.9] 歳)のうち、163人(22.0%)は寛解(8つの中核症状のスコアが軽度または良好)していた。
     ネットワーク解析は、機能容量と日常生活技能がネットワークにおいて最も中核的かつ密に相互接続するノードであることを示した。精神病理変数は2領域に分かれ、陽性症状は最も辺縁的で疎な接続ノードの一つであった。機能容量は認知と日常生活技能の橋渡しを行い、日常生活技能は解体症候群と表出的欠陥に結びついていた。対人関係と仕事の技量は意欲欠如と結びついていて、対人関係ノードはまた社会的能力と、仕事の技量は社会的動機付けと精神保健サービスの利用と連結していた。
     ケース脱落ブートストラップ法は、元のサンプルと740のうち無作為に確定された最大481(65.0%)のケース脱落サンプルの間で0.75以上の中心性指標相関を示した。男女間でネットワーク構造の違いはなかった。
    <結論と関連性>
     機能容量と日常生活技能の高い中心性は、日常生活に関連する課題の遂行能力を改善することが、統合失調症に対するあらゆる治療的介入に重要であることを示唆する。ネットワークノードの接続パターンは、統合失調症を持つ人に対する個別的介入の実施を支持する。

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米国における成人のDSM-5うつ病とその特定用語の疫学
    Hasin DS et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Epidemiology of Adult DSM-5 Major Depressive Disorder and Its Specifiers in the United States.

    キーポイント:
    <疑問>
     DSM-5うつ病(major depressive disorder)、不安性の苦痛(anxious/distressed)と混合性の特徴(mixed-features)のDSM-5特定用語の全国有病率はどのくらいか、またそれらの臨床的関連はどうか。
    <結果>
     この米国成人36,309人の全国調査において、うつ病の12カ月および生涯有病率は、それぞれ10.4%と20.6%で、大抵は中等度(症状数が6から7)か重度(症状数が8から9)であって併存症および障害性と関連した。うつ病症例の74.6%に不安性の苦痛の特定用語を、15.5%に混合性の特徴の特定用語を認め、うつ病の生涯診断を持つ人のおよそ70%がある種の治療を受けていた。
    <意義>
     うつ病は今も米国における重大な健康問題であり、その特定用語については、多くの学ぶべきものがある。

    論文要旨:
    <重要性>
     DSM-5で定義されるうつ病(major depressive disorder、MDD)、またはDSM-5で定義されるMDDの特定用語(specifiers)の有病率および相関について、利用可能な米国の国民データは存在しない。
    <目的>
     DSM-5うつ病の有病率、相互関係、精神科併存症、機能、および治療に関する現在の国民代表所見と、DSM-5うつ病の重症度、不安性の苦痛および混合性の特徴の特定用語と、DSM-IVでは死別とみなされるであろう症例の有病率、重症度、および治療の最新情報を提示すること。
    <設計・設定・参加者>
     2012年から2013年の第3回アルコールおよび関連疾患の全国疫学調査(the 2012-2013 National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions III、NESARC-III)に参加した施設外に居住する成人の米国市民(18歳以上、n = 36,309)代表サンプルへの対面面接。データは2012年4月から2013年6月に収集され、2016年から2017年に解析された。
    <主要評価項目>
     DSM-5うつ病とDSM-5特定用語の有病率。人口学的特性、および他の精神疾患との関連を示したオッズ比(odds ratios、ORs)、調整済オッズ比(adjusted ORs、aORs)、それらの95%信頼区間(95% CIs)。
    <結果>
     成人のNESARC-III参加者36,309人において、MDDの12カ月および生涯有病率はそれぞれ10.4%と20.6%であった。
     うつ病の12カ月診断のオッズは、男性(OR, 0.5; 95% CI, 0.46-0.55)、アフリカ系米国人(OR, 0.6; 95% CI, 0.54-0.68)、アジア/太平洋の島民(OR, 0.6; 95% CI, 0.45-0.67)、ヒスパニック系OR, 0.7; 95% CI, 0.62-0.78)の成人では白人の成人より低く、より若年の成人(年齢範囲, 18-29 歳; OR, 3.0; 95% CI, 2.48-3.55)および低所得($19,999またはそれ以下; OR, 1.7; 95% CI, 1.49-2.04)の人ではより高かった。
     うつ病と精神疾患との関連は、限局性恐怖症のaOR 2.1(95% CI, 1.84-2.35)から全般性不安症のaOR 5.7(95% CI, 4.98-6.50)に及んだ。うつ病と物質使用障害との関連は、アルコールのaOR 1.8(95% CI, 1.63-2.01)からいずれかの薬剤のaOR 3.0(95% CI, 2.57-3.55)に及んだ。
     うつ病の生涯診断症例の大抵は中等度(39.7%)または重度(49.5%)で、うつ病の生涯診断を持つ人の70%近くがある種の治療を受けていた。重度のうつ病を持つ人の機能は、全国平均よりおよそ1標準偏差低かった。
     MDDの生涯診断を持つ人の12.9%では、誰か親しい人の死の直後にすべてのエピソードが起こり、2カ月を超えて持続することはなかった。
     うつ病症例の74.6%に不安性の苦痛の特定用語を、15.5%に混合性の特徴の特定用語を認めた。重症度を制御すると、両方の特定用語は早期の発症、不良な経過と機能、および自殺傾向と関連した。
    <結論と関連性>
     米国の成人において、DSM-5うつ病は非常に多く、他疾患と併存し、機能は障害される。大抵の症例が治療を受けていた一方で、少数派の多くは治療を受けていなかった。一般人口におけるDSM-5うつ病の特定用語について、多くの学ぶべきものがある。

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スウェーデン男性における小児期の感染症と知能指数および成人の非感情病性精神病の関連:住民ベースの縦断的コホートおよび相関研究
    Khandaker GM, et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Association of Childhood Infection With IQ and Adult Nonaffective Psychosis in Swedish Men: A Population-Based Longitudinal Cohort and Co-relative Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期の感染症、IQ、および成人の非感情病性精神病(nonaffective psychosis、NAP)はどのように関係するか。
    <結果>
     このスウェーデン男性についての住民ベースの縦断的コホート研究において、小児期早期の感染症は、後のより低いIQとNAPリスクの上昇と関連した。感染症とNAPの間の関連はIQによって媒介され、かつ弱められ、その関連は一般人口および曝露について不一致の同胞対と同程度となった。
    <意義>
     精神病を持つ人のより低い病前IQは、小児期早期の感染症のような特定の環境因子に由来する可能性があり、一部は神経発達を阻害することで、一部は精神病に対する認知的脆弱性への効果を増悪させることで、小児期早期の感染症がNAPのリスクを上昇させるかもしれない。

    論文要旨:
    <重要性>
     小児期の感染症、IQ、および成人の非感情病性精神病(nonaffective psychosis、NAP)の関連は確立されている。しかし、曝露の感受期、家族性交絡因子の効果、およびIQが小児期感染症と成人期NAPの関連を媒介するか否かを調べることで、精神病の発病機序が解明されるかもしれない。
    <目的>
     小児期感染症とIQおよびNAPの関連を検証すること、感染-NAP関連およびIQ-NAP関連を説明する共有家族性交絡因子を見出すこと、IQが小児期感染症-NAP関連を媒介する、および/または減弱するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     スウェーデン国民登録との連携を利用した住民ベースの縦断的コホート研究。1973年から1992年に生まれ、2010年末までに軍隊に徴兵されたすべてのスウェーデン男子(n = 771,698)を含めたリスク一式。我々は解析に647,515人の参加者を含めた。
    <曝露の測定>
     出生から13歳の間のいずれかの感染症による入院。
    <主要評価項目>
     2011年末までのNAPの国際疾病分類(International Classification of Diseases)診断。18歳前後の徴兵時に全参加者のIQが評価された。
    <結果>
     追跡終了時点の参加者の平均(標準偏差)年齢は30.73 (5.3) 歳であった。特に小児期早期における感染症への曝露が、より低いIQ(出生時から1歳までの感染症の調整済平均差: –1.61; 95% CI, −1.74 to −1.47)、および成人期NAPのリスク増加(出生時から1歳までの感染症の調整済ハザード比: 1.19; 95% CI, 1.06 to 1.33)と関連した。より低い病前IQと成人期NAPの間には線型的関連があり、それは前駆状態の症例を除外した後も認めた。感染症-NAP関連とIQ-NAP関連は、一般人口と曝露について完全不一致の同胞対で類似していた。感染症とNAPの関連はIQによって減弱され(相乗的[multiplicative], β = .006; SE = 0.002; P = .02、かつ相加的[additive], β = .008; SE = 0.002; P = .001)、媒介された(β = .028; SE = 0.002; P < .001)。小児期の感染症はより高いIQの範囲と比べて、より低いIQの範囲においてNAPリスクと強く関連した。
    <結論と関連性>
     小児期早期は感染症がIQとNAPに影響を与える感受期である。成人期のNAPと小児期早期の感染症および青年期のIQの関連は、共有家族性因子で完全に説明できず、よって因果関係を示しているのかもしれない。精神病を有する人のより低い病前IQは、小児期早期の感染症のような固有の環境因子に由来する。小児期早期の感染症が神経発達に影響して、認知的脆弱性と精神病の関連性を増悪させることでNAPのリスクを高めるかもしれない。

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初回エピソード精神病に対する初期抗精神病薬治療中の、海馬萎縮と精神病未治療期間および分子バイオマーカーの関連
    Goff DC et al. JAMA Psychiatry, published online February 21, 2018.
    Association of Hippocampal Atrophy With Duration of Untreated Psychosis and Molecular Biomarkers During Initial Antipsychotic Treatment of First-Episode Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     初回の抗精神病薬治療の間に、海馬体積の減少は起こるか。それは精神病未治療期間と関連するか。
    <結果>
     この初回エピソード非感情病性精神病の縦断的ケースコントロール研究において、患者はベースラインにおいて健常対照より海馬萎縮が有意に強かった。さらに、8週間の追跡時点の海馬萎縮は健常対照と比べて患者でより大きく進行し、左海馬萎縮の進行率は精神病未治療期間と有意に相関した。
    <意義>
     早期の海馬体積減少は、統合失調症における精神病未治療期間と不良なアウトカムの関連を媒介する役割を持つのかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     精神病未治療期間(duration of untreated psychosis、DUP)は、統合失調症の不良なアウトカムと関連付けられてきたが、この関連を説明するメカニズムは知られていない。
    <目的>
     最初の8週間の抗精神病薬治療中に海馬体積の減少が起こるか否か、DUPと関連するか否かを確定し、海馬体積の減少およびDUPと関連する分子バイオマーカーを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     マッチさせた健常対照を持つ自然観察縦断研究が上海精神保健センターで行われた。2013年3月5日から2014年10月8日に、非感情病性の初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)を持つが薬物療法を受けたことがない71人と、年齢と性別をマッチさせた健常対照者73人が集められた。およそ8週間後、FEPを持つ31人の参加者と32人の対照者が再評価された。
    <曝露>
     FEPを持つ参加者は、第二世代抗精神病薬を用いた標準的臨床診療に基づき治療された。
    <主要評価項目>
     海馬体積の完全性(Hippocampal volumetric integrity、HVI:標準化された海馬関心体積における実質分画の自動推定値)、DUP、13の末梢性分子バイオマーカー、および12の候補遺伝子からの14の一塩基多型。
    <結果>
     全サンプルはFEPを持つ71人(女性39人と男性32人; 平均 [標準偏差] 年齢, 25.2 [7.7] 歳)と健常対照73人(女性40人と男性33人; 平均 [標準偏差] 年齢, 23.9 [6.4] 歳)から構成された。
     ベースラインの左HVIの中央値は、FEP群(n = 57)が対照群(n = 54)より低かった(0.9275 対 0.9512; 点推定値差, −0.020 [95% CI, −0.029 to −0.010]; P = .001)。およそ8週間の抗精神病薬治療の間に、FEPを持つ24人の参加者では左HVIは年率中央値 −.03791(ベースラインから年4.1%の変化)で減少したが、31人の対照者では 0.00115(ベースラインから年0.13%の変化)で増加した(点推定値差, −0.0424 [95% CI, −0.0707 to −0.0164]; P = .001)。左HVIの変化はDUPと逆相関した(r = −0.61; P = .002)。
     類似の結果が右HVIについて見出されたが、右HVIの変化とDUPの間の関連は統計的有意性に達しなかった(r = −0.35; P = .10)。
     左HVIに限定した探索的分析は、左HVIと炎症マーカー、酸化的ストレス、脳由来神経栄養因子、グリア損傷、ドパミンおよびグルタミン酸神経伝達を反映するマーカーとの関連を明らかにした。
    <結論と関連性>
    初回治療の間のDUPの長さと海馬萎縮の強さの関連は、精神病は脳構造に対して持続性のおそらく有害な影響を及ぼすことを示唆する。未治療の精神病が海馬体積に影響を与える分子メカニズムに関するこれらの予備的結果を再現して、より長いDUPと不良なアウトカムの既知の関連をこれらの効果が説明するか否かを確定するためには、さらなる研究が必要である。

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胎児超音波検査と自閉スペクトラム症の関連
    Rosman NP et al. JAMA Pediatrics, published online February 12, 2018.
    Association of Prenatal Ultrasonography and Autism Spectrum Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     胎児超音波検査の頻度、時期、時間、または強度は、後の自閉スペクトラム症の診断と関連するか。
    <結果>
     この420人の子供の症例対照研究において自閉スペクトラム症を持つ人は、定型発達の子供と比べて妊娠第1期および第2期の、発達の遅れがある子供と比べて妊娠第1期のより深い平均超音波浸透に曝露されていたが、スキャン数または超音波曝露時間と後の自閉スペクトラム症の関連はなかった。
    <意義>
     胎児期の超音波浸透深度の延長は、胎児神経細胞の皮質移動の異常と後の自閉スペクトラム症に関連するのかもしれないので、この関連をさらに研究すべきである。

    論文要約:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)の有病率は急速に増加し、現在の推定値によれば子供の68人に1人が罹患することになる。同時に、胎児超音波検査の利用がかなり増えているが、その安全性と脳発達への影響はよく調べられていない。動物研究では、胎児超音波検査が神経細胞移動に有害な効果をもたらし得ることが示されている。
    <目的>
     後にASD、発達遅延(developmental delay)、および定型発達(typical development)に至った子供において、超音波エコー走査の頻度、時期、時間、および強度によって胎児期超音波曝露を定量すること。
    <設計・設定・参加者>
     この症例対照研究には、ASDを持つ107人の患者、発達遅延を持つ104人の対照者、および定型発達を持つ209人の対照が含まれた。広域の大学付属セーフティー・ネット病院(safety-net medical center、訳注:その人の健康保険の加入状況や医療費支払の能力に関わらず医療を提供する法律上の義務を負う病院)であるボストン医療センターにおける、2006年7月1日から2014年12月31日の間の胎児ケアと分娩(ただし出産時の在胎期間が少なくとも37週であった症例)に基づく医療記録から参加者は特定された。データは2015年5月1日から2017年11月30日に分析された。
    <曝露>
     超音波エコー曝露は、スキャン回数と時期、曝露時間、平均強度(深さ、フレーム率、メカニカルインデックス[Mechanical Index; MI、訳注:超音波による非熱的作用の安全性を評価する指標]およびサーマルインデックス[Thermal Index; TI、訳注:超音波による熱的作用の安全性を評価する指標])、ドップラー画像、および3または4次元画像の時期によって定量された。
    <主要評価項目>
     ASDを持つ参加者と発達遅延および定型発達を持つ対照者において超音波曝露が定量され、新生児の性別、出生時の在胎期間、および母体年齢について調整後、妊娠時期毎および全妊娠期間について比較された。
    <結果>
     全部で420人の参加者(328人が男子 [78.1%]、92人が女子 [21.9%]; 2016年1月1日現在の平均年齢は6.6歳; 95% CI, 6.5-6.8歳)が本研究に含まれた。ASD群は平均5.9回(95% CI, 5.2-6.6)のスキャンを受けたが、発達遅延群の6.1スキャン(95% CI, 5.4-6.8)および定型発達群の6.3スキャン(95% CI, 5.8-6.8)と有意差なかった。
     定型発達群と比較してASG群は、妊娠第1期(290.4秒 [95% CI, 212.8-368.0秒] vs 406.4秒 [95% CI, 349.5-463.3秒])と第2期(1687.6秒 [95% CI, 1493.8-1881.4 秒)の超音波曝露時間がより短かったが、スキャン数に差はなかった。
     ASG群は発達遅延群より妊娠第1期における超音波エコー浸透の平均深度がより深かった(12.5 cm [95% CI, 12.0-13.0 cm] vs 11.6 cm [95% CI, 11.1-12.1 cm])。
     ASG群は定型発達群より妊娠第1期(12.5 cm [95% CI, 12.0-13.0 cm] vs 11.6 cm [95% CI, 11.3-12.0 cm])および第2期(12.9 cm [95% CI, 12.6-13.3 cm] vs 12.5 cm [95% CI, 12.2-12.7 cm])における平均深度がより深かった。
    <結論と関連性>
    この研究では、ASG群は発達遅延群より妊娠第1期において、定型発達群より妊娠第1期および第2期において、超音波エコー浸透の平均深度が有意に深かった。超音波曝露の他の変数がまた発達中の胎児に対して有害作用を持つか否か確定するために、さらなる研究を要する。

    コメント:実際の超音波エコー検査では、特に妊娠中はTI(超音波による熱的作用の安全性を評価する指標)を参考に、出力をできるだけ少なくするように行われるようです。何十年も非侵襲的で安全な検査として超音波エコーは利用されてきたので、上記の予備的結果はさらに研究されるべきですね。

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米国、オンタリオ、オーストラリアにおける高齢成人のベンゾジアゼピン使用:2010-2016年
    Brett J et al. J Am Geriatr Soc, published online 12 February 2018.
    Benzodiazepine Use in Older Adults in the United States, Ontario, and Australia from 2010 to 2016.

    論文要約:
    <目的>
     3カ国における2010年から2016年の高齢成人のベンゾジアゼピン使用の発生率と有病率の年間傾向を詳述すること。
    <設計・設定・参加者>
     統一された研究プロトコルを用いた観察的多国間コホート研究。アメリカ合衆国(退役軍人集団)、オンタリオ州(カナダ)、オーストラリアの65歳以上のすべての人(8,270,000人)。
    <測定>
     年齢グループ(65~74歳, 75~84歳, 85歳以上)と性別で層別化されたベンゾジアゼピン使用の年間発生率と有病率。使用の発生率と有病率に有意な経時的変化があるか否かを評価するために重回帰分析を実施。
    <結果>
     研究期間を通して、オーストラリア(7.0% to 6.7%)を除く米国(2.6% to 1.7%)とオンタリオ(6.0% to 4.4%)で、ベンゾジアゼピンの初回使用が有意に減少していた。また、全ての国で継続使用が有意に減少していた(米国: 9.2% to 7.3%; オンタリオ: 18.2% to 13.4%; オーストラリア: 20.2% to 16.8%)。オンタリオとオーストラリアでは発生率と有病率は年齢とともに増加したが、米国では減少した。発生率と有病率はすべての国で女性がより高かった。
    <結論>
     他の国際研究と同じく、オーストラリアの発生率を除いて、3か国すべてにおいて高齢成人のベンゾジアゼピン使用の発生率と有病率は僅かであるが有意な減少を示した。しかしならが、その使用は特に85歳以上の人では依然として不適切なほど高く、臨床医から政策立案者まで注意喚起すべきである。

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認知症症状に対する抗精神病薬および他の薬剤に関するプライマリ・ケア医の見解
    Kerns JW et al. J Am Board Fam Med 2018; 31: 9-21.
    Primary Care Physician Perspectives about Antipsychotics and Other Medications for Symptoms of Dementia.

    論文要約:
    <背景>
     認知症の行動心理学的症状(behavioral and psychological symptoms of dementia、BPSD)に対する薬剤の使用を減らすために、ガイドライン、医療政策、および警告が適用されてきた。稀ではあるが危険な副作用のために、これらの取り組みの中で抗精神病薬は特別に扱われてきた。しかし、抗精神病薬はいまだに老人ホームおよび地域に居住する非常に多くの高齢者に適応外処方(prescribed "off label")されている。我々の目的は、プライマリ・ケア医がBPSDに対する非薬物的方略および薬剤使用の状況と理由を評価することであった。
    <方法>
     北西バージニアにおいて少なくとも3年間にわたりフルタイムのプライマリ・ケア診療に従事した26人のプライマリ・ケア医(16人が家庭医、10人が一般内科医)への半構造化面接。
    <結果>
     プライマリ・ケア医はBPSDの管理に関する4つの主要な課題を述べた:1)非薬理学的方法にはかなりの障壁がある、2)薬剤の使用はそれら障壁によって制約されず、簡単で有用、かなり安全で適切であると認識されている、3)薬物政策は抗精神病薬を含む標的薬物の使用を減らすが、それはまた代わりの危険な薬剤の使用を増加させるといった予期せぬ結果を生む、4)BPSD管理のあらゆる側面についてPCPは実際的なエビデンスに基づくガイドラインを必要としている。
    <結論>
     プライマリ・ケア医は患者指向の目標を求めて、抗精神病薬および他の代替薬を含む薬剤をエビデンスが示すよりも有効で危険は少ないと認識することで薬の処方を続けている。BPSDの治療を最適化するためには、プライマリ・ケア医を支援する検証を経た処方ガイドラインと、薬剤と同じくらい無理なく扱える実施可能で有用な非薬理学的方法を利用できる必要がある。そのためには、有意義な更なる研究と資金提供者の支援が必要であり行う価値はある。地域のプライマリ・ケア医は、BPSDの医療政策とガイドラインの作成に関与すべきである。

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非認知症成人における生体利用可能なクルクミンの記憶と脳アミロイドおよびタウへの効果:18カ月の二重盲検プラセボ比較試験
    Small GW et al. Am J Geriatr Psychiatry 2018; 26: 266-277.
    Memory and Brain Amyloid and Tau Effects of a Bioavailable Form of Curcumin in Non-Demented Adults: A Double-Blind, Placebo-Controlled 18-Month Trial.

    論文要約:
    <目的>
     クルクミン(curcumin)の抗炎症特性が脳を神経変性から守るかもしれないので、我々は非認知症成人において記憶に対するその効果を調べ、FDDNP-陽電子断層撮影(PET)を用いて脳アミロイドとタウの蓄積に対する影響を探索した。
    <方法>
     40人の対象(年齢:51~84歳)が、生体利用可能なクルクミン(90㎎のクルクミンを含むセラクルミン[Theracurmin®]を1日2回、N = 21)またはプラセボ(N = 19)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は言語記憶(Buschke Selective Reminding Test [SRT])と視覚記憶(Brief Visual Memory Test-Revised [BVMT-R])であり、注意(Trail Making A)は副次評価項目であった。
     FDDNP-PET信号(15人がクルクミン、15人がプラセボ)が、扁桃体、視床下部、内側および外側側頭領域、後部帯状領域、頭頂領域、前頭領域、および運動領域(対照)で決定された。年齢と教育歴を調整する一般線型・混合効果モデル(mixed effects general linear models)と効果量(ES:Cohenのd値)が推定された。
    <結果>
     SRTの安定した長期記憶の想起(Consistent Long-Term Retrieval)はクルクミンで改善したが(ES = 0.63, p = 0.002)、プラセボでは改善しなかった(ES = 0.06, p = 0.8; 群間: ES = 0.68, p = 0.05)。プラセボと比較して(ES = 0.28, p = 0.1; 群間: ES = 0.67, p = 0.04)、クルクミンはまた総SRT(ES = 0.53, p = 0.002)、視覚記憶(BVMT-R再生: ES = 0.50, p = 0.01; BVMT-R遅延: ES = 0.51, p = 0.006)、および注意(ES = 0.96, p < 0.0001)を改善した。
     プラセボと比較して(ES = 0.08, p = 0.6; 群間: ES = 0.48, p = 0.07)、扁桃体のFDDNP結合はクルクミンで有意に低下した(ES = -0.41, p = 0.04)。視床下部のFDDNP結合はクルクミンでは不変であったが(ES = -0.30, p = 0.2)、プラセボでは増加した(ES = 0.26, p = 0.05; 群間: ES = 0.55, p = 0.02)。
    <結論>
     毎日のセラクルミンの経口摂取は、非認知症成人において記憶と注意の改善をもたらすかもしれない。FDDNP-PETの所見は、症状プロフィールと、気分および記憶を調整する脳領域におけるアミロイドとタウの蓄積減少の関連を示唆する。

    コメント:クルクミン(curcumin)はウコン(学名Curcuma longa)などに含まれる黄色のポリフェノール化合物(by Wikipedia)で、カレーの黄色はこれに由来するそうです。

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精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と社会的回避に対する待機リスト対照と比較した仮想現実ベースの認知行動療法:単盲検ランダム化比較試験
    Roos M C A Pot-Kolder, et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 217–226.
    Virtual-reality-based cognitive behavioural therapy versus waiting list control for paranoid ideation and social avoidance in patients with psychotic disorders: a single-blind randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     精神病性障害を持つ患者の多くが、妄想様観念を持ち続け、猜疑心と不安から社会的状況を避ける。我々は、妄想的思考と社会参加に対する仮想現実ベースの認知行動療法(virtual-reality-based cognitive behavioural therapy、VR-CBT)の効果を調べた。
    <方法>
     このオランダの7つの精神保健センターにおけるランダム化比較試験では、DSM-IVで診断された精神病性障害と妄想様観念を過去1年に持つ18歳から65歳の外来患者が、ブロック無作為化(block randomisation)によって、VR-CBT(+従来の治療)または待機リスト対照群(=従来の治療)に1対1に無作為割り付けされた。VR-CBTは16回の個人セッションから構成された(各々1時間)。評価はベースライン、治療後(ベースラインから3カ月)、6カ月の追跡調査時に行われた。
     主要評価項目は、他人と一緒にいる時間の量として操作的に定義される社会参加(social participation)、瞬時の妄想(momentary paranoia)、知覚された社会的脅威(perceived social threat)、および瞬時の不安(momentary anxiety)であった。分析は包括解析(intention to treat、ITT)でなされ、試験は後からISRCTNに登録された(番号12929657)。
    <結果>
     2014年4月1日から2015年12月31日の間に、精神病性障害を持つ116人の患者が、VR-CBT群に58名、待機リスト対照群に58名、無作為に割り付けられた。対照と比較してVR-CBTは、治療後評価時において他人と一緒にいる時間の量を有意に増加させることはなかった。
     しかし、瞬時の妄想様観念(b=–0.331 [95% CI −0.432 to −0.230], p<0.0001; effect size −1.49)と瞬時の不安(−0.288 [–0.438 to −0.1394]; p=0.0002; −0.75)は、対照群と比べてVR-CBT群において有意に減少し、これらの改善は追跡評価時において維持された。安全行動と社会的認知の問題は、妄想様観念の変化の媒介要因であった。治療または評価に関連する有害事象の報告はなかった。
    <解釈>
     我々の結果は、標準治療へVR-CBTを追加することで、精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と瞬時の不安を減らすことができることを示している。

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自傷後の若者に対する系統的家族療法の従来の治療と比較した有効性:実際的な第3相・多施設共同・ランダム化比較試験
    Cottrell DJ et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 203-216.
    Effectiveness of systemic family therapy versus treatment as usual for young people after self-harm: a pragmatic, phase 3, multicentre, randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     青年の自傷は一般的であり、多くの症例がそれを繰り返すが、自傷を減らす介入の効果についてのエビデンスは非常に少ない。
    <方法>
     この従来の治療と比較した家族療法の実際的な多施設共同・ランダム化比較試験は、英国小児と青年の精神保健サービス(UK Child and Adolescent Mental Health Services、CAMHS)の40施設で行われた。我々は少なくとも2回の自傷を行い、自傷後にCAMHSを受診した11歳から17歳の若者を募集した。参加者は、訓練と監督を受けた家族療法家によって提供されるマニュアル化された家族療法、もしくは地元のCAMHSによる従来の治療に、無作為に1対1で割り付けられた。参加者と治療者は治療の割り付けを知っていたが、研究者には隠蔽された。主要評価項目は、群分け後の18カ月間における自傷の反復のための病院受診であった。主要および副次解析は、intention-to-treat集団で行われた。本試験はISRCTNレジストリーに登録されている(登録番号 ISRCTN59793150)。
    <結果>
     2009年11月23日から2013年12月31日の間に、3,554人の若者がスクリーニングされ、適格基準を満たす832人の若者が参加に同意して、家族療法(n=415)または従来の治療(n=417)に無作為割り付けされた。主要評価項目は795人(96%)の参加者について利用可能であった。反復的な自傷事象のための病院受診の数に有意な群間差はなかった(家族療法群118 [28%] 対従来の治療群103 [25%]; ハザード比 1.14 [95% CI 0.87-1.49] p=0.33)。有害事象の数も両群で類似していた(家族療法群787 対 従来の治療群847)。
    <解釈>
     自傷後にCAMHSに照会された過去に少なくとも1度は自傷を行ったことがある青年について、我々の家族療法介入は、その後の自傷のための病院受診を減らす点において従来の治療以上の利益をもたらすことはなかった。したがって、青年の反復する自傷を減らすための明確でエビデンスに基づく介入を、臨床医に推奨することはまだできない。

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過渡的就労と比較したエビデンスに基づく援助付き雇用の心的外傷後ストレス障害を持つ退役軍人の定職獲得に対する効果:ランダム化臨床試験
    Davis LL et al. JAMA Psychiatry, published online February 28, 2018.
    Effect of Evidence-Based Supported Employment vs Transitional Work on Achieving Steady Work Among Veterans With Posttraumatic Stress Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)を持つ失業退役軍人を支援するにあたって、個別型援助付き雇用(individual placement and support–supported employment)は、過渡的就労を含む段階的職業リハビリテーションプログラムより優れるか。
    <結果>
     このPTSDを持つ541人の成人のランダム化臨床試験において、個別型援助付き雇用の参加者の38.7%が安定した雇用を達成したのに対して、過渡的就労群の参加者では23.3%であり、その差は有意であった。加えて、個別型援助付き雇用の参加者は、過渡的就労の参加者よりも有意に多い収入を競争的仕事から獲得した。
    <意義>
     個別型援助付き雇用は、PTSDを持つ失業中の退役軍人が競争的雇用を獲得して維持するのを支援する上で、過渡的就労よりも成功に導く可能性が高い。

    論文要約:
    <重要性>
     心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、しばしばその人の雇用を獲得して維持する能力を妨げ、それは労働力からの早期撤退と収入の減少につながる。
    <目的>
     PTSDを持つ退役軍人が安定した競争的雇用を達成するにあたって、個別型援助(IPS)付き雇用は、過渡的な就労割当を含む段階的職業リハビリテーションプログラムより優れるか否かを確定すること。
    <設計・設定・参加者>
     回復促進を目的とした退役軍人への個別型援助研究(the Veterans Individual Placement and Support Toward Advancing Recovery、VIP-STAR)は、12の退役軍人医療センターにおける541人のPTSDを持つ失業退役軍人を含む、前方視的多施設ランダム化臨床試験であった。データは2013年12月23日から2017年5月3日に収集され、包括解析(Intent-to-treat、ITT)が行われた。
    <介入>
     個別型援助(IPS)は、地域社会で雇用を得ることに障害を持つ人が各自の仕事の好みに基づいた雇用を得ること速やかに保障する援助付きの雇用介入である。
     過渡的就労(transitional work)は、地域社会における競争的雇用への準備として、人々に非競争的な仕事を一時的に割り当てる段階的職業リハビリテーション介入である。
    <主要評価項目>
     事前仮説は、過渡的就労の参加者と比較して、IPS群の参加者は安定的労働者(steady workers)となり(主要評価項目)、18カ月間の競争的仕事(competitive jobs)からより多くの収入を得る(副次評価項目)であった。安定的労働者は、18カ月の追跡期間の少なくとも50%において競争的仕事を持っていると定義された。
    <結果>
     全部で541人の参加者(IPSが271人、過渡的就労が270人)が無作為化された。平均(標準偏差)年齢は42.4(11)歳、99人(18.3%)が女性、274人(50.6%)が白人、225人(41.6%)がアフリカ系米国人、そして90人(16.6%)がヒスパニック系、スペイン系、またはラテンアメリカ系の民族であった。
     安定的雇用を達成した参加者はIPS群のほうが過渡的就労群より多かった(105 [38.7%] vs 63 [23.3%]; オッズ比, 2.14; 95% CI, 1.46-3.14)。IPS参加者は、いずれかの競争的仕事を獲得した割合がより高く(186 [68.6%] vs 154 [57.0%]; P = .005)、より高い累積賃金を競争的仕事から得た(中央値 [四分範囲] IPS $7290 [$23 174]、過渡的就労 $1886 [$17 167]; P = .004)。
    <結論と関連性>
     この多施設試験は、慢性PTSDと共に生きる退役軍人について、段階的な過渡的就労の職業リハビリテーションに対するIPS付き雇用の有意に高い有効性を示した。本結果は、PTSDと共に生きる退役軍人のためにIPSの利用機会を増やすことを支持するエビデンスを提供する。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT01817712

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フィンランド全国双極性障害患者コホートにおける再入院の予防に対する薬物治療の実社会での有効性
    Markku Lähteenvuo et al. JAMA Psychiatry, published online February 28, 2018.
    Real-World Effectiveness of Pharmacologic Treatments for the Prevention of Rehospitalization in a Finnish Nationwide Cohort of Patients With Bipolar Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     双極性障害の再入院予防における薬物療法の比較有効性はどの程度か。
    <結果>
     この患者18,018人のフィンランド全国コホート研究において、リチウム使用は精神疾患と身体疾患による再入院の最小リスクと関連した。持続性の注射薬を用いた治療の間の再入院のリスクは、その経口相当薬を用いた治療と比較しておよそ30%低かった。
    <意義>
     双極性障害では依然としてリチウムが治療の第1選択であり、持続性の注射薬はリチウムが適当でない患者のための安全で有効な選択肢となるかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     気分安定薬と抗精神病薬は双極性障害に対する主要な維持治療法である。リチウムは最も有効な気分安定薬と考えられているが、特定の治療と関連する全体的な健康アウトカム、および再入院予防における特定の向精神薬または投与手段の長期的な比較有効性についてはほとんど知られていない。
    <目的>
     双極性障害を持つ患者の全国コホートにおいて、再入院予防における薬理学的治療の比較有効性を究明すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、双極性障害のために入院したフィンランドの全患者18,018人(平均追跡期間は7.2年)において、1987年1月1日から2012年12月31日の間の精神疾患、心血管疾患、そしてあらゆる理由による入院のリスクを、入院と投薬について前方視的に収集された全国データベースを用いて調べた。一次解析は個人内解析(within-individual analysis)であり、選択バイアスを除外するために各個人が対照として使われた。本研究では併用された向精神薬の効果、罹病期間、および曝露および非曝露期間の時間的順序が調整された。統計解析は1996年1月1日から2012年12月31日に実施された。
    <主要評価項目>
     再入院についての調整ハザード比(adjusted hazard ratios、HRs)が計算された。
    <結果>
     本コホート(女性9558人と男性8460人から構成され、平均 [標準偏差] 年齢は46.6 [17.0] 歳)において、9721人(54.0%)の患者が少なくとも1回の精神科への再入院を経験した。
     未調整の統計学的有意性に達する特定の薬剤の使用と未使用の比較のうち、リスペリドンの持続性注射薬(HR, 0.58 [95% CI, 0.34-1.00])、ガバペンチン(HR, 0.58 [95% CI, 0.44-0.77])、ペルフェナジンの持続性注射薬(HR, 0.60 [95% CI, 0.41-0.88])、および炭酸リチウム(HR, 0.67 [95% CI, 0.60-0.73])が、精神科への再入院の最も低いリスクと関連した。あらゆる理由による入院に関しては、リチウム(HR, 0.71 [95% CI, 0.66-0.76])が最も低いリスクと関連した。
     最も頻繁に使用された抗精神病薬であるフマル酸クエチアピンは、僅かな有効性を示したに過ぎなかった(精神科への再入院のリスク: HR, 0.92 [95% CI, 0.85-0.98]; あらゆる理由による入院のリスク: HR, 0.93 [95% CI, 0.88-0.98])。持続性の注射薬は、同等の経口抗精神病薬よりもかなり良いアウトカムと関連した(精神科への再入院のリスク: HR, 0.70 [95% CI, 0.55-0.90]; あらゆる理由による入院のリスク: HR, 0.70 [95% CI, 0.57-0.86])。
     感度分析の結果は、リチウムと持続性の注射薬についてのみ、その経口同等薬に対する一貫した比較有益効果を示した。
    <結論と関連性>
     精神または身体疾患による入院を予防する上で、リチウムが最も有効な気分安定薬であり、持続性の注射薬が最も有効な抗精神病薬であった。

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精神病を持つ患者の行動、臨床、および複数様式の画像の表現型間の多変量関連
    Moser DA et al. JAMA Psychiatry, published online March 7, 2018.
    Multivariate Associations Among Behavioral, Clinical, and Multimodal Imaging Phenotypes in Patients With Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病において、画像以外の臨床的・行動的・生活様式および心臓代謝の諸因子の、複数様式の神経画像表現型に対する寄与はいかなるものか?
    <結果>
     この統合失調症を持つ92人の患者、双極性障害を持つ37人の患者、および48人の健常ボランティアの画像研究において、非画像データと画像データはかなりの共変動を示した。一般知能、体格指数、陽性精神病症状、物質使用、および抗精神病薬は、脳の構造と機能における変動の主要な寄与因子であった。
    <意義>
     この研究の結果は、精神病に関連する脳病態のより正確な特徴付けを行うために、これら鍵となる因子を今後の研究に含める重要性を強調する。

    論文要旨:
    <重要性>
     複数の神経画像表現型における変化が精神病性障害において報告されてきた。しかしながら、神経画像測定は精神病と直接関係しない因子に影響を受けることがあり、症例と対照の差異に対する解釈を混乱させるかもしれない。したがって、精神病におけるこれらの因子の神経画像表現型への寄与を詳細に特徴付ける必要がある。
    <目的>
     統合的多変量アプローチを用いて、精神病における神経画像測定と、行動、健康、および人口統計学的変数の関連を定量化すること。
    <設計・設定・参加者>
     この画像研究は2014年6月26日から2017年3月9日の間に、1つの大学研究病院において実施された。高解像度の複数様式の磁気共鳴画像データが、統合失調症を持つ100人の患者、双極性障害を持つ40人の患者、および50人の健常ボランティアから得られた。皮質厚、皮質下体積、白質異方性、(作業記憶と情動再認中の)課題に関連した脳賦活、および安静状態の機能的結合性が算出された。臨床特性、認知、物質使用、心理的トラウマ、身体活動、および体格指数に関係する非画像測定がすべての参加者で確定された。画像測定と非画像測定の間の関連は、頑強な信頼性評価を持つスパース正準相関分析(sparse canonical correlation analysis)を用いてモデル化された。
    <主要評価項目>
     精神病を持つ患者と健常ボランティアにおける、非画像測定と神経画像測定の間の関連の多変量関連パターン。
    <結果>
     解析は統合失調症を持つ92人の患者(女性23人 [25.0%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 27.0 [7.6] 歳)、双極性障害を持つ37人の患者(女性12人 [32.4%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 27.5 [8.1] 歳)、および48人の健常ボランティア(女性20人 [41.7%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 29.8 [8.5] 歳)において行われた。
     画像と非画像データセットは有意な共変動を示し(r = 0.63, P < .001)、それは診断と無関係であった。検討された非画像変数において、年齢(r = −0.53)、IQ(r = 0.36)、体格指数(r = −0.25)は複数の画像表現型と、大麻使用(r = 0.23)、他の物質使用(r = 0.33)は皮質下体積と、アルコール使用は白質完全性(r = −0.15)と関連した。多変量モデルにおいて、陽性症状は依然として全脳画像(r = −0.13)、皮質厚(r = −0.22)、課題に関連した賦活変量(r = −0.18)と関連を持ち、陰性症状の大部分は皮質下体積の測定(r = 0.23)と、抑うつ/不安は白質完全性の測定(r = 0.12)と関連した。
    <結論と関連性>
     多変量解析は、神経画像表現型に影響する他の鍵となる因子のモデル化を可能とするため、脳病態と精神病の間の関連のより正確な特徴付けを提供する。

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若者の苛立ちと不安の神経メカニズムを識別する潜在変数法
    A Latent Variable Approach to Differentiating Neural Mechanisms of Irritability and Anxiety in Youth.
    Kircanski K et al. JAMA Psychiatry. Published online April 6, 2018.

    キーポイント:
    <疑問>
     潜在変数統計法(latent variable statistical methods)は、若者において共起する症状次元の神経メカニズムを識別することができるか。
    <結果>
     この8歳から18歳の若者197人の磁気共鳴画像研究において、bi-factor分析は苛立ちと不安の症状の固有分散と共有分散を分解した。脅威の定位を評価する機能的神経画像課題に関して、これらの表現型は二重解離を示した。すなわち、苛立ちは広範囲のかく乱された神経活動と関連したが、不安は扁桃体のかく乱と関連した。
    <意義>
     子供の精神病理のモデル化に対するbi-factor法は、表現型特異的なメカニズムが、臨床的に意義のある脅威の定位の背景に存在することが見出された点で新規の二重解離を示した(訳注:bi-factorモデルは,すべての観測変数に影響を与える一般因子general factor、および下位領域ごとの影響としてグループ因子group factorを仮定し、またグループ因子同士は直交すると仮定する)。

    論文要約:
    <重要性>
     併存症は精神医学では至る所に存在するが、共起する症状の神経メカニズムを識別する方法は知られていない。子供の苛立ちと不安の症状はよくあり、かつしばしば一緒に生じる。脅威の定位は両表現型に関係し、固有の神経メカニズムと共有する神経メカニズムを調べる上で理想的内容を持つ。
    <目的>
     子供の苛立ちと不安の症状の固有分散と共有分散を分解して、これら識別された表現型の脅威の定位中の神経相関を決定すること。
    <設計・設定・参加者>
     この調査は機能的磁気共鳴画像の横断研究で、設定は国立精神衛生研究所の研究医療機関であった。参加者は複数の診断カテゴリーに及ぶ8歳から18歳の若者であった(重篤気分調節症、不安症、および/または注意欠如・多動症を持つ141人の若者と56人の健常な若者)。この組み合わせにより、苛立ちと不安の症状レベルは広範囲に分布することになった。データは2012年6月30日から2016年6月28日に獲得された。
    <主要評価項目>
     参加者と親が感情反応性質問票(the Affective Reactivity Index)に基づいて若者の苛立ちを、子供の不安関連情緒障害質問票(the Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders)に基づいて不安を評定した。Bi-factor分析により固有分散と共有分散が分解された。機能的磁気共鳴画像のdot-probe課題は、怒り顔(脅威あり)と中性顔(脅威なし)に向けられた注意を評価した。全脳解析ではbi-factor由来の表現型と神経活動、扁桃体の機能的結合性の両方との関連が調べられた。
    <結果>
     最終解析に含められた197人の参加者の平均(標準偏差)年齢は13.1(2.7)歳で、91人(46.2%)が女性であった。最適bi-factorモデル(Comparative Fit Index, 0.959; Root Mean Square Error of Approximation, 0.066)には、親報告の苛立ち、若者評価の苛立ち、および不安の固有因子と、否定的感情の共通因子が含まれた。
     課題が脅威から注意を逸らすことを求める場合は、より高い親報告の苛立ちが島、尾状核、背外側および腹外側前頭前皮質、および下頭頂小葉の活動増加と関連した(t189≥4.15 for all, P < .001 for all)。対照的により高い不安は、扁桃体と帯状回、視床、および中心前回の結合性の減少と関連した(t189≤−4.19 for all, P < .001 for all)。これらの明確な神経相関は診断的方法では見出されなかった。
    <結論と関連性>
     共起する症状次元を説明する潜在変数法は、新規の二重解離を明らかにした。脅威から注意を逸らす間は、苛立ちのみが神経活動と関連し、不安のみが扁桃体の結合性と関連した。臨床神経科学にとって症状の共起は難しい問題ではあるが、データ駆動型の表現型決定が前進を促すかもしれない。

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統合失調症における突然死
    Kevin J. Li et al. Curr Opin Psychiatry 2018; 31: 169-175.
    Sudden Death in Schizophrenia.

    論文要約:
    <レビューの目的>
     統合失調症を持つ患者の突然死に関する最近の文献を調べ、このエビデンスに基づく明確な結論を統合すること。
    <最近の知見>
     心臓突然死は突然の予期せぬ死亡の最大の要因であり、突然死の最高40%が心臓血管系の原因による。突然死は第1および第2世代の抗精神病薬への曝露と関連付けられてきた。突然死のリスクはクロザピン(オッズ比 (OR) 3.67, 95% 信頼区間 (CI) 1.94–6.94)が最高で、リスペリドン(OR 3.04, 95% CI 2.39–3.86)、オランザピン(OR 2.04, 95% CI 1.52–2.74)が続く。
     抗精神病薬の使用と関連しない突然死は、いくつかの修正可能・不可能なリスク因子-肥満、喫煙、脂質異常症、糖尿病、高血圧、年齢、性別、および心血管疾患の既往歴と相関する。他の突然死の要因には、敗血症に至る無顆粒球症、肺塞栓症に至る深部静脈血栓症、敗血症に至る誤嚥性肺炎を含む血液疾患と肺疾患による原因がある。
    <結論>
     統合失調症における突然死に焦点を当てた遺伝学的・薬理遺伝学的データは全く欠落している。今後の研究は、これら道筋の遺伝的側面と背景にある分子メカニズムを重要視すべきであり、突然死の高リスクにある患者の早期発見と予防法の発見も強調されるべきである。

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中高年成人において座って行う行為は内側側頭葉の厚さの減少と関連する
    Siddarth P et al. PLoS ONE 13(4): e0195549.
    Sedentary behavior associated with reduced medial temporal lobe thickness in middle-aged and older adults.

    論文要約:
     内側側頭葉(medial temporal lobe、MTL)の萎縮は加齢と共に起こり、エピソード記憶の低下につながる。有酸素運動は、重点的に研究されてきた記憶に重要なMTL領域である海馬の全体積と正相関する。しかし、座って行う行為と、MTL亜領域の完全性との関連についての研究は限られている。そこで我々は、MTLとその亜領域(CA[アンモン角cornu ammon]1領域、CA2とCA3と歯状回dentate gyrusを合わせた領域[CA23DG]、紡錘状回fusiform gyrus、鉤状回subiculum、海馬傍回parahippocampal cortex、嗅周皮質perirhinal cortex、嗅内皮質entorhinal cortex)の厚さ、身体活動、および座って行う行為の関連を探索した。
     メッツ(METs、訳注:活動・運動を行った時に安静状態の何倍のカロリー消費をしているかを示す指標)で身体活動レベルを定量し、一日当たりの座って過ごす平均時間数を質問する高齢者のための国際身体活動質問表(the International Physical Activity Questionnaire)を用いて、35人の認知症のない中高年の成人を評価した。全参加者がSiemens Allegra 3テスラMRI装置で撮影された高解像度MRIデータを有し、 MTLの詳細な探索が可能であった。
     年齢を制御すると、全MTL厚は一日当たりの座っている時間と逆相関した(r = -0.37, p = 0.03)。MTLの亜領域分析では、海馬傍回厚(r = -0.45, p = 0.007)、嗅内皮質厚(r = -0.33, p = 0.05)、鉤状回厚(r = -0.36, p = .04)が、一日当たりの座っている時間と逆相関した。我々の予備的結果は、「認知症はないが座って過ごすことが多い人はMTL厚がより薄い」ことを示している。今後の研究には、縦断的分析とメカニズムの探索、およびこの関連を逆転させるために座っている行為を減らすことの有効性検証が含まれるべきである。

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統合失調症と乳癌の発症リスクの関連:メタ解析
    Chuanjun Zhuo et al. JAMA Psychiatry, published online March 7, 2018.
    Association of Schizophrenia With the Risk of Breast Cancer Incidence: A Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症を持つ女性は乳癌のリスクがより高いか。
    <結果>
     125,760人の女性を含む12のコホート研究に対して従来のメタ解析の方法で行われた本メタ解析において、女性の統合失調症は一般人口と比較して乳癌発症の増加と関連した。しかし、広い予測区間で示される研究間の相当なばらつきが存在する。
    <意義>
     本結果は、統合失調症を持つ女性の乳癌発生率が一般女性集団のそれより高いことを示しているが、検討された研究間には有意な異質性が存在する。したがって、今後の研究が統合失調症を持つ女性の乳癌リスクが一般人口集団より低いことを示すこともあり得る。

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アルコール性の大脳皮質傷害における加齢・薬物依存・C型肝炎併存の役割
    Sullivan EV et al. JAMA Psychiatry, published online March 14, 2018.
    The Role of Aging, Drug Dependence, and Hepatitis C Comorbidity in Alcoholism Cortical Compromise.

    キーポイント:
    <疑問>
     成人期まで続くアルコール依存を持つ男女において、アルコールに関連する皮質体積の欠損パターンはどのようなものか。それらは加齢で加速されたり、薬物依存やC型肝炎ウイルス感染の併存で増強されたりするか。
    <結果>
     この横断的/縦断的混合研究は、199人の対照者と222人のアルコール依存症を持つ参加者において14年間にわたり収集された磁気共鳴画像データを評価した。結果は、アルコール依存を持つ人の前頭葉に分布する皮質体積の欠損、加速された年齢依存性の欠損、薬物依存またはC型肝炎ウイルス感染の併存で増強される欠損を示した。
    <意義>
     これらの結果は、アルコールの不適切な使用が中年期以降に生じたとしても、アルコール依存に伴う皮質老化が加速されるリスクが高まる懸念を示す。

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うつ病の家族リスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカー
    Fischer AS et al. JAMA Psychiatry, published online March 21, 2018.
    Neural Markers of Resilience in Adolescent Females at Familial Risk for Major Depressive Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病のリスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカーは何か。
    <結果>
     65人の青年期女性の縦断研究において、我々は辺縁系、顕著性、および実行制御のネットワークにおける機能的結合性を調べた。高リスクであるがうつ病に対して回復力がある青年期女性では、高リスクでありうつ病を発症した青年期女性、および低リスクの対照青年と比較して、辺縁系と実行制御のネットワークにおける領域間の結合性がより強かった。さらに、この結合性の強度は、回復力のある青年期女性グループでは陽性の生活上の出来事と相関した。
    <意義>
     我々の結果は、青年期うつ病に対するレジリエンスの機能的神経画像バイオマーカーの重要性を強調し、これはうつ病の予防と治療の標的候補となるかもしれない。

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うつ病を持つ患者における脳皮質変化と再発の関連
    Zaremba D et al. JAMA Psychiatry, published online March 28, 2018.
    Association of Brain Cortical Changes With Relapse in Patients With Major Depressive Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病の再発は、脳の形態学的変化と関連するか。
    <結果>
     この縦断的、症例対照、磁気共鳴画像研究において、うつ病を持つ患者は、追跡調査間の再発の有無によって異なる皮質灰白質変化の軌跡を示した。これらの変化は、追跡時の精神科薬物療法やうつ病の重症度とは有意に関連しなかった。
    <意義>
     うつ病の再発は、感情と認知の制御に重要な脳領域の形態学的変化と関連する。

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小児期の易刺激性および抑うつ/不安気分のプロフィールと青年期の自殺念慮・企図の関連
    Orri M et al. JAMA Psychiatry, published online March 28, 2018.
    Association of Childhood Irritability and Depressive/Anxious Mood Profiles With Adolescent Suicidal Ideation and Attempts.

    キーポイント:
    <疑問>
     子供の易刺激性と抑うつ/不安気分のプロフィールが異なれば、青年期の自殺のリスクも異なるのだろうか。
    <結果>
     この地域ベースのコホート研究において、小児期(6から12歳)における強い易怒性と強い抑うつ/不安気分のプロフィールを持つ1,430人の子供は、抑うつ/不安気分だけを持つ子供、または弱い易怒性と弱い抑うつ/不安気分を持つ子供と比べて、青年期(13から17歳)に自殺について考えたり自殺企図を起こしたりすることが2倍多かった。
    <意義>
     小児期の易怒性は特に強い抑うつ/不安気分を呈する子供において、青年期の自殺リスクを評価する場合に考慮すべきである。

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精神病への早期介入サービスと、初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の自殺率の関連
    Sherry Kit Wa Chan et al. JAMA Psychiatry, published online April 4, 2018.
    Association of an Early Intervention Service for Psychosis With Suicide Rate Among Patients With First-Episode Schizophrenia-Spectrum Disorders.

    キーポイント:
    <疑問>
     早期介入サービスは、統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の長期自殺率の低下と関連するか。
    <結果>
     この初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ1,234人の患者(早期介入群=617人、標準的ケア群=617人)の歴史的対照研究(historical control study)において、2年間の早期介入サービスを受けた患者の12年間の自殺率は有意により少なく、その主要な差は最初の3年間に観察された。
    <意義>
     早期介入サービスは、統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の最も脆弱な時期の自殺率減少に関連する可能性があり、その恩恵は長期にわたって持続するかもしれない。

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早期精神病のための早期介入サービスと従来の治療の比較:系統的レビュー・メタ解析・メタ回帰
    Correll CU, et al. JAMA Psychiatry, published online May 2, 2018.
    Comparison of Early Intervention Services vs Treatment as Usual for Early-Phase Psychosis: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression.

    キーポイント:
    <疑問>
     早期精神病を持つ患者における症状と疾患に関連した治療アウトカムについて、早期介入サービスは従来の治療より優れているか。
    <結果>
     10のランダム化臨床試験(2176人の患者)についての本メタ解析において、治療終結時のメタ解析可能なすべての評価項目に関して、早期介入サービスは従来の治療よりも良いアウトカムと関連した。これらの評価項目には、あらゆる理由による早期介入サービスまたは従来の治療の中断、および少なくとも1回の精神科入院があった。
    <意義>
     早期精神病において、早期介入サービスは従来の治療と比較してより優れたアウトカムと関連した。これは早期精神病を持つ患者における財政的支援の必要性と早期介入サービスの使用を支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     統合失調症スペクトラム障害を持つ人のアウトカムは次善にとどまることから、精神病における早期介入の価値と公的資金の配分については長く議論されてきた。
    <目的>
     早期精神病についての早期介入サービス(early intervention services、EIS)と従来の治療(treatment as usual、TAU)を比較すること。
    <データ源>
     2017年6月6日までのPubMed、PsycINFO、EMBASE、ClinicalTrials.govの系統的文献検索を行ったが、言語については制限を設けなかった。
    <研究の選択>
     初回エピソード精神病、または早期の統合失調症スペクトラム障害においてEISとTAUを比較する無作為化試験。
    <データの抽出と統合>
     この系統的レビューはPRISMAガイドラインに従って実施された。変量効果メタ解析、事前に定められたサブグループおよびメタ回帰分析のために、3人の独立した研究者がデータを抽出した。
    <主要評価項目>
     主要評価項目は、あらゆる理由による治療の中断、および治療期間中の少なくとも1回の精神科入院であった。
    <結果>
     10件のランダム化臨床試験(平均 [標準偏差] 試験期間, 16.2 [7.4] ヶ月; 範囲, 9-24ヶ月)の2,157人の患者(平均 [標準偏差] 年齢, 27.5 [4.6] 歳; 1355 [62.3%] 人が男性)において、メタ解析可能な全13評価指標(治療終了時)において、EISはTAUより優れたアウトカムと関連した。
     これらの評価項目には次のものが含まれた:あらゆる理由による治療の中断(リスク比 [RR], 0.70; 95% CI, 0.61-0.80; P < .001)、少なくとも1回の精神科入院(RR, 0.74; 95% CI, 0.61-0.90; P = .003)、学校または仕事への影響(RR, 1.13; 95% CI, 1.03-1.24; P = .01)、全般症状重症度(標準化平均差 [SMD], −0.32; 95% CI, −0.47 to −0.17; P < .001)、陽性症状重症度(SMD, −0.22; 95% CI, −0.32 to −0.11; P < .001)、および陰性症状重症度(SMD, −0.28; 95% CI, −0.42 to −0.14; P < .001)。
     EISの優越性は全ての評価項目に関して、治療6、9、12、18、24カ月で明らかであった。
    <結論と関連性>
     早期精神病ではメタ解析可能なすべての評価項目にわたって、EISはTAUより優れていた。これらの結果は、財政的支援の必要性と早期精神病を持つ患者におけるEIS使用を支持する。

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抗コリン薬と認知症のリスク:ケースコントロール研究
    Kathryn Richardson et al. BMJ 2018; 361: k1315.
    Anticholinergic drugs and risk of dementia: case-control study.

    論文要約:
    <目的>
     様々な種類の抗コリン薬への曝露期間および曝露水準と、その後の偶発認知症の関連を推定すること。
    <設計・設定>
     ケースコントロール研究。臨床実践研究データリンク(the Clinical Practice Research Datalink)に貢献している英国の一般診療。
    <参加者>
     2006年4月から2015年7月の間に、認知症診断を持つとされた65~99歳の患者40,770人と、認知症を持たない対照283,933人。
    <介入>
     抗コリン性の認知的負荷の尺度(the Anticholinergic Cognitive Burden (ACB) scale)を用いてコードされた抗コリン薬の一日当たり用量で、認知症診断の4から20年前に処方された総量および下位クラス別の量。
    <主要評価項目>
     人口統計および健康に関連した共変量で調整された偶発認知症のオッズ比。
    <結果>
     14,453(35%)症例と86,403(30%)対照が、曝露期間に少なくとも1つのACBスコア3(抗コリン作用の定義)の抗コリン薬を処方された。ACBスコア3の抗コリン薬の調整済オッズ比は、1.11(95% 信頼区間 1.08-1.14)であった。認知症は平均ACBスコアの上昇と関連した。
     薬剤クラスを考慮した場合、ACBスコア3の胃腸薬と認知症の関係は明確ではなかった。認知症のリスクは抗コリン薬、すなわち泌尿器薬と抗パーキンソン薬への曝露が大きいほど増加した。この結果はまた、診断前15~20年の曝露についても観察された。
    <結論>
     いくつかのクラスの抗コリン薬と、将来の認知症の発症との強固な関連が観察された。これは、クラス特異的効果または認知症の最初期症状に使われる薬剤によって引き起こされ得る。さらなる研究は、内因性抗コリン作用とは異なる抗コリン薬のクラスや、抗コリン曝露の総和的な大きさを調べるべきである。
    <試験登録>
     The European Union electronic Register of Post-Authorisation Studies EUPAS8705.

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ADHD-200 Global Competition:個人の特徴データを用いたADHD診断は、安静時fMRI測定を凌駕し得る
    Matthew R. G. Brown et al. Front. Syst. Neurosci., 28 September 2012.
    ADHD-200 Global Competition: diagnosing ADHD using personal characteristic data can outperform resting state fMRI measurements.

    論文要約:
     神経画像に基づく診断法は、臨床家がより正確な診断を下すことを支援する潜在的可能性を有し、結果としてより効率的な治療につながる。我々は注意欠如・多動症(ADHD)と健常対照を含む参加者973人の大規模データセットの分析を含む2011 ADHD-200 Global Competitionに参加した。各々参加者のデータは、安静時fMRI撮影と個人の特徴および診断データを含んだ。その目的は、参加者の安静時fMRI撮影を用いる個人を3つのカテゴリー、すなわち健常対照、ADHD混合型(ADHD-C)、またはADHD不注意型(ADHD-I)の一つに診断(分類)する機械学習分類器を得ることであった。我々は、診断予測を生成する記号論理分類器への入力として、fMRIデータをいっさい含まない参加者個人の特徴データ(データ収集場所、年齢、性別、利き手、動作性IQ、言語性IQ、および全検査IQ)を用いた。
     驚くべくことに、このアプローチは競技会に参加した21チームのうち最も高い診断精度(62.52%)と最も高いスコア(195点中124点)を達成した。これらの結果は、画像診断研究における年齢、性別、その他の個人の特徴の違いを考慮する重要性を示す。これらの結果のfMRIに基づく診断および臨床研究に対する意義についてさらに議論し、画像に基づく様々な診断法を有する我々のテストのうち、個人の特徴データのみを用いる記号論理分類器と同じくらい作動するものはないことを示した。

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レジスタンス運動トレーニングの有効性と抑うつ症状の関連:ランダム化臨床試験のメタ解析とメタ回帰分析
    Brett R. Gordon et al. JAMA Psychiatry, published online May 9, 2018.
    Association of Efficacy of Resistance Exercise Training With Depressive Symptoms
    Meta-analysis and Meta-regression Analysis of Randomized Clinical Trials.

    キーポイント:
    <疑問>
     レジスタンス運動(訳注:スクワットや腕立て伏せ、またはダンベル体操など、自重または器具を用いて標的筋肉に抵抗=レジスタンスをかける動作を反復して行う運動のこと)トレーニングの有効性と抑うつ症状の全般的関連はいかなるものか。どのような論理的・理論的および/または先験的変数が抑うつ症状と関連するか。
    <結果>
     この1,877人の参加者を含む33の臨床試験のメタ解析において、レジスタンス運動トレーニングは、抑うつ症状の有意な減少と中等度の平均効果量をもって関連した。レジスタンス運動トレーニングの総量、健康状態、および強度の改善は抗うつ効果と関連しなかったが、盲検化された割付および/または評価を用いた試験では、抑うつ症状の改善はより小さかった。
    <意義>
     利用可能な経験的エビデンスは、抑うつ症状の代替および/または付加療法としてのレジスタンス運動トレーニングを支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     レジスタンス運動トレーニング(resistance exercise training、RET)の身体的な利点は十分に立証されているものの、RETと精神健康アウトカムの関連についてはあまり知られていない。これまでRETの抗うつ効果の定量的統合が実施されたことはなかった。
    <目的>
     RETの有効性と抑うつ症状の関連を推定し、論理的・理論的、および/または先験的変数がどのくらい抑うつ症状と関連しRETの有効性と抑うつ症状の関連が総効果量の変動を説明するか否かを確定すること。
    <データ源>
     2017年8月以前に公表された文献で、Google Scholar、MEDLINE、PsycINFO、PubMed、Web of Scienceを用いて同定されたもの。
    <研究の選択>
     RET(n = 947)または非活動的な対照条件(n = 930)への無作為割付を含むランダム化臨床試験。
    <データの抽出と統合>
     ヘッジのd効果量が計算され、変量効果モデルがすべての分析で使われた。参加者および試験特性の潜在的な媒介効果を定量するために、メタ回帰が実施された。
    <主要評価項目>
     妥当性が検証された抑うつ症状の測定を使用して、ベースラインと介入中点および/または介入後に評価したランダム化臨床試験。
     効果量の変動について焦点を当てた研究仮説を提供するために、4つの主要な媒介変数が前もって選択された:1)RETの総処方量、2)参加者が健康か身体疾患または精神疾患を持っているか、3)割付および/または評価の盲検化の有無、4)RET介入が筋力の有意な改善をもたらしたか否か。
    <結果>
     54の効果が1,877人の参加者を含む33のランダム化臨床試験から見出された。レジスタンス運動トレーニングは、0.66(95% CI, 0.48-0.83; z = 7.35; P < .001)の中等度の効果量をもって抑うつ症状の有意な減少と関連した。
     有意な異質性が示され(total Q = 216.92, df = 53; P < .001; I2 = 76.0% [95% CI, 72.7%-79.0%])、サンプリング誤差は観察分散の32.9%を説明した。治療必要症例数(NNT)は4であった。
     RETの総処方量、参加者の健康状態、および筋力の改善は、RETの抗うつ効果と有意に関連しなかった。しかし、盲検化された割付および/または評価を用いた試験では、抑うつ症状の改善はより小さかった。
    <結論と関連性>
     レジスタンス運動トレーニングは、健康状態、RETの総処方量、または筋力の有意な改善に関わりなく成人の抑うつ症状を有意に減少させた。割付と評価の両方が盲検化され、抑うつ症状について他の経験的に支持されている治療とRETを比較するより質の高いランダム化臨床試験が必要である。

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米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法と薬物療法の費用対効果
    Eric L. Ross et al. JAMA Psychiatry, published online May 9, 2018.
    Cost-effectiveness of Electroconvulsive Therapy vs Pharmacotherapy/Psychotherapy for Treatment-Resistant Depression in the United States.

    キーポイント:
    <疑問>
     米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法の、抗うつ薬治療および/または心理療法と比較した場合の費用対効果はいかなるものか。
    <結果>
     この複数の公開情報源からのデータを統合する数学モデル解析において、電気けいれん療法をうつ病の第3段階の治療として提供することは、生活の質で調整した生存年数(quality-adjusted life-year, QALY)1年の獲得のために推定54,000ドルを必要とする。これは4年間で、制御されないうつ病を持つ時間を生存年数にして50から34%減少させる。
    <意義>
     電気けいれん療法は、治療抵抗性うつ病に対して有効性が高く費用対効果の良い治療である可能性があり、第2段階かそれ以上の薬物療法および/または心理療法が失敗した後に考慮すべきである。

    論文要約:
    <重要性>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)は非常に有効なうつ病治療であるが、スティグマ、適用の不確かさ、有害作用、および費用が高いとの認識から使用されることは少ない。
    <目的>
     米国における治療抵抗性うつ病に対する薬物療法/心理療法と比較したECTの費用対効果を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     米国のヘルスケア部門という見地から4年間の範囲のうつ病治療をモデル化するために、薬物療法と心理療法と比較したECTの臨床的有効性、費用、そしてQOL効果に関するデータを統合する決定分析モデルが使われた。モデルへの入力データは、うつ病を持つ患者の複数のメタ解析、ランダム化試験、および観察研究から引き出した。可能な場合はデータ源を、非精神病性のうつ病に関する米国を基盤とする研究に限った。データは2017年6月から2018年1月に分析された。
    <介入>
     うつ病治療にECTを導入する(ゼロから第5段階の薬物療法と心理療法の失敗後の)6つの代替方略が、ECTを導入しない場合と比較された。
    <主要評価項目>
     うつ病の寛解、反応、および非反応、生活の質で調整した生存年数(quality-adjusted life-years、QALY)、2013年の米ドルでの費用、および増分費用対効果比(incremental cost-effectiveness ratios[ICER]、訳注:[新しい薬または治療法の費用-既存の薬または治療法の費用]÷[新しい薬または治療法の効果-既存の薬または治療法の効果]の計算式によって求められる値)。1年のQALYあたり100,000ドル、あるいはそれ以下のICGRを持つ方略は費用効果が高いとみなされた。
    <結果>
     うつ病の検証型治療継続アルゴリズム(Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression、訳注:米国の公的研究費の助成を受けて2003年から実施されてきたうつ病に対する大規模臨床試験で、STAR*Dと略される)に基づいて、我々は平均年齢(標準偏差)40.7(13.2)歳、女性が62.2%を占める集団をモデル化した。
     4年間でECTは制御されないうつ病を持つ時間を生存年数にして50%から33-37%減少させ、この改善はECTがより早く提供されるほど大きかった。平均健康ケア費用は7,300から12,000ドル増加し、この増加はECTがより早く提供されるほど大きかった。ベースケースにおいて第3段階のECTは費用対効果が良く、ICERはQALYにつき54,000ドルであった。
     第3段階のECTは単変量(univariate)、シナリオ(scenario)、確率的(probabilistic)感度分析において依然として費用対効果が高かった。すべての入力データを組み入れて、我々は少なくとも1つのECT方略が費用効率的となる公算を74~78%、第3段階のECTが最適方略となる公算を56~58%と推定した。
    <結論と関連性>
     治療抵抗性うつ病を持つ米国の患者について、ECTは有効で費用効率の良い治療オプションかもしれない。多くの因子がECTを推し進めるという決定に影響するが、これらデータは健康経済的視点からは、ECTは第2あるいはそれ以降の薬物療法/心理療法が失敗した後に考慮すべきことを示唆している。

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うつ病または双極性障害を持つ人および健常対照における筋力と認知の関連
    Firth J et al. JAMA Psychiatry, published online April 18, 2018.
    Association Between Muscular Strength and Cognition in People With Major Depression or Bipolar Disorder and Healthy Controls.

    キーポイント:
    <疑問>
     握力はうつ病または双極性障害を持つ人と健常対照における認知機能の指標となり得るか。
    <結果>
     この110,067人からなる地域住民データセットの横断分析において、交絡因子とは無関係に、握力はうつ病を持つ人と健常対照の認知5領域すべてと有意に関連した。類似の関連が、より弱い程度ではあるが双極性障害を持つ人で観察された。
    <意義>
     握力はうつ病を持つ人と持たない人の認知全般と関連する。筋肉機能は神経認知障害評価の代替となって、認知改善を目的とする新規の介入アウトカムを提供するかもしれない。

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血族結婚と子孫の精神病理:住民全体データの関連研究
    Maguire A et al. JAMA Psychiatry, published online April 4, 2018.
    Consanguineous Marriage and the Psychopathology of Progeny: A Population-wide Data Linkage Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     血縁関係にある両親の子供は、一般気分障害または精神病のリスクが高いか。
    <結果>
     この363,960人の参加者からなる住民全体のコホート研究において、血縁関係にある両親の子供は、成人期における向精神薬の使用可能性の上昇と関連した。近親の血縁関係にある両親の子供は、血縁関係のない親の子供と比べて、一般気分障害に対する投薬を3倍、精神病に対する投薬を2倍多く受ける傾向がある。
    <意義>
     近親血族の親から生まれた子供は、一般気分障害と精神病のリスクが高い。

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MEMO+:軽度認知障害を持つ人の認知訓練と心理社会的介入の有用性・継続性・効果
    Sylvie Belleville et al. J Am Geriatr Soc 2018; 66: 655-663.
    MEMO+: Efficacy, Durability and Effect of Cognitive Training and Psychosocial Intervention in Individuals With Mild Cognitive Impairment.

    論文要旨:
    <背景と目的>
     よく計画されたランダム化比較試験が少ないことから、軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)を持つ人に対する認知訓練の有用性については同意がない。本研究の目的は、MCIを持つ人の認知機能について記憶訓練の効果とその持続性を評価し、この効果が日常生活に般化するか否か、心理社会的介入から好ましい効果を得ることができるか否かを確認することであった。
    <デザイン>
     単盲検のランダム化比較試験
    <設定>
     Institut Universitaire de Gériatrie de MontréalとInstitut Universitaire en Santé Mentale de Québecの研究センター。
    <参加者>
     健忘型MCIの基準を満たす145人の高齢成人。
    <介入>
     参加者は認知訓練、心理社会的介入、またはコンタクトなしの対照条件に無作為に割り付けられた。介入は8回の2時間のセッションの中で、小規模なグループにおいて提供された。
    <測定>
     評価項目測定は、即時および遅延集成行動記憶スコア(composite performance memory scores)、心理的健康(抑うつ、不安、well–being)、および介入の般化効果(日常生活における方略の活用、日常生活の複雑な活動における困難、記憶に関する悩み)であった。検査は訓練前、訓練直後、訓練3カ月後、および訓練6カ月後に実施された。
    <結果>
     認知訓練条件の参加者は、遅延集成記憶スコアと日常生活における方略の活用に関して改善した。改善は3カ月後および6カ月後の経過観察評価において維持された。心理社会的条件とコンタクトなし条件の参加者は有意な改善を示さなかった。
    <結論>
     認知訓練は健忘型MCIを持つ人の記憶を改善する。効果は6カ月間にわたって持続し、学習された方略は日常生活で活用される。認知訓練はMCIの認知を促進する妥当な方法である。

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臨床的高リスク状態外で精神病を予測することは可能か:精神疾患の非精神病リスク症候群の系統的レビュー
    Tae Young Lee et al. Schizophr Bull 2018; 44: 276-285.
    Can We Predict Psychosis Outside the Clinical High-Risk State? A Systematic Review of Non-Psychotic Risk Syndromes for Mental Disorders.

    論文要約:
     精神病は、最近のエビデンスによれば精神病の臨床的高リスク状態にある(at clinical high risk for psychosis、CHR-P)人々からだけでなく、非精神病性の精神疾患の臨床的リスク症候群からも発症し得ることを示している。他の非精神病性の精神疾患よりむしろ精神病を発症するこれら臨床的リスク症候群を持つ人の割合は未確定である。新規の非精神病性の精神疾患の発症についての臨床的リスク症候群に関して報告する研究を、電子データベースで検索した。
     評価項目はICDまたはDSM上で定義される新規の精神病性および非精神病性の精神疾患の発症で、非精神病性のリスクを有する3,006人に関する全部で9つの研究が含まれた。前向き研究においては(n = 4, sample = 1051)、これら臨床的リスク症候群にわたる新規の精神病性障害の統合発症率は1,000人年あたり12.9(95% CI: 4.3 to 38.6)、非精神病性障害(n = 3, sample = 538)のそれは1,000人年あたり43.5人(95% CI: 30.9 to 61.3)であった。
     CHR-P群よりも低い発症率ではあるが、精神病性障害はCHR-Pの枠組み以外、つまり偶発非精神病性障害についての臨床的リスク症候群から発症することがある。新規の非精神病性の障害についての臨床的リスク症候群は、いくつかの種類の精神疾患を発現させる多能性のリスクを示しているのかもしれない。もし将来の研究によって立証されるのであれば、今回の結果はCHR-Pの基準を満たす人を同定するという現行の戦略を越えることの有益性を示唆する。

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低中所得国における都市化の程度(urbanicity)と精神病の関連
    Jordan E. DeVylder et al. JAMA Psychiatry, published online May 16, 2018.
    Association of Urbanicity With Psychosis in Low- and Middle-Income Countries.

    キーポイント:
    <疑問>
     低中所得国において都会生活は精神病体験または精神病性障害の増加と関連するか。
    <結果>
     この42カ国、215,682人の参加者の横断的疫学研究において、都会に住むことは精神病体験または精神病性障害の増加と関連しなかった。
    <意義>
     都会生活と精神病の関連は高所得国では広く再現されているが、世界人口の80%が居住する低中所得国には一般化されない可能性がある。

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イングランドにおける個人および地域の社会経済的要因と認知症発症率の関連:イングランド加齢縦断研究における12年の経過観察からのエビデンス
    Dorina Cadar et al. JAMA Psychiatry. Published online May 16, 2018.
    Individual and Area-Based Socioeconomic Factors Associated With Dementia Incidence in England: Evidence From a 12-Year Follow-up in the English Longitudinal Study of Ageing.

    キーポイント:
    <疑問>
     多様な社会経済的マーカーと認知症発症率の関連はいかなるものか。
    <結果>
     この縦断的コホート研究は、教育でなく晩年の財産が認知症リスクの上昇と関連することを見出し、金融資産がより少ない人はリスクがより高いことが示唆された。社会経済的に豊かではない地域への居住(neighborhood deprivation)との関連では本質的差異は見出されなかったが、より後年に生まれた人々の間で社会経済的不平等がより大きいことを強調する年齢-コホート効果が観察された。
    <意義>
     高齢成人の同世代コホートにおける社会経済的状態と認知症発症率の関連は、教育よりも財産によってもたらされる可能性がある。

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ベトナム戦争時代の双生児における抑うつ症状と心拍変動の関連:縦断的双生児研究
    Minxuan Huang et al. JAMA Psychiatry, published online May 16, 2018.
    Association of Depressive Symptoms and Heart Rate Variability in Vietnam War–Era Twins: A Longitudinal Twin Difference Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     自律神経調節の指標の一つである心拍変動と抑うつ症状の関連の方向は如何なるものか。
    <結果>
     この146人の双生児(73対)を含む縦断的双生児差研究において、ベースライン時のより低い心拍変動は、経過観察時の増加する抑うつ症状と独立に関連した。ベースライン時の抑うつ症状と経過観察時のより低い心拍変動の縦断的関連は強固ではなく、抗うつ薬の使用によって大部分が説明された。
    <意義>
     自律神経調節不全は、結果というよりうつ病のリスク因子と考えられる。

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うつ病および不安症と自己免疫性甲状腺炎の関連:系統的レビューとメタ解析
    Eva-Maria Siegmann et al. JAMA Psychiatry, published online May 2, 2018.
    Association of Depression and Anxiety Disorders With Autoimmune Thyroiditis: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     メタ解析的に推定した場合、抑うつと不安は自己免疫性甲状腺炎とどの程度関連するか。
    <結果>
     この36,174人の参加者からなる19の研究の系統的レビューとメタ解析において、自己免疫性甲状腺炎を持つ患者は健常対照と比べて、より高い抑うつと不安のスコアを示した。
    <意義>
     自己免疫性甲状腺炎と抑うつおよび不安の明確な関連は、患者の情報にとって重要な意味を持ち、心理療法にとどまらない器質的障害の早期治療の選択につながり得る。

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統合失調型障害から統合失調症への移行と物質使用障害の関連
    Carsten Hjorthøj et al. JAMA Psychiatry, published online April 25, 2018.
    Association of Substance Use Disorders With Conversion From Schizotypal Disorder to Schizophrenia.

    キーポイント:
    <疑問>
     物質使用障害、特に大麻使用障害は統合失調型障害から統合失調症への移行に関連するか。
    <結果>
     この偶発統合失調型障害を持つ2,539人の参加者を同定したオランダの全国登録に基づくコホート研究において、物質使用障害は統合失調症への移行に関連し、大麻使用障害の有病率は33.1%、統合失調症への移行率は58.2%であった。結果は交絡因子の制御後も統計学的に有意であった。
    <意義>
     統合失調型障害を持つ人の統合失調症への移行を減らすためには、広範かつ物質に標的を定めた予防努力が必要である。

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精神病への移行期の非組織的な脳回形成ネットワーク特性
    Tushar Das et al. JAMA Psychiatry, published online April 25, 2018.
    Disorganized Gyrification Network Properties During the Transition to Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病の高リスク状態にある患者は、非組織的な脳回形成ネットワーク特性を示すか。脳回形成に基づいて初回エピソード精神病への移行を予測することは可能か。
    <結果>
     この4つの研究群における161人の横断的磁気共鳴画像研究において、後に精神病を発症する患者は、臨床的高リスク状態においてさえ、非組織的な脳回形成ネットワーク特性を示す。脳回形成ネットワーク特性は、将来的な移行転帰を80%以上の正確度をもって予測する。
    <意義>
     構造的磁気共鳴画像からの脳回形成を基盤とするネットワークの構築は、精神病の臨床的高リスク状態にある人における将来の精神病を個別に予測することを促進するかもしれない。

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うつ病を持つ成人における抗うつ薬とベンゾジアゼピンの新規併用と、その後のベンゾジアゼピンの長期使用:2001~2014年の米国調査
    Bushnell GA et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 747-755.
    Simultaneous Antidepressant and Benzodiazepine New Use and Subsequent Long-term Benzodiazepine Use in Adults With Depression, United States, 2001-2014.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病患者が抗うつ治療を開始する場合に、どれだけ多くがベンゾジアゼピン療法を同時に始めるのか、抗うつ薬とベンゾジアゼピンを新規併用する患者では抗うつ治療の期間は異なるのか、どれだけ多くが薬剤併用を開始して長期のベンゾジアゼピン使用に至るのか。
    <結果>
     この抗うつ薬の内服を開始した成人765,130人のコホート研究において、81,020人がその同じ日にベンゾジアゼピンの内服を開始していた。ベンゾジアゼピンの使用は2001年の6.1%から2012年の12.5%に増加(それから2014年にかけては横ばい状態)していた。抗うつ薬とベンゾジアゼピンを新規併用することで、抗うつ治療の継続に臨床的に意味のある差異は認めなかった。これら両方の薬剤を用いて治療を開始した患者の12.3%が、長期(6カ月)にわたってベンゾジアゼピンの使用を続けた。
    <意義>
     患者が抗うつ治療を開始する際にベンゾジアゼピンを処方するか否かの決定には、潜在的な有益性と有害性の注意深い検討を必要とする。

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双極うつ病に対する付加的高照度光療法:ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
    Sit DK et al. Am J Psychiatry 2018; 175: 131-139.
    Adjunctive Bright Light Therapy for Bipolar Depression: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     双極性障害を持つ患者ではうつ病が反復し、気分症状は残遺することが多く、その治療選択枝は限られる。有望な予備的データに基づいて、双極うつ病に対する日中の高照度光療法の有用性を調べるために、著者らは6週間のランダム化二重盲検プラセボ比較試験を実施した。目的は寛解率、抑うつ症状の水準、そして気分極の反転率を決定すること、および睡眠の質を調査することである。
    <方法>
     本研究には、安定用量の抗躁薬の処方を受けている双極Ⅰ型またはⅡ型障害を持つうつ病相の患者(軽躁病または躁病、混合症状、あるいは急速交代を持つ患者は除く)が組み入れられた。患者は無作為に、7,000ルクスの高照度光または50ルクスの暗赤色プラセボ光(各群23名)に割り付けられた。症状は非定型うつ病が補足されたハミルトンうつ病構造化面接(the Structured Interview Guide for the Hamilton Depression Scale With Atypical Depression Supplement、SIGH-ADS)、躁病評価尺度(the Mania Rating Scale)、およびピッツバーグ睡眠質問票(the Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いて毎週評価された。寛解はSIGH-ADSスコアで8点またはそれ以下と定義された。
    <結果>
     ベースラインにおいて両群は中等度のうつ病を持っていたが、軽躁症状や躁症状はなかった。プラセボ光のグループと比べて、高照度光で治療されたグループは4~6週において有意に高い寛解率(22.2%に対して68.2%; 調整済オッズ比=12.6)を、評価項目測定において有意に低いうつ病スコア(14.9 [SD=9.2]に対して9.2 [SD=6.6]; 調整済β=-5.91)を経験した。気分極の反転は観察されなかった。睡眠の質は両群で改善して、両群間で有意な差を認めなかった。
    <結論>
     本研究のデータは、双極うつ病に対する日中の高照度光療法の有効性を支持する強固なエビデンスを提供する。

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認知症の独立したリスク因子としての中年期の不安診断への支持:系統的レビュー
    Amy Gimson1 et al. BMJ Open 2018; 8: e019399.
    Support for midlife anxiety diagnosis as an independent risk factor for dementia: a systematic review.

    論文要約:
    <目的>
     不安は「高齢成人および軽度認知障害を持つ人における認知低下の予測因子である」と益々認識されつつある。しばしば神経変性疾患の前駆徴候であると信じられているが、不安はまた、ここでは「認知症診断に先立つこと10年以上」と操作的に定義される認知症の独立したリスク因子かもしれない。
    <設計>
     不安診断と認知症の長期リスクに関する文献の系統的レビューが、公表済のガイドラインに従って実施された。
    <設定と参加者>
     Medline、PsycINFO、およびEmbaseが、2017年3月8月までの論文審査のある専門誌について検索された。前向きコホート、またはケースコントロール研究から、臨床基準に基づくあらゆる原因による認知症について、ハザード比またはオッズ比を報告している文献が選択された。含められた研究は、臨床的に意味のある不安を単独で、あるいはうつ病症状を調整後に測定し、少なくとも10年間の不安評価と後の認知症診断の平均間隔を報告していた。方法論上の質の評価は、Newcastle-Ottawa尺度を用いて行われた。
    <評価項目>
     あらゆる原因による認知症についてのハザード比またはオッズ比。
    <結果>
     検索は3,510の論文を見出し、うち4つ(0.02%)が適格であった。その研究の複合サンプルサイズは29,819人で、すべての研究は臨床的に意味のある不安と将来の認知症の正の関連を見出した。研究間の異質性のため、メタ解析は実施されなかった。
    <結論>
     中年期の臨床的に意味のある不安は、少なくとも10年の間を経て、認知症リスクの上昇と関連した。この結果は、前駆的な認知低下に関係する不安を除外して、不安が晩年の認知症のリスク因子である可能性を示す。臨床的不安が認知症の前駆症状とは別のリスク因子であることを確かめるために、認知症の修正可能なリスク因子の同定に焦点を当てる、より質の高い前向き研究が必要である。

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患者一人の予測のための計算神経画像戦略
    K.E.Stephan et al. Neuroimage 2017; 145, Part B: 180-199.
    Computational neuroimaging strategies for single patient predictions.

    ハイライト:
    • 患者一人の予測のための計算神経画像戦略の展望。
    • 精神医学と神経学における個人の疾患メカニズムを推定する生成モデル。
    • 推定されたメカニズムとベイズモデル選択および生成的埋込による臨床的予測の関連付け。
    • メカニズム的モデルに基づくアプローチと機械学習による統計学的予測の関連付け。

    論文要約:
     臨床的に意義のある患者一人ひとりに対する予測(single-subject predictions)を成し遂げようとして、神経画像(neuroimaging)は機械学習法(machine learning techniques)を活用することが増えている。機械学習に代わる一つの選択肢は、観察データの特徴と臨床的変数の間の予測的連関を確立しようとするものであり、行動および神経画像反応を生成する(病態)生理的・認知的メカニズムに関する推論についての計算モデル(computational models)の展開である。
     この論文は、神経画像に基づく患者一人ひとりの推測に対する計算論的アプローチの論拠を、個々の対象における疾患メカニズムを特徴付けるその潜在能力に焦点を当て、これら特徴付けを臨床的予測に関連させながら議論する。2つの主たるアプローチ、すなわち計算モデルを個人の予測に結びつけることが可能なベイズモデル選択(Bayesian model selection)と生成的埋込(generative embedding)を概観した後、我々はこれらの方法が精神医学的・神経学的スペクトラム障害における異質性にどのように対処するか展望し、神経画像データの誤解釈を回避することに援用して、メカニズム的モデルに基づくアプローチと機械学習によって与えられる統計学的予測の関連付けを確立する。

    キーワード:
     生成モデル(generative model)、機能的MRI(fMRI)、脳波(EEG)、ベイズの(Bayesian)、モデル選択(model selection)、モデル比較(model comparison)、モデル確証(model evidence)、生成的埋込(generative embedding)、分類(classification)、クラスタリング(clustering)、計算精神医学(computational psychiatry)、トランスレーショナル神経モデリング(translational neuromodeling)

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精神医学における優先課題の状況分析、第1部:疾患分類と診断、第2部:発病機序と病因
    Klaas E Stephan et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 77-83, and 84-90.
    Charting the landscape of priority problems in psychiatry, Part 1: classification and diagnosis, and Part 2: pathogenesis and aetiology.

    第1部:疾患分類と診断
     現在の精神医学は深刻な問題に直面している。その症候群に基づく疾患分類は発病過程に基づくものではなく、治療法の手引きにもならないため、大抵の治療は試行錯誤によって決められる。その治療法の開発は、潜在的な受益患者群を無視することで遅れている。神経科学的・遺伝学的研究は、疾患定義に影響を及ぼしたり臨床判断に貢献したりはしていない。この困難な状況において、精神医学研究は何に重点をおくべきだろうか。この2つの対論文において、我々は将来の精神疾患研究の対象候補として、様々な領域の臨床家および研究者によって指名された問題のリストを提示する。これらの問題は、疾患分類学と診断に関わる問題(この論文のPersonal View)と、発病機序と原因に関する問題(対の論文のPersonal View)に大きくグループ分けされる。他の領域における成功例、特に数学におけるヒルベルトの問題(Hilbert's problems in mathematics、訳注:著名な数学者であるヒルベルトが、今世紀の数学研究の目標となるべき23の問題をあげた)に触発されて、この主観的で多岐にわたる優先課題のリストは、精神医学の研究者が既存の研究に再び焦点を合わせることを助け、将来の精神医学の科学への展望を提供することを目的とする。

    第2部:発病機序と病因
     これは、精神疾患研究についての優先的課題を提案する2つの対論文の2番目である。1番目の論文が、疾患分類学と診断に焦点を当てているのに対して、このPersonal Viewは、精神疾患の発病機序と原因を扱っている。我々は、様々な領域と施設の科学者と臨床家によって指名されたこの(非包括的で主観的な)問題リストが、精神医学の科学の将来的方向を選択する指針と展望を提供することを望む。

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精神疾患発症後の凶悪犯罪を含む犯罪被害のリスク:警察データを用いたデンマーク国民登録研究
    Kimberlie Dean et al. JAMA Psychiatry, published online May 23, 2018.
    Risk of Being Subjected to Crime, Including Violent Crime, After Onset of Mental Illness: A Danish National Registry Study Using Police Data.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神疾患発症後の、警察報告による凶悪犯罪を含む犯罪の被害に遭う率はどのくらいか。特定の精神疾患を持つ人が、精神疾患のない人と比較して犯罪に遭うリスクが高いのか。
    <結果>
     この200万人以上の人からなる国民コホートにおいて、全ての犯罪および凶悪犯罪に遭う率は精神疾患を持つ人において高かった。関連性は診断スペクトラムにわたり男女双方で観察され、最も強い関連は物質使用障害およびパーソナリティ障害を持つ人において見出された。
    <意義>
     診断スペクトラムにわたって精神疾患は、警察報告による凶悪犯罪および非凶悪犯罪に遭うリスクの上昇と関連する。

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成人うつ病の急性期治療に関する21の抗うつ薬の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Andrea Cipriani et al. Lancet 2018; 391: 1357–1366.
    Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     うつ病は成人において世界中で最も多く重荷となって費用がかさむ精神疾患の一つである。薬理学的および非薬理学的治療が利用可能であるが、資源が不十分なことから心理学的介入よりも抗うつ薬がよく使われる。これら薬剤の処方は、利用可能な最良のエビデンスからの情報に基づくべきである。したがって、単極性のうつ病を持つ成人の急性期治療のための抗うつ薬を、比較して順序付ける我々の以前の仕事を改訂して拡張することを目的とした。
    <方法>
     我々は、発表および未発表の二重盲検・ランダム化比較試験について、Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、Embase、LILACS database、MEDLINE、MEDLINE In-Process、PsycINFO、規制機関のウェッブサイト、および国際登録を、その始まりから2016年1月8日まで検索した。標準的な操作基準に従って診断されたうつ病を持つ成人(18歳以上で男女両方)の急性期治療に用いられた21の抗うつ薬のプラセボとの比較、および実薬対実薬の試験を含めた。疑似ランダム化試験、不完全な試験、あるいは双極性障害、精神病性うつ病、または治療抵抗性うつ病を持つ参加者、もしくは重篤な併存身体疾患を持つ患者を20%以上含む試験は除外した。データは事前に決められた順序に従って抽出され、ネットワークメタ解析ではグループ水準のデータが使用された。
     介入の系統的レビューのためのコクランハンドブック(Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions、訳注:2018年に第6版が発表予定とのこと)に従って研究が持つバイアスのリスクを、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation、訳注:推奨の強さをエビデンスレベルだけではなく、価値観や好み、医療資源などを考慮して判定するといった特徴を有する)システムを用いてエビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は有効性(反応率)と認容性(あらゆる理由による治療中止)であった。変量効果モデルを用いたペアワイズおよびネットワークメタ解析を使って要約オッズ比(OR)を推定した。この研究はPROSPEROに登録されている(番号:CRD42012002291)。
    <結果>
     我々は28,552の論文を同定し、これには116,477人の参加者から構成される552の試験が含まれた。有効性については、アミトリプチリンの2.13 (95% 確信区間 [CrI] 1.89–2.41)からレボキセチンの1.37 (1.16–1.63)にわたるORをもって、すべての抗うつ薬がプラセボより有効であった。認容性については、アゴメラチン(OR 0.84, 95% CrI 0.2–0.97)とフルオキセチン(0.88, 0.80–0.96)だけがプラセボより脱落が少なく、クロミプラミン(1.30, 1.01–1.68)はプラセボより多かった。
     すべての試験を検討した場合、抗うつ薬間のORの差は有効性については1.15~1.55、認容性については0.64~0.83の範囲に及び、比較分析の大半で確信区間は広かった。実薬対実薬の試験では、アゴメラチン、アミトリプチリン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、およびボルチオキセチンが他の抗うつ薬より有効性が高かった(ORの範囲:1.19–1.96)。一方、フルオキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、およびトラゾドンは有効性が最も小さい薬剤であった(0.51–0.84)。
     認容性については、アゴメラチン、シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、およびボルチオキセチンが、他の抗うつ薬より認容性が高かった(ORの範囲:0.43–0.77)。一方、アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、およびトラゾドンは脱落率が最も高い薬剤であった(1.30–2.32)。
     522の試験のうち46(9%)の試験がバイアスを持つリスクが高い、96(18%)の試験がリスクは低いと評点され、エビデンスの確実性は「ほどほど~非常に低い」であった。
    <解釈>
     うつ病を持つ成人において、すべての抗うつ薬はプラセボより有効であった。プラセボとの比較試験を解析に含めた場合は実薬間の差は僅かであったが、実薬どうしの比較試験では有効性と認容性のばらつきがより大きかった。これらの結果をエビデンスに基づく実践に利用し、患者、臨床医、ガイドライン開発者、および政策立案者に各種抗うつ薬の優劣に関して情報提供すべきである。
    <資金>
     National Institute for Health Research Oxford Health Biomedical Research Centre and the Japan Society for the Promotion of Science

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高齢中国人における日常の知的活動と偶発認知症のリスク低下の関連
    Allen T. C. Lee et al. JAMA Psychiatry, published online May 30, 2018.
    Association of Daily Intellectual Activities With Lower Risk of Incident Dementia Among Older Chinese Adults.

    キーポイント:
    <疑問>
     知的活動への参加は、定期的な身体運動、適切な果物と野菜の摂取、および禁煙といった他の健康的な生活スタイルとは別に、高齢成人における認知症のリスクを下げるか。
    <結果>
     この地域ベースの研究において、65歳以上の地域に住む認知症のない中国人15,582人が、5年間(中央値)経過観察された。知的活動への日常的参加は、他の健康行動、身体的健康の制約、および社会人口学的要因に関係なく、数年後の認知症の有意に低いリスクと関連した。
    <意義>
     知的活動への積極的参加は、晩年においてさえ、高齢成人における認知症の予防に役立つかもしれない。

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初めての妊娠中絶および出産と抗うつ薬処方の関連調査
    Julia R. Steinberg et al. JAMA Psychiatry, published online May 30, 2018.
    Examining the Association of Antidepressant Prescriptions With First Abortion and First Childbirth.

    キーポイント:
    <疑問>
     妊娠第1期における初めての妊娠中絶は、女性の初めての抗うつ薬使用のリスク上昇と関連するか。
    <結果>
     この1980年1月1日から1994年12月31日にデンマークに生まれた女性396,397人のコホート研究において、初めての妊娠中絶をした女性は、中絶しなかった女性と比べて、初めての抗うつ薬使用のリスクがより高かった。しかし、初めての妊娠中絶をした女性について、そのリスクは中絶前後の年で等しく、中絶からの時間が増えるにつれて減少した。
    <意義>
     初めての妊娠中絶は、女性の初めての抗うつ薬使用のリスクの上昇と関連しない。

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妊娠中および産後期のリチウム内服戦略
    Wesseloo R et al. Br J Psychiatry 2017; 211: 31-36.
    Lithium dosing strategies during pregnancy and the postpartum period.

    論文要約:
    <背景>
     妊娠中のリチウム内服は難しい問題である。
    <目的>
     妊娠中のリチウム内服に関する指針を提案すること。
    <方法>
     後向き観察コホート研究。妊娠中および産後期にリチウム治療を受けている女性の113の妊娠から、リチウム濃度レベルの測定(n = 1101)、毎日のリチウム内服量、用量変更/頻度、およびクレアチニンの血中レベルに関するデータを得た。
    <結果>
     リチウムの血中レベルは妊娠第1期で低下し(-24%, 95% CI -15 to -35)、妊娠第2期に最低値となったが(-21%, 95% CI -13 to -30)、産後に軽度上昇した(+9%, 95% CI +2 to +15)。分娩そのものは、リチウムおよびクレアチニン血中濃度レベルの急な変化と関連しなかった。
    <結論>
     我々は、リチウム濃度のレベルを、妊娠34週までは頻回に、その後の分娩までは毎週、分娩後の2週間は週に2回、モニタリングすることを推奨する。クレアチニン血中レベルが、腎クレアランスを監視するために測定されるべきである。

    コメント:妊娠中のリチウムの使用と心臓奇形のリスクに関して昨年発表された論文(Patorno E, et al. N Engl J Med 2017; 376: 2245-2254)では、以下の結果でした:リチウム非曝露群と比較した場合の、リチウム曝露群の心臓奇形の補正リスク比は 1.65(95%信頼区間 [CI] 1.02~2.68);補正リスク比は、1日量が 600 mg 以下で 1.11(95% CI: 0.46~2.64)、601~900 mg で 1.60(95% CI: 0.67~3.80)、900 mg 超で 3.22(95% CI: 1.47~7.02);エプスタイン奇形(右室流出路狭窄)の有病率は、リチウム曝露群で0.60%、非曝露群では 0.18%、補正リスク比は2.66(95% CI: 1.00~7.06);対照としてラモトリギン曝露群を用いた場合も、これらの結果は同じ。

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うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激試験のプラセボ反応:系統的レビューとメタ解析
    Razza LB et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 2018; 81: 105-113.
    A systematic review and meta-analysis on placebo response to repetitive transcranial magnetic stimulation for depression trials.

    論文要約:
    <背景>
     いくつかの研究が、うつ病(大うつ病性障害、MDD)における抗うつ薬物療法に対するプラセボ反応が大きいことを示しているが、うつ病における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)に対するプラセボ(シャム)反応を定量した最新のメタ解析はない。
    <目的>
     うつ病を持つ参加者を含むランダム化比較試験(RCT)において、この問題に関する系統的レビューとメタ解析を実施し、潜在的な媒介因子(moderator)を探索すること。
    <方法>
     PubMed/MEDLINE、Embase、PsycINFO、およびWeb of Scienceの電子データベースが、急性の抑うつエピソードを持つ参加者でシャム介入と比べたすべてのrTMSモダリティの有効性を調べたRCTについて、その始まりから2017年3月15日まで探索された。コクランのバイアスリスクの評価法(Cochrane Risk of Bias Tool)が、リスク推定に使われた。我々は、プラセボ群のベースラインとエンドポイントの抑うつ症状スコアを用いて、プラセボ反応の効果量(ヘッジのg値、変量効果モデル)を推定した。反応に対する潜在的媒介因子を探索するために、メタ回帰が利用された。
    <結果>
     61の研究(N=1328; mean age, 47years; 57% females)が適格基準に該当した。プラセボ反応は、介入モダリティに関係なく大きかった(g=0.8, 95% CI=0.65-0.95, p<0.01)。プラセボ反応は、発表年と実治療群のうつ病の改善と直接的に関連し、治療抵抗性うつ病のより高い水準と逆に関連した。性別、年齢、および刺激装置の様式を含む他の媒介因子は、アウトカムに関連しなかった。全体として、24.6%、67.2%、8.2%の研究が、順に低い、不明な、高いバイアスリスクを持つとされた。
    <結論>
     うつ病に対するrTMS試験におけるプラセボ反応は大きく、実治療群のうつ病の改善に関連する。このような結果は、前臨床段階でプラセボ反応者を除くことは、実治療としてのrTMSへの反応もまた減少する可能性があるので有益でないことを示す。加えて、うつ病においてプラセボ反応はrTMSへの治療反応の一要素かもしれないし、プラセボ反応の経時的増加は、より良いシャムrTMSを含む試験デザインの改善を示唆するのかもしれない。

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加齢における脳の認知的健康のための運動:量の評価についての系統的レビュー
    Joyce Gomes-Osman et al. Neurology, published online May 30, 2018.
    Exercise for cognitive brain health in aging: A systematic review for an evaluation of dose.

    論文要約:
    <目的>
     我々は、1)コクランの基準を用いて方法論上の質を評価して、2)多様な運動量の測定を記述してそれと認知能力の改善との関係を評価し、3)報告された認知に対する効果の一貫したパターンを特定するために、運動が高齢成人の認知に影響を与えると主張するランダム化比較試験を系統的に調べた。
    <結果>
     方法論上の質は、検討された98のすべての研究において全般的に良かった。認知の改善と運動量の様々な測定(セッション時間、週当たりの分数、頻度、全週数、全時間)の関係の評価は、全時間と有意な相関を示した。全般的認知、処理速度/注意、そして遂行機能の改善が、最も安定かつ一貫していた。
    <結論>
     我々は、少なくとも52時間の運動が、認知障害の有無に関わらず高齢成人における認知能力の改善と関連することを見出した。エビデンスによって支持される運動様式とは、有酸素運動、レジスタンス(筋力)トレーニング、心身(mind–body)運動、またはこれら介入の組み合わせである。

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精神病性(妄想性)うつ病と自殺企図:系統的レビューとメタ解析
    Gournellis R et al. Acta Psychiatr Scand 2018; 137: 18-29.
    Psychotic (delusional) depression and suicidal attempts: a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <目的>
     精神病性の特徴が、自殺企図のリスクを増加させるか否かについては不明である。そこで我々は、系統的レビューとメタ解析を通して、単極精神病性うつ病(unipolar psychotic depression、PMD)は、非単極精神病性うつ病(non-PMD)より自殺企図のレベルが高いか否かを明確にすることを試みた。
    <方法>
     Non-PMDと比べたPMDにおける自殺企図に関するデータを提供するすべての研究について、PubMed、EMBASE、PsycINFO、いわゆる灰色文献の多様なデータベースにおいて系統的検索が行われ、その結果をメタ解析にかけた。
    <結果>
     全部で1,275人のPMD患者を含む20の研究が、我々の包含基準を満たした。Non-PMD患者と比べたPMDの自殺企図リスクの上昇が見出された:合計(生涯)固定効果・統合オッズ比は2.11(95% CI: 1.81-2.47)、急性期の5つの研究の固定効果・統合オッズ比は1.93であった(95% CI: 1.33-2.80)。このPMD患者の自殺企図リスクの上昇は、成人患者のすべての年齢グループにわたって安定していた。
    <結論>
     データの非一貫性と臨床的な異質性にもかかわらず、この系統的レビューとメタ解析は、PMDを持つ患者は生涯と急性期の両方において、non-PMD患者よりも自殺企図を起こすリスクが2倍高いことを示した。

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初回エピソード精神病を持つ若年青年のミスマッチ陰性電位とP3a振幅:ADHDとの比較
    Rydkjær J et al. Psychol Med 2017; 47: 377-388.
    Mismatch negativity and P3a amplitude in young adolescents with first-episode psychosis: a comparison with ADHD.

    論文要約:
    <背景>
     ミスマッチ陰性電位(mismatch negativity、MMN)の欠陥は、これまで統合失調症の候補バイオマーカーに挙げられてきたが、発症間もない精神病(early onset psychosis)の早期発見と介入に潜在的に有用かもしれない。我々はMMNとP3aの振幅で測定される自動定位と定位反応の欠陥が、初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)を持つ若年青年に存在するか、注意欠如・多動症(ADHD)を持つ若年青年と比較して、所見が精神病に特異的であるかを調べた。
    <方法>
     MMNとP3aの振幅が、FEP(N = 27)またはADHD(N = 28)を持つ若年青年(12-17歳)、および年齢と性別を一致させた健常成人(N = 43)において評価された。MMNパラダイムは周波数、持続、およびその組み合わせに基づく逸脱刺激を持つ4種の音調の聴覚的オドボール課題から構成される。
    <結果>
     健常成人と比べて精神病を持つ患者では、周波数と持続の逸脱に反応して有意に小さいMMNが見出された。ADHDを持つ患者群のMMN振幅は、精神病を持つ患者または健常対照者と有意に異なることはなかった。P3aの振幅に有意な群間差はなかった。
    <結論>
     FEPを持つ若年青年は健常成人と比べて障害されたMMNを示したが、それと重複する中間レベルのMMNがADHDにおいて観察された。本結果は、若年のFEP患者はすでに統合失調症の特徴である前注意的欠陥を持つが、これは他の神経精神医学的障害と連続的に共有されることを示唆する。

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妊娠高血圧と子における神経発達症リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
    Gillian M et al. JAMA Psychiatry, published online June 6, 2018.
    Association of Hypertensive Disorders of Pregnancy With Risk of Neurodevelopmental Disorders in Offspring: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     妊娠高血圧と子の神経発達症の関連を調べた既存の文献からの統合推定値はどの程度か。
    <結果>
     61の研究の系統的レビューとメタ解析からの統合推定値によれば、非曝露と比較した場合の妊娠高血圧への曝露は、僅かではあるが統計学的に有意な子の自閉スペクトラム症および注意欠如・多動症のオッズ(odds)増加と関連する。
    <意義>
     妊娠高血圧に曝露された幼児に対する発達スクリーニングを増やすことで、早期介入が可能となり、神経発達的転帰が改善するかもしれない。

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世界におけるサルコペニアの有病率:一般人口における研究の系統的レビューとメタ解析
    Shafiee G et al. J Diabetes Metab Disord 2017; 16: 21.
    Prevalence of sarcopenia in the world: a systematic review and meta- analysis of general population studies.

    論文要約:
    <背景>
     加齢に関連した筋肉の量と機能の低下であるサルコペニアは、高齢者における高率な有害転帰をもたらす最も重要な健康問題の一つである。しかしながら、世界のサルコペニアの有病率を調べたいくつかの研究の結果は一致していない。この系統的レビューとメタ解析は、世界の様々な地域の男女におけるサルコペニアの全体的有病率を推定するために実施された。
    <方法>
     MEDLINE(PubMed経由)、SCOPUS、Web of Scienceを含む電子データベースが、2009年1月から2016年12月まで検索された。European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP)、International Working Group on Sarcopenia (IWGS)、およびAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)の定義を用いて、60歳以上の健常成人におけるサルコペニアの有病率を報告する一般住民に基づく研究が選ばれた。これらの合意に基づく定義に従って、サルコペニアは筋肉量(身長で調整した体肢筋量appendicular skeletal muscleの量)と筋力(握力)、または身体能力(通常の歩行速度)の低下があることと定義された。変量効果モデルがサルコペニアの有病率の推定に使われ、性別に特異的なサルコペニアの有病率および95%信頼区間(CI)はBinomial Exact Methodを用いて算出された。異質性はサブグループ解析で評価された。
    <結果>
     全部で58,404人からなる35の文献がわれわれの包含基準を満たした。有病率の全体的推定値は、男性で10%(95% CI: 8-12%)、女性で10%(95% CI: 8-13%)であった。有病率は男女ともにアジア系より非アジア系の人で高く、特に筋肉量を測定するために生体電気インピーダンス法(Bio-electrical Impedance Analysis、BIA)が使用された場合にそうであった(男性、10% vs 19%;女性、11% vs 20%)。
    <結論>
     筋肉量測定のために使われた診断方法、およびサルコペニアのパラメータ推定のための世界の異なる地域について研究間の違いがあるにもかかわらず、今回の系統的レビューは健常母集団であっても高齢者の相当の割合がサルコペニアを持つことを明らかにした。サルコペニアが老化の進行の結果であるとしても、早期診断はいくつかの有害な転帰を予防し得る。

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地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニア
    Liu P et al. Maturitas 2017; 103: 16-22.
    Sarcopenia as a predictor of all-cause mortality among community-dwelling older people: A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
     この系統的レビューとメタ解析の目的は、サルコペニアと地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の関連を調べることである。地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニアを調べた2009年1月から2017年2月の前向き研究を同定するために、3つの電子データベース(EMBASE、MEDLINE、Cochrane Library)を用いた系統的レビューが行われた。我々は変量効果モデルを用いて、サルコペニアに関連する死亡率の統合解析と、筋肉量と観察期間の長さの測定に基づくサブグループ解析分析を実施した。感度分析は高い異質性の原因を評価するために行われた。加えて、方法の質、異質性、および発表バイアスが評価された。同定された1,703の研究のうち7,367人を組み入れた6つの研究が、あらゆる理由による死亡のメタ解析に含まれた。
     含められた研究の合体によるあらゆる理由による死亡の統合ハザード比(HR)は、サルコペニアを持たない参加者と比べてサルコペニアを持つ参加者における有意に高い死亡率を示した(統合HR 1.60, 95%CI 1.24-2.06, I2=27.8%, p=0.216)。観察期間の長さについてのサブグループ解析では、5年あるいはそれ以上の観察期間を持つ研究と比較して(統合HR 1.52, 95%CI 1.14-2.01)、5年より短い観察期間を持つ研究はあらゆる理由による死亡のより高いリスクを示した(統合HR 2.09, 95%CI 1.21-3.60)。二重エネルギーX線吸収法(DEXA)因子のサブグループ(統合HR 1.82, 95%CI 1.04-3.18)、あるいは生体電気インピーダンス法(BIA)因子のサブグループ(統合HR 1.31, 95%CI 1.15-1.49)と比較して、身体計測のサブグループはより高い死亡リスク(統合HR 2.26, 95%CI 1.30-3.92)を特定することが分かった。
     サルコペニアは地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子である。したがって、高齢者の死亡率を低下させるためにサルコペニアを診断して介入することが重要である。

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サルコペニアと認知障害:系統的レビューとメタ解析
    Chang KV et al. J Am Med Dir Assoc 2016; 17: 1164.e7-1164.e15.
    Association Between Sarcopenia and Cognitive Impairment: A Systematic Review and Meta-Analysis.

    論文要約:
    <背景>
     サルコペニアとは、筋肉の量と機能を徐々に失うことであり、不良な健康アウトカムと関連付けられてきたが、もう一方の加齢に伴う変性過程である認知障害との相関は不明である。このメタ解析は、サルコペニアが認知障害と関連するか否かを確かめることを目的とした。
    <方法>
     サルコペニアと認知機能障害の関連を調べた観察研究について、PubMedおよびScopusが検索された。参加者の人口統計と測定、サルコペニアの定義、および認知機能の評価尺度が収集された。サルコペニアと認知機能の相関は、粗および調整オッズ比と95%信頼区間(CI)で表された。
    <結果>
     5,994人の参加者から構成される7つの横断研究が含まれた。粗および調整オッズ比は、順に2.926(95% CI, 2.297-3.728)と2.246(95% CI, 1.210-4.168)であった。サブグループ解析では、異なる標的母集団と性別特性はその関連に有意な影響を及ぼさなかったが、認知機能を評価する尺度と体組成を測定する方法は影響を与えた。
    <結論>
     サルコペニアは独立に認知障害と関連するが、因果関係を明らかにするためには、さらなるコホート研究が必要である。また、根底にある生物学的メカニズムを解明するために、関連するバイオマーカーと機能的測定を取り入れることが望ましい。

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サルコペニアはうつ病と関連するか:観察研究の系統的レビューとメタ解析
    Chang KV et al. Age Ageing 2017; 46: 738-746.
    Is sarcopenia associated with depression? A systematic review and meta-analysis of observational studies.

    論文要約:
    <目的>
     サルコペニアはうつ病と関連するか。
    <設計>
     PubMed、Scopus、Embase、およびGoogle Scholarからの電子文献データベースが検索され、観察研究の系統的レビューとメタ解析が実施された。
    <設定>
     地域社会と外来クリニック。
    <参加者>
     サルコペニア診断が有る人と無い人。
    <測定>
     うつ病転帰の測定。
    <結果>
     およそ15の文献が含まれ、うち5つは記述的レビューのために収集された。残りの10の研究からサルコペニアとうつ病の間の粗オッズ比(OR)を抽出し、うち6つから調整オッズ比を得た。
     共変量を調整しない場合、サルコペニアはうつ病と関連した(粗OR, 1.640; 95% 信頼区間 (CI), 1.247-2.155)。年齢、性別、認知能力、および身体活動といった潜在的交絡因子の調整後も、サルコペニアはうつ病と有意な正の関連を示した(調整OR, 1.821; 95% 信頼区間, 1.160-2.859)。層別解析では、二重エネルギーX線吸収法(dual-energy X-ray absorptiometry、DEXA)または数式による推定を使った方法と比べて、体組成の生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis、BIA)を用いた研究では、サルコペニアとうつ病の関連が高かった。
    <結論>
     サルコペニアは独立にうつ病と関連する。2つの臨床的状態の間の因果関係については、コホート研究を用いたさらなる妥当性検証が必要である。

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サルコペニアと一般精神疾患:脳機能に対する骨格筋の調整的役割の可能性
    Pasco JA et al. Curr Osteoporos Rep 2015; 13: 351-7.
    Sarcopenia and the Common Mental Disorders: a Potential Regulatory Role of Skeletal Muscle on Brain Function?

    論文要約:
     体組成が糖尿病や心血管障害といった身体疾患に影響することは知られているが、今のところ体組成が一般精神疾患の発症に役割を果たす可能性のみが明らかである。サルコペニアは加齢で生じ、筋肉の量、力、および機能の進行性の低下を含み、フレイル、自立度の減少、およびQOLの低下につながる。このレビューは、サルコペニアと一般精神疾患に共有される病態生理学的経路が、骨格筋と脳機能の間の関係を構成するという仮説を支持する新しいエビデンスを示す。収縮する骨格筋は、気分と不安において役目を果たし、神経細胞の成長と分化を促す二重の役割を持つことが知られている神経栄養因子を分泌する一方で、骨格筋における運動ユニットのサイズと数を維持する。さらに骨格筋活動は、行動に影響を与えて筋肉の異化を減らす重要な免疫作用と酸化還元作用を持つ。
 
  1. アルツハイマー病における抗精神病薬治療中止後の再発予測:幻覚の役割について
  2. 注意欠如・多動症(ADHD)では複数の脳領域が小さい―3,200例超の多施設大規模研究
  3. 早期精神病と診断された若年者の診断後12カ月以内の未治療率と死亡率―米国の民間医療保険加入者5,000例の調査
  4. 注意欠如・多動症(ADHD)と肥満の関連:体系的レビューとメタ解析
  5. 注意欠如・多動症(ADHD)の転帰に関係する神経認知的予測因子:6年間の追跡研究
  6. 妊娠中の母体の体重増加および体格指数(BMI)と、児の非感情性精神病の発症リスクとの関係
  7. 急性一過性精神病性障害の帰結:診療録を用いた20年間の遡及的研究
  8. 幹線道路沿いの居住は認知症の発症リスクと関係する:地域住民ベースのコホート研究
  9. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の服用開始30日以内の頭蓋内出血リスクは三環系抗うつ薬の1.5倍である
  10. 統合失調症の臨床経過に対する抗精神病薬の長期効果
  11. 専門家は警告する:気候変動は精神健康へ災厄をもたらす
  12. ハンナ・デッカー著(2013年)『DSM-Ⅲができるまで』
  13. 認知症患者に対する音楽療法:コクラン・レビューより
  14. 植原 亮 著(2013年)『実在論と知識の自然化:自然種の一般理論とその応用』
  15. 親の認知症歴と子の認知症発症リスクの関係:地域住民ベースのコホート研究
  16. 50歳以上の成人が認知機能を維持するためには、中から高強度の「有酸素+レジスタンス」運動を、45分以上行うとよい:メタ解析と系統的レビュー
  17. S. Nassir Ghaemi 著(2008年)『Mood Disorders, Second Edition』
  18. 教育年数の延長で、認知症の有病率が低下している可能性:米国における2000年と2012年の比較
  19. 成人の不安症/不安障害に対する森田療法:コクラン・レビューより
  20. DSM-5における嗜好品による精神疾患:アルコール、カフェイン、タバコ
  21. 自閉症における胎児期および出生後の金属代謝異常:妊娠第2期・第3期、および出生後早期における有毒元素と必須元素の摂取の違いが、自閉スペクトラム症の発症リスクと関係する
  22. 妊娠中のリチウムの使用と心臓奇形のリスク
  23. 滝沢 龍 訳『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック:DSM-5から生活指針まで』(医学書院、2016年)
  24. ダニエル・パウル・シュレーバー 著, 渡辺 哲夫 訳『ある神経病者の回想録』 (講談社学術文庫、2015年)
  25. フィンランドにおける単極うつ病に対する薬物療法と再入院のリスク:全国コホート研究
  26. リチウム:精神医学に恩恵をもたらし続ける贈り物
  27. 双極性障害の維持療法における薬物療法の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタアナリシス
  28. 小児期のてんかん・熱性けいれんは、のちの注意欠如・多動症(ADHD)のリスクを高める
  29. ハンチントン病における精神と行動の変化
  30. 注意欠如・多動症(ADHD)および強迫症(OCD)の構造的・機能的脳異常:比較メタ解析
  31. 注意欠如・多動症(ADHD)の持続と寛解の認知神経生理学的マーカー
  32. 注意欠如・多動症(ADHD)が成人期まで持続するか消失するかを予測する小児期の因子:マルチモーダル治療研究の結果より
  33. 注意欠陥障害(ADD)と診断された成人におけるミネソタ多面人格目録改訂版(MMPI-2)の特徴
  34. 社交不安症治療における実際の暴露と比較したバーチャル・リアリティ:3群無作為化対照試験
  35. 認知症を有する人のうつ病を見出す:系統的レビューとメタ解析
  36. 短期精神病エピソード(Brief Psychotic Episodes)の予後のメタ解析
  37. 脳への悪影響と認知機能低下のリスク要因としての中等量の飲酒:長期コフォート研究
  38. 遅発性ジスキネジアを持つ患者の不随意運動治療のためのdeutetrabenazine:二重盲検無作為比較対照第3相試験
  39. 中等度から重度の成人の過食性障害におけるリスデキサンフェタミンの有効性:無作為化臨床試験
  40. 自傷後の自殺を予測する:危険因子とリスク評価尺度の系統的レビュー
  41. 注意欠如・多動症(ADHD)を持つ小児の脳波(EEG)に対する精神刺激薬の作用(1)
  42. 注意欠如・多動症(ADHD)における脳波(EEG)の有用性:再現研究(2)
  43. 注意欠如・多動症(ADHD)の脳波バイオマーカーに対する薬物効果(3)
  44. 注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法と物質関連問題
  45. 初回エピソード精神病(FEP)における頭部CTスキャンの診断率
  46. ICD/DSMの初回エピソード精神病の診断安定性に関するメタ解析
  47. 初回エピソード精神病における磁気共鳴画像法(MRI)の臨床的有用性
  48. 初回エピソード精神病の磁気共鳴画像法(MRI)とコンピュータ断層撮影(CT)の役割
  49. 初回エピソード精神病(FEP)の臨床的寛解を超えて:機能的回復の時代における抗精神病薬の継続と計画的中止への考察
  50. 認知症の3分の1は、ライフスタイルの改善で予防可能かもしれない
  51. うつ病の急性期治療としての反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS):ネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
  52. 妊娠中の抗うつ薬の使用と子の知的障害との関連
  53. 成人を対象とした抗うつ薬の臨床試験における自殺の危険:米国FDA(食品医薬品局)に提出され所有されているデータを用いた解析
  54. 強迫症/強迫性障害への薬理学的介入と心理療法的介入:系統的レビューとネットワークメタ解析
  55. 米国における精神科病院への再入院と電気けいれん療法(ECT)の関連
  56. 統合失調症の抗精神病薬単剤療法に追加される42の薬剤併用療法の有効性:メタ解析によるエビデンスの系統的概観と質評価
  57. 初回エピソード精神病の抗精神病薬治療が休止されると再発リスクは5倍に上昇する
  58. 診療勧告:注意欠如・多動症(ADHD)診断における脳波のθ波とβ波のパワー比の有用性
  59. 初回エピソード精神病(FEP)において、ボクセル単位の形態計測(VBM)を用いて統合失調症を他の型の精神病から分離する:診断テストのレビュー
  60. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)では、デフォルトモードネットワーク(DMN)の内側前頭前野領域に広帯域の神経生理学的異常がある
  61. 注意欠如・多動症(ADHD)における薬物療法と高等教育入学試験成績の関連
  62. アメリカンフットボール選手における慢性外傷性脳症(CTE)の臨床病理学的検討
  63. 統合失調症における脳白質と中核的認知欠損の関連
  64. 強迫症/強迫性障害(OCD)の神経回路における炎症
  65. 統合失調症におけるグルタミン酸変化の特徴:プロトンMRS研究のメタ解析
  66. 成人期の診断方法が小児期の注意欠如・多動症(ADHD)の持続の推定に影響する:縦断研究の系統的レビュー
  67. ALSPAC出生コホートにおける自閉スペクトラム症(ASD)と精神病体験の関連
  68. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)症状と精神病:英国における地域調査からの疫学的証拠
  69. 自閉スペクトラム症を持つ子供の症状重症度に対する即興的音楽療法と強化型標準ケアの効果:TIME-A無作為化臨床試験
  70. 双極性障害の気分スペクトラムにわたるC反応性蛋白の濃度:系統的レビューとメタ解析
  71. 認知的に正常な人における脳アミロイドの増加と認知機能低下の関連
  72. 精神病性障害の超高リスクにある若者に対するω-3多価不飽和脂肪酸:The NEURAPRO 無作為化臨床試験
  73. 単極性うつ病における脳活動の変化:神経画像研究のメタ解析
  74. 世界各国におけるDSM-5全般性不安症(GAD)の疫学の横断的比較
  75. 米国における12カ月アルコール使用・高リスク飲酒・DSM-IVアルコール使用障害の有病率の変化(2001-2002年vs.2012-2013年):アルコールおよび関連障害に関する国民疫学調査の結果
  76. 精神疾患に共通する神経生物学的基盤の同定
  77. うつ病/大うつ病性障害における大規模ネットワークの機能不全:安静状態の機能的結合性のメタ解析
  78. うつ病・抑うつ症状に対する抗炎症治療の効果と有害作用:系統的レビューと無作為化臨床試験のメタ解析
  79. 高齢者における人生の目的と身体機能の客観的測定の関連
  80. 注意欠如・多動症(ADHD)と女性特有の課題:文献レビューと臨床的意義
  81. 注意欠如・多動症(ADHD)は次元的な潜在構造を持つか:分類分析
  82. 成人サンプルにおける注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造
  83. 注意欠如・多動症(ADHD)を持つ青年外来患者におけるパーソナリティ障害とⅠ軸併存症
  84. 境界性パーソナリティ障害(BPD)における状態依存的クロス脳情報流
  85. 治療抵抗性統合失調症におけるクロザピンに関連する死亡と自傷
  86. 栄養ドリンクの消費とその後の若年成人期における薬物使用
  87. 現行の向精神薬の命名法についてのレビュー、および神経科学に基づく命名法
    (Neuroscience-based Nomenclature)の紹介
  88. 抑うつエピソード中の脳における輸送タンパク密度(神経炎症マーカー)の役割
  89. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)における前脳部非対称:動機付け障害仮説の拡張
  90. 前頭部アルファ活動の非対称は、注意欠如・多動症(ADHD)を持つ青年の抑制過程を予測する
  91. プロバイオティクスBifidobacterium longum NCC3001は、抑うつを軽減して脳活動を変える:過敏性腸症候群患者における予備的研究
  92. 高齢期の双極性障害に関する国際双極性障害学会・調査特別委員会からの報告書
  93. 18F-THK5351:アルツハイマー病における神経原線維病理を画像化する新規のPET用放射線トレーサー
  94. 18F-THK5351 PETを用いた皮質基底核症候群におけるタウ蛋白蓄積の生体画像化
  95. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)治療におけるグループ心理療法、個人カウンセリング、メチルフェニデート、およびプラセボの効果:無作為化臨床試験
  96. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対するビタミン-ミネラル療法:二重盲検ランダム化プラセボ対照試験
  97. 疾患横断的遺伝子発現解析における免疫特徴と疾患特異的パターン
  98. 飲用水中のリチウムと認知症発症率の関連
  99. ミトコンドリアDNAのハプログループ変異と自閉スペクトラム症(ASD)の関連
  100. 長期入院から退院した重度精神疾患患者の早期死亡:日本における24年間の自然観察
  101. 注意欠如・多動症(ADHD)を持つ未成年および成人患者におけるメチルフェニデートのドパミンシステムに対する年齢依存的効果:無作為化臨床試験
  102. 小児の注意欠如・多動症(ADHD)におけるサブタイプ間の臨床症状と持続処理課題(CPT)成績:6カ月間の自然経過研究
  103. 自閉症における精神病:重複罹患コホートにおける両状態の特徴比較
  104. 自閉スペクトラム症(ASD)の若者における非感情病性精神病性障害と双極性障害のリスク:地域住民における研究
  105. 統合失調症および関連障害を持つ患者における暴力犯罪、自殺、早期死亡:スウェーデンにおける38年間の全住民調査
  106. 混合性うつ病の認識と管理のためのガイドライン
  107. 双極うつ病の治療におけるドパミン作動薬:系統的レビューとメタ解析
  108. 命令幻聴への有害な従順をさせない認知行動療法(COMMAND):ランダム化比較試験
  109. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)におけるニューロフィードバック、偽のニューロフィードバック、集団認知行動療法:ランダム化比較試験
  110. 精神病体験とその後の自殺念慮・行動の関連:WHO世界精神健康調査からの国際比較分析
  111. 小児と青年で一般的な精神疾患に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、プラセボの有効性と安全性:系統的レビューとメタ解析
  112. WHOによるDSM-5成人ADHDのための自己記入式スクリーニング尺度
  113. レビー小体型認知症(DLB)の診断と治療・ケア:DLBコンソーシアムのコンセンサス・レポート第4版
  114. 自閉症とてんかん:地域住民ベースの全国コホート研究
  115. 専門家の診断クリニックを受診した成人アスペルガー症候群における自殺念慮および自殺計画または企図:臨床コホート研究
  116. コクラン・レビュー:広場恐怖を伴う/伴わない成人のパニック症/パニック障害に対する心理療法と薬物療法
  117. 成人患者の注意欠如・多動症(ADHD)治療におけるアトモキセチン錠と、浸透圧を利用した放出制御システムを応用したメチルフェニデート徐放錠のネットワークメタ解析
  118. 自殺企図のリスクとメチルフェニデート治療の関連
  119. 脳白質構造と自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)の関連
  120. 不安の予防における心理的および/または教育的介入の有効性:系統的レビュー、メタ解析、メタ回帰
  121. 家族リスクを持つ若者における双極スペクトラム障害の新規発症を予測する個人レベルのリスク計算法の評価
  122. 特定の脳部位を標的とした経頭蓋磁気刺激(TMS)は統合失調症の幻声を鎮静させる
  123. 経鼻投与のオキシトシンが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するかもしれない
  124. コクラン・レビュー:精神病性うつ病に対する薬物療法
  125. 統合失調症の初回エピソード患者の急性期治療に対する抗精神病薬:ペアワイズおよびネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
  126. 統合失調症における長期の抗精神病薬治療:無作為化比較試験の系統的レビューとネットワークメタ解析
  127. キノコ消費と高齢日本人における認知症:大崎市民コホート2006研究
  128. 行動上の症状を持つ入院患者に対する個別的活動プログラム(TAP-H)の実行可能性
  129. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対する認知行動療法(CBT)のメタ解析
  130. 軽度認知障害または認知症を持つ高齢成人におけるコンピュータを用いた認知トレーニング:系統的レビューとメタ解析
  131. パニック症、全般性不安症、妊娠中のベンゾジアゼピン治療と不良な出産転帰の関連
  132. 米国成人における自殺企図の国民動向
  133. 統合失調症患者の寿命短縮と余命:系統的レビューとメタ解析
  134. 全および特定の重度精神疾患患者における心血管疾患の有病率、発生率、死亡率:患者321万1,768人と対照1億1,338万3,368人のメタ解析
  135. 統合失調症患者における抗精神病薬、抗うつ薬、およびベンゾジアゼピンへの累積的曝露と死亡率:観察的追跡研究
  136. アルツハイマー病の前臨床段階におけるパーソナリティ変化
  137. 欧州10カ国におけるコーヒー消費と死亡率:多国コホート研究
  138. 注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造:分類分析
  139. クリニック受診サンプルにおける注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造
  140. 不注意と多動の背景にあるメカニズム:注意欠如・多動症(ADHD)の次元性を支持する神経認知的証拠
  141. 60歳以上の中高年の治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾールを用いた増強薬物療法の有効性、安全性、および認容性:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
  142. ベンゾジアゼピンおよびZドラッグの処方と、股関節(大腿骨)骨折のリスク:系統的レビューとメタ解析
  143. うつ病におけるケタミン(Ketamine)使用と関連する副作用:系統的レビュー
  144. 睡眠改善の精神健康への効果(OASIS):無作為化比較試験の媒介分析
  145. 自閉スペクトラム症(ASD)を持つ幼児における知能指数の潜在クラスの証拠
  146. レビュー:高齢者におけるせん妄―診断と治療の進歩
  147. 統合失調症における15の抗精神病薬の比較有効性と認容性:複数の治療法のメタ解析
  148. 統合失調症における局所脳構造の異質性と均質性:メタ解析
  149. うつ病/大うつ病性障害の治療のための全身温熱療法:無作為化臨床試験
  150. 青年の注意欠如・多動症(ADHD)の治療:系統的レビュー
  151. 有酸素運動は統合失調症を持つ人の認知機能を改善する:系統的レビューとメタ解析
  152. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)の脳波における間欠性律動性δおよびθ活動の増加
  153. 成人の高機能自閉スペクトラム症(ASD)における間欠性律動性δおよびθ活動の変化
  154. 長時間作用型の注射抗精神病薬と関連する死亡リスク:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析
  155. 精神疾患における死亡率と世界の疾病負荷への含意:系統的レビューとメタ解析
  156. 残遺うつ病における難治性不眠のための短期睡眠行動療法:評価者盲検ランダム化比較試験
  157. うつ病に併存する不眠症に対する認知行動療法の費用対効果:ランダム化比較試験の分析
  158. うつ病の初期の重症度と認知行動療法の効果:ピル・プラセボ対照試験の個々の参加者データのメタ解析
  159. 双極性障害における活動性(activation):系統的レビュー
  160. 小児と青年の注意欠如・多動症(ADHD)に対する徐放性グアンファシンを含む薬物療法の比較有効性と安全性:異なる治療薬の比較
  161. 小児と青年の注意欠如・多動症(ADHD)の薬理学的・非薬理学的治療:ランダム化試験のネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
  162. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対する認知行動療法(CBT):系統的レビューとメタ解析
  163. 1日のコーヒー摂取量が多い人ほど全死亡率が有意に低下する
  164. コクランレビュー:認知症を持つドライバーの移動性と安全性を維持するための運転評価
  165. アルツハイマー病に対するメマンチン(memantine):最新の系統的レビューとメタ解析
  166. 咽頭連鎖球菌感染症と精神疾患の関連:全国調査でPANDAS仮説の重要な側面を検証する
  167. 微小血管障害と中高年期のうつ病の関連:系統的レビューとメタ解析
  168. 不安症、強迫症、および心的外傷後ストレス障害における抗うつ薬中止後の再燃リスク:再燃予防試験の系統的レビューとメタ解析
  169. 軽度認知障害(MCI)患者におけるうつ病の有病率:系統的レビューとメタ解析
  170. 陽電子断層撮影法による双極性感情障害と統合失調症の疾患横断的ドパミン仮説の検証
  171. 統合失調感情障害(1)単極性うつ病および統合失調症と比較した統合失調感情障害の特徴と異質性:系統的文献レビューとメタ解析
  172. 統合失調感情障害(2)統合失調感情障害と診断された患者における診断の変更:再診断研究の系統的レビューとメタ解析
  173. 統合失調感情障害(3)統合失調症、双極性障害、および単極性うつ病の比較した統合失調感情障害のテスト-再テスト信頼性:系統的レビューとメタ解析
  174. 統合失調感情障害(4)統合失調症、双極性障害、および単極性うつ病の比較した統合失調感情障害の評価者間信頼性:系統的レビューとメタ解析
  175. コクランレビュー:統合失調症に対するリチウム
  176. コクランレビュー:統合失調症に対するベンゾジアゼピン
  177. コクランレビュー:統合失調症に対するバルプロ酸
  178. コクランレビュー:統合失調症に対するカルバマゼピン
  179. 小児期のいじめ体験の精神健康への同期的・長期的寄与:脆弱性とレジリエンスの役割
  180. 精神病を持つ人はどのくらい運動をしないで座りがちか:系統的レビューとメタ解析
  181. 統合失調症を持つ人はどのくらいの身体活動に携わるべきか:系統的レビュー、比較メタ解析およびメタ回帰
  182. 双極性障害を持つ人の身体活動と座って行う行為:系統的レビューとメタ解析
  183. うつ病を持つ人の身体活動と座って行う行為:系統的レビューとメタ解析
  184. 非定型の特徴を持つうつ病と肥満関連免疫代謝調節異常の遺伝的関連
  185. 精神病理の一般因子の妥当性と有用性
  186. 神経症傾向は公衆衛生上の非常に大きな意味を持つパーソナリティの基本領域である
  187. 生涯にわたる精神病理の階層的・因果的分類
  188. 統合失調症の陰性症状のための認知機能改善療法:ネットワークメタ解析
  189. 統合失調症の認知機能改善:系統的レビューとメタ解析の方法論的再評価
  190. コクランレビュー:高齢者のうつ病に対する継続および維持療法
  191. 双極うつ病に対する低および高用量第二世代抗精神病薬の利益と損益のメタ解析
  192. 治療抵抗性双極うつ病:電気けいれん療法vs.アルゴリズムに基づく薬物療法のランダム化比較試験
  193. 小脳回路内の構造的変化は一般精神疾患の一般易罹患性と関連する
  194. 胎児期のアセトアミノフェンへの曝露と注意欠如・多動症(ADHD)のリスク
  195. 炎症性バイオマーカーと統合失調症のリスク:2サンプル・メンデル無作為化研究
  196. 中年期の全身炎症マーカーは高年期の脳体積と関連する:ARIC研究
  197. 前駆期アルツハイマー病を持つ人に対する特定の複数栄養素を用いた24カ月間の介入(LipiDiDiet):ランダム化・二重盲検比較試験
  198. 米国の高齢成人における孤独・抑うつ・認知機能
  199. 認知的に正常な高齢成人における高次皮質のアミロイド蓄積と孤独の関連
  200. うつ病/大うつ病性障害性に対する抗うつ薬治療へのZ睡眠薬の追加の有効性と認容性:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析
  201. 成人の注意欠如・多動症(ADHD)次元の軌跡
  202. DSM-5診断基準に準拠した成人期ADHDの自己記入式尺度(ASRS-J)の日本語版およびその短縮版の心理測定特性
  203. 精神疾患および向精神薬と骨粗鬆症による骨折リスクとの関連
  204. 抗うつ薬治療の有効性と予測可能性の再評価:症状クラスタリング法
  205. 仕事と家庭の間の葛藤、およびトレーニング中の医師におけるうつ病の性差
  206. 医師免許交付への疑念から、医師は精神健康状態についてのケアを求めたがらない
  207. 自殺念慮を持つ若者を同定する自殺および感情概念の神経表象の機械学習
  208. 抑うつの再発予防におけるマインドフルネスに基づく認知症法の有効性:ランダム化試験の個々の患者データのメタ解析
  209. 中国人において気分障害と健常人から統合失調症ナイアシン枯渇サブグループを識別する
  210. レビュー:統合失調症のための認知矯正療法は機能的転帰を改善するか
  211. 統合失調症に対するコンピュータを用いた新規の認知トレーニングおよび集団介入による認知矯正プログラムの実行可能性と有効性:多施設ランダム化試験
  212. 統合失調症と共に生きる人に対するコンピュータソフトウェアを用いた認知リハビリテーションの有効性:日本におけるランダム化比較試験
  213. 日本における統合失調症を持つ人の臨床的・職業的帰結の改善に対する認知トレーニングと援助付き雇用の併用効果
  214. 精神疾患を持つ人への認知矯正療法と援助付き雇用の費用対効果:ランダム化比較試験
  215. 単極および双極うつ病における電気けいれん療法に反応した後の再発に関連する要因
  216. 成人におけるベンゾジアゼピンとあらゆる理由による死亡のリスク:コホート研究
  217. 強迫症(OCD)と客観的学業達成指標の関連:全国登録に基づく同胞対照研究
  218. 抗精神病薬の長期使用と重篤な心血管イベント:後方視的コホート研究
  219. 記憶や推論でなく処理速度のトレーニングが認知症リスクを減らす
  220. コクランレビュー:神経性過食症と過食に対する心理学的治療
  221. 本態性高血圧ラットにおけるセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬の運動および前頭前野モノアミン放出に対する効果
  222. 妊娠中の注意欠如・多動症(ADHD)に対する薬物療法のその後の周産期転帰
  223. 妊娠中の精神刺激薬の使用と関連する胎盤合併症
  224. 脳内アミロイドβ集積と認知症のない人における認知機能の関連
  225. 統合失調症に関係する多遺伝子罹患性と双極性障害における気分に一致しない精神病症状の発生および水準の関連
  226. 問題のあるギャンブルの潜在構造について:分類分析(taxometric analysis)
  227. ギャンブル・サブタイプの潜在クラス分析、および衝動/強迫との関連:ギャンブル障害の診断的境界を再検討する時期か
  228. 精神病を持つ人の聴覚性幻声に対するアバター療法(AVATAR therapy):単盲検ランダム化比較試験
  229. 精神病性障害を持つ人の20年にわたる社会機能の縦断的軌跡
  230. 気分・不安・トラウマ障害における診断横断的な症状クラスターと脳・行動・日常機能の関連
  231. 生涯アルコール摂取・大量飲酒行動と乳癌リスク
  232. 農村住民における環境と精神病発症リスクの関連:イースト・アングリア研究における精神病の社会疫学から
  233. EU-GEI多国間研究における精神保健サービス受療者から推定した精神病性障害の発症率
  234. 認知症診断に先立つ抑うつ症状の軌跡:28年間の追跡研究
  235. アルコール依存とうつ病の併存に関連する遺伝的リスク変異
  236. 統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)スコアと慢性統合失調症患者の全脳構造の関連:ボクセル単位の形態計測と拡散テンソル画像研究
  237. 治療抵抗性統合失調症におけるクロザピンと第一および第二世代抗精神病薬:系統的レビューとメタ解析
  238. うつ病の自殺念慮の急速軽減のためのケタミン:ミダゾラム対照ランダム化臨床試験
  239. 自閉スペクトラム症を有する発端者の同胞における精神疾患と神経発達症のリスク




アルツハイマー病における抗精神病薬治療中止後の再発予測:幻覚の役割について
    Patel AN, et al. Am J Psychiatry 2017; 174: 362-369.
    Prediction of Relapse After Discontinuation of Antipsychotic Treatment in Alzheimer's Disease: The Role of Hallucinations.

     米国コロンビア大学の研究グループは、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease; AD)患者180例にリスペリドン(=非定型抗精神病薬の一つで、AD患者の焦燥・興奮や精神病症状に対して使用されることがある、商品名はリスパダール等)を16週間投与して改善した患者110名について、リスペリドン中止後の焦燥・興奮や精神病症状の再発を調査した。結果、重度の幻覚を認めた患者は、幻覚が無いか軽度であった患者と比較して、再発の危険が有意に高く、なかでも幻聴が関係していた。

    コメント:認知症における幻覚は、レビー小体病患者の生々しい幻視が有名ですが、ADやその他の認知症において、時に幻聴が非常に活発な患者さんがいます。このような時にリスペリドンを含む非定型抗精神病薬が控え目に利用されますが、上記の研究はその継続的使用を一部支持する結果と言えるかもしれません。いずれにしても、抗精神病薬の生命予後への影響が報告されている現在、より慎重な処方態度が求められます。

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注意欠如・多動症(ADHD)では複数の脳領域が小さい―3,200例超の多施設大規模研究
    Hoogman M, et al. Lancet Psychiatry 2017; 4: 310-319.
    Subcortical brain volume differences in participants with attention deficit hyperactivity disorder in children and adults: a cross-sectional mega-analysis.

     ADHDを持つ人の皮質下脳領域の容積に関するこれまでで最大規模の研究が、オランダのMartine Hoogman博士らの研究グループから発表された。研究グループは、ADHDが扱いの難しい子どもに対する単なるレッテル張りや、不適切な養育の結果などではなく、まさに神経発達症の一つである証拠を示した。これまでENIGMA ADHD Working Group(ENIGMAは“謎、謎めいた言葉、不可解な出来事”という意味)は、患者さんの生涯にわたって多くの研究施設の協力のもと、脳のMRIデータを集積してきた。その結果、欧州諸国、米国、中国、ブラジルなど世界各国の23施設から患者データ1713と対照データ1529(年齢の中央値は14歳、範囲は4歳から63歳)を収集して解析し、重要な結果を得た。簡潔に述べれば、ADHD患者さんの脳では、頭蓋内容積の減少のほかに、側坐核、扁桃核、尾状核、被殻といった皮質下核(=大脳皮質の奥の方に位置する神経細胞の集まり)と海馬が統計学的に有意に小さいことが分かった。年齢別の解析では、15歳未満の小児患者で対照との差が有意に大きかったが、成人ではいずれの容積に関しても有意な差がなかった。

    コメント:成人になった患者さん、あるいは成人期になって診断された患者さんでは、小さかった脳容積が“追いつく”ということでしょうか。いずれにしても、国や人種を越えた世界の3,200人超の参加者から、標準化された撮影プロトコルでMRIデータを得たということで、非常に確かな所見と考えられ、研究上の重要な進歩です。しかしながら、対照との容積差はどの脳部位においても僅かであるので、ADHDを持つかもしれない個人の臨床診断にMRIを応用することは、残念ながら今もできません。基礎研究の成果は疾患の病態解明に役立つものですが、臨床検査として応用可能か否かは別問題であり、機能性精神疾患の研究と臨床の間によく存在するジレンマの一つと言えます。

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早期精神病と診断された若年者の診断後12カ月以内の未治療率と死亡率―米国の民間医療保険加入者5,000例の調査
    Schoenbaum M, et al. Schizophr Bull 2017 [Epub ahead of print]
    Twelve-Month Health Care Use and Mortality in Commercially Insured Young People With Incident Psychosis in the United States.

     診断後12カ月以内の死亡率は100,000症例あたり1,968症例で、一般人口における同年齢層の若年者と比べて死亡リスクは24倍、診断後12カ月以内の抗精神病薬による治療を受けていない患者の割合は61%、いずれかの精神療法を受けていない患者の割合は41%であった。

    コメント:論文が掲載されたSchizophrenia Bulletinは、日本語では「統合失調症研究紀要」といったところでしょうか。統合失調症を含む精神病およびその関連障害の専門学術誌です。筆頭著者のSchoenbaum氏は 米国国立精神保健研究所(National Institute of Mental Health; NIMH)所属の研究者、NIMHはワシントンDCに近いメリーランド州にある国立研究機関です。

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注意欠如・多動症(ADHD)と肥満の関連:体系的レビューとメタ解析
    Cortese S, et al. Am J Psychiatry 2016; 173: 34-43
    Association Between ADHD and Obesity: A Systematic Review and Meta-Analysis.

     42の原著論文のメタ解析(meta-analysis:複数の研究の結果を統合して、より高い視点から分析する手続き、あるいはそのための統計解析法)である。結果、ADHDを持つ患者と持たない対照の肥満有病率は、小児群でそれぞれ10.3%と7.4%、成人群で28.2%と16.4%であり、ADHDの薬物治療中の患者では、肥満のリスクがより低かった。

    コメント:統合失調症を含む精神疾患と、肥満やメタボリック症候群との関係が繰り返し報告されてきましたが、このメタ解析から、ADHDにおいても肥満のリスクがあることが示されました。肥満増加のメカニズムの解明や、肥満を持つADHD患者への介入効果について、今後さらなる研究です。

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注意欠如・多動症(ADHD)の転帰に関係する神経認知的予測因子:6年間の追跡研究
    van Lieshout M et al. J Abnorm Child Psychol 2017; 45: 261-272.
    Neurocognitive Predictors of ADHD Outcome: a 6-Year Follow-up Study.

     混合型のADHD患者226名を縦断的に調査した。神経認知的予測因子の候補として作業記憶、運動抑制、認知的抑制、反応時間のばらつき/タイミング、情報処理速度、運動制御、知能を選び、ADHD症状の重症度と全般的機能を非予測変数とした。結果、ケース登録時の作業記憶の成績が良好であるほど、6年後のADHD症状の重症度がより低く、反応時間のばらつきが小さいほど、6年後の全般的機能が良好であった。

    コメント:ADHD症状の重症度を予測した作業記憶、または作動記憶(working memory)は、最近ではワーキングメモリーとカタカナ表記されることが多くなってきました。短い時間に心の中で情報を保持し,それを処理するための短期記憶の一種で、読み・書き・計算や会話を含む広範な認知作業の基礎となります。ワーキングメモリーの問題は、ADHDを含む神経発達障害の神経心理学的障害としてしばしば議論されてきました。ADHDの神経認知への介入研究が期待されます。

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妊娠中の母体の体重増加および体格指数(BMI)と、児の非感情性精神病の発症リスクとの関係
    Mackay E, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 339-349.
    Association of Gestational Weight Gain and Maternal Body Mass Index in Early Pregnancy With Risk for Nonaffective Psychosis in Offspring.

     人口登録データを用いて、1982年から1989年にスウェーデンで生まれた52万6,042人を、13歳時点から2011年末まで追跡したところ、2,910人が非感情精神病(精神病症状を伴う双極性障害やうつ病を除いた統合失調症を含む精神病性障害)と診断され、うち704人が統合失調症と診断された。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて解析すると、標準体重の女性では体重増加が8㎏未満と極めて不十分(調整後ハザード比:1.32, 95%CI:1.13-1.54)、または妊娠初期の母親の軽度の痩せ(BMI:17.0以上18.5未満)がリスクとなるとのこと(調整後ハザード比:1.21, 95%CI:1.01-1.45)。一方、父親の重度の痩せ(BMI:16.0未満)もリスクであることは興味深い(調整後ハザード比:2.53, 95%CI:1.26-5.07)。

    コメント:論文著者らが所属するスウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)には、ノーベル賞の生理学医学部門の選考委員会が置かれており、その生物医学研究の水準は世界トップクラスです。この著名な研究機関からの論文によれば、「妊娠中の母体体重の増加不十分や母体に痩せは、児の統合失調症のリスクになる」という、少しショッキングな結論です。しかし似たような結論が、1992年のSusser ESとLin SPの論文にあることを思い出しました。ナチス侵攻による食料や燃料の封鎖で、オランダの妊婦は1944年から1945年の冬に深刻な栄養障害に見舞われましたが、この出生コホートにおける統合失調症の発生率の増加が報告されています(Arch Gen Psychiatry 1992; 49: 983-988.Schizophrenia after prenatal exposure to the Dutch Hunger Winter of 1944-1945.)。

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急性一過性精神病性障害の帰結:診療録を用いた20年間の遡及的研究
    Poon JY and Leung CM. Nord J Psychiatry 2017; 71: 139-144.
    Outcome of first-episode acute and transient psychotic disorder in Hong Kong Chinese: a 20-year retrospective follow-up study.

     ICD-10には急性発症と早期寛解を特徴とする診断カテゴリーとして、急性一過性精神病性障害があるが、比較的研究が少なく疾患分類上の議論がある。著者らは1990年から2000年の間に、急性一過性精神病性障害(Acute Transient Psychotic Disorders; ATPD)の診断で、香港の地域の病院に入院した中国人を対象に、20年間にわたる精神医学的診断の変遷を、診療録を遡及的に調査することで確認した。結果、当初はATPDと診断された87名の患者のうち、56名(64.4%)の診断が変更され、大部分は双極性障害と統合失調症であった。ATPDの診断が変更されなかった31名(35.6%)のうち、17名(54.8%)は単一エピソードで、残り14名(45.2%)は再発していた。ATPDの診断が変更された患者は、より年齢が若く、第一親等に精神疾患の家族歴をより多く認め、精神科入院がより多かった。

    コメント:ICD-10のF23 急性一過性精神病性障害(Acute Transient Psychotic Disorders; ATPD)は、さらにF23.0、F23.1、F23.2、F23.3、およびF23.8、F23.9と細分されることから明らかなように、いくぶん異なる臨床症候を持つ複合的な診断カテゴリーです。DSM-5では、短期精神病性障害や統合失調症様障害が相当する疾患名です。本研究が示すように、長期の転帰が異なることは経験ある臨床家なら十分納得できる話でしょう。短期間で退院して外来治療に引き継ぐものの、果たしてどのくらいの期間、薬物療法や外来フォローを続けるのか、転帰を予測するマーカーの発見・開発が期待されます。

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幹線道路沿いの居住は認知症の発症リスクと関係する:地域住民ベースのコホート研究
    Chen H,et al. Lancet 2017; 389: 718-726.
    Living near major roads and the incidence of dementia, Parkinson's disease, and multiple sclerosis: a population-based cohort study.

     カナダの研究グループは、同国のオンタリオ州に居住していた20歳から50歳の全成人440万人(多発性硬化症コホート)、および55歳から85歳の全成人220万人(認知症およびパーキンソン病コホート)のうち、同国に生まれて5年以上オンタリオ州に居住する人を追跡して、幹線道路から居住地までの距離と、認知症、多発性硬化症、およびパーキンソン病の発症との関係を調べた。2012年までの追跡の結果、多発性硬化症コホートから9,247例の多発性硬化症が、認知症およびパーキンソン病コホートから24万3,611例の認知症と3万1,577例のパーキンソン病が発症した。認知症発症の補正ハザード比は、幹線道路から居住地までの距離が50m未満群で1.07(95%信頼区間: 1.06-1.08)、50mから100m群で1.04(95%信頼区間: 1.02-1.05)、101m~200m群で1.02(95%信頼区間: 1.01-1.03)、201mから300m群で1.00(95%信頼区間: 0.99-1.01)であった(傾向性p=0.035)。

    コメント:幹線道路沿いの居住が、認知機能に悪影響を与える可能性を示唆するエビデンスが蓄積されつつありましたが(Power MC, et al. Environ Health Perspect 2011; Oudin A, et al. Environ Health Perspect 2016; Tzivian L, et al. Environ Health Perspect 2016)、パーキンソン病(PD)や多発性硬化症との関係はこれまで未検討だったそうです。幹線道路から居住地までの距離は、PDとMSの発症には関係していなかったということで、認知症の発症増加の原因はこれら神経疾患とは別にありそうです。

    *Cox比例ハザードモデル(Cox proportional hazards model):Cox回帰分析とも呼ばれる多変量の生存分析(survival analysis)で、交絡因子や追跡期間の補正などが可能であることから、臨床試験・研究でしばしば用いられる。上記の場合は(補正)ハザード比が「1」を超えるほど関係は強い。

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選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の服用開始30日以内の頭蓋内出血リスクは三環系抗うつ薬の1.5倍である
    Renoux C, et al. JAMA Neurol 2017, 74: 173-180.
    Association of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors With the Risk for Spontaneous Intracranial Hemorrhage.

     カナダの研究グループは、英国の臨床行為研究データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、1995年1月から2014年6月の間に、新規に抗うつ薬の服用を開始した18歳以上の患者を対象に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors; SSRI)と頭蓋内出血(Intracranial hemorrhage; ICH)の発症リスクとの関係を、三環系抗うつ薬(Tricyclic antidepressants; TCA)と比較することで検討した。結果、新規に抗うつ薬を服用した136万3,990例のうち、3,036例のICHが発症した。TCA服用者と比較した場合の、SSRI服用者のICHの発症率比(相対リスク:TCA内服者におけるICH発症率÷SSRI内服者におけるICH発症率)は1.17(95%信頼区間1.02~1.35)で、服用開始の30日間に限ると1.44(95%信頼区間1.04~1.99)とより高い傾向があった。

    コメント: セロトニン(serotonin)、すなわちhydroxytryptamine(5-HT)はモノアミンの一種です。血液脳関門を通過しないことから、脳内ではトリプトファンというアミノ酸から生合成されます。しかし、脳に含まれるセロトニンの量はわずか1から2%とのこと。もともと腸管の平滑筋細胞を収縮させる物質として発見された歴史が示すように、腸クロム細胞に多く含まれますが、血小板にも豊富に存在し、そこにはセロトニン受容体が発現していて、トランスポーターに結合することで再取り込を阻害するSSRIは、血小板の凝集機能に関わることになります。今回の疫学研究では、セロトニンの再取り込み阻害作が強い抗うつ薬は、それが弱い抗うつ薬と比較してICHの発症リスクが高かったということから、今回の結果は病態生理学的にも合理性がありそうです。


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統合失調症の臨床経過に対する抗精神病薬の長期効果
    Goff DC, et al. Am J Psychiatry 2017 [Epub ahead of print]
    The Long-Term Effects of Antipsychotic Medication on Clinical Course in Schizophrenia.

     論文の結論の要約:無作為化比較試験は、精神病の急性期治療と再発予防に対する抗精神病薬の有効性を強く支持している。相関研究は、精神病への早期介入と未治療期間の短縮が、長期的アウトカムを改善する可能性を示唆している。治療の中断、あるいは代替としての非薬物療法的アプローチは、ある一群の患者については有益かもしれないが、再発リスクの上昇を起こすかもしれない。個別化治療に向けた正確性の高い医療を実現するバイオマーカーの開発を含む、さらなる研究が必要である。

    コメント:脳体積の減少やドパミン受容体の過感受性を引き起こすではないか等、抗精神病薬による治療が統合失調症の長期的アウトカムへ負の影響を与える可能性への懸念が一部にありましたが、本論文は「その可能性は支持されない」と結論しています。論文の著者は複数の異なる国の研究者で、Goff博士とGirgis博士はニューヨーク、Falkai博士はミュンヘン、Fleischhacker博士はオーストリアのインスブルック、Kahn博士はオランダのユトレヒト、Uchida博士は日本、Zhao博士は中国の研究者です。論文の最後に名を連ねるLieberman博士は、ニューヨークはコロンビア大学の著名な学者です。

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専門家は警告する:気候変動は精神健康へ災厄をもたらす
    Alicia Ault. From News & Perspective in Medscape Psychiatry May 12, 2017
    Climate Change a Disaster for Mental Health, Experts Warn.

     研究論文ではなく、医学・医療関連のニュースです。米国精神医学会(The American Psychiatric Association, APA)が、「気候変動は精神健康への主要な脅威である」と警告しているとのこと。このAPAの災害委員会の精神科分科会のメンバーであるMorganstein博士とUrsano博士はまた、気候変動に関する重要な連邦報告書(The Impacts of Climate Change on Human Health in the United States: A Scientific Assessment)における精神健康の章を執筆しています。この報告書は2016年4月に The US Global Change Research Programによって出版され、精神健康に関する主要な所見として、次の4点が挙げられています。

    1. 災害への暴露は、精神健康の転帰に影響を与え、それは時に慢性的である。
    2. 子ども、高齢者、精神疾患の既往のある人、経済的に困窮している人、そして災害の初期対応者は、気候や天候関連の災害から苦痛を受けたり、その他の負の精神的帰結に及んだりするリスクがより高い。食物や生計が自然環境に依存している地域社会、および特異的な気候変動事象に大きく影響される地域住民は、精神健康の負の転帰を被るリスクが増加する。
    3. 気候変動の脅威は、一部の人々の精神健康に負の転帰を引き起こし得るし、気候変動に関するマスメディアと大衆への伝達は、ストレス反応と精神的安寧に影響しうる。
    4. 猛暑は精神疾患を持つ人々にとって、不良な身体的精神的健康の高いリスクとなる。

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ハンナ・デッカー著(2013年)『DSM-Ⅲができるまで』
    Hannah S. Decker. The Making of DSM-Ⅲ, Oxford University Press 2013.

     これは研究論文ではなく、英語の専門書です。映画のDVDを買うと、本編DVD以外にボーナスDVDとして、making of the movieのようなものが付属していることがあります。この書籍は、精神医学の革命と当時言われた精神疾患の診断・統計マニュアル(米国精神医学会)の第3版(以下、DSM-Ⅲ)の作成過程(making)を、テキサス大学の歴史学者で、精神医学の歴史・文化を研究するハンナ・デッカー教授が記したものです。内容は非常に詳細で、当事者からの聞き取り資料のようなものから出版された文献まで、情報量に圧倒されます。とても全部に目を通すことはできていませんが、一つだけ気になったことがあります。操作的診断基準(operational criteria)という言葉でも知られる“操作(operation)”の起源です。
     ハーバード大学では物理学者 Percy Bridgman(1882-1961:1946年に超高圧装置の発明と高圧物理学の研究でノーベル物理学賞を受賞)が、科学哲学の分野で操作主義(operationalism/operationist)と呼ばれる科学観を提唱していました(1927年に『The Logics of Modern Physics』を発表)。1930年代から1940年代、この操作主義はハーバード大学周辺のアカデミアでは広く受け入れられたようで、かの有名な精神分析医 Harry Stack Sullivan(1892-1949)もその一人あったとの記述には少し驚きました。
     マサチューセッツ総合病院の精神科で、当時主流の精神分析医としてのトレーニングを受けずに、むしろ神経学に接点を求めていた精神科医 Mandel Cohen(1907-2000)は、1930年代から1940年代後にoperational criteria(操作的診断基準)の概念を構想しつつあったと書かれています。彼は14歳年上の指導医としてEli Robins(1921-1994)に大きな影響を与え、1950年代から1960年代にワシントン大学セントルイス学派の人々、1970年代のコロンビア大学のRobert Spitzerに引き継がれるわけです。
     このように、精神疾患の診断を科学的にするためのアイデアとして、操作主義的な発想の起源はかなり古いと言えるでしょう。トーマス・クーン(1922-1996)が言うところの科学革命が、DSM-Ⅲ 作成の特別委員会の活動時期(1974-1979)に生じたからというより、この本の結論が示すように、それなりの助走期間があったと考えられます。

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認知症患者に対する音楽療法:コクラン・レビューより
    Jenny T van der Steen, et al. The Cochrane Library Music-based therapeutic interventions for people with dementia, first published: 2 May 2017

     認知症の高齢者を対象として、行動障害、社交障害、認知障害、および情緒障害の治療に用いられる音楽療法の効果について検討した。検索用語は「music therapy」、「music」、「singing」、「sing」、「auditory stimulation」、検索データベースはALOIS、すなわちCochrane Dementia and Cognitive Improvement Group(CDCIG)によるSpecialized Register(2010年4月14日)に加えて、MEDLINE、EMBASE、PSYCinfoを含む主要な医療データベースを用いた(検索は2015年7月3日に実施、さらなる新規の検索を2016年4月12日に実施)。レビューに含めた研究の選択基準は、認知症の高齢者に見られる行動障害、社交障害、認知障害、および情緒障害の治療に音楽療法(少なくとも5回のセッションを実施)を用いて、臨床的に意味のあるアウトカムが報告されている無作為化比較対照試験(Randomized Controlled Trials, RCT:研究対象を治療・介入群と、治療・介入を行わない対照群に無作為に振り分けることで、治療・介入効果の評価の偏りを避けることができる望ましい臨床研究法の一つで、今回の場合、治療・介入群は音楽療法、対照は通常のケア、もしくは音楽以外の活動である)。方法論的な質について2名のレビューアが別々に研究を検索し、結果、10件の研究が選択されたが、これらの研究は方法論的に概して質が低く、さらなる解析のため、研究結果を検証・統合することはできなかった。情緒障害に関しては、認知症の高齢者の抑うつ症状は減少するかもしれないが、焦燥や攻撃性への効果はごく僅か、または皆無であり、情緒的安定や生活の質についても、効果はごく僅か、または皆無であった。(英語と日本語の要約を参照)

    コメント:本レビューは、国際的団体のコクラン共同計画が作成しているコクラン・レビューの一つです。アブストラクトには、英語と共に日本語の要約も掲載されていて便利です。現在、アルツハイマー病を中心とする認知症性疾患の根本治療を求めて、精力的な研究が行われていますが、日常臨床における薬物療法は対症療法にとどまります。したがって、今回の音楽療法を含む様々な非薬物的介入が期待され、実際に現場で実践されているわけですが、その効果に関する実証研究は非常に少ないとのことです。本レビューにおいて、認知症治療としての音楽療法に関するエビデンスが調査されましたが、著者らの主要な結論は、簡潔に言えば残念なことに、「今回のレビューで選択された研究は方法論的な質、および報告方法が不良であり、有用な結論を得ることはできなかった」ということでした。

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植原 亮 著(2013年)『実在論と知識の自然化:自然種の一般理論とその応用』
    Ryo Uehara. Realism and Naturalizing Knowledge: A General Theory of Natural Kinds and its Applications, Keiso Shobo 2013.

     これは研究論文ではなく、日本語の専門書です。本の「あとがき」にあるように、著者の先生の博士学位論文に加筆・修正したものだそうです。私がなぜこの本に興味を持ったかというと、本のタイトルにある「自然種」というキーワードからです。“精神疾患は作られる”といった議論を時々見聞きしますが、人々の精神的苦痛を根拠なく病理化・医学化しているとの批判があります。生物種でさえも自然種なのかといった議論があるわけですから、化学元素のような意味での分かりやすい自然種とはとうてい言えないのかもしれません。レイチェル・クーパー氏の著書、『精神医学の科学哲学』(名古屋大学出版会、2015年)にあるように、研究の結果、精神疾患と我々が考えているものには、「自然種とみなせるものもあれば、みなせないものもある」のかもしれません。いずれにしても、自然種の一般理論を提案して、実在論と知識の自然化を支持する著者の議論を参考にすると、精神疾患の実在を想定して、下位カテゴリーに分類する営みは、カテゴリーの内包や外延の決定に恣意的側面を含むとはいえ、是認できる行為であると思いました。

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親の認知症歴と子の認知症発症リスクの関係:地域住民ベースのコホート研究
    Wolters F J, et al. Neurology 2017; 88: 1642-1649.
    Parental family history of dementia in relation to subclinical brain disease and dementia risk.

     オランダの研究グループは、Rotterdam Studyで2000年から2002年に登録された認知症のない参加者2,087例(平均年齢=64歳、男/女=45/55)の親の認知症歴を調査した。12.2年間の追跡中、142例の認知症が発症し、407例に両親のいずれかに認知症の病歴を認めた。この親の認知症歴は、既知の遺伝的危険因子とは独立して、子の認知症発症リスクと関係していた(ハザード比1.67、95%信頼区間: 1.12-2.48)。サブグループ解析を行うと、親の認知症診断年齢が80歳未満でのみ統計学的に有意であり(ハザード比2.58、95%信頼区間: 1.61-4.15)、80歳以上では有意ではなかった(ハザード比1.01、95%信頼区間: 0.58-1.77)。結果的に、親の認知症診断年齢が80歳未満では、子の認知症診断年齢は親のそれと有意な正の相関を認めたが(r=0.57、p=0.001)、親の認知症診断年齢が80歳以上では、有意な相関を認めなかった(r=0.17、p=0.55)。一方、親の性別による違いは認めなかった。

    コメント:脳MRI 上は認知症の診断が明らかでない1,161例では、親の認知症歴は脳低潅流、脳白質病変、微小脳出血と関係があったそうですので、上記の関係の一部は、虚血性および出血性の小血管障害を介している可能性が示唆されます。

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50歳以上の成人が認知機能を維持するためには、中から高強度の「有酸素+レジスタンス」運動を、45分以上行うとよい:メタ解析と系統的レビュー
    Northey J M, et al. Br J Sports Med, 24 April 2017.
    Exercise interventions for cognitive function in adults older than 50: a systematic review with meta-analysis.

     同氏らオーストラリアの研究グループは、身体運動の種類や強度、時間を踏まえた身体活動と認知機能の関係を調べるために、2016年11月までに発表された50歳以上の地域住民を対象とする39件の無作為化比較対照試験(RCT)のメタ解析と系統的レビューを行い、次の結果を得た。
    1. 身体活動は、認知機能の改善に有意に関連した(標準化平均差0.29、95%信頼区間: 0.17-0.41、p<0.01)
    2. 身体活動の種類別では、有酸素運動、レジスタンス運動、有酸素運動+レジスタンス運動、太極拳が認知機能の改善と有意に関連していたが(p<0.01)、ヨガに有意な関連はなかった(p=0.27)。
    3. 認知機能の領域別では、レジスタンス運動が実行機能、記憶、作業記憶の有意な改善と関連していたほか(標準化平均差0.49、95%信頼区間: 0.23-0.85、p<0.01)、太極拳と作業記憶に有意な相互作用を認めた(標準化平均差0.49、95%信頼区間: 0.16-0.82、p<0.01)。
    4. 身体活動の時間については、1回あたり45分から65分(p<0.01)が認知機能の改善と有意に関連していた。
    5. 身体活動の強度については、中等度(p=0.02)または高強度(p<0.01)が認知機能の改善と有意に関連していた。

    コメント:同氏は「中から高強度の、有酸素およびレジスタンス運動を、1回あたり45分以上、1週間になるべく多く行うとよい」と薦めていますが、何事も効果を得るには大変です。

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S. Nassir Ghaemi 著(2008年)『Mood Disorders, Second Edition』
     これは英語の専門書ですが、『気分障害ハンドブック』(松崎朝樹 監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2013年)として訳本が出ています。Ghaemi博士は、訳本が出版された時はジョージア州アトランタにあるエモリ―大学の准教授、他にも多くの訳本が出ている日本でも有名な先生です。双極性障害の治療に際しては、以前からバルプロ酸などの抗てんかん薬が、最近では非定型抗精神病の使用が非常に増えていますが、Ghaemi博士はリチウムのエビデンスの確実性を重視して、その使用を奨めています。

    1. 純粋躁病と双極うつ病の、急性期治療と再発予防の両方に対する確実なエビデンス。
    2. 自殺予防と生命予後に対する効果が、向精神薬の中で最も証明されている。
    3. 急性中毒を除く慎重な対応を要する副作用は次の臓器に起こる:甲状腺、腎臓、心臓
      この中で長期服用者に生じる腎濃縮障害は、多尿や時に多飲水としてしばしば経験されます(抗ADH作用)。重度の慢性腎不全やネフローゼ症候群の記述もありますが、臨床的には稀です。腎臓への悪影響を最小化する、そして服薬アドヒアランスを高める方法として、Ghaemi博士はリチウムの一日1回、就寝前の内服を奨めています。
    4. リチウムには神経保護作用がある。
    5. 急性中毒を除いて、リチウムを急に中止してはいけない(1カ月以内に躁状態に陥るリスクが非常に高い)。

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教育年数の延長で、認知症の有病率が低下している可能性:米国における2000年と2012年の比較
    Langa KM, et al. JAMA Intern Med 2017; 177: 51-58.
    A Comparison of the Prevalence of Dementia in the United States in 2000 and 2012.

     ミシガン大学の研究グループは、Health and Retirement Studyからの最新の結果を発表した。2000年から2012年の間に、米国では高学歴化が進み、教育年数カテゴリーで「12年以下」の人は66%から55%に減少、「13年以上」の人は34%から45%に増加した。そして、2000年から2012年の間に、認知機能カテゴリーで「正常」とされた人が67%から73%に増加、「CIND」(注:Cognitive impairment-no dementiaの略で、軽度認知障害と類似の概念です)とされた人が21%から19%に減少、「認知症」とされた人は12%から9%に減少した。教育年数別に見た認知症発症のオッズ比は、教育年数が「12年未満」の人のそれと比較した場合(オッズ比は1.0)、「12年」の人のオッズ比は0.42(95%信頼区間:0.37-0.48)、「13年から15年」の人は0.36(95%信頼区間:0.30-0.44)、16年以上の人は0.27(95%信頼区間:0.21-0.35)と順に低下した。すなわち、「教育年数が長いほど認知症になりにくい」という結果であった。

    コメント:実はフラミンガム研究等でも、認知症の有病率の低下は報告されているのだそうです(Satizabal CL, et al. N Eng J Med 2016; 374: 523-532)。フラミンガム研究については、『世界の心臓を救った町~フラミンガム研究の55年』(嶋 康晃 著、ライフサイエンス出版、2011年)という本を読んだことがあります。現在知られている循環器疾患の疫学的知識のほとんどが、この研究から生まれたと言われるほど有名な、地域ベースの前向きコホート研究(The Framingham Heart Study)のことです。今回の結果はまた、認知予備能(cognitive reserve)の仮説につながるそうです。これは、「高い教育を受けた人は、生涯にわたって高い知的活動を続けることで、例えばアルツハイマー病の病理変化や認知機能低下に対する予備能力を持つようになり、認知症と診断されるまでの期間が遅延する」という説明です。

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成人の不安症/不安障害に対する森田療法:コクラン・レビューより
    Hui Wu, et al. The Cochrane Library Morita therapy for anxiety disorders in adults, first published: 19 February 2015

     449人の研究参加者を含む7つの中国の研究がレビューの対象で、7つのうち6つは解析に使用できた(全般性不安症/全般性不安障害が1研究、社交恐怖/社交不安障害が2研究、強迫症/強迫性障害が3研究)。しかし、これらの研究はサンプルサイズが小さく、不正確で、かなりのバイアスが含まれている危険があった。ゆえに、不安症/不安障害の治療について、森田療法の有効性に関する結論を得ることはできなかった。不安症/不安障害の森田療法の効果を評価するために、質の高い研究が必須である。

    コメント:以上はこのレビューのplain language summaryです。森田療法とは、1919年(大正8年)に森田正馬(もりたまさたけ)により創始された、森田神経質に対する精神療法です。森田は東京帝国大学では呉秀三(くれしゅうぞう、同大精神病学講座の教授で日本における精神病学の創立者)の門下で、東京慈恵会医科大学の教授でした。森田神経質は神経衰弱や神経症、最近の診断名では不安症/不安障害に通じるところがあります。上記の全般性不安症/全般性不安障害、社交恐怖/社交不安障害、強迫症/強迫性障害などを対象として、日本のみならず海外でも臨床実践や研究がなされている、数少ない日本発の精神療法です。

    参考文献:岩井 寛 著:森田療法 (講談社現代新書、1986年)

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DSM-5における嗜好品による精神疾患:アルコール、カフェイン、タバコ
    American Psychiatric Association (2013)
    Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-5

     上記は米国精神医学会が出版する専門書で、『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』(日本精神神経学会 監修, 医学書院2014年)として邦訳が出ています。この中にアルコール、カフェイン、およびタバコに関連する精神疾患が挙げられていますが、認められている関連障害の種類は異なります。非常に多くの関連障害が記述されているのがアルコールで、11種類もありますが、カフェインとタバコはより少なく、それぞれ4種類と3種類です。アルコールには①物質使用障害、②物質中毒、③物質離脱の3つがありますが、カフェインには②物質中毒と③物質離脱の2つ、タバコには①物質使用障害と③物質離脱の2つがあります。さらに、アルコールには関連する①精神病性障害、②双極性障害、③抑うつ障害、④不安症群、⑤睡眠障害、⑥性機能不全群、⑦せん妄、⑧神経認知障害群がありますが、カフェインには④不安症群と⑤睡眠障害の2つ、タバコは⑤睡眠障害だけが診断可能です。こう比較すると、嗜好品の中ではやはりアルコールの精神と行動への影響が強大なことがわかりますが、最近の英字新聞で、16歳の子どもがカフェイン中毒で死亡したとの記事を見ました。カフェインは心臓への影響が強いので、過剰摂取に注意が必要です。

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自閉症における胎児期および出生後の金属代謝異常:妊娠第2期・第3期、および出生後早期における有毒元素と必須元素の摂取の違いが、自閉スペクトラム症の発症リスクと関係する
    Arora M, et al. Nature Communications 2017; 8: Article number 15493
    Fetal and postnatal metal dysregulation in autism

    論文要旨:米国とスウェーデンの著者らは、Autism and ADHD Twin Study in Sweden (RATSS)から一卵性と二卵性の双子を募り、双方とも自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder、以下ASD)である6ペア12名(一卵性5ペア、二卵性1ペア)と、片方のみASDである10ペア20名(一卵性3ペア、二卵性4ペア)から研究協力を得た。レーザーで象牙質表面から得たサンプルを質量分析にかけ、亜鉛とマンガン(必須元素)と鉛(有毒元素)を定量した。結果、特定の発達期において、ASD症例は必須元素である亜鉛とマンガンの摂取が少なく、有毒元素である鉛の摂取が多かった。マンガン濃度はASD重症度、およびASD特性と逆相関し、前者は12週、後者は15週のマンガン濃度と最大相関をしたが、亜鉛濃度との相関は認めなかった。一方、鉛濃度はASD重症度、およびASD特性と順相関し、5週の鉛濃度と最大相関をした。

    コメント:これまで、ASDの出生前および周産期の環境要因については、一般の精神医学書では「単独でASDの病因となり得るようなものは今のところ証明されていない」(『カプラン精神医学テキスト』日本語訳第3版、原著第11版)とあり、児童精神医学の専門書でも、「MMRワクチン(防腐剤のチメロサールが含まれた時期があり、その中に含まれるエチル水銀がASDと関係するとの主張があった)とASDの発症率をしらべた疫学研究(例えば2003年のデンマークの研究、2005年の横浜市における研究など)は、MMRワクチンの接種(エチル水銀の摂取)でASDの有病率の増加は説明できない」とあります(『新版 児童青年精神医学』原著第5版)。今回の研究の意義について論文の筆頭著者のArora博士は、「一卵性双生児の間で金属元素の摂取に違いを認めたという事実が重要で、なぜなら遺伝的リスク要因に加えて、自閉症には環境的要素が存在することを示しているからだ」と述べています。医学において鉛の中毒はよく知られていて、急性中毒も慢性中毒もあり、神経系の障害が強いです。本テーマについては、さらなる研究と議論が必要ですね。

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妊娠中のリチウムの使用と心臓奇形のリスク
    Patorno E, et al. N Engl J Med 2017; 376: 2245-2254.
    Lithium Use in Pregnancy and the Risk of Cardiac Malformations.

    論文要旨:妊娠初期のリチウムへの曝露が、乳児の先天性心疾患の全般的リスク、およびエプスタイン奇形(右室流出路狭窄)の上昇に関係する可能性が懸念されていた。著者らはメディケイドに加入している、2000年から2010 年に生児を出産した女性の妊娠 132万5,563 件を対象としてコホート研究を行った。まず、妊娠第1期にリチウムに曝露された児の心臓奇形リスクを、リチウムに曝露されていない児と比較し、二次解析では、使用頻度の高い他の気分安定薬であるラモトリギンに曝露された児と比較した。結果、心臓奇形はリチウム曝露児 663 例中 16 例(2.4%)に、非曝露児 132万2,955 例中 15,251 例(1.1%)に、ラモトリギン曝露児 1,945 例中 27 例(1.4%)に認められた。リチウム非曝露群と比較した場合の、リチウム曝露群の心臓奇形の補正リスク比は 1.65(95%信頼区間 [CI] 1.02~2.68)であった。内服量との関係では、補正リスク比は1日量が 600 mg 以下で 1.11(95% CI: 0.46~2.64)、601~900 mg で 1.60(95% CI: 0.67~3.80)、900 mg 超で 3.22(95% CI: 1.47~7.02)であった。エプスタイン奇形(右室流出路狭窄)の有病率は、リチウム曝露群で0.60%、非曝露群では 0.18%、補正リスク比は2.66(95% CI: 1.00~7.06)であった。対照としてラモトリギン曝露群を用いた場合も、この結果は同様であった。

    コメント:十分な科学的根拠を有する双極性障害に対するリチウム療法ですが、確かに妊娠第1期における母親のリチウム使用は、エプスタイン奇形(右室流出路狭窄)を含む児の心臓奇形のリスクの上昇と関連します。しかしながら、その効果量は従来想定されてきたものよりも小さいようです。

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滝沢 龍 訳『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック:DSM-5から生活指針まで』(医学書院、2016年)
    Understanding Mental Disorders: Your Guide to DSM-5 by American
    Psychiatric Association, American Psychiatric Publishing 2015.

     これは研究論文ではなく、英語の本の日本語訳です。訳者による「はじめに:本書の使い方」にあるように、米国精神医学会がはじめて公式に出版する精神疾患を持つ当事者の方々やその家族向けの案内書です。2013年に米国精神医学会は、『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition』を発表し、これは日本精神神経学会の監修のもと、翌年には『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(以下、DSM-5)として日本語訳も出ていますが、精神医療と精神保健の専門家が参照するものです。精神疾患を持つ当事者の方々やその家族向けの案内書である標記の書籍は、当然DSM-5の精神疾患の記述や診断基準を含みますが、より簡潔な形をとることで必要な情報にアクセスしやすく編集してあり、早期発見と早期介入を目指して、本人や支援者がどう対応したらよいか、具体的なアドバイスもあります。一方、DSM-5に一定の距離を置いている精神医療と精神保健の専門家にとっても、情報源となりうる十分な内容が含まれます。日本語訳は自然で、診断名はDSM-5日本語版のそれにきちんと対応しています。訳者はまた、psychologistを心理師と訳すなど、国家資格化がきまった公認心理師を目指す学生にも親しみやすいような配慮をしています。章立ては、各々の障害群がDSM-5のそれと同じ順序で配置されているので、DSM-5に初めて接する学習者にとって大変便利でしょう。

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ダニエル・パウル・シュレーバー 著, 渡辺 哲夫 訳『ある神経病者の回想録』 (講談社学術文庫、2015年)
    Daniel Paul Schreber. Denkwurdigkeiten eines Nervenkranken, 1903.

     これは1990年に筑摩書房から刊行された訳者の原本が文庫化されたものです。翻訳も見直されたとのこと、大変な作業であったと思われます。2015年には同じ原著が『シュレーバー回想録』 (中公クラシックス) としても出版されています。本の著者は裁判官であり患者でもあったシュレーバー氏、精神医学者であり神経解剖学者でもあったフレクジヒ博士の治療を受けるも、最期は入院中の1911年に亡くなりました。本が出版されたのは精神科病院を退院した1903年でした。この知的に聡明な人が抱いた妄想と幻聴の世界、「神の言葉を聞き、崩壊した世界を再生させるために女性となって神の子を身ごもる」等が、体験者自身の言葉で綿密かつ壮絶に記録されています。

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フィンランドにおける単極うつ病に対する薬物療法と再入院のリスク:全国コホート研究
    Tiihonen J, et al. Lancet psychiatry 2017 [Epub ahead of print].
    Pharmacological treatments and risk of readmission to hospital for unipolar depression in Finland: a nationwide cohort study.

    背景:重度の単極うつ病に対する長期薬物療法の相対的有効性については、ほとんど知られていない。本研究の目的は、単極うつ病のために少なくとも1回は入院した経験のある患者の全国コホートにおいて、単極うつ病の再発予防に関する薬物療法の有効性を調べることである。

    方法:この全国コホート研究では、1987年1月1日から12月31日の間にフィンランドで(統合失調症、または双極性障害の診断がない)単極性うつ病のために少なくとも1回入院したことがあるすべての患者において、1996年から2012年の間の再入院のリスクを調べた。入院、死亡、投薬に関する全国データベースを利用し、投薬期間と未投薬期間についてはPRE2DUP法を用いて決定した。一次解析は、全コホートにおける再入院の患者内分析であり、選択バイアスを除くために各個人がコントロールとして使われた。推定される生存者バイアスと初発症状バイアスは、感度分析で制御された。33回の独立の統計比較が特定の投薬ごとに行われたので、統計学的有意水準は0.15%(p<0.0015)とした。

    結果:全コホートは12万3,712症例からのデータであり、平均追跡期間は7.9年(標準偏差5.3年)であった。リチウムの使用は、その未使用と比較して、再入院のより低いリスクと関連した(ハザード比 0.47;信頼区間 0.40-0.55;p<0.0001)。一方、抗うつ薬使用(ハザード比 1.10;信頼区間 1.06-1.13;p<0.0001)および抗精神病薬使用(ハザード比 1.16;信頼区間 1.12-1.20;p<0.0001)のグループは、再入院のより低いリスクと関連はなかった。抗うつ薬とリチウムの併用の期間よりも(ハザード比 0.50;信頼区間 0.43-0.59;p<0.0001)、リチウム単独療法中の期間の方がより再入院のリスクが低かった(ハザード比 0.31;信頼区間 0.21-0.47;p<0.0001)。リチウムについで、クロザピン(ハザード比 0.65;信頼区間 0.46-0.90;p=0.010)とアミトリプチリン(ハザード比 0.75;信頼区間 0.70-0.81;p<0.0001)が、再入院の低いリスクと関連する特定の薬物であった。生存バイアスと初発症状バイアスを制御する感度分析において、すべての薬剤は一次解析におけるよりも低い再入院率と関連し、相対的有効性において同じ順位を示した。最も低い死亡率は抗うつ薬の使用と関係した(ハザード比 0.56;信頼区間 0.54-0.58;p<0.0001)。

    コメント:リチウムは、特に抗うつ薬と併用しなくても、重度の単極うつ病患者の再入院のリスクを低下させることに関連する薬物であり、抗うつ薬および抗精神病薬に関連するこの指標(再入院)のアウトカムは、リチウムよりも劣っていました。重度のうつ病のより広い患者群に対して、リチウム治療はその潜在的リスクと副作用を考慮しながら、今以上にもっと検討されるべきかもしれません。

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リチウム:精神医学に恩恵をもたらし続ける贈り物
    Nassir Ghaemi, MD, MPH. Medscape Coverage from the American Psychiatric Association (APA) 2017 Annual Meeting.
    Lithium: The Gift That Keeps on Giving in Psychiatry. Disclosed on June 16, 2017

     これは米国精神医学会(APA)の2017年学術集会における話題を報告したものです。Medscapeは医療専門ネットワークWebMD社が運営する医学情報サイトで、登録すると医学・医療関連のコンテンツを含むメールが送られてきます。報告者はナシア・ガミー博士、『気分障害ハンドブック』(松崎朝樹 監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2013年)という訳本も出ている有名な先生で、ウェブサイトによると、現在はTufts Medical Center(ボストン)の精神科教授とのことです。ハーバード大学の准教授 Dr David Osserが座長を務めたシンポジウム、Lithium: Key Issues for Practiceの報告です。リチウムの広範囲の有用性、およびリチウムの安全性プロフィールが主な内容とのことですが、ガミー博士の報告の結論は以下です。

     私(ガミー博士)はシンポジウムの終わりに、次のコメントをした:「我々の最も古い薬、すなわち電気けいれん療法(訳注:薬ではない)、リチウム、モノアミン酸化酵素阻害薬、そしてクロザピンが、最も有効な薬である。」1970年代以降に開発されたすべての新薬は、どの主要精神疾患に対しても、より効果が優れているということはなかった。それらは確かに副作用がより少なく、それが重要なのである。リチウムのケースは我々に、「新しいものは良いものであると仮定すべきではない」ということを気付かせてくれる。すべての患者は、その十分に証明された気分改善作用に加えて、死亡率と自殺への予防、神経保護作用と認知症予防という点について、リチウムの有用性が及ぶ潜在的な適用範囲を説明されるべきである。もしこれが理解されるなら、多くの患者と医師はまた、これらリチウムの有用性がそのリスクをどのくらい上回るのか、おそらく理解するだろう。リチウムのリスクは限定的と考えるべきであって、長期的な腎機能へのリスクはおよそ1%、体重増加は他のよく使用される薬剤よりも少ない。

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双極性障害の維持療法における薬物療法の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタアナリシス
    Miura T, et al. Lancet Psychiatry 2014; 1: 351-359.
    Comparative efficacy and tolerability of pharmacological treatments in the maintenance treatment of bipolar disorder: a systematic review and network meta-analysis

    <背景>
    リチウムは双極性障害の長期治療において確立された標準的方法であるが、いくつかの新しい薬剤についても、その適応が評価されてきた。本研究では、双極性障害に対する利用可能な薬物治療戦略の比較有効性と認容性を調べるために、ネットワークメタアナリシスが実施された。
    <方法>
    検索されたデータベースは、Embase、Medline、PreMedline、PsycINFO、そしてCochrane Central Register of Controlled Trials for randomised controlled trialsで、論文の出版期間は2013年6月28日以前とした。双極性障害に対する、少なくとも12週間の単剤治療、または追加(アドオン)治療としての実薬試験(またはプラセボ)を比較した。主要アウトカムは、いずれかの気分エピソードが再発した患者の数、および有害作用のため試験が中断された患者の数である。ベイズ統計学の枠組みでの、変量効果ネットワークメタアナリシス(注:不均一性を仮定して、試験間分散を考慮した変量効果モデルに基づく解析)を用いて、有効性と認容性が評価された。
    <結果>
    潜在的な適切性を有する114研究がスクリーニングされ、1970年から2012年までに発表された6846名の参加者を含む双極性障害に対する17の治療法を調べた33の無作為化対照試験が同定された。
     アリピプラゾール (リスク比0.62、95%信頼区間: 0.38-1.03)、カルバマゼピン (リスク比0.68、95%信頼区間: 0.44-1.06)、イミプラミン (リスク比0.95、95%信頼区間: 0.66-1.36)、パリペリドン (リスク比0.84、95%信頼区間: 0.56-1.24)を除いて、評価されたどの治療法に割り当てられたとしても、研究参加者はプラセボと比較して、有意に低い気分の再燃・再発率を示した。
     ラモトリギンとプラセボは、カルバマゼピン(ラモトリギン、リスク比5.24、95%信頼区間: 1.07-26.32; プラセボ、リスク比3.60、95%信頼区間: 1.04-12.94)、リチウム(ラモトリギン、リスク比2.58、95%信頼区間: 1.13-12.66;プラセボ、リスク比3.60、95%信頼区間: 1.33-5.39)、リチウムとバルプロ酸の併用(ラモトリギン、リスク比5.95、95%信頼区間: 1.02-33.33;プラセボ、リスク比4.09、95%信頼区間: 1.01-16.96)と比較して、有意に認容性が高かった。
    <解釈>
    分析された大部分の薬剤はプラセボより有効で、認容性は総じて良好であったが、臨床家と患者によって、そのエビデンスの質と副作用プロフィールの相違が検討されるべきである。躁病エピソードと抑うつエピソードの両方の再燃・再発予防の有効性、およびそれを支持するより良質なエビデンスという観点から、その認容性プロフィールを考慮したとしても、双極性障害の患者の再燃・再発予防に対して薬を処方する場合は、引き続きリチウムが第一選択薬であるべきである。

    コメント:ネットワークメタアナリシス(network meta-analysis)というメタ解析が、最近のトップジャーナルでよく見かけるようになりました。直接比較(direct comparison:両薬剤を比較した臨床試験が存在する)と間接比較(indirect comparison:両薬剤を比較した臨床試験が存在しないので、例えて言うなら、その薬剤を挟み撃ちにするような直接比較のリスク比をもとにして、計算でリスク比を求める)を統合的に解析することで、一度に多くの薬剤を比較することができる強力な手法です。日本人著者による本論文の場合も、17種の実薬治療(併用療法、持続性注射を含む)と1種のプラセボ治療について、273という非常に多くのリスク比が算出され検討されています。

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小児期のてんかん・熱性けいれんは、のちの注意欠如・多動症(ADHD)のリスクを高める
    Bertelsen EN, et al. Pediatrics Epub 2016 Jul 13.
    Childhood Epilepsy, Febrile Seizures, and Subsequent Risk of ADHD.

     デンマークの住民ベースの小児コホート90万6,379名を22年間追跡した結果、21,079名がADHDと診断された。Cox回帰分析の結果、各神経障害を有さない対照小児と比較した場合のADHD発症のリスク比は、てんかんを有する小児では2.72(95%信頼区間2.53-2.91)、熱性けいれんを有する小児では1.28(95%信頼区間1.20-1.35)であった。

    コメント:最近の大規模疫学調査(Ettinger AB, et al. Epilepsia 2015; 56: 218-224)では、てんかんのある成人の約5人に1人(より正確には1,361人中の251人で18.4%)にADHD症状を認めたと報告されましたが、自己記入式の症状チェックリストを用いた横断研究でしたので、ADHD診断をアウトカムとした今回のようなコホート研究が必要でした。自閉スペクトラム症と同様に、ADHDにおいても、てんかん病態との関連性が示唆されます。

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ハンチントン病における精神と行動の変化
    Eddy CM, et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 1079-1086
    Changes in mental state and behaviour in Huntington's disease.

    論文要約:ハンチントン病は舞踏病を中核症状とするが、その精神症状や行動異常については、1872年のGeorge Huntington(米国の医師、1850-1916)の原著にも記載がある。精神と行動の変化は、運動症状の10年も前から出現することがあり、かつ疾患特異的と言えないことから、時に他の精神疾患と誤診され、精神科病院に隔離されていた例もあったという。本総説では、ハンチントン病の不安、うつ病、自殺、保続、脱抑制、易刺激性、アパシー、精神病、社会的認知と行動障害の各々についてレビューする。

    <不安>
    病初期から中期に多く、その後は徐々に少なくなる。患者の約20%に出現する。全般性不安症とパニック症の診断が多い。選択的セロトニン再取り込み阻害薬等で治療する。
    <うつ病>
    同じく病初期から中期に多く、時に運動症状に前駆する。重症化すれば自殺に至る危険があり、電気けいれん療法で治療する場合があり得る。
    <自殺>
    ハンチントン病の自殺率は非常に高く、George Huntingtonの原著でも言及されている。あるメタ解析によれば、全死亡の5から10%が自殺によるという。自殺念慮の出現率は運動症状の重症度に比例するが、病後期となると減少する。
    <保続>
    反復的な思考や行動を認めるが、強迫症とは異なる。反復的な思考や行動に対する洞察は乏しく、自我違和性が少ない(訳注:むしろ常同症という表現が適切かもしれない)。
    <脱抑制>
    患者の約3分の1に出現する。余計な話(迂遠)、不適切な性的発言、退行、情動易変性を認める。出現率は年齢と逆相関する。
    <易刺激性>
    患者の38から73%に出現する。病中期まで有病率は増加し、生活の質を低下させる。
    <アパシー>
    他の精神症状や行動障害とは異なり、アパシーは唯一、病気の進行とともに悪化して、生活の質を低下させる。薬物療法への反応は乏しい。
    <精神病>
    患者の約10%に出現し、病中期に多い。妄想が主体で、幻覚は比較的少ない。治療には抗精神病薬が用いられる。
    <社会的認知と行動障害>
    表情や情動の認知、心の理論、他人の考えを理解する能力、共感性、自己洞察などの低下を認め、対人関係の悪化につながるおそれがある。

    コメント:ハンチントン病は代表的な遺伝性舞踏病であり、『神経内科ハンドブック』(医学書院、2016年)によれば、他の遺伝性舞踏病としては、Huntington disease-like syndromes (HDL)、chorea-acanthocytosis、X-linked McLeod disease、benign hereditary chorea (BHC)があるそうです。欧米に比較的多い病気で、人口10万人あたり4から8人、日本ではより少なく1人程度と推定されています。浸透率の高い(ほぼ100%)の常染色体優性遺伝病で、遺伝子座は4番染色体短腕先端付近(4p15)、原因遺伝子はIT15 (interesting transcript)、遺伝子産物はhuntingtinと命名されていて、CAGリピートの異常伸長(正常は7から34反復、発病者は40反復以上)があります。以前からハンチントン病における精神と行動の変化については、Neuropsychiatry(神経精神医学)のテキストに詳しく記載されてきましたが、今でも精神科臨床における重要性は変わらないようです。上記の精神と行動の変化は、運動症状よりも、患者の生活の質への影響が大きいと言われています。

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注意欠如・多動症(ADHD)および強迫症(OCD)の構造的・機能的脳異常:比較メタ解析
    Norman LJ, et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 815-25.
    Structural and Functional Brain Abnormalities in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Obsessive-Compulsive Disorder: A Comparative Meta-analysis.

    <背景>
    ADHDとOCDでは抑制制御の障害という点で精神病理学的な共通性があるが、背景にある神経基盤までもが共通しているのか否かは定かでない。
    <方法>
    2015年の9月30日までに発表された、ADHDとOCDに関するボクセル単位の脳体積測定(Voxel-Based Morphometry, VBM)と抑制制御中の機能的磁気共鳴画像法(Functional Magnetic Resonance Imaging, fMRI)の研究が、PubMed、ScienceDirect、Web of Knowledge、Scopusを用いて検索された。
    <結果>
    ADHDのVBMが27研究(患者931名、対照822名)、OCDのVBMが30研究(患者928名、対照942名)、ADHDのfMRIが33研究(患者489名、対照591名)、OCDのfMRIが18研究(患者287名、対照284名)見出された。
     ADHD患者において、両側基底核/島の疾患対照的な構造的(左:z=1.904、p<.001;右:z=1.74、p<.001)機能的(左:z=1.45、p<.001;右:z=1.23、p<.001)異常が複数の測定モダリティで見出された。すなわち、OCD患者(および対照)と比較して、ADHD患者では同領域の灰白質体積は減少し、機能は低下していた。
     OCD患者では、それらが対照と比較して増大していた。OCD患者において、吻背側前部帯状皮質/内側前頭皮質の疾患特異的な構造的(VBM:z=1.62、p<.001)機能的(fMRI: z=2.11、p<.001)異常を認めた。一方、ADHD患者では、右腹外側前頭前野皮質優位の疾患特異的な低賦活を認めた。対照群と比較した場合の腹内側前頭前野皮質の体積減少は、両疾患で共有されていた。

    コメント:ロンドンのキングス・カレッジの精神医学研究所を中心とする研究者による論文です。メタ解析による比較検討では、ADHDとOCDの間の疾患横断的な中間表現型よりも、前頭前野皮質、島皮質、そして線条体を含む神経基盤の構造と機能が両疾患で異なるという結論が導かれました。ADHDでは腹外側前頭前野領域と島-線条体はより小さく、機能は低下しているのに対して、OCDでは島-線条体領域がより大きく、機能は亢進しており、これは吻背内側前頭前野領域の機能低下によると推測されます。

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注意欠如・多動症(ADHD)の持続と寛解の認知神経生理学的マーカー
    Cheung CH, et al. Br J Psychiatry 2016; 208: 548-555.
    Cognitive and neurophysiological markers of ADHD persistence and remission.

    論文要約:小児期にADHDと診断された患者110例と、対照者169例の追跡データを用いて、平均5.8年後に行われた知能指数(IQ)、認知課題実行中の脳波(EEG)、事象関連電位(ERP)、およびアクチグラフ(訳注:加速度センサーで動きを検出する装置のこと、最近は小型な腕時計型が多い)による活動量を検討した。結果、IQ、EEGのデルタ波活動、ERPの随伴陰性変動、課題反応時間の変動と見逃しエラー、アクチグラフのカウント数はADHDの症状改善と共に変化する寛解のマーカーであった。

    コメント:小児期ADHD患者のうち、約3分の1は症状が寛解するものの、残り3分の2は青年期以降も症状を持続させると報告されています。本研究によれば、上記の検査や指標はADHDのstate markerであり、一方で実行制御の検査は症状に非依存的、すなわちADHDのtrait markerと言えそうです。

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注意欠如・多動症(ADHD)が成人期まで持続するか消失するかを予測する小児期の因子:マルチモーダル治療研究の結果より
    Roy, A et al. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 2016; 55: 937-44.
    Childhood Factors Affecting Persistence and Desistence of Attention-Deficit Hyperactivity Disorder Symptoms in Adulthood: Results from the MTA.

    論文要約:ADHD児のマルチモーダル治療研究(MTA)の参加者453人(平均年齢25歳)を対象に、成人期におけるADHD症状の持続と小児期の因子(小児期IQ、併存疾患数、子どもが知覚する子育て行動・親子関係、親のメンタルヘルス問題、親の離婚問題、社会経済的地位、親の教育歴)との関連性について、回帰分析を実施した。結果、最も重要な予測因子はADHD症状の重症度(オッズ比1.89、標準誤差0.28、p=0.025)で、次いで親のメンタルヘルス問題(オッズ比1.30、標準誤差0.09、p=0.003)、併存疾患数(オッズ比1.19、標準誤差0.07、p=0.018)であった。小児期のIQ、社会経済的地位、親の教育歴、子どもが知覚する子育て行動・親子関係は、成人期のADHD症状の持続と関連を認めなかった。

    コメント:マルチモーダル治療研究のMTAとは、The Multimodal Treatment Study of Children with ADHDの略で、multimodalは「多様な」とか「集学的」といった意味です。ADHD症状の重症度と併存疾患数は患者自身に関する変数ですが、親のメンタルヘルス問題が関連することを見出した結果は重要と思います。成人期までADHD症状を持続させないためには、両親への精神的ケアも重要ということですね。

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注意欠陥障害(ADD)と診断された成人におけるミネソタ多面人格目録改訂版(MMPI-2)の特徴
    Coleman AR, et al. Int J Neurosci 1998; 96: 161-75.
    MMPI-2 characteristics of adults diagnosed with attention deficit disorder.

    論文要約:注意欠陥障害(訳注:Attention Deficit Disorder はDSM-IIIの障害で、現在のDSM-5にはAttention-Deficit Hyperactivity Disorder として引き継がれている)は、成人期まで持続して、職業機能、対人関係、および心理機能に影響すると次第に認識されつつある。ミネソタ多面人格目録(The Minnesota Multiphasic Personality Inventory )とその改訂版(MMPI-2)は、精神疾患を持つ患者の評価において広く利用されてきたが、注意欠陥障害を持つ人の人格プロフィールを特徴づける試みは非常に少なく、MMPI-2については皆無である。MMPI-2の妥当性尺度、臨床尺度、およびHarris-Lingoes尺度(訳注:尺度2-4, 6, 8-9の下位尺度)について、注意欠陥障害を持つ33名の患者と統合失調症を持つ33名の患者が、46名の健常対照者と比較された。F尺度、Sc尺度、Pa尺度が有意に低スコアであったことを除けば、注意欠陥障害患者は、統合失調症患者と非常に類似したプロフィールを示した。多数の臨床尺度について3群間で有意な違いを認めたが、注意欠陥障害患者は臨床尺度と下位尺度の両方に関して、統合失調症患者と類似した高スコアのプロフィールを示した。これらの結果は、MMPIのオリジナル版を用いた注意欠陥障害の成人患者の先行研究に合致しており、この障害に対するMMPI-2プロフィール検査が有益な診断補助となる可能性を確認するものである。

    コメント:MMPIは、精神科医のマキンリと心理学者ハサウェイが1951年に作成した精神疾患の診断用の質問紙です。米国の臨床的アセスメントの分野で最も使用頻度が高く、よく研究もされています。上述のF尺度のFとは頻度(frequency)のことで、これが非常に高い(例えば70以上)場合は、普通の人と比較して、多くの異常な体験を認めることになります。ただし、被験者は重大な問題に直面していて、助力を求めているため、症状を誇張したり、精神病の振りをしたりしている可能性を検討しなければなりません。Sc尺度とPa尺度はともに臨床尺度(全部で10あります)で、それぞれ精神分裂病(Schizophrenia:現在は病名に対する日本語訳は「統合失調症」に変更されています)、妄想症(Paranoia)です。もともとDSM-IIIにおける精神疾患の診断用として作成されたMMPIですが、臨床尺度名が特定の精神医学的診断の存在を直接示すものではありません。ただし、本研究と同様に、臨床で統合失調症を持つ患者さんにおいて、F-Sc-Paの尺度が高スコアであることはしばしば経験します。日本で注意欠如・多動症(ADHD)の診断にMMPIを専ら活用しようと考える人はいないと思いますが、パーソナリティや併存症の評価等に使う場合に、F-Sc-Paの尺度を除くと、ADHDと統合失調症患者が類似したプロフィールを呈することがあり得ることを知っておくことは有益かもしれません。

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社交不安症治療における実際の暴露と比較したバーチャル・リアリティ:3群無作為化対照試験
    Stephane Bouchard, et al. The British Journal of Psychiatry 2017; 210: 276-83.
    Virtual reality compared with in vivo exposure in the treatment of social anxiety disorder: a three-arm randomised controlled trial.

    論文要約:
    <序論>
    社交不安症(social anxiety disorder、SAD)を持つ人は社会的交流を恐れるので、社会的状況への暴露を含む治療を求めることを躊躇することがある。個々への認知行動療法に組み込まれたバーチャル・リアリティ(仮想現実、以下VR)で実施される社会的暴露が一つの答えになり得る。
    <目的>
    社交不安症のための認知行動療法におけるVRでの暴露の実施が有効であり、現実での暴露を実施するよりも実際的であることを示すこと。
    <方法>
    研究参加者はVR暴露群(17名)、現実暴露群(22名)、待機リスト群(20名)のいずれかに無作為に割り当てられた。参加者は個人に対する認知行動療法の14週間のセッションを受け、アウトカムは質問紙と行動回避テストで評価された。
    <結果>
    主要アウトカム指標であるLiebowitz社交不安尺度、および5つのすべての二次アウトカム指標で、待機リスト群と比較して2つのCBT群で有意な改善を認めた。主要アウトカム指標と一つの二次アウトカム指標に関して、VRでの暴露の実施は、現実での暴露よりも治療後の有効性が高かった。改善は6か月間の経過中、維持された。現実での暴露よりも、VRでの暴露は有意に治療者にとって実際的であった。
    <結論>
    VRの使用は、治療回避に対する有望な解決法として、そして有効で費用効果がある実際的な暴露仲介手段として、標準的な認知行動療法に勝る可能性がある。

    コメント: 実は日本でも、似たような社交不安症のバーチャル・リアリティ研究が行われています。その有効性や効率性が再確認されて、広く実施されることを願います。

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認知症を有する人のうつ病を見出す:系統的レビューとメタ解析
    Goodarzi ZS, et al. J Am Geriatr Soc 2017; 65: 937-48.
    Depression Case Finding in Individuals with Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis.

    論文要約:
    <目的>
    外来診療を受けている認知症を有する成人において、標準的な基準が定められているうつ病ケースを同定する測定尺度の診断精度を比較・検討すること
    <方法>
    系統的レビューとメタ解析
    <設定>
    認知症を持つ高齢外来患者
    <対象>
    クリニックで長期ケアを受けている認知症を有する高齢患者3,035人
    <評価>
    うつ病/大うつ病性障害の有病率、および感度、特異度、尤度比を含む診断精度の測度
    <結果>
    11,539件の文献から、20の研究が質的統合に、15の研究がメタ解析に用いられた。検討に含まれた尺度を以下に示す。
    ①  Montgomery Asberg Depression Rating Scale
    ②  Cornell Scale for Depression in Dementia (CSDD)
    ③  Geriatric Depression Scale (GDS)
    ④  Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)
    ⑤  Hamilton Depression Rating Scale (HDRS)
    ⑥  Single Question
    ⑦  Nijmegen Observer-Rated Depression Scale
    ⑧  Even Briefer Assessment Scale-Depression
    認知症を有する人のうつ病有病率は30.3%(95%信頼区間:22.1-38.5)であった。平均年齢は75.2歳(95%信頼区間:71.7-78.7)、平均MMSE得点の範囲は11.2から24であった。個々の尺度の診断精度が、最良と報告されているカットオフ値、および利用可能な場合には個々のカットオフ値についてまとめられた。CSDD:感度0.84(95%信頼区間:0.73-0.91);特異度0.80(95%信頼区間:0.65-0.90)、30項目GDS:感度0.62(95%信頼区間:0.45-0.76);特異度0.81(95%信頼区間:0.75-0.85)、HDRS:感度0.86(95%信頼区間:0.63-0.96);特異度0.84(95%信頼区間:0.76-0.90)。最良と報告されているカットオフ値の要約統計量は、すべての尺度について有意な不均一性を示した。
    <結論>
    認知症を有する人におけるうつ病を同定するための、妥当性のある尺度が多く存在したが、患者への医師の問診と病歴聴取を組み込んだ尺度であるCSDDとHDSRがより高い感度を有しており、それは偽陰性を最小化することを保証するであろう。

    コメント:HDSRは日本語では「ハミルトンうつ病評価尺度」と言います。本来はうつ病の診断をすでに受けた人の重症度を評価する尺度であり、日常臨床や臨床試験でしばしば利用されるものです。ここでは、認知症を有する人におけるうつ病をスクリーニングする能力が評価されています。


短期精神病エピソード(Brief Psychotic Episodes)の予後のメタ解析
    Paolo Fusar-Poli, et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 211-220.
    Prognosis of Brief Psychotic Episodes: A Meta-analysis.

    <重要性>
    短期精神病エピソード、すなわち急性一過性精神病性障害(acute and transient psychotic disorder [ATPD])、短期精神病性障害(brief psychotic disorder [BPD])、短期間欠型精神病症状(brief intermittent psychotic symptoms [BIPS])短期限定間欠型精神病症状(brief limited intermittent psychotic symptoms [BLIPS])という競合する構成概念と操作化の予後予測に関する意義は不明である(訳注:ATPDはICD-10、BPDはDSM-5の診断カテゴリー、BIPSまたはBLIPSは発病危険状態の一つ)。
    <研究目的>
    寛解した初回エピソードのATPD、BPD、BIPS、BLIPS、および寛解した初回エピソード統合失調症(remitted first-episode schizophrenia [FES])患者の基準群において、精神病の再発リスクのメタ解析による予測を提供すること。我々の予測は5群でリスクは異なり、FES>ATPD>BPD>BIPS>BLIPSの順でリスクが高いと予測した。
    <データソース>
    2015年5月18日を期限として、Web of KnowledgeとScopusを用いて文献検索を行った。同定された文献に加えて、先行論文が引用している文献と、収集された論文の引用リストのマニュアル検索の結果もレビューした。
    <一次研究の選択>
    初回エピソードのATPD、BPD、BIPS、BLIPS、そしてFESから寛解した患者の経過において、精神病再発のリスクを報告した原著論文を含めた。
    <データ抽出と統合>
    データは複数の観察者により独立抽出された。変量効果メタ解析が行われ、調整変数(moderator)がメタ回帰分析とボンフェローニ補正によって検定された。異質性はI2統計量(訳注:ヒギンスらにより提案された効果量のバラツキの程度を評価する記述統計的指標)で評価された。感度分析(訳注:統計的感度分析 statistical sensitivity analysis:データの分析に関して、いくつかの異なる統計手法を用いることができるとき、採用する手法により結果の違いの有無や、違いがあるとすればその程度を確かめるために行われる)は結果の頑強性で検定された。公表(出版)バイアスは漏斗プロット(訳注:横軸に効果量推定値を、縦軸にサンプルサイズをプロットした散布図のことで、研究が偏りなく集められていれば、左右対称で漏斗を逆さにしたような散布形となる)とEggerテスト(訳注:公表バイアスの有無に関する統計学的検定法の一つで、Eggerが1997年の論文で発表したLinear regression testのこと)で評価された。
    <アウトカムと測定>
    ベースラインにおいてATPD、BPD、BIPS、そしてBLIPSと診断された患者の、6か月、12カ月、24カ月、および36カ月以上の経過のいずれかの時点での精神病の再発率。
    <結果>
    11, 133人の患者から構成される82の独立研究が含まれた。どの経過点においても、ATPD、BPD、BIPS、そしてBLIPSの間に、精神病の再発リスクに関する予後の違いはなかった(p > .03)。長期の分析において、精神病再発のリスクは24カ月と36カ月以上の両時点において、他の4郡と比較して(0.39[95%信頼区間:0.32-0.47];0.51[95%信頼区間:0.41-0.61])、FES群でより高かった(0.78[95%信頼区間:0.58-0.93];0.80[95%信頼区間:0.70-0.94])。公表(出版)バイアスはなかったが、性別と抗精神病薬治療への暴露はメタ解析による推定に影響した。
    <結論と関連性>
    ATPD、BPD、BIPS、BLIPSという短期精神病エピソードの概念間に、精神病の再発リスクについて、予後の違いはなかった。逆に言えば、寛解している初回エピソードの統合失調症と比較して、短期精神病エピソードの長期予後は良いという一貫したメタ解析によるエビデンスが存在する。これらの所見は、早期精神病の管理における診断行為と臨床サービスに影響するに違いない。

    コメント:症候学的に細かいこと言わずに、「精神病症状が短期しか続かないことは、ひとまず良いことである」ということでしょうか。反対に、統合失調症の基準の一つである6か月以上続く疾患の徴候は、やはり予後に影響する良くない徴候です。

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脳への悪影響と認知機能低下のリスク要因としての中等量の飲酒:長期コフォート研究
    Topiwala A, et al. BMJ 2017; 357: j2353.
    Moderate Alcohol Consumption as Risk Factor for Adverse Brain Outcomes and Cognitive Decline: Longitudinal Cohort Study.

    論文要約:
     飲酒の健康への影響は様々に報告されていて、大量の飲酒は脳・肝臓・他の器官系に対して明確な有害作用がある一方、少量の飲酒においては有益性が示唆されている。先行研究で中等量の飲酒の脳への影響に焦点を当てた研究はほとんど無く、結論は一貫性を欠く。この観察コフォート研究の目的は、中等量の飲酒と脳の構造と機能の関連を調べることである。
     1985年から2015年の間、UK Whitehall II cohort imaging substudyの参加者である成人の地域住民550名について、認知機能と週当たりの飲酒量が繰り返し測定された。ベースライン時点における平均年齢は43歳(標準偏差5.4歳)で、CAGE スクリーニング質問紙(訳注:4項目の質問からなる非常に簡単なアルコール依存のスクリーニングテスト)を基づけば、アルコール依存の参加者はいなかった。不完全、または質の悪いMRI、または臨床データのため、あるいは粗大な構造的異常のため、23人が除外された。
     年齢、性別、教育、社会階層、身体的・社会的活動、喫煙、脳卒中リスク、病歴を含む交絡因子の調整後、30年間の経過観察中、摂取量に依存して、より多くの飲酒は海馬萎縮のリスク増加と関連していた。断酒者と比較して、週に30単位以上の飲酒をしていた参加者は、より高いリスクを有していた(オッズ比5.8;95%信頼区間1.8-18.6;p <= .001)。断酒者と比較して、中等量の飲酒者(週に14単位以上、21単位未満の飲酒;14単位とは強いビールを4パイント=約2,000cc、またはワインを大グラス5杯に相当)は、右側の海馬萎縮のリスクが3倍以上であった。少量の飲酒(週に1単位以上、7単位未満の飲酒)は、海馬萎縮に対して保護的ではなかった。
     より多くの飲酒と関連した他のリスクは、脳梁の微細構造、灰白質密度の減少、白質の微細構造の完全性の減少における違い、および意味流暢性のより速い衰えであったが、MRI撮影時に横断的測定した認知能力、あるいは意味流暢性や語想起における縦断的変化との関連は認めなかった。

    コメント:観察研究という制約はありますが、中等量の飲酒は海馬(記憶機能に重要な役割を持つ)に悪く、少量の飲酒も海馬に良いとは言えないということです。ところで、この研究でいうところの中等量、すなわちアルコール濃度高めのビールを週に2から3リットル飲む人は、周りに結構いそうな気がしますね。

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遅発性ジスキネジアを持つ患者の不随意運動治療のためのdeutetrabenazine:二重盲検無作為比較対照第3相試験
    Karen E Anderson, et al. JAMA Psychiatry 2017 Jun 28 [Epub ahead of print]
    Deutetrabenazine for treatment of involuntary movements in patients with tardive dyskinesia (AIM-TD): a double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial.

    論文要約:
    <背景>
     遅発性ジスキネジアは、定型および非定型抗精神病薬のようなドパミン受容体アンタゴニストへの暴露により生じる。臨床的に適切であるならば、臨床家はしばしば原因薬剤の用量を減らす、あるいは中止することでこの障害を管理する。背景となる精神疾患の治療計画を阻害しない遅発性ジスキネジアの治療オプションについて、明らかに未解決の課題がある。我々の目的は、遅発性ジスキネジアを持つ患者において、新規の小胞モノアミントランスポーター2(VMAT-2)阻害薬であるdeutetrabenazineの固定用量における有効性、安全性、そして認容性を評価することである。
    <方法>
     我々はこの二重盲検無作為比較対照第3相試験を、米国と欧州における75のセンターで行った。スクリーニング前の3か月間以上にわたって遅発性ジスキネジアを持つ18歳から80歳の患者が、自動応答技術(Interactive Response Technology、IRT)を経て、無作為に均等に(1:1:1:1)、deutetrabenazine の3つの固定用量(12㎎/日、24㎎/日、36㎎/日)の一つ、またはプラセボに割り振られた。無作為化はベースラインにおけるドパミン受容体アンタゴニストの使用によって層別化された。患者はdeutetrabenazine 12㎎/日の内服から始め、この用量は無作為化用量に達する4週まで増量され、8週間維持された。試験期間の間、群分けは患者、研究者、各センターの職員、スポンサーに対して隠蔽された。 主要評価項目は、少なくとも一つのベースライン後評価がなされた患者について、異常不随意運動尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale、AIMS)スコアのベースラインから12週までの変化である。主要評価項目の解析は、(ベースラインAIMSスコアが6ポイント以上、かつ少なくとも一つのベースライン後評価がある)修正intention-to-treat集団で行われた。安全性分析は、いずれかの試験薬剤を内服した患者について行われた。この試験はClinicalTrials.govに登録されている(番号:NCT02291861)。
    <結果>
     2014年10月29日から2016年8月19日の間に、我々は患者298人を、プラセボに74人、deutetrabenazine 12㎎/日に75人、24㎎/日に74人、36㎎/日に75人、割り振った。222人の患者は修正intention-to-treat集団に、298人の患者は安全性集団に割り振られた。ベースラインから12週までに、最小二乗平均AIMSスコアはdeutetrabenazine 36㎎/日群で3.3ポイント減(標準誤差0.42)、deutetrabenazine 24㎎/日群で3.2ポイント減(標準誤差0.45)、deutetrabenazine 12㎎/日群で2.1ポイント減(標準誤差0.42)、プラセボ群で1.4ポイント減(標準誤差0.41)であった。
     有害作用の発生率はdeutetrabenazine 36㎎/日群(38/74、51%)、24㎎/日群(32/73、44%)、12㎎/日群(36/74、49%)、プラセボ群(38/74、51%)で類似していた。重篤な有害作用はdeutetrabenazine 36㎎/日を内服した4人(5%)、24㎎/日を内服した6人(8%)、12㎎/日を内服した2人(3%)、プラセボを内服した4人(6%)の患者で報告された。安全性集団の2名(1%)の患者が死亡した。1名は24㎎/日、もう1名は36㎎/日のグループの患者であった。研究者、またはスポンサーによって、両患者の死亡は試験薬剤とは無関係であると考えられた。
    <解釈>
     24㎎/日および36㎎/日のdeutetrabenazineは、遅発性ジスキネジアの有意な減少をもたらし、安全性と認容性は満足できるものであった。これらの所見は、用量設定はジスキネジアのコントロールと認容性に基づいて、個別化され患者ごとに調整されうることを示している。

    コメント:遅発性ジスキネジアは一度発生すると時に難治性です。口部や顔面に出現することが多く、自身の見た目に苦痛を感じている患者さんもいます。有効性と認容性が確認されて、日本でも臨床使用できるようになることを願います。

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中等度から重度の成人の過食性障害におけるリスデキサンフェタミンの有効性:無作為化臨床試験
    James I. Hudson, et al. JAMA Psychiatry. Published online July 12, 2017.
    Efficacy of Lisdexamfetamine in Adults With Moderate to Severe Binge-Eating Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    論文要約:
    <重要性>
     精神疾患の長期的治療において、再燃を予防して有効性を維持する薬物療法の能力は重要である。
    <目的>
     中等度から重度の成人の過食性障害(訳注:DSM-IV-Rのbinge-eating disorderは「むちゃ食い障害」であるが、ここではDSM-5日本語版におけるbinge-eating disorderの訳名に従った)において、リスデキサンフェタミンメシル酸塩(lisdexamfetamine dimesylate)の有効性の維持を評価すること。
    <デザイン・設定・参加者>
     418人の参加者を含む、複数の国による第3相・二重盲検・プラセボ対照・無作為化試験が、2014年1月27日から2015年4月8日までに、49の臨床研究試験サイトで実施された。適格とされた成人はDSM-IV-Rの過食性障害の診断基準を見たし、中等度から重度の過食性障害(非盲検のベースライン前の14日間において週に3回以上の過食があり、スクリーニングおよび非盲検のベースラインにおいて臨床全般印象度-重症度CGI-Sのスコアが4以上[中等度の重症度])と診断された。 12週間の非盲検段階(用量最適化に4週間[リスデキサンフェタミンメシル酸塩を50㎎、または70㎎];用量維持に8週間)の後、リスデキサンフェタミン反応者(4週連続で週に1回以下の過食、かつ12週において臨床全般印象度-重症度CGI-Sのスコアが2以下)が、26週間の二重盲検・無作為化退薬段階の間、プラセボ、またはリスデキサンフェタミンに無作為に割り付けられた。
    <介入>
     リスデキサンフェタミンの導入
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカム変数、すなわち再燃までの期間(2週連続で週に2回以下の過食、かつ無作為化退薬段階のベースラインから臨床全般印象度-重症度CGI-Sのスコアが2以上増加)はログランク検定(主解析)を用いて分析され、分析は二分された4週間の過食抑制状態で層別化された。安全性評価には治療により出現した有害事象が含まれた。
    <結果>
     試験の非盲検段階に登録された418人のうち、411人(358人[87.1%]が女性、平均年齢[標準偏差]は38.3[10.4]歳)が安全性解析に含まれた。無作為割り当てされたリスデキサンフェタミン反応者の275人(プラセボの138人;リスデキサンフェタミンの137人)のうち、再燃基準を満たす参加者の率はプラセボでは3.7%(136人中5人)、リスデキサンフェタミンでは32.1%(131人中42人)であった。
     再燃までの期間について、ログランク検定で、リスデキサンフェタミンはプラセボに勝っていた(χ21、40.37;P < .001)。リスデキサンフェタミン<対>プラセボについて、Cox比例ハザードモデルに基づくハザード比は0.09(95%信頼区間:0.04-0.23)であった。治療によって出現した有害事象は、総じてリスデキサンフェタミンの既知のプロフィールに一致していた。
    <結論および関連>
     6か月中の過食の再燃リスクは、プラセボに無作為割り付けされた参加者より、リスデキサンフェタミンを継続した参加者の方が低かった。再燃ハザードは、プラセボよりリスデキサンフェタミンで低かった。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子:NCT02009163)

    コメント:DSM-5における過食性障害(Binge-Eating Disorder)と神経性過食症/神経性大食症(Bulimia Nervosa)の違いの一つは、不適切な代償行動が前者にはなく、後者にはあることです。いずれにしても、過食行動を減少させたり、その再燃を抑制したりする薬物は現在知られていませんので、本研究の進展に期待したいところです。

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自傷後の自殺を予測する:危険因子とリスク評価尺度の系統的レビュー
    Chan, MK et al. Br J Psychiatry 2016; 209: 277-283.
    Predicting suicide following self-harm: systematic review of risk factors and risk scales.

    論文要約:
    <背景>
     自傷歴のある人は、一般人口よりもはるかに高い自殺のリスクがある。しかし、自傷と自殺の関連は複雑である。
    <目的>
     自傷後の自殺を予測するリスク要因、およびリスク評価尺度の前方視的研究について、初めての系統的レビュー、およびメタ解析を実施することである。
    <方法>
     我々は自傷を行った集団の前方視的コフォート研究を検索した。また、リスク評価尺度をレビューするにあたり、レビュー領域を拡大して検討すべき研究数を増やすために、精神健康管理の専門家のもとに自殺のリスクを調べた研究を含めた。適用可能な場合は、人口集団の間の予測の正確度の違いを調べた。
    <結果>
     リスク要因に関する12の研究と、リスク評価尺度に関する7つの研究が含まれた。重要性と可能性のある交絡因子で調整された場合に、ほとんど変化を示さなかった頑強な効果量を持つ、4つのリスク要因がメタ解析で見出された:自傷の既往(ハザード比1.68、95%信頼区間 1.38-2.05、K=4);自殺念慮(ハザード比2.7、95%信頼区間 1.91-3.81、K=3);身体的な健康問題(ハザード比1.99、95%信頼区間 1.16-3.43、K=3)。
     包含されたのは、次のたった3つの評価尺度の研究であった:Beck Hopelessness Scale (BHS);Suicide Intent Scale (SIS);Scale for Suicide Ideation。メタ解析が可能であったBHSとSISは少ないデータに基づいており、高い異質性が観察された。陽性反応的中率は1.3%から16.7%に亘った。
    <結論>
     見出された4つのリスク要因は興味深いけれども、臨床集団では比較的ありふれたものなので、実践的であるとは思えない。その使用を支持する十分な証拠を持つ評価尺度はなかった。臨床業務におけるリスク要因の同定に関して、これらの評価尺度を利用する、あるいは過剰な依存をすることは、誤った再保証を与える可能性があり、それゆえ潜在的に危険である。その人に特異的なリスクと必要性の包括的な心理社会的評価が、自傷を行った人の管理の中心であるべきだ。

    コメント:この論文の掲載された号のEDITORIALS(精神医学におけるリスク予測の無益)を紹介します。自殺に関連するリスク要因を同定するために、これまで多大な努力がなされてきた。しかしながら、科学的証拠はリスクのカテゴリー化は価値が乏しいことを示している。その代りに、個々の患者、およびその固有の問題と状況に現実的に関与することに、焦点をシフトさせるのが正当である。

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注意欠如・多動症(ADHD)を持つ小児の脳波(EEG)に対する精神刺激薬の作用(1)
    Adam R, et al. Clinical EEG and Neuroscience 2017; 48: 235-242.
    An Investigation of Stimulant Effects on the EEG of Children With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder.

    論文要約:
     精神刺激薬による薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)に対して最もしばしば処方される治療法である。これら薬剤は脳波の正常化をもたらすが、過去の研究によれば、脳波の完全な正常化が常に達成されるわけではない。その理由の一つは、研究では異なる薬剤が互換的に使用された、あるいは研究ごとに被験者に対して異なる精神刺激薬が使われたことによるのかもしれない。本研究では メチルフェニデート(methylphenidate)とデキサンフェタミン(dexamphetamine)が、小児ADHDにおいて、異なるレベルの脳波正常化をもたらすか否かを調査した。20人の男子からなる3つのグループが本研究に参加した。2つのグループのうち、一つはメチルフェニデートに良好な反応を示した群、もう一つはデキサンフェタミンに良好な反応を示した群であった。3番目のグループは健常対照群であった。ベースライン脳波は安静閉眼状態で記録され、全パワー、およびδ、θ、βの相対値が解析された。被験者はメチルフェニデート、またはデキサンフェタミンの6か月の投与試験に置かれ、その後に2回目の脳波が記録された。
     ベースライン時点で、小児ADHDは対照と比較して、θ相対値が上昇し、αおよびβ相対値が少なかった。また、2つの薬剤グループ間に差異を認め、デキサンフェタミン群はメチルフェニデート群と比較して、より脳波異常が大きかった。2つの薬剤を服用した結果、脳波の相当な正常化がなされたが、2つの薬剤間で生じた脳波変化に有意な違いはなかった。この結果は、メチルフェニデートとデキサンフェタミンの反応良好群は、投薬前の評価時において異なる脳波プロフィールを持っていたことを示唆しており、背景にある中枢神経系の欠陥の相違を表しているのかもしれない。これは投薬前の脳波異常の程度が、脳波正常化の程度に貢献する主要因であったことを示す。2つの薬剤に良好な反応を示した者は異なる中枢神経系の異常を持つようなので、ADHDの研究および臨床においては、精神刺激薬による治療は独立に行われ、精神刺激薬を互換的に使用すべきではない。

    コメント:デキサンフェタミンはデキストロアンフェタミン(dextroamphetamine)のことで、光学異性体のD体という意味です。日本ではADHDの治療薬として、もっぱらメチルフェニデートの徐放製剤であるコンサータ®(ヤンセンファーマ㈱)が使用されます。

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注意欠如・多動症(ADHD)における脳波(EEG)の有用性:再現研究(2)
    Ronald J, et al. Clinical EEG and Neuroscience 2017; 48: 243-245.
    The Utility of EEG in Attention Deficit Hyperactivity Disorder: A Replication Study.

    論文要約:
     小児科学における精神刺激薬の日常的使用は過去30年間で劇的に増えているが、その長期的結果は十分研究されていない。1978年以来、注意欠如・多動症(ADHD)の小児において脳波異常、特にてんかん型発射(epileptiform discharges)を同定した7つの論文があり、多くは当該集団におけるこれら発射の有病率を調査しているが、その結果はまちまちである。2011年に出版された論文では、てんかん型発射の高い有病率を示す小児のADHDに対して精神刺激薬を処方する前に、脳波技術が考慮されるべきであるとされた。その論文では、他の賦活法(過呼吸、または光刺激)、および従来脳波と比較して、23時間断眠後の脳波において、てんかん型発射の高い有病率(26%)が見出された。
     本研究で我々は、従来の脳波に棘波を自動的に捉える定量脳波技術とlow-resolution electromagnetic tomography analysis (LORETA) 脳マッピング法を加えることで、2011年の結果を再現することを試みた。結果、てんかん型発射の高い有病率(32%)が見出された。精神刺激薬を処方する前には、脳波を考慮すべきであることが示唆された。

    コメント:ここでLORETAというのは、Pascual-Marqui博士(チューリッヒ大学)らによって開発された脳機能イメージング解析であり、脳波や脳磁図による脳内神経活動を脳図譜(標準脳)へ重畳し描くことができる解析手法とのことです。(https://www.tk-lab.net/research/)。日本でも盛んに研究されています。ところで、受診者が増えている成人のADHDについては、てんかん様放電の有病率は、(より少ないとは思いますが)どの程度なのでしょうね。

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注意欠如・多動症(ADHD)の脳波バイオマーカーに対する薬物効果(3)
    Havva Nuket Isiten, et al. Clinical EEG and Neuroscience 2017; 48: 246-250.
    Medication Effects on EEG Biomarkers in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder.

    論文要約:
     脳波バイオマーカーは、注意欠如・多動症(ADHD)の補助診断として益々利用されるようになっている。脳波のベータ波(訳注:14 Hzから30 Hzくらいまでの周波数帯域を持つ脳波成分)に対するシータ波(訳注:0.5 Hzから7 Hzくらいまでの周波数帯域を持つ脳波成分)の比(θ/β)が、ADHDと他の障害を区別するのに役立つ可能性を示唆するいくつかの研究があるにも関わらず、θ/βに対する薬物の効果は知られていない。
     本研究の対象は、メチルフェニデート(methylphenidate)の服用前後に定量脳波の評価を受けた43人の小児ADHDである。θ/β、全脳・中心部・前頭部のθパワー、およびβパワーが計算された。服用後にθ/βが有意に減少したが、この変化はθパワーの減少よりも、概ねβパワーの増加によるものであった。結果は、βパワーが薬物効果に敏感である一方、θパワーは薬物の服用に影響されない特性バイオマーカーであることを示している。神経生理学的活動と臨床状態をモニターする脳波バイオマーカーの価値が、今後の研究によって探求されるべきである。

    コメント:ADHDの診断補助として、θ/βを解析して表示する方法論とソフトウェアが、米国でFDAの認可を受けて臨床使用されていると聞いたことがあります。本研究は診断というより、薬物効果のモニターに応用できそうな状態依存の特徴を持つ脳波バイオマーカーの話題です。

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注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法と物質関連問題
    Patrick D. Quinn et al. Am J Psychiatry, Published online: June 29, 2017.
    ADHD Medication and Substance-Related Problems.

    論文要約:
    <目的>
     物質使用障害は、注意欠如・多動症(ADHD)における死亡率増加の主要因であるものの、ADHDの薬物療法と物質関連問題の関連性については、依然よく分かっていない。この研究は、ADHDの薬物療法と物質関連事象との間に生じる長期的な関連を調査した。
    <方法>
     著者らは2005年から2014年の間の、青年と成人のADHD患者299万3,887人(47.2%が女性)からの民間健康保険請求を分析した。患者が精神刺激薬、またはアトモキセチンの処方を受けた期間の物質関連事象(物質使用障害に関連した救急部への受診)のリスクと、これら薬剤の処方を受けなった期間の物質関連事象のリスクを、個人内解析した。
    <結果>
     調整済の個人内比較において、患者がADHD治療薬の処方を受けなった期間と比較して、処方を受けた時期と同時に生起した物質関連事象オッズは男性患者で35%(オッズ比0.65、95%信頼区間 0.64-0.67)、女性患者で31%低かった(オッズ比0.69、95%信頼区間 0.67-0.71)。さらに、処方期間後の2年間において、物質関連事象は、男性患者では19%低く(オッズ比0.81、95%信頼区間 0.78-0.85)、女性患者では14%低かった(オッズ比0.86、95%信頼区間 0.82-0.91)。感度分析は大部分の結果を支持したが、女性における長期の関連は一貫性がより乏しかった。
    <結論>
     これらの結果から、「ADHDの薬物療法を受けることと、青年期と成人期における物質関連問題のより大きなリスクの関連は乏しい」とする科学的証拠が導かれる。むしろ、薬剤は物質関連事象のより低いリスクと、少なくとも男性においては、その後の物質関連事象のより低い長期的リスクと関連していた。

    コメント: ADHD治療薬の説明を行いますと、時に乱用や依存を含む物質関連障害の懸念が聞かれることがありますが、本研究の結果を信じるなら、少し安心できそうですね。

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初回エピソード精神病(FEP)における頭部CTスキャンの診断率
    Strahl B, et al. J Med Imaging Radiat Oncol 2010; 54: 431-4.
    Diagnostic yield of computed tomography of the brain in first episode psychosis.

    論文要約:
    <序論>
     初回エピソード精神病(first episode psychosis, FEP)を呈する患者の鑑別アルゴリズムにおいて、頭部のコンピュータ断層撮影(Computed Tomography, CT)の推奨は各国によりまちまちである。本研究の目的は、主要都市の教育病院において、神経学的徴候がないFEPを呈した患者において、頭部CTの臨床的有用性を調査することである。
    <方法>
     750床の3次医療教育病院の過去6年間において、237人の連続患者の頭部CTレポート、すなわちFEPの病歴があるが局所神経徴候がない画像オーダー、または放射線診断レポートが、放射線情報システム上のテキスト検索を用いて遡及的に同定された(170人が男性、67人が女性;平均年齢は28.3歳)。すべての報告書は、上級放射線科医により記載・認証された。それらが精神病を起こし、臨床的管理の変更につながり得るか検討された。微小な神経放射線学的異常も記載された。病院倫理委員会への登録と認可を得たが、患者からのインフォームド・コンセントは不要とされた。
    <結果>
     精神病の発症に関係する局所脳病変、または外科的介入を要する局所病変が発見された患者はいなかった。小血管性虚血病変、くも膜のう胞、脳萎縮、正常変異といった精神病に直接関連づけることができない所見は、患者の17.6%(237人中45人)に見られたが、臨床的管理の変更に至ったケースはなかった。
    <結論>
     本研究の結果から、「頭部CTは神経学的徴候のないFEP患者の初期評価において万遍なく実施される必要はない」と主張できる。

    コメント: すくなくとも先進国では、器質性病変のため精神と行動の障害を呈したとしても、患者さんはよく仕訳され、神経内科や脳神経外科を初診するようです。

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ICD/DSMの初回エピソード精神病の診断安定性に関するメタ解析
    Paolo Fusar-Poli, et al. Schizophr Bull 2016; 42: 1395-1406.
    Diagnostic Stability of ICD/DSM First Episode Psychosis Diagnoses: Meta-analysis.

    論文要約:
    <背景と目的>
     現行のICD/DSMの初回エピソード精神病の診断妥当性は、臨床診療、研究、研修、公衆衛生にとって重要である。本研究の目的は、機能性精神病であるICD/DSMの初回エピソード精神病の経時的診断安定性について、メタ解析による推定を行うことである。
    <方法>
     複数の観察者による独立抽出がなされ、2015年6月30日までのデータベース及びマニュアル検索を行った。検索キーワードは、“First episode psychosis”、“Diagnostic accuracy”、“Sensitivity”、“Specificity”、“Psychosis prediction”、“Psychosis onset”、“Diagnostic stability”、“Prediction”、“DSM-Ⅳ”、“ICD-10”、“Follow-up”を用いた。Stata 13.1を用いて、変量効果モデルのメタ解析が実行された。調整変数(moderator)はメタ回帰分析で検定され、異質性はI2統計量(訳注:ヒギンスらにより提案された効果量のバラツキの程度を評価する記述統計的指標)で評価された。感度分析(訳注:統計的感度分析 statistical sensitivity analysis:データの分析に関して、いくつかの異なる統計手法を用いることができるとき、採用する手法により結果の違いの有無や、違いがあるとすればその程度を確かめるために行われる)は結果の頑強性で検定され、公表バイアスはEggerテスト(訳注:公表バイアスに関する統計学的検定法の一つで、Eggerが1997年の論文で発表したLinear regression testのこと)で評価された。
    <結果>
     解析対象には42報の研究、合計14,484名の初回エピソード精神病患者が含まれた。追跡期間は平均4.5年であった。14,484名中10,510名はICD-10、3,974名がDSM-Ⅳで診断されていた。平均年齢は29歳(中央値27歳、範囲16~75歳)で、49%が女性であった。経時的診断安定性は以下の順に高かった:統合失調症0.90(95%信頼区間:0.85-0.95)、感情スペクトラム精神病0.84(95%信頼区間:0.79-0.89)、統合失調感情障害0.72(95%信頼区間:0.61-0.83)、物質誘発性精神病性障害0.66(95%信頼区間:0.51-0.81)、妄想性障害0.59(95%信頼区間:0.47-0.71)、急性一過性精神病性障害/短期精神病性障害0.56(95%信頼区間:0.52-0.60)、特定不能の精神病性障害0.36(95%信頼区間:0.27-0.45)、統合失調様障害0.29(95%信頼区間:0.22-0.38)。
     統合失調症スペクトラム精神病における安定性は0.93(95%信頼区間:0.89-0.97)で、0.05(95%信頼区間:0.01-0.08)が感情スペクトラム精神病に、感情スペクトラム精神病の0.10(95%信頼区間:0.05-0.15)が統合失調症スペクトラム精神病へ移行した。他の精神病性障害診断における診断不安定性は高く、大部分は統合失調症に移行した。
    <解釈>
     メタ解析により、「統合失調症スペクトラム精神病と感情スペクトラム精神病の経時的診断安定性は高く、そのICD/DSM診断間で有意な差を認めない」ことを示す証拠が得られた。これらの結果は、早期精神病のための新しい治療ガイドラインの開発に情報を与え、規制当局からの使用許可が必要な薬剤に影響を与えるかもしれない。
    コメント:統合失調症の経時的診断安定性0.90というのは、やはり印象的です。患者さんの予後予測という点で、重大な臨床診断になります。

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初回エピソード精神病における磁気共鳴画像法(MRI)の臨床的有用性
    Irina Falkenberg, et al. Br J Psychiatry 2017, May 4 [Epub ahead of print].
    Clinical utility of magnetic resonance imaging in first-episode psychosis.

    論文要約:
    <背景>
     磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)が、初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)を持つ患者の初期臨床評価の一部として利用されるべきか否かについては、コンセンサスは得られていない。
    <目的>
     一つはルチーンMRI検査の実施可能性を評価すること、もう一つはFEP患者における放射線学的異常の臨床的意義を明確にすることである。
    <方法>
     2つのFEPサンプルにおいて撮影されたMRIの放射線診断レポートがレビューされた。一つは研究目的に募集された108人の患者と98人の健常対照、もう一つは最初の臨床像を呈した際に撮影された241人の患者、および66人の健常対照である。
    <結果>
     大多数の患者において、MRI検査は実施可能であった。研究サンプルの6%、臨床サンプルの15%に放射線学的異常を認めたものの(オッズ比:3.1、95%信頼区間:1.26-7.57、χ2(1):6.63)、臨床管理の変更を余儀なくさせた所見は皆無であった。
    <結論>
     FEPにおける神経放射線学的異常は、器質的異常を持つ患者がしばしば除外される研究サンプルでは過小評価される傾向がある。しかしながら、所見の大多数は介入の必要を認めなかった。

    コメント:シンプルな報告ですが重要ですね。「FEPの臨床サンプルの15%に放射線学的異常」は意外と多い印象です。

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初回エピソード精神病の磁気共鳴画像法(MRI)とコンピュータ断層撮影(CT)の役割
    Khandanpour N, et al. Clin Radiol 2013; 68: 245-50.
    The role of MRI and CT of the brain in first episodes of psychosis.

    論文要約:
    <目的>
     神経画像が初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)の器質的要因の早期発見に関連するか否かを調べること。
    <対象と方法>
     脳の磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)、またはコンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)のために3次医療センターに照会された、FEPを持つが神経学的徴候を示さない人を遡及的にレビューした。2つのグループがCTまたはMRIで評価されたが、2つのグループは独立で、CTとMRIの両方を受けた人はいなかった。
    <結果>
     連続撮影された112の脳MRIと、連続撮影された204のCT検査が同定された。MRIでは3人(2.7%)の人に、精神病を潜在的に説明しうる脳病変(脳腫瘍、およびヒト免疫不全ウイルスによる脳症)が見出された。MRIでは70人(62.5%)の患者に、脳萎縮、小血管性虚血病変、Willis輪の未破裂脳動脈瘤、海綿状血管腫、くも膜嚢胞といった偶発的脳病変を認めた。CTでは3人(1.5%)に、精神病を潜在的に説明しうる局所脳病変(原発性、または二次性の腫瘍)があった。CT検査上、133人(65.2%)の患者に精神病とは無関係な偶発的脳病変が見出された。FEPを潜在的に説明し得る器質性疾患の発見において、MRIとCTに違いはなかった(p < 0.001)。
    <結論>
     脳のルチーンのMRIまたはCTにより、臨床管理の意味ある変更につながる病気が明らかになることはあまりない。病的および偶発的な脳病変の両方の診断に関して、MRIはCTと同等である。したがって、局所神経徴候を示さないFEP患者のルチーンの脳構造画像は常に必要というわけではなく、もし神経画像が要請されるならば、最初の検査としてCTはMRIと同等に機能する。

    コメント:地味な報告ですが、「初回エピソード精神病にはCTで十分」ということです。

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初回エピソード精神病(FEP)の臨床的寛解を超えて:機能的回復の時代における抗精神病薬の継続と計画的中止への考察
    Alvarez-Jimenez M, et al. CNS Drugs 2016; 30: 357-368.
    Beyond Clinical Remission in First Episode Psychosis: Thoughts on Antipsychotic Maintenance vs. Guided Discontinuation in the Functional Recovery Era.

    論文要約:
     初回エピソード精神病(first episode psychosis、FEP)の治療ガイドラインは、少なくとも寛解後の1年間は抗精神病薬治療を続けることを推奨しているが、いくつかの最近の研究、および薬剤をより早めに中止することを好む人もいるという点で、この推奨は疑問視されることがある。このレビューの目的は、この領域がどのように進展すべきかに関する我々の見解をもとに、最新の中止研究を査定することである。
     我々は臨床的に寛解したFEP患者において、治療継続と、減薬と薬剤の中止を比較したランダム化比較対照試験のレビューを行った。7つの試験が同定され、これらは減薬または中止群におけるより高い再発率を報告していた。再発についてより低い閾値を設定した場合に、再発率がより高かった。しかしながら、症状重症度と再発を軽減させる介入方法の証拠があるにも関わらず、同時に心理社会的介入が提供されたことを特定している研究は、たった3つしかなかった。
     追跡期間もまた重要であり、最も長く(7年間)追跡した研究では、いくつかの方法論的欠点があるにせよ、減薬グループにおいてより大きな機能的回復が見られ、3年後の2群間( 減薬 vs.継続)の再発率は等しかった。最後に、減薬または中止に加えて、統合失調症診断、罹病期間の長さ、そして低い病前機能が、より高い再発リスクと関連していた。
     FEPにおける抗精神病薬を用いた薬物療法の長期のリスク便益比を確定するために、この領域におけるさらなる試験が必要である。その一方で、統合失調症の診断を満たさず、少なくとも3か月間の臨床的寛解と早期の機能回復を達成していて、良い社会的サポートを持っているFEPの若者は、FEPのための専門的サービスとして提供される有効な心理社会的介入に支えられた条件での抗精神病薬の中止の可能性のある候補かもしれない。

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認知症の3分の1は、ライフスタイルの改善で予防可能かもしれない
    One Third of Dementia May Be Preventable With Lifestyle Change.
    Alzheimer's Association International Conference (AAIC) 2017.

    ロンドンからの報告:
     Lancet Commissionによる認知症の予防・介入・ケアに関する新しい総括報告書によれば、個人の認知症発症リスクに関連する9つのライフスタイル要因に取り組むことで、全認知症の3分の1以上が予防可能かもしれない。
     2017年7月20日にAlzheimer's Association International Conference (AAIC) 2017で公表され、同時にLancet誌に掲載されたその報告書は、認知症領域の複数の国からのエキスパート24人によって承認されたものである。彼らは利用可能な文献をレビューして、過去の類似の解析では考慮されなかったいくつかのリスク要因を含めたメタ解析を、新たに行った。結果、認知症負担の35%が、次に述べる9つのライフスタイル要因によって説明できた。

    1)人生早期の中等教育の中断
    2)高血圧
    3)肥満
    4)中年期の聴覚障害
    5)喫煙
    6)うつ病
    7)身体活動の不活発
    8)社会的孤立
    9)人生後期の糖尿病

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うつ病の急性期治療としての反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS):ネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
    Andre R. Brunoni, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 143-152.
    Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation for the Acute Treatment of Major Depressive Episodes: A Systematic Review With Network Meta-analysis.

    論文要約:
    <重要性>
     うつ病(major depressive disorder、MDD)治療として、いくつかの反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の方法が研究されているが、それらの比較有効性と認容性は不明である。
    <目的>
     ネットワークメタ解析を実施することにより、MDDに対するrTMSの異なる方法の相対的有効性と認容性を確定して、臨床的に意味のある治療優先度(treatment hierarchy)を得ること。
    <データソース>
     PubMed/MEDLINE、EMBASE、PsycInfo、Web of Scienceを用いて検索された、2016年10月1日までの文献。
    <研究選択>
     いずれかのrTMS介入を、シャム(プラセボ)刺激、または別のrTMS介入と比較したランダム化比較試験。10試行に満たない試験は除外した。
    <データ抽出と統合>
     データの抽出と質の評価を、2名の独立の査定者が標準フォームを用いて行った。データ統合のために、変量効果モデルのネットワークメタ解析が実施された。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは反応率と認容性(脱落率)で、寛解は二次アウトカムであった。効果量はオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)で報告された。
    <結果>
     ネットワークメタ解析に、81の研究(4233人の患者、59.1%が女性、平均年齢は46歳)が含まれた。 シャム(プラセボ)刺激よりも有効なrTMS介入は、プライム低頻度刺激(OR 4.66;95%CI 1.70-12.77)、両側刺激(OR 3.96;95%CI 2.37-6.60)、高頻度刺激(OR 3.07;95%CI 2.24-4.21)、θバースト刺激(OR 2.54;95%CI 1.07-6.05)、低頻度刺激(OR 2.37;95%CI 1.52-3.68)であった。新規のrTMS介入(accelerated、synchronized、deep)は、シャム(プラセボ)より有効ではなかった。シャム(プラセボ)刺激に対するθバースト刺激を除いて、寛解については類似した結果が得られた。すべての介入法は、少なくともシャム(プラセボ)刺激と同程度に許容できた。しかしながら、低頻度刺激、高頻度刺激、両側刺激のrTMS以外は、結果は不明確で、利用可能な試験が相対的に少なかった。
    <結論と関連性>
     いくぶん両側刺激とプライム低頻度刺激が良かったが、rTMSの異なる方法間で、臨床的有効性と認容性にほとんど違いはなかった。MDDに対する短期的治療におけるこれらアプローチの潜在能力を調べるための、より大規模なRCTデザインが必要である。最新の科学的証拠からは、新規のrTMS介入はMDDに対する治療として支持されない。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子:PROSPERO CRD42015019855)

    コメント: 薬物治療抵抗性のうつ病に対して期待されるrTMSは、日本でも盛んに研究されていますが、効率的な臨床応用には、より多くの医学的知見が必要なようです。

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妊娠中の抗うつ薬の使用と子の知的障害との関連
    Alexander Viktorin, et al. JAMA Psychiatry. Published online July 12, 2017.
    Association of Antidepressant Medication Use During Pregnancy With Intellectual Disability in Offspring.

    論文要約:
    <重要性>
     母親の妊娠中の抗うつ薬使用は、子の有害なアウトカムと関連するとされてきたが、我々の知る限り、知的障害との関連は調査されていない。
    <目的>
     母親の妊娠中の抗うつ薬使用と子の知的障害との関連、および親の精神疾患の関与の重要性を調べること。
    <デザイン・設定・参加者>
     2006年1月1日から2007年12月31日に生まれた17万9,007 人の子供のうち、出生から2014年まで追跡された国民登録から親の完全な情報を得た住民コフォート研究。
    <主要アウトカムと測定>
     妊娠中にいずれかの抗うつ薬に暴露された、あるいは特異的に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、または他のSSRIではない抗うつ薬、または他の抗うつ薬ではない向精神薬に暴露された場合の、子の知的障害の相対リスク(RR)とその95%信頼区間(CI)が推定された。
     解析は影響する可能性がある交絡因子で調整された。全集団解析に加えて、妊娠中に抗うつ薬を使用した母親と、出産前にうつ病、もしくは不安障害の少なくとも一つの診断を受けた母親を比較するために、下位サンプルを用いた。
    <結果>
     17万9,007人の子供が本研究に含まれた(追跡終了時の平均年齢[標準偏差]は7.9[0.6]歳、9万2,133人が男子、8万6,874人が女子であった)。抗うつ薬に曝露された子供のうち37人(0.9%)、抗うつ薬に曝露されなかった子供のうち819人(0.5%)に知的障害が診断された。
    交絡因子で調整後、抗うつ薬に曝露後の知的障害のRRは全集団サンプルで1.33(95%CI 0.90-1.98)、うつ病を持つ女性の下位サンプルで1.64(95%CI 0.95-2.83)であった。SSRI、非SSRIの抗うつ薬、非抗うつ薬の向精神薬、および臨床的に関連する下位サンプルの分析結果は、全サンプルからの分析結果から逸脱するものではなかった。
    <結論および関連性>
     妊娠中に抗うつ薬の治療を受けた母親から生まれた子において、交絡因子の調整前の知的障害のRRは増加していた。しかし、交絡因子の調整後は、本研究から子の知的障害と母親の妊娠中の抗うつ薬使用との関連を支持する証拠を得ることはできなかった。代わりにその関連は、親の年齢や母親の精神疾患といった他の要因に由来する機序によるのかもしれない。

    コメント:「交絡因子の調整後に関連は認めなかった」ということで、知的障害に対してはひとまずは安心ですが、ある種の抗うつ薬や気分安定薬が子の心血管奇形等との関連を示唆する報告もありますので、妊娠中の抗うつ薬使用のリスクとベネフィットを、個々の症例において十分吟味する必要があります。

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成人を対象とした抗うつ薬の臨床試験における自殺の危険:米国FDA(食品医薬品局)に提出され所有されているデータを用いた解析
    Stone M, et al. BMJ 2009; 339: b2880
    Risk of suicidality in clinical trials of antidepressants in adults: analysis of proprietary data submitted to US Food and Drug Administration.

    論文要約:
    <目的>
     成人の臨床試験中における自殺行動のリスクを調査。
    <デザイン>
     372の二重盲検ランダム化プラセボ比較試験のメタ解析。
    <設定>
     成人の適応症に対する薬剤開発プログラム。
    <参加者>
     抗うつ薬、あるいはプラセボに割り付けられた99,231人の成人である。年齢の中央値は42歳で、63.1%が女性であった。治療の適応症は、うつ病/大うつ病性障害が45.6%、他の抑うつ障害が4.6%、他の精神疾患が27.6%、そして非精神疾患が22.2%であった。
    <主要アウトカム測定>
     自殺行動(自殺完遂、自殺企図、または準備行為)と念慮。
    <結果>
     精神疾患のない参加者については、自殺行動と念慮は非常にまれであった。精神疾患を持つ参加者については、リスクは年齢に関連した。自殺行動、または念慮、および自殺行動のみに関して、オッズ比は25歳未満ではそれぞれ1.62(95%CI:0.97から2.71)、2.30(95%CI:1.04から5.09)、25歳から64歳ではそれぞれ0.79(95%CI:0.64から0.98)と0.87(95%CI:0.58から1.29)、65歳以上ではそれぞれ0.37(95%CI:0.18から0.76)と0.06(95%CI:0.01から0.58)であった。
     年齢を連続変数としてモデル化すると、自殺行動、または自殺念慮のオッズ比は1歳ごとに2.6%(95%CI:-3.9%から-1.3%、P=0.0001)、自殺行動のオッズ比は1歳ごとに4.6%(95%CI:-7.4%から-1.8%、P=0.001)の率で低下した。
    <結論>
     抗うつ薬と関連する自殺傾向のリスクは、強く年齢依存的である。プラセボと比較して、25歳未満の成人の自殺傾向および自殺行動の増加したリスクは、子供と青年のそれに近づく。自殺行動に関する正味の効果は中立的なようだが、おそらく25歳から64歳の成人における自殺念慮については保護的で、65歳以上の成人では自殺傾向と自殺行動の両方のリスクを下げるようだ。

    コメント:すこし前のメタ解析ですが、抗うつ薬と自殺念慮・自殺行動の関係に“年齢”が影響するという重要な結果です。抗うつ薬の種類や服用時期(内服後、増量期、減量期、中止後など)との関係が気になるところですね。

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強迫症/強迫性障害への薬理学的介入と心理療法的介入:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Skapinakis P, et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 730-739.
    Pharmacological and psychotherapeutic interventions for management of obsessive-compulsive disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     いくつかの介入法が成人の強迫症/強迫性障害の管理に利用可能であるが、それらの相対的有効性を一つの分析の中で比較した研究はない。我々の目的は、直接データと間接データの両方を用いて、すべての利用可能な治療を同時に比較することである。
    <方法>
     この系統的レビューとネットワークメタ解析において、我々はCochrane Collaboration Common Mental Disordersグループによって維持されている、2016年2月16日までに公表された試験についての2つの比較試験登録を検索した。強迫症/強迫性障害に対する積極的な心理療法的介入、あるいは薬理学的介入が使われているランダム化比較試験が選択された。統合失調症と双極性障害を除くすべての併存症が許容されたが、もっぱら治療抵抗性の患者集団に焦点を当てた研究は除外された。データは出版された報告書から抽出された。主要アウトカムは、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scaleで測定された症状重症度である。プラセボと比べた平均の差と95%信頼区間が報告された。
    <結果>
     検索の結果、1,480論文が同定され、うち53論文がネットワークメタ解析に使われた。行動療法(平均差 -14.48;95% CI[-18.61~-10.23];11試験と287患者)、認知療法(平均差 -13.36;95% CI[-18・40~-8.21];6試験と172患者)、行動療法とクロミプラミン(平均差 -12.97;95% CI[-19.18~-6.74];1試験と31患者)、認知行動療法とフルボキサミン(平均差 -7.50;95% CI[-13.89~-1.17];1試験と6患者)、認知行動療法(平均差 -5.37;95% CI[-9.10~-1.63];9試験と231患者)、クロミプラミン(平均差 -4.72;95% CI[-6.85~-2.60];13試験と831患者)、すべての選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(クラス効果 -3.49;95% CI[-5.12~-1.81];37試験と3158患者)は、プラセボ薬よりも効果が大きかった。クロミプラミンはSSRIより良くはなかった(平均差 -1.23;95% CI[-3・41~0・94])。心理療法的介入は薬理学的介入よりも効果が大きかったが、大部分の心理療法試験が安定用量の抗うつ薬を内服している患者を含めていたことは、重大な制約であった(15の心理療法試験のうち、12[80%]で抗うつ薬が許容されていた)。
    <解釈>
     一連の介入が強迫症/強迫性障害の管理に有効であるが、その相対的有効性に関しては、かなりの不確実性と制約が存在する。すべての科学的証拠を考え合せると、少なくとも重度の強迫症/強迫性障害については、心理療法的介入と精神薬理学的介入の併用が、心理療法的介入単独よりも有効のようである。

    コメント:薬物療法については、強迫症状の改善については3097 例を含む17研究、臨床的反応性については2697例を含む13研究に基づくコクラン・レビュー(初公表:2008年1月23日)で、SSRIは「各々SSRI間で副作用に違いがみられるものの、プラセボ薬と比較して、強迫症/強迫性障害に対して有意な短期効果(内服開始後6から13週後の評価)がある」と結論されています(長期の効果と認容性については未確立)。これと同時に認知行動療法系の心理療法を行うと良い、というのが本論文のやや不確実な結論です。

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米国における精神科病院への再入院と電気けいれん療法(ECT)の関連
    Eric P. Slade, et al. JAMA Psychiatry. Published online June 28, 2017.
    Association of Electroconvulsive Therapy With Psychiatric Readmissions in US Hospitals.

    論文要約:
    <重要性>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)は重度の感情障害を持つ人が利用可能な最も有効な治療法と考えられるが、ECTの可用性は限られ、減少しつつあることから、ECTの集団レベルの効果に関する情報を必要としている。
    <目的>
     入院患者に対するECT治療が、大規模かつ複数州からの重度の感情障害を持つ入院患者サンプルにおける30日以内の再入院リスクの減少と関連するか否かを調べること。
    <デザイン・設定・参加者>
     米国の9つの州における総合病院を退院した入院患者に関する経時的観察データを用いて、ECTの導入と30日以内の再入院のリスクの関連相関のquasi-experimental instrumental variables probit modelが推定された。49万252人の精神科入院患者の集団サンプルから、うつ病/大うつ病性障害、双極性障害、または統合失調感情障害の主診断を持つ16万2,691人からなるサンプルが抽出された。この分析に使用された主要な操作変数は、治療病院における暦前年のECT実施率である。ECTと再入院の関連が、サブグループ集団間で異なるか否かを調べるために、ECTと年齢グループ、性別、人種/民族、そして診断グループとの交互作用が分析に含まれた。研究は2015年8月27日から2017年3月7日の間に実施された。
    <主要アウトカムと測定>
     退院後30日以内の再入院。
    <結果>
     全体で16万2,691人のうち2,486人(1.5%)が、対象となる入院期間にECTを受けた。他の入院患者と比較して、ECTを受けた入院患者はより高齢で(平均[標準偏差]、56.8 [16.5] vs 45.9 [16.5] 歳; P < .001)、女性がより多く(65.0% vs 54.2%; P < .001)、ヒスパニック系でない白人で多く(85.3% vs 62.1%; P < .001)、双極性障害(29.0% vs 40.0%; P < .001)、または統合失調感情障害(7.1% vs 28.0%; P < .001)よりもうつ病/大うつ病性障害の診断を持ち(63.8% vs 32.0%; P < .001)、個人(39.4% vs 21.7%; P < .001)、またはメディケア(49.2% vs 39.4%; P < .001)の保険を有し、都市部の小さな病院(31.2% vs 22.3%; P < .001)、または非都市部の病院(9.0% vs 7.6%; P = .02)で治療されていた。
     ECT未導入患者では12.3%、ECT導入患者では6.6%の推定再入院率から、ECTの導入は、重度の感情障害を持つ精神科入院患者の30日以内の再入院リスクの減少と関連した(リスク比 [RR], 0.54; 95% CI, 0.28-0.81)。ECTと再入院リスクの関連は、女性より男性において (RR, 0.44; 95% CI, 0.20-0.69 vs 0.58; 95% CI, 0.30-0.88)、うつ病/大うつ病性障害より双極性障害(RR, 0.42; 95% CI, 0.17-0.69)、および統合失調感情障害(RR, 0.44; 95% CI, 0.11-0.79)を持つ人において、ずっと大きかった。
    <結論と関連性>
     電気けいれん療法(ECT)は、重度の感情障害を持つ精神科入院患者における短期間での再入院を減少させるかもしれない。ECTの可用性に関する米国の病院の現行の意思決定において、この潜在的な集団健康効果は見過ごされてきた可能性がある。

    コメント: メランコリーや精神病性の特徴を持つ重度のうつ病に非常に有効なECTですが、日本でも同様に合理的な適用が抑制されている可能性がありますね。

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統合失調症の抗精神病薬単剤療法に追加される42の薬剤併用療法の有効性:メタ解析によるエビデンスの系統的概観と質評価
    Christoph U. Correll, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 675-684.
    Efficacy of 42 Pharmacologic Cotreatment Strategies Added to Antipsychotic Monotherapy in Schizophrenia: Systematic Overview and Quality Appraisal of the Meta-analytic Evidence.

    論文要約:
    <重要性>
     統合失調症に対する限られた治療反応は、抗精神病薬治療に二番目の向精神薬を組み合わせる治療を促したが、複数の薬剤の組み合わせの有効性に関する包括的評価はなされていない。
    <目的>
     統合失調症を持つ成人における抗精神病薬の薬剤併用療法について、メタ解析を用いて決定されたその有効性を要約し比較すること。
    <データソース>
     2016年5月13日までのPubMedとPsycInfoを系統的に検索した。
    <研究選択>
     成人の統合失調症における抗精神病薬、および他の抗精神病薬、または非抗精神病薬との併用と、プラセボ、または抗精神病薬単剤療法の有効性を比較した無作為化臨床試験のメタ解析。
    <データ抽出と統合>
     独立の査定者がデータを抽出し、A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews (AMSTAR)、およびその質を評定するための6つの新しい項目を用いて、メタ解析の方法の質を評価した。
     標準化された平均の差分/Hedgeのg値(訳注:差の効果量としては、他にCohenのd値がある)、またはリスク比で表される効果量が、いずれかの抗精神病薬との併用、およびクロザピンとの併用について個別に比較された。
    <主要アウトカムと測定>
     一次アウトカムは、症状の総減少であった。二次アウトカムは、陽性症状と陰性症状、著者らによる治療推奨、研究で定義された無効、認知症状とうつ症状、いかなる理由による治療中断、そして無効または不耐であった。
    <結果>
     3,397の論文に、381の試験、19,833人の参加者において42の組み合わせを調べた29のメタ解析が含まれていた。症状の総減少について、抗精神病薬を増強する32の方法とクロザピンを増強する5つの方法が調べられた。
     14の併用療法がコントロールより有効であった(標準化平均差/Hedgeのg値、-1.27;95% CI[-2.35~-0.19];P = .05)。コントロールよりも有効なクロザピンとの併用法はなかった。メタ解析の方法の質は総じて高かったが(最高得点11点のところ平均得点は9点)、メタ解析された研究の質は低かった(最高得点8点のところ平均スコア2.8点)。治療推奨は効果量と相関したが(相関係数、0.22;95% CI[0.35~0.10];P < .001)、効果量は研究の質と逆相関した(相関係数、-0.06;95% CI[0.01~0.12];P = .02)。
    <結論と関連性>
     21の介入法に関するメタ解析はその使用を全面的に、あるいは部分的に推奨する(治療推奨は全介入の効果量と正の相関している)。しかしながら、効果量はメタ解析された研究の質と逆相関しており、これら推奨の信頼性を損ねている。

    コメント:最後の結論は、「現在までのメタ解析文献に基づくと、統合失調症を持つ患者に対して単一の方法は推奨できないので、統合失調症の下位集団が併用療法から恩恵を得ることがあるかどうかを確かめるために、質の高い試験と、(今回のようなメタ解析のレビューではない)患者ベースのメタ解析が必要」とのことです。

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初回エピソード精神病の抗精神病薬治療が休止されると再発リスクは5倍に上昇する
    Winton-Brown TT, et al. Schizophr Res 2016; 179: 50-56.
    Five-fold increased risk of relapse following breaks in antipsychotic treatment of first episode psychosis.

    論文要約:
    <背景>
     初回エピソード精神病を管理する上で鍵となる問題は、患者が抗精神病薬治療を受けることをしばしば嫌うことであり、その表れていた症状がいったん治まった場合は尚更である。このような患者では、臨床家は治療の休止を試みようとするかもしれない。
    <目的>
     初回エピソード精神病の管理において、抗精神病薬治療の中断の影響を評価すること。
    <方法>
     症例記録を系統的に遡って調査することで、2003年から2005年の連続する初回エピソード精神病患者136人において、発症後の18か月間の治療アドヒアランスと臨床経過が評価された。抗精神病薬を1カ月以上中止した患者において、寛解までの時間と再発リスクを調べるために回帰分析が使われた。
    <結果>
     患者の半数以上で(73人、58%)、1カ月以上の抗精神病薬の休止を認めた。これらが回復の前に生じた場合は(22人、17%)、寛解までの期間は治療が継続された患者のおよそ2倍であった(t=2.9、P=0.01)。治療が中断された患者は、治療を継続した患者よりも5倍再発しやすかった(p=0.0001、 95%信頼区間 2.1-11)。治療中断後から再発までの平均期間は3カ月であった。
    <結論>
     抗精神病薬を用いた初回エピソード精神病の治療が1カ月以上中止されると、寛解は遅延し、寛解後の再発リスクが非常に増加する可能性がある。

    コメント:“1カ月”という治療休止期間のリスクを、臨床家はもっと深刻に認識する必要がありそうです。

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診療勧告:注意欠如・多動症(ADHD)診断における脳波のθ波とβ波のパワー比の有用性
    David Gloss, et al. Neurology 2016; 87: 2375-2379.
    Practice advisory: The utility of EEG theta/ beta power ratio in ADHD diagnosis.
    Report of the Guideline Development, Dissemination, and Implementation Subcommittee of the American Academy of Neurology.

    論文要約:
    <目的>
     注意欠如・多動症(ADHD)を診断する、あるいはADHD診断の補助のための脳波のθ波とβ波のパワー比(EEG theta/beta power ratio、以下θ/βパワー比と略す)に関する科学的証拠を評価すること。
    <方法>
     関連研究を同定して、それらを米国神経学会の基準を用いて分類する。
    <結果>
     ADHD患者を同定するθ/βパワー比と前頭部βパワーの能力を評価している2つのクラスⅠ研究1)2)では、186人の研究参加者のうちの166人を正確に同定した。どちらの研究とも、ADHDの鑑別診断に含まれるADHDが疑われる人、または典型的症候群におけるθ/βパワー比と前頭部βパワーを評価していた。この診断研究を結びつける二変数(bivariate)モデルは、前頭部βパワーとθ/βパワー比の組み合わせが比較的高い感度と特異度を有していることを示したが、正確度は不十分であった。
    <結論>
     標準的な臨床的診察とθ/βパワー比の組み合わせが、診察単独と比較して診断確実性を増加させるか否かについては不明である。
    <推奨>
     レベルB:臨床家はADHDが疑われる人とその家族に、「θ/βパワー比と前頭部βパワーを標準的な臨床評価の代わりにすべきでない」と伝えるべきである。θ/βパワー比と前頭部βパワーの許容できないほど高い偽陽性診断率のため、ADHDの誤診から患者に有意な害を与えるリスクがある。
     レベルR:臨床家はADHDが疑われる人とその家族に、このような診断評価が研究目的に使われるのでない限り、「θ/βパワー比をADHD診断の確認のために、臨床評価後のさらなる検査のために利用するべきではない」と伝えるべきである。
    <文献>
    1)Quintana H, et al. Psychiatry Res 2007; 152: 211-222.
    2)Snyder SM, et al. Psychiatry Res 2008; 159: 346-358.

    コメント:FDAが認可したθ/βパワー比を用いたADHDの診断ツールが、米国で臨床利用されているという話題を聞いたことがあります。日本でもADHDが疑われる人に普通の脳波検査を実施することはありますが、本論で言及されるような利用は稀と思われます。

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初回エピソード精神病(FEP)において、ボクセル単位の形態計測(VBM)を用いて統合失調症を他の型の精神病から分離する:診断テストのレビュー
    Palaniyappan L, et al. Schizophr Bull 2016; 42: 277-278.
    Voxel-Based Morphometry for Separation of Schizophrenia From Other Types of Psychosis in First-Episode Psychosis: Diagnostic Test Review.

    論文要約:
    <背景>
     統合失調症は思考と知覚のゆがみ、感情の平板化、そして行動の障害を認める精神疾患である。精神病がより長く気づかれずに治療されないほど、再発と回復への影響はより深刻である。早期の介入サービスが役に立つ可能性を示す幾ばくかのエビデンスがあり、早期介入に貢献し得る診断技術は、この状況に臨床的有用性を提供するかもしれない。ここで評価されるテストとは、多数の脳領域にわたる灰白質の体積分布を推定するボクセル単位の形態計測(voxel-based morphometry、VBM)として知られる磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)の解析技術である。
     本レビューは、ある個人が他の型の精神病ではなくて、統合失調症の診断を持つか否かを確定するために、初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)患者の臨床診察における援用ツールの一つとしてのVBM使用に関する、その診断潜在能力の探索的調査である。
    <目的>
     脳のMRIに適用されるVBMが、FEP患者の参加者において、統合失調症を他の型の精神病と鑑別することに利用可能であるか否かを確定すること。
    <検索方法>
     2012年5月にOvidSPを用いて行ったMEDLINE、EMBASE、そしてPsycInfo検索を、2013年の12月に更新した。
    <選択基準>
     連続的に、あるいは無作為に選ばれたFEPを持つ青年、および45歳未満の成人参加者を対象とした後方視的・前方視的研究において、認定された精神健康の専門家によって下された臨床診断(標準的な操作的診断基準、または症状チェックリストの使用は問わない)と比較した場合の、統合失調症と他の精神病との鑑別に関するVBMの正診率が評価された。子供、および器質性脳疾患を持つ成人参加者、あるいは遺伝負因のような高い統合失調症のリスクを持つ人は除外された。
    <データの収集と分析>
     文献の包含について、2人の著者がすべての文献をスクリーニングした。研究の質はQUADAS-2を用いて評価された。データの欠損のために個々の研究について2×2表を抽出することができず、いかなるメタ解析も実施されなかった。
    <主な結果>
     合計275人のFEPを持つ参加者からなる4つの研究が含まれた。VBMの診断正確度はどの研究においても評価されておらず、代わりに灰白質体積の違いの程度を定量するためにVBMは使われていた。したがって、包含された研究で分析に利用し得るデータを報告しているものはなく、我々は個々の研究についての所見を非数量的に要約した。 <著者らの結論>
     FEPを持つ患者において、VBM研究で見出された脳の変化パターンを利用する統合失調症と他の精神病性障害との鑑別診断法を支持する科学的証拠は、今のところ存在しない。VBMは診断カテゴリーどうしを区別する潜在能力を有するが、信頼性を持って行う方法は現在発展中である。加えて、現在までの研究において、臨床診療へのVBMの適用についての直接的評価が欠落していることが、統合失調症を他の精神病的表現型と区別するVBMの診断能力の評価に制約を与えている。
     VBMの診断能力を実現するためには、VBMから収集される脳全体の情報のすべてを利用する統計学的鑑別に力点を置いた研究が、特に前方視的診断妥当性を有するFEP集団において、実施される必要がある(詳細についてはPalaniyappan Lらによる以下の文献を参照のこと)。
    <研究資金>
     National Institute of Health Research Cochrane Programme Grant 2011(参照番号:10/4001/15, UK)
    <参考文献>
     Palaniyappan L Maayan N Bergman H Davenport C Adams CE Soares-Weiser K. Voxel-based morphometry for separation of schizophrenia from other types of psychosis in first episode psychosis. Cochrane Database Syst Rev. 2015; 8: CD011021. doi: 10.1002/14651858.CD011021.pub2.

    コメント:VBMは日本でも活発に研究されていますが、臨床応用となると、まだまだクリアーすべき事柄が多く残っているようです。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)では、デフォルトモードネットワーク(DMN)の内側前頭前野領域に広帯域の神経生理学的異常がある
    Wilson TW, et al. Hum Brain Mapp 2013; 34: 566-74.
    Broadband neurophysiological abnormalities in the medial prefrontal region of the default-mode network in adults with ADHD.

    論文要約:
     成人の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)を持つ人のデフォルトモードネットワーク(default-mode network、DMN)を調べた以前の研究では、前頭皮質の前後方向間の機能的結合性が減少していた。この所見はもともと成人のADHDで見出されたが、のちに若年のADHDでも確認され、DMN内の超低周波数オシレーションと暫定的に関係付けられてきた。我々はDMN異常と超低周波数帯域における神経オシレーションとの特異性を評価し、DMN異常の領域特異性を、服薬中の成人ADHD患者、未服薬の成人ADHD患者、ADHDを持たない成人で調べた。
     ADHDを持つ成人と持たない成人の個別に対応付けされたサンプルは、安静時MEGの6分間のセッションを遂行した。ADHDを持つ参加者は、既知の精神刺激薬による薬物療法の反応者であり、2つのセッション(服薬前/服薬後)を遂行した。MEGデータは参加者のMRIに登録され、頭部の動揺が修正された。DMN領域におけるニューロンの集団活動を抽出するため、MEGデータに局所レベルの電流源モデルを当てはめ、スペクトル分析を行った。
     ADHDを持たない成人と比較して、未服薬の成人ADHD患者は内側前頭前野皮質(MPFC)における広帯域の欠陥を示したが、他のDMN領域では欠陥を認めなかった。未服薬の成人ADHD患者はまた、γ帯域においてMPFCと後部帯状領域間の異常なcross-frequency couplingを示し、β帯域とそれ以下の帯域では、後部領域の活動が前頭部領域よりも強いといったDMN内のバランスが崩れていて、それ以上のγ帯域では活動が消散していた。薬物療法の導入は、ADHDを持つ成人において有意に前頭前野のα活動(8-14 Hz)を増加させ、cross-frequency gamma couplingを減少させた。
     これらの結果は、ADHD患者のDMNにおける神経生理学的異常は、超低周波数オシレーションに限ったものではなく、主としてMPFCにおける広帯域の異常活動に起因する可能性を示唆する。

    コメント:Cross-frequency couplingとは、その領域の研究者以外には馴染みの薄い用語ですが、複数の周波数の神経オシレーションが連関することで、異なる周波数帯域間と神経システム間に存在します(Hyafil A, et al. Trends in Neurosciences 2015; 38: 725-740)。ADHDのβ/αパワー比の臨床応用等には議論があるところですが、DMNの神経オシレーション解析のような高度な手法を用いると、ADHDのより精緻な中枢神経病理が明らかになるかもしれません。

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注意欠如・多動症(ADHD)における薬物療法と高等教育入学試験成績の関連
    Yi Lu, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 815-822.
    Association Between Medication Use and Performance on Higher Education Entrance Tests in Individuals With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder.

    論文要約:
    <重要性>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)を持つ人は、学業上の問題のリスクがより大きい。薬物療法はADHDの中核症状の軽減に有効であるが、学業に関するアウトカムを改善させるか否かは不明である。
    <目的>
     ADHDを持つ人で、ADHD治療薬の使用と高等教育入学試験成績の関連を調査すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究では、ADHD診断を有する61,640人を、2006年1月1日から12月31日まで観察した。薬物療法の記録はスウェーデン大学進学適性試験からのデータと共に、スウェーデン国民登録から抽出した。患者内デザインを用いて、患者がADHD治療薬を使用している時と、使用していない時の試験得点が比較された。データ分析は、2015年11月24日から2016年11月4日に行われた。
    <曝露>
     ADHD治療薬を使用している期間と、使用していない期間。
    <主要アウトカムと測定>
     高等教育入学試験の得点(1から200点)。
    <結果>
     複数回の入学試験(n = 2524)を受け、かつ断続的にADHD治療薬を使用した930人(男性493人、女性437人;平均年齢[標準偏差]:22.2[3.2]歳)において、年齢と練習効果を調整後、服薬していなかった期間に比べて、服薬していた期間の試験得点は4.80ポイント高かった。ADHD治療薬の使用と試験得点との同様の関連が、感度分析で確認された。
    <結論と関連性>
     ADHDを持つ人は、ADHD治療薬を使用していない期間に比べて、使用している期間の方が高等教育入学試験の得点が高かった。これらの所見は、ADHD治療薬は、ADHDを持つ人の教育関連のアウトカムの改善に役立つ可能性を示唆している。

    コメント:治療薬で注意・集中力が増せば、成績も良くなりそうですよね。

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アメリカンフットボール選手における慢性外傷性脳症(CTE)の臨床病理学的検討
    Mez J, et al. JAMA 2017; 318: 360-370.
    Clinicopathological Evaluation of Chronic Traumatic Encephalopathy in Players of American Football.

    論文要約:
    <重要性>
     アメリカンフットボールの選手は、長期にわたる神経病態、特に慢性外傷性脳症(chronic traumatic encephalopathy、CTE)のリスクが高いかもしれない。
    <目的>
     CTEで死亡したフットボール選手の神経病理学的・臨床的特徴を解明すること。
    <設計・設定・参加者>
     研究のために脳を提供した202人のフットボール選手のケースシリーズである。神経病理学的評価、および情報提供者への電話による後方視的臨床評価(頭部外傷歴を含む)が盲検的に行われた。競技歴と軍歴はオンラインの質問票で確認された。
    <曝露>
     いかなるレベルのアメリカンフットボールへの参加。
    <主要アウトカムと測定>
     定義された診断基準に基づくCTEを含む神経変性疾患の神経病理診断、CTE神経病理重症度(ステージⅠからⅣ、および軽度[ステージⅠとⅡ]と重度[ステージⅢとⅣ]の二分法)、情報提供者の報告による競技歴、および2014年以降に死亡した競技者については行動・気分・認知の症状と認知症を含む臨床像
    <結果>
     死亡したかつてのフットボール選手202人(死亡時の年齢中央値、66歳;四分位範囲、47から76歳)のうち、CTE は177人(87%;死亡時の年齢中央値、67歳、四分位範囲は52から77歳)に神経病理診断され、フットボール参加の平均期間は15.1年(標準偏差5.2年)、内訳は高校前2人中0人、高校14名中3人(21%)、大学53人中48人(91%)、セミプロ14人中9人(64%)、カナダフットボールリーグ8人中7人(88%)、ナショナルフットボールリーグ111人中110人(99%)であった。
     CTEの神経病理は高い競技レベルに渡って存在し、かつての高校選手の3人すべてに軽度の病理所見があり、かつての大学選手(27人、56%)、セミプロ(5人、56%)、プロ(101人、86%)の大半に重度の病理所見を認めた。軽度のCTE病理を持つ参加者84人のうち、26人(96%)に行動症状か気分症状、またはその両方があり、23人(85%)に認知症状を認め、9人(33%)に認知症の徴候があった。重度のCTE病理を持つ参加者84人のうち、75人(89%)に行動症状か気分症状、またはその両方があり、80人(95%)に認知症状を認め、71人(85%)に認知症の徴候があった。
    <結論と関連性>
     死後に研究のために脳を提供したフットボール選手の便宜的サンプルにおいて高率に認めたCTEの神経病理学的証拠は、CTEと生前のフットボールへの参加の関連を示唆する。

    コメント:近年,頭部外傷の分野で,国内外においてトピックとなっているのが,受傷から数年以上のインターバルを経て出現する遅発性の症候と言われています(高畑圭輔ら. 高次脳機能研究 2015; 35: 276-282)。精神科臨床における頭部外傷後精神病(psychotic disorder following TBI)との脳病態学的関連も注目されています。

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統合失調症における脳白質と中核的認知欠損の関連
    Peter Kochunov, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 2, 2017
    Association of White Matter With Core Cognitive Deficits in Patients With Schizophrenia

    論文要約:
    <重要性>
     統合失調症における複数の認知機能障害を改善させる努力は、背景をなす神経機構の一つとして脳白質の検討に向けられるべきだ。
    <目的>
     脳の構造的結合性の変化が、統合失調症の中核的な認知欠損の2つ、すなわち情報処理速度の低下とワーキングメモリーの障害に関連しているか否かを解明すること。
    <設計・設定・参加者>
     この横断的デザインの研究は、2004年の8月1日から2015年8月31日の間に、外来クリニックで実施された。参加者は統合失調症を持つ患者166人と、健常対照者213人である。これら参加者は3つの独立したコホートであり、各々それぞれに健常対照群があった。現在の神経疾患、または重大な身体疾患、それらの既往症を持つ参加者はいなかった。患者の診断は、DSM-IVによって定義される統合失調症、または統合失調感情障害であった。対照者にⅠ軸精神障害はなかった。
    <主要アウトカムと測定>
     処理速度、ワーキングメモリー、そして白質微細構造の関連を分析するために、媒介分析と構造方程式モデリングが使用された。白質微細構造を測定するために、全脳、および局所の拡散テンソル画像のfractional anisotropyが使われた。
    <結果>
     参加者のうち、166人の統合失調症患者の平均年齢は38.2歳(標準偏差13.3歳)、213人の健常対照者の平均年齢は39.2歳(標準偏差は14.0歳)であった。3つのコホートの各々において、対照よりも患者で男性が有意に多かったが(対照、91人[43%];患者、117人[70%])、3つのコホート間に性比の有意な差はなかった。
     患者は有意に処理速度が遅く(Cohen d = 1.24; P = 6.91 × 10-30)、ワーキングメモリーが障害されており(Cohen d = 0.83; P = 1.10 × 10-14)、また全脳fractional anisotropyが低かった(Cohen d = 0.63; P = 2.20 × 10-9)。統合失調症では、ワーキングメモリーの障害のほとんどは処理速度の低下で説明できたが、処理速度の低下はワーキングメモリーを考慮しても引き続き残った(Cohen d = 0.89; P = 2.21 × 10-17)。
     媒介分析では、fractional anisotropyから処理速度、そしてワーキングメモリーへの有意な関連パスが示された(P = 5.01 × 10-7)。様々な白質束におけるこの脳と認知のパスの強さは、メタ解析で確定された対応する白質束における統合失調症関連のfractional anisotropyの低下の程度と強く関連していた(r = 0.85-0.94; すべてP < .001)。同じパターンは、患者と対照を一緒にしても別にしても観察された。
    <結論と関連性>
     研究から得られた所見から次が示唆される:1)処理速度は、統合失調症における白質微細構造とワーキングメモリーとの関連性に寄与する、2)統合失調症の白質障害は、局所白質束特異的であって、それは特に処理速度を維持する白質束においてである。

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強迫症/強迫性障害(OCD)の神経回路における炎症
    Sophia Attwells, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 833-840.
    Inflammation in the Neurocircuitry of Obsessive-Compulsive Disorder.

    論文要約:
    <重要性>
     付加的な神経精神医学的徴候を示す一部の強迫症/強迫性障害(obsessive-compulsive disorder、OCD)の症例について、感染への免疫応答として大脳基底核の神経炎症が起きているとの仮説があるが、多様な機序で誘発され得る神経炎症の亢進は、OCDの皮質-線条体-視床回路の全体において重要かもしれない。脳の炎症を同定することは、輸送タンパク質(translocator protein、TSPO)に結合する陽電子断層撮影(positron emission tomography、PET)放射性リガンドの最近の進歩により可能である。ミクログリアが神経炎症の間に活性化するとき、TSPO密度は増加し、TSPO分布容積(distribution volume、VT)は、TSPO密度の指標となる。
    <目的>
     TSPO分布容積が、OCDの背側尾状核、眼窩前頭皮質、視床、腹側線条体、背側被殻、そして前部帯状皮質において上昇しているか否かを確かめる。
    <設計・設定・参加者>
     このケースコントロール研究は、2010年5月1日から2016年11月30日まで、3次医療を担う精神科専門病院にて行われた。OCDを持つ参加者20人と、年齢をマッチさせた健常対照者20人は、フッ素18でラベルされたN-(2-(2-fluoroethoxy)benzyl)-N-(4-phenoxypyridin-3-yl)acetamideのPETスキャンを受けた。これは高品質で第2世代のTSPO結合性PET放射性トレー サーである。すべての参加者はどの薬も服用しておらず、非喫煙であり、その他の点でも健康であった。
    <主要アウトカムと測定>
     背側尾状核、眼窩前頭皮質、視床、腹側線条体、背側被殻、そして前部帯状皮質において、TSPO分布容積が測定された。強迫行為はYale-Brown Obsessive Compulsive Scaleで評価された。
    <結果>
     OCD群と健常群において、それぞれの年齢の平均(標準偏差)は27.4(7.1)歳と27.6(6.6)歳で、11人(55%)と8人(40%)が女性であった。OCD群では、上記の脳領域でTSPO分布容積が有意に上昇していた(平均、32%;範囲、31~36%、ただし前部帯状皮質の24%を除く;分散分析、診断主効果:P < .001からP = .004)。他の灰白質領域では、TSPO分布容積のやや低目の上昇がみられた(22~29%)。強迫行為を抑える苦痛に関するYale-Brown Obsessive Compulsive Scale得点は、前頭眼窩皮質のTSPO分布容積と有意に相関した(未調整ピアソン相関係数、0.62;P = .005)。
    <結論と関連性>
     我々の知る限り、これはOCD神経回路内の炎症を明らかにした最初の研究である。増加したTSPO分布容積の局所分布は、OCDの自己免疫/神経炎症理論が大脳基底核を超えて、皮質-線条体-視床-皮質回路を包含するように拡張されるべきとの主張を支持する。免疫修飾療法が、小児のOCDだけでなくむしろ成人OCDにおいて、特に強迫行為を抑えようとする時に著明な苦痛を感じる症例において研究されるべきである。

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統合失調症におけるグルタミン酸変化の特徴:プロトンMRS研究のメタ解析
    Kate Merritt, et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 665-674.
    Nature of Glutamate Alterations in Schizophrenia: A Meta-analysis of Proton Magnetic Resonance Spectroscopy Studies.

    論文要約:
    <重要性>
     グルタミン酸作動性神経伝達の変化は、統合失調症の病態生理の本質である可能性があり、グルタミン酸システムは本障害に対する新規の治療介入の標的である。
    <目的>
     グルタミン酸のプロトン磁気共鳴スペクトロスコピー(proton magnetic resonance spectroscopy、1H-MRS)研究のメタ解析を実施することで、統合失調症における脳内グルタミン酸の変化の特徴を解明すること。
    <データソース>
     MEDLINEデータベースにおいて、1980年1月1日から2015年4月1日までに公表された研究が検索された。検索用語は以下のであった:磁気共鳴スペクトロスコピー、統合失調症、精神病、臨床的または遺伝的高リスク、統合失調感情障害。包含基準は、健常ボランティア群と比較した患者、あるいはリスク群のグルタミン酸、グルタミン、またはグルタミン酸/グルタミンを報告するシングルボクセル1H-MRS研究であった。
    <研究選択>
     1686人の患者と1451人の対照健常人を含む59研究が同定された。
    <データ抽出と統合>
     集積効果量(pooled effect size)を計算するために、ランダム効果・逆重み付け分散モデル(random-effects, inverse-weighted variance model)が使われた。平均値が抽出され独立に確定された。少なくとも3つの異なる研究で調べられた脳領域におけるグルタミン酸、グルタミン、グルタミン酸/グルタミンについて、効果量が確定された。二次解析では、疾患の異なるステージにある患者(高リスク、初回エピソード精神病、または慢性統合失調症)を調べた研究がまとめて分析された。年齢、抗精神病薬用量、そして症状重症度の効果は、メタ回帰を用いて決定された。
    <結果>
     統合失調症においては、基底核のグルタミン酸(Hedgesのg値 = 0.63; 95% CI, 0.15-1.11)、視床のグルタミン(g = 0.56; 95% CI, 0.02-1.09)、基底核のグルタミン酸/グルタミン(g = 0.39; 95% CI, 0.09-0.70)、内側側頭葉のグルタミン酸/グルタミン(g = 0.32; 95% CI, 0.12-0.52)の有意な上昇を認めた。統合失調症においてグルタミン酸代謝物が減少していた領域はなかった。二次解析では、内側前頭葉におけるグルタミン酸/グルタミンの上昇は統合失調症の高リスクにある人で明らかであったが、初回エピソード精神病、または慢性の統合失調症を持つ人では明らかではなかった。一方、内側側頭葉におけるグルタミン酸/グルタミンの上昇は慢性の統合失調症でみられたが、統合失調症の高リスクにある人、または初回エピソード精神病を持つ人にはみられなかった。メタ回帰は、年齢、症状重症度、または抗精神病薬用量との関連を見出せなかった。
    <結論と関連性>
     統合失調症はいくつかの脳領域にわたるグルタミン酸代謝物の上昇と関連している。この所見は、統合失調症はいくつかの辺縁系領域おける過剰なグルタミン酸作動性神経伝達と関連するという仮説を支持し、さらにはグルタミン酸作動性伝達を減少させる化合物の治療薬としての可能性を示している。

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成人期の診断方法が小児期の注意欠如・多動症(ADHD)の持続の推定に影響する:縦断研究の系統的レビュー
    Margaret H Sibley, et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 1157-1165.
    Method of adult diagnosis influences estimated persistence of childhood ADHD: a systematic review of longitudinal studies.

    論文要約:
     いくつかの研究から、小児期から成人期に至る注意欠如・多動症(attention-deficit hyperactivity disorder、ADHD)の安定性が疑問視されている。この系統的レビューでは、診断方法のバラツキが、成人のADHDの持続の推定にどのように影響するかを明らかにする。系統的データベース検索により、1992年1月1日から2016年5月31日の間に英語で公表された、成人ADHDの持続率を報告している研究が同定された。研究への包含基準は以下である:一定の手順に従った注意欠陥障害(attention-deficit disorder、ADD)、ADHDの小児期診断、あるいはDSM-III、DSM-III-R、またはDSM-IVの基準に合致した研究診断プロトコル;平均小児期年齢は12歳未満で、18歳より年長の参加者を含まない:平均成人期年齢は18歳かそれ以上で、17歳より若年の参加者を含まない。
     包含された12のサンプルのうち、ADHDの持続に関する41の推定値が見出され、それは4から77%に渡っていた。成人期のADHD診断法は、情報源、診断方法(例:評価尺度、面接)、症状の診断閾値、そして機能障害が診断に必要か否かに関して、広くばらついていた。自己報告のみに基づく6つの症状の厳格な閾値は、非常に低い持続推定値が導かれた。偽陰性分類と偽陽性分類を最小化するために、ADHDの成人期の持続を決定する際に推奨される方法は、1)患者自身および情報提供者の評価を集めること、2)機能障害の存在を必要とすること、3)年齢に見合った症状閾値を使うことである。これらの方法を用いているのは非常に少数の持続推定値であり、その場合の持続率は40~50%である。

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ALSPAC出生コホートにおける自閉スペクトラム症(ASD)と精神病体験の関連
    Sullivan S, et al. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 2013; 52: 806-814.
    The association between autism spectrum disorder and psychotic experiences in the Avon longitudinal study of parents and children (ALSPAC) birth cohort.

    論文要約:
    <目的>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders、ASD)と精神病の重複が研究報告されている。これは2つの障害が関連する、あるいは症状の類似性による見せかけの重複かもしれない。本研究の目的は、ASDと自閉特性が青年期早期における精神病体験を予測するか調べることである。
    <方法>
     この研究はコホートからの前方視的データを分析する。データセットは、自閉特性、および/またはASD診断と、12歳時の精神病体験に関するデータを提供した5,359人のコフォートメンバーの分析である。
    <結果>
     ASD診断(オッズ比 = 2.81, 95%信頼区間 = 1.07-7.34, p = .035)と小児期自閉特性(オッズ比= 1.15, 95%信頼区間 = 1.05-1.26, p = .0018)は、交絡因子を調整した後も精神病体験と関連していた。
    <結論>
     これらの所見は、自閉症と精神病に共通する神経発達的起源を示唆する。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)症状と精神病:英国における地域調査からの疫学的証拠
    Marwaha S, et al. Psychiatry Res 2015; 229: 49-56.
    Adult attention deficit hyperactivity symptoms and psychosis: Epidemiological evidence from a population survey in England.

    論文要約:
     いくつかの共通特徴があるにも関わらず、精神病と成人の注意欠如・多動症(attention-deficit hyperactivity disorder、ADHD)の関連を示す証拠は乏しく、一貫していない。ここで検証される仮説は以下である:1)成人のADHD症状は、幻聴、妄想様観念、精神病と関連する、2)ADHD症状と精神病は、ADHD処方薬、違法薬物の使用、不快気分によって媒介される。Adult Psychiatric Morbidity Survey 2007(N=7403)から、回帰分析、および多変量媒介分析のためのデータを得た。ADHD症状は、ADHD Self-Report Scale (ASRS)でコードされた。
     社会人口統計変数、言語性IQ、自閉スペクトラム特性、小児期の素行の問題、軽躁および不快気分を調整しても、高いASRS総得点は有意に精神病、妄想様観念、および幻聴と関連した。ADHDの診断可能性を示唆するASRS得点もまた、有意に精神病と関連した。高水準のADHD症状と精神病、妄想様観念、および幻聴との関連は、有意に不快気分に媒介されたが、アンフェタミン、コカイン、または大麻の使用には媒介されなかった。
     結論として、高水準の成人のADHD症状は精神病と関連し、不快気分がその機序の一部をなす可能性がある。我々の分析は「ADHD症状を持つ人が精神病を発症するのは違法薬物が主な原因である」とする従来の臨床的見解に異議を唱えるものである。

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自閉スペクトラム症を持つ子供の症状重症度に対する即興的音楽療法と強化型標準ケアの効果:TIME-A無作為化臨床試験
    Lucja Bieleninik, et al. JAMA 2017; 318: 525-535.
    Effects of Improvisational Music Therapy vs Enhanced Standard Care on Symptom Severity Among Children With Autism Spectrum Disorder: The TIME-A Randomized Clinical Trial.

    論文要約:
    <重要性>
     音楽療法(Music Therapy)は、社会的相互作用やコミュニケーションといった自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)によって影響される領域のスキルを手助けするかもしれない。
    <目的>
     ASDを持つ子供の社会的コミュニケーションスキルに対する即興的音楽療法(Improvisational Music Therapy)の効果を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     評価者に盲検的な無作為化臨床試験が9か国で実施され、ASDを持つ4から7歳までの子供が試験にした。子供は2011年11月から2015年11月まで試験に参加し、2012年1月から2016年11月まで追跡調査された。
    <介入>
     強化型標準ケア(182人)と、強化型標準ケア+即興的音楽療法(182人)が1:1の比で割り振られた。強化型標準ケアは、地域で利用可能な通常のケアに加えて、親の懸念を話し合ってASDに関する情報提供を行う親カウンセリングから構成された。即興的音楽療法においては、子供が共有感情と共同注意を発展させることを助けるために、訓練を受けた音楽療法家がそれぞれの子供といっしょに歌う、または音楽を演奏し、子供の注意の的に同調して合わせた。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは、自閉症診断観察検査(Autism Diagnostic Observation Schedule、ADOS)の対人的感情領域(範囲、0~27ポイント;より高いとより重症;最低限の臨床的に重要な差、1)に基づく5か月間の症状重症度、事前に特定された副次アウトカムは、親評価の対人応答性であった。すべてのアウトカムはまた、2カ月時と12カ月時に評価された。
    <結果>
     無作為化された364人の参加者(平均年齢、5.4歳;83%が男子)のうち、314人(86%)が一次エンドポイントを、290人(80%)が最終エンドポイントを完遂した。5カ月にわたって、音楽療法に割り付けられた参加者は、中央値で19回の音楽療法、3回の面接、そして36回の他の治療セッションを受けた。一方、強化型標準ケアに割り付けられた参加者は、中央値で3回の面接と45回の他の治療セッションを受けた。ベースラインからの5カ月で、線形混合効果モデルにより推定されたADOS対人的感情スコアの平均値は、音楽療法群では14.08から13.23ポイントに、標準ケア群では13.49から12.58ポイントに低下した(平均差, 0.06 [95% CI, -0.70~0.81]; P = .88)。しかし、改善の程度に有意な群間差はなかった。探索的な副次アウトカム20のうち、17は有意差を認めなかった。
    <結論と関連性>
     ASDを持つ子供において、強化型標準ケアと比較して即興的音楽療法は、5カ月間にわたるADOSの対人的感情領域に基づく症状重症度において、有意な差を認めなかった。これら知見は、ASDを持つ子供の症状軽減に対する即興的音楽療法の使用を支持しない。
    <試験登録>
    isrctn.org(識別子:ISRCTN78923965)

    コメント:恥ずかしながら、Improvisational Music Therapyという試み自体をよく知りませんでした。世界では多様なアイデアがあるのですね。

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双極性障害の気分スペクトラムにわたるC反応性蛋白の濃度:系統的レビューとメタ解析
    Brisa S Fernandes, et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 1147-1156.
    C-reactive protein concentrations across the mood spectrum in bipolar disorder: a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     炎症過程と神経免疫相互作用が精神疾患の病因に関係するとされてきたが、双極性障害の研究はこれまで結論を見出せていない。我々は、炎症活動の急性期反応蛋白の一つであるC反応性蛋白(C-reactive protein、CRP)の末梢濃度が、気分スペクトラムにわたって双極性障害で上昇しているか否かを調べることを目的とした。
    <方法>
     この系統的レビューとメタ解析において、我々はDSM-IV-TRで定義された双極性障害を持つ成人患者、および健常対照の血清および血漿CRP濃度を測定した研究に関して、MEDLINE、Cochrane Library、Scopus、そしてWeb of Knowledgeを、データベースの開始から2016年8月14日まで探索した。我々は公表された報告書からデータを抽出した。躁病患者、うつ病患者、または正常気分の患者のCRP濃度と健常対照のそれを比較する3つの群間メタ解析(横断研究)と、当該の躁病エピソード、またはうつ病エピソードの治療前後のCRP濃度の変化を比較する2つの群内メタ解析(縦断研究)を施行した。効果量とランダム効果モデルを用いた統合結果を計算するために、ヘッジの調整済g値を用いた。我々はまた、CRP濃度に対してあり得る媒介要因を調べるために、気分状態によるメタ回帰分析を実施した。
    <結果>
     我々は、双極性障害を持つ2,161人の患者と、81,932人の健常対照者からなる27の研究を同定した。健常者と比較して、うつ病相、および正常気分にある双極性障害を持つ人でCRP濃度は中等度に上昇していて(うつ病相:g値 0.67、95%信頼区間 0.23~1.11;p=0.003、正常気分:0.65、0.40~0.90;p<0.0001)、躁病相ではさらに明確に上昇していた(0.87、0.58~1.15;p<0.0001)。躁病とうつ病におけるCRP濃度の上昇の程度は、症状重症度と関連しなかった(躁病、p=0.256;うつ病、p=0.626)。CRP濃度は当該の躁病エピソードが改善した後は中等度減少し(-0.36、-0.66~-0.05;p=0.022)、当該の抑うつエピソードが改善した後は軽度減少した(-0.18、-0.30~-0.07;p=0.002)。
    <解釈>
     CRP濃度は気分状態に関わらず双極性障害において上昇しているが、うつ病や正常気分よりも躁病で高く、これは躁病における炎症機転の亢進を示唆している。

    コメント:臨床病像も躁病にある人は精神的に“炎上”いますが、(脳を含む)体も“炎症”が亢進しているようですね。抗炎症作用のある薬が役に立つかもしれませんね。

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認知的に正常な人における脳アミロイドの増加と認知機能低下の関連
    Donohue MC, et al; Alzheimer’s disease Neuroimaging Initiative. JAMA 2017; 317: 2305-2316.
    Association Between Elevated Brain Amyloid and Subsequent Cognitive Decline Among Cognitively Normal Persons.

    論文要約:
    <重要性>
     認知的に正常な人において、脳アミロイドの増加(脳脊髄液の分析、または陽電子断層撮影における局所分布)は、後のアルツハイマー病に関連する認知機能低下のリスクに関わる可能性がある。
    <目的>
     脳アミロイドが増加している認知的に正常な人において、アルツハイマー病に関連する認知機能低下のリスクを特徴づけ定量する。
    <設計・設定・参加者>
     米国およびカナダの認知的に正常な445人から得た、認知およびバイオマーカーの縦断データの探索的分析が施行された。参加者はアルツハイマー病脳画像診断法の先導的研究(Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative、ADNI)の一部として、2005年8月23日から2016年6月7日まで観察された(中央値、3.1年;四分範囲、2.0~4.2年;最長観察期間、10.3年)。
    <曝露>
     参加者はベースライン時点において、アミロイドβタンパクの陽電子断層撮影法、または脳脊髄液分析を使って、脳アミロイドが正常(243人)、または増加(202人)に分類された。
    <主要アウトカムと測定>
     アウトカムは以下である:Preclinical Alzheimer Cognitive Composite (PACC; 4つのベースラインで標準化されたZスコアの合計で、成績が悪いほど低くなる)、Mini-Mental State Examination (MMSE; 0 [最低]~30 [最高]ポイント)、Clinical Dementia Rating ボックス合計 (CDRボックス合計; 0 [最高]~18 [最低]ポイント)、ウェクスラー記憶検査の論理的記憶の遅延再生(0 [最低]~25 [最高] 物語ごと)。
    <結果>
     参加者445人(アミロイド正常、243人;増加、202人)において、平均(標準偏差)年齢は74(5.9)歳、平均教育は16.4(2.7)年、そして52%が女性であった。ベースライン時点の平均スコアはPACCが0.0(2.60)、MMSEが29.0(1.2)、CDRボックス合計が0.04(0.14)、論理的記憶の遅延再生が13.1(3.3)であった。
     アミロイド正常群と比べてアミロイド増加群は、PACC(平均差、1.51ポイント [95% CI, 0.94-2.10]; P < .001)、MMSE(平均差、0.56ポイント [95%信頼区間、0.32~0.80];P < .001)、CDRボックス合計(平均差、0.23ポイント [95%信頼区間、0.08~0.38];P = .002)の4年時の平均スコアがより悪かった。4年時の論理的記憶の遅延再生スコアの群間差は、統計学的に有意ではなかった(平均差、0.73ポイント 物語ごと [95%信頼区間、-0.02~1.48];P = .056)。
    <結論と関連性>
     中央値3.1年にわたり経過を観察した認知的に正常なコホートの探索的分析により、正常の脳アミロイド水準と比較して、ベースラインの脳アミロイド水準の増加は、臨床的意義は不明確ではあるものの、認知機能低下の可能性が高まることに関連することが示唆された。

    コメント:「これら差異の臨床的重要性を評価し、長期的関連性を測定するさらなる研究が必要」とも述べられています。

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精神病性障害の超高リスクにある若者に対するω-3多価不飽和脂肪酸:The NEURAPRO 無作為化臨床試験
    Patrick D. McGorry, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 19-27.
    Effect of ω-3 Polyunsaturated Fatty Acids in Young People at Ultrahigh Risk for Psychotic Disorders: The NEURAPRO Randomized Clinical Trial.

    論文要約:
    <重要性>
     精神病の超高リスクにある患者の発症を予防してアウトカムを改善する有望な治療に、長鎖のω-3多価不飽和脂肪酸(ω-3 polyunsaturated fatty acids、PUFAs)の食事からの補給がある。
    <目的>
     ω-3 PUFAsと良質な心理社会的介入(cognitive behavioral case management [CBCM])の組み合わせによる治療が、プラセボとCBCMの組み合わせより有効か否かを調べる。
    <設計・設定・参加者>
     二重盲検、プラセボ対照、無作為化臨床試験であるNEURAPROは、2010年の3月1日から2014年9月30日に、オーストラリア、アジア、そしてヨーロッパの10の早期精神病治療の専門施設において実施された。一次解析はIntention-to-treat法を使用した。
    <介入>
     一日1.4gのω-3 PUFAs1、またはプラセボ(パラフィンオイル)、および6か月の試験期間に20セッション以下のCBCM 。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは、6カ月時点の精神病状態への移行である。副次アウトカムは、次の尺度で評価された精神病理と機能の全般的水準であった:Brief Psychiatric Rating Scale (BPRS) (範囲、24-168), Scale for the Assessment of Negative Symptoms (SANS) (範囲、0-125), Montgomery-Asberg Depression Rating Scale (MADRS) (範囲、0-60), Young Mania Rating Scale (YMRS) (範囲、0-44), Social and Occupational Functioning Assessment Scale (SOFAS) (範囲、0-100), Global Functioning: Social and Role scale (範囲、0-10)。SOFASとGlobal Functioning: Social and Role scaleについては得点が高いほど良く、他の測定については得点が低いほど良い。
    <結果>
     精神病性障害の超高リスクにある304人の成人における本研究において、153人(50.3%)がω-3 PUFAsを、151人(49.7%)がプラセボを服用した。全体で139人(45.7%)が男性で、平均(標準偏差)年齢は19.1(4.6)歳であった。カプラン・マイヤー法によって推定された6カ月の移行率は、対照群で5.1%(95%信頼区間、1.3~8.7%)、ω-3 PUFA群で6.7%(95%信頼区間、2.3~10.8%)であった。12カ月時点の移行率は、対照群で11.2%(95%信頼区間、5.5~16.7%)、ω-3 PUFA群で11.5%(95%信頼区間、5.8~16.9%)であった。両群の移行率に有意な差はなかった(ハザード比、1.1;95%信頼区間、0.55~2.23; P = .76、層別化ログランク検定)。
    <結論と関連性>
     明らかに本試験は、元の単独のセンターによる試験の所見を再現しなかった。最もあり得る説明は、「この条件下でω-3 PUFAsは有効性を欠いている」である。しかしながら、期待したよりも低い移行率が主仮説の検定を妨害したのかもしれない。両群における相当な症候学的・機能的改善を考えると、参加者が受けた他の治療(例:CBCMと抗うつ薬)が、たとえω-3 PUFAsが有効だとしても、付加的な利益をもたらすことを示し得ない天井効果(ceiling effect)を生んだ可能性がある。とはいえ主要な結論は以下である:良質でエビデンスに基づいた心理社会的治療が利用可能な条件下では、ω-3 PUFAsは有効ではない。
    <試験登録>
    anzctr.org.au(識別子:12608000475347)

    コメント:健康への効果が各方面で検証中のω-3多価不飽和脂肪酸(EPAやDHAのこと)ですが、本研究における上記の条件下では、精神病予防効果は証明されませんでした。

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単極性うつ病における脳活動の変化:神経画像研究のメタ解析
    Veronika I. Muller, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 47-55.
    Altered Brain Activity in Unipolar Depression Revisited: Meta-analyses of Neuroimaging Studies.

    論文要約:
    <重要性>
     過去20年間に無数の神経画像実験が、単極性うつ病を持つ患者が認知および情動の処理を行っている間の異常脳活動を探求してきた。しかし、それら探求の結果は相当に異なっており、さらに以前のメタ解析も一貫性のない結果を導いた。
    <目的>
     認知および/または情動の処理に関する神経画像実験によって解明されてきた単極性うつにおける異常脳活動に再び取り組むこと。
    <データソース>
     1997年1月1日から2015年10月1日までに公表された神経画像実験がPubMed、Web of Science、Google Scholarの文献検索により同定された。検索には以下の用語の様々な組み合わせを用いた:fMRI (functional magnetic resonance imaging), PET (positron emission tomography), neural, major depression, depression, major depressive disorder, unipolar depression, dysthymia, emotion, emotional, affective, cognitive, task, memory, working memory, inhibition, control, n-back, Stroop。
    <研究の選択>
     解剖学的に標準化された空間座標として単極性うつ病の成人と健常対照者の群間比較の全脳解析結果を報告し、かつ情動または/および認知課題を用いている神経画像実験(fMRIとPET)が選択された。
    <データ抽出と統合>
     単極性うつ病と健常対照の間で、情動または認知処理中の脳活動に統計学的有意差を認めた座標が抽出された。改訂された賦活尤度推定アルゴリズムを利用して、結果が算出された。
    <主要アウトカムと測定>
     メタ解析において、対照と比較して単極性うつ病で異常脳活動を示すことが一貫して見出された脳領域が検定された。解析はすべての情動処理実験、すべての認知処理実験、肯定的情動処理、否定的情動処理、表情刺激を用いた実験、性別判定課題、および記憶処理を通して算出された。すべてのメタ解析は、うつ病/大うつ病性障害における活動の増加または減少の報告とは無関係に実験を通して算出された。利用可能な実験が少なくとも17あるメタ解析については、増加と減少について個別の分析が行われた。
    <結果>
     合計で、1058人の患者と99の個別の神経画像実験から構成される57の研究が含まれ、そのうち34が認知処理を、65が情動処理を検定していた。認知処理実験(P > .29)と情動処理実験(P > .47)の全体分析では、有意な結果を見出せなかった。同様に、肯定的情動処理(すべて P > .15)、否定的情動処理(すべて P > .76)、または記憶処理(すべて P > .48)を調べた分析でも、収束を見いだせなかった。交絡因子(例:治療薬、併存症、年齢)の包含を制限した解析でも結果は不変であった。
    <結論と関連性>
     単極性うつ病における異常脳活動を調べた個々の実験間での結果の不一致と、以前の神経画像メタ解析間での再現性の問題が存在した。個々の実験については、これらの結果の不一致は調整されていない推定法、実験デザインとコントラストの相違、または異質な臨床母集団に関連するかもしれない。メタ解析の点からは、相違は様々な包含・除外基準、または自由度がかなり高い統計学的推定法に帰することができるかもしれない。

    コメント:方法論的な異質性もさることながら、単極性うつ病の精神病理自体の異質性が知識の統合を阻んだようです。

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世界各国におけるDSM-5全般性不安症(GAD)の疫学の横断的比較
    Ayelet Meron Ruscio, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 465-475.
    Cross-sectional Comparison of the Epidemiology of DSM-5 Generalized Anxiety Disorder Across the Globe.

    論文要約:
    <重要性>
     全般性不安症(Generalized Anxiety Disorder、GAD)の理解は他の不安症と比べて乏しく、この障害の重大性に関する議論が続いている。GADに関するデータは、少数の裕福で工業化された国以外は殆どない。DSM-5において現在定義されるようなGADに関する住民ベースのデータは存在しない。
    <目的>
     DSM-5が定義するGADに関する初めての疫学データを提供し、その有病率、経過、関連事項、および影響力の各国間の違いを探索すること。
    <設計・設定・参加者>
     WHO精神健康調査戦略(World Health Organization World Mental Health Survey Initiative)からのデータを使用した。共通の研究プロトコルと評価手段を用いた横断的一般人口調査が26の国で行われた。代表的な世帯サンプルからの合計147,261人の成人が、その地域において対面の面接を受けた。調査は2001年から2012年の間に実施された。データ分析は2015年7月22日から2016年12月12日に行われた。
    <主要アウトカムと測定>
     併存障害、役割機能の問題、および援助希求とともにGADを評価するために、The Composite International Diagnostic Interviewが使われた。
    <結果>
     回答者は18歳から99歳までの147,261人の成人であった。調査の重み付け平均回答率は69.5%であった。調査全体でDSM-5 GADの結合生涯有病率(標準誤差)は3.7%(0.1%)、12カ月有病率は1.8%(0.1%)、30日有病率は0.8%(0)であった。推定有病率は国ごとに大きく異なっており、生涯有病率は高収入国で最も高く(5.0% [0.1%])、中収入国が次に低く(2.8% [0.1%])、低収入国が最も低かった(1.6% [0.1%])。
     GADは典型的には成人期に発症し、その後も続くが、収入がより低い国では発症がより遅く、より長く続く。生涯併存率は高く(81.9% [0.7%])、特に気分障害(63.0% [0.9%])と他の不安症(51.7% [0.9%])が高い。重大な役割機能の問題は生活領域にわたって稀ではなく(50.6% [1.2%])、特に高収入国で多い。受療は罹患している人の約半分と考えられ、特に重大な役割機能の問題、または併存障害を持つ人、および高収入国に住んでいる人に多い。
    <結論と関連性>
     本研究により、DSM-5 GADはDSM-IV GADより多く、役割機能の相当な障害と関連することが分かった。国内においてはGADと社会経済状態は負の関連があるにも関わらず、この障害は特に高収入国で多く重度である。これらの結果は、全世界にわたるGADの公衆衛生上の重大性と、国ごとに異なる有病率、経過、および機能障害に関する追加調査の必要性を強く主張する。

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米国における12カ月アルコール使用・高リスク飲酒・DSM-IVアルコール使用障害の有病率の変化(2001-2002年vs.2012-2013年):アルコールおよび関連障害に関する国民疫学調査の結果
    Bridget F. Grant, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 9, 2017.
    Prevalence of 12-Month Alcohol Use, High-Risk Drinking, and DSM-IV Alcohol Use Disorder in the United States, 2001-2002 to 2012-2013: Results From the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions.

    論文要約:
    <重要性>
     アルコール使用、高リスク飲酒、そしてDSM-IVアルコール使用障害に関する統一的で信頼性が高く妥当な資料にもとづく最新の包括的動向データの欠如は、公衆衛生情報の深刻な欠落を意味する。
    <目的>
     12カ月アルコール使用、12カ月高リスク飲酒、12カ月高リスク飲酒者における12カ月DSM-IVアルコール使用障害の有病率変化(2001~2002年vs.2012~2013年)に関して国民代表データを示すこと。
    <設計・設定・参加者>
     本研究は、次の2つの米国成人国民代表調査において実施された対面式インタビューを元にした:The National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions、データは2001年4月から2002年6月に収集された;The National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions III、 データは2012年4月から2013年6月に収集された。
    <主要アウトカムと測定>
     12カ月アルコール使用、12カ月高リスク飲酒、12カ月DSM-IVアルコール使用障害
    <結果>
     本研究サンプルには、The National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditionsの参加者43,093人と、The National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions IIIの参加者36,309人が含まれた。2001~2002年と2012~2013年の間で、12カ月アルコール使用は11.2%、12カ月高リスク飲酒は29.9%、12カ月DSM-IVアルコール使用障害は49.4%増加していた。12カ月アルコール使用は65.4%(95%信頼区間, 64.3%-66.6%)から72.7%(95%信頼区間, 71.4%-73.9%)に、12カ月高リスク飲酒は9.7%(95%信頼区間, 64.3%-66.6%)から12.6%(95%信頼区間, 12.0%-13.2%)に、12カ月DSM-IVアルコール使用障害は8.5%(95%信頼区間, 8.0%-8.9%)から12.7%(95%信頼区間, 12.1%-13.3%)に増加していた。
     ほとんど例外なく、2001~2002年と2012~2013年の間の12カ月アルコール使用、12カ月高リスク飲酒、12カ月DSM-IVアルコール使用障害の増加はまた、社会人口学的下位集団にわたって統計学的に有意であった。これらアウトカムのすべてにおける増加は、女性、高齢者、人種的/民族的マイノリティー、および低い教育水準と家計所得の人で最も高かった。12カ月アルコール使用者における12カ月DSM-IVアルコール使用障害の有病率、および12カ月高リスク飲酒者における12カ月DSM-IVアルコール使用障害の有病率の増加も全サンプル、および大部分の社会人口学的下位集団みられ、それぞれ12.9%(95%信頼区間, 12.3%-17.5%)から17.5%(95%信頼区間, 16.7%-18.3%)、46.5%(95%信頼区間, 44.3%-48.7%)から54.4%(95%信頼区間, 52.7%-56.4%)に増加していた。
    <結論と関連性>
     米国民とその下位集団、特に女性、高齢者、人種的・民族的マイノリティー、そして社会経済的に恵まれない人々におけるアルコール使用、高リスク飲酒、およびDSM-IVアルコール使用障害の増加は、公衆衛生上の危機である。総合すれば、これらの結果はアルコール使用が本質的な役割を持つ多くの慢性併存症の増加の前兆といえる。


精神疾患に共通する神経生物学的基盤の同定
    Madeleine Goodkind, et al. JAMA Psychiatry 2015; 72: 305-315.
    Identification of a Common Neurobiological Substrate for Mental Illness.

    論文要約:
    <重要性>
     精神科診断は現在のところ、一揃いの特定の症状に基づいて区別される。しかし、遺伝的・臨床的分析は幅広い種類の診断にわたる類似性を見出しており、これは広く精神疾患にわたって共通の神経生物学的基盤が存在する可能性を示唆する。
    <目的>
     複数の精神科診断にわたる神経構造画像研究のメタ解析を実施した後に、メタ解析の構造所見を解釈する手助けとするために、3つの大規模健常者データを並行して分析する。
    <データソース>
     メタ解析のために、精神科患者と健常対照者を比較している2012年7月までのボクセル単位の形態計測(voxel-based morphometry、VBM)研究が、PubMedで検索された。3つの並行する健常参加者データセットとは、安静状態の機能的MRI(resting-state functional magnetic resonance imaging、rsfMRI)、数千の神経画像実験の賦活焦点データベース、および構造画像と認知課題の成績データのデータセットであった。
    <データ抽出と統合>
     研究が全脳にわたる標準座標系においてⅠ軸診断を持つ患者と対照者の間でVBMの差を報告していて、主に小児期ではなく、その診断について少なくとも10の研究がある場合、メタ解析に含めた。賦活尤度推定法を利用して、ピークボクセル座標に関するメタ解析が実施された。
    <主要アウトカムと測定>
     我々はⅠ軸診断に共通して、あるいは異なって灰白質体積が増加または減少している部位検定した。他の健常参加者データセットに関する追加分析では、メタ解析で明らかとなった領域に関連する結合性、および灰白質体積と認知の関連性が検定された。
    <結果>
     6つの多様な診断グループ(統合失調症、双極性障害、うつ病、強迫症/強迫性障害、および不安症/不安障害)にわたる15,892人からなる193研究のVBMメタ解析に基づき、3つの領域、すなわち背側前部帯状回、右島、左島における診断横断的な灰白質の減少が判明した。対照的に、診断特異的効果はほとんどなく、唯一、統合失調症とうつ病を他の診断から区別した。3つの独立した健常参加者データセットの並行追加解析において、我々は共通して灰白質が減少している領域は、課題中に強固な相互結合性ネットワークを形成していて、このネットワークにおける灰白質体積の減少は、低い遂行機能と関連することを見出した。
    <結論と関連性>
     我々は、精神科診断横断的に観察される遂行機能障害に関連する前部島/背側前部帯状回に基盤を持つネットワークの完全性という点で、精神科診断全体にわたる一致をみた。精神病理に共通する神経基盤は、現時点では精神科分類学の明確な要素ではなく、おそらく多様な成因によると思われるが、今回の一致はその重要性を強調する体系的モデルを提供する。

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うつ病/大うつ病性障害における大規模ネットワークの機能不全:安静状態の機能的結合性のメタ解析
    Roselinde H. Kaiser, et al. JAMA Psychiatry 2015; 72: 603-611.
    Large-Scale Network Dysfunction in Major Depressive Disorder: A Meta-analysis of Resting-State Functional Connectivity.

    論文要約:
    <重要性>
     うつ病/大うつ病性障害(Major depressive disorder、MDD)は、異常な安静状態の機能的結合性(resting-state functional connectivity、rsFC)に反映される大規模な脳ネットワークの不安定な情報伝達に関連付けられてきた。しかし、多様な方法と研究間で異なる結果を考えると、MDDにおけるネットワークの機能不全の一貫したパターンは不明確である。
    <目的>
     rsFCのメタ解析を通して、MDDのネットワーク不全を探求すること。
    <データソース>
     MDD患者と健常対照を比較したシードに基づくボクセル単位の(Seed-based voxel-wise)rsFC研究(2014年6月30日以前に公表されたもの)が電子的データベース(PubMed、Web of Science、EMBASE)から収集され、著者らが追加のデータを参照した。
    <研究選択>
     25論文(MDD 556人と健常対照518人)から、27のシードに基づくボクセル単位のrsFCデータセットがメタ解析に組み込まれた。
    <データ抽出と統合>
     関心シード領域の座標と群間効果が抽出された。シードは事前に想定された機能的ネットワーク内の位置に従って、シード・ネットワークに分類された。群間効果のマルチレベル・カーネル密度分析により、MDDと、各々のシード・ネットワークとの高結合性または低結合性が関連している脳システムが同定された。
    <結果>
     MDDは、注意の認知的コントロールと情動制御に関連する領域群である前頭-頭頂ネットワーク内における低結合性、および前頭-頭頂システムと、外的環境への注意に関連する背側注意ネットワーク頭頂領域との高結合性によって特徴づけられた。MDDはまた、内部志向的で自己参照的な思考を支えると信じられているデフォルトネットワーク内の高結合性、および前頭-頭頂制御システムとデフォルトネットワーク領域の間の高結合性と関連していた。最後に、MDD群は情動または顕著性の処理に関連する神経システムと、これら機能のトップダウン制御を媒介するかもしれない正中皮質領域の間の低結合性を示した。
    <結論と関連性>
     前頭-頭頂制御システム内の結合性の減少と、内外への注意に関わる制御システムとネットワークの間の結合性の不均衡は、外的世界への関与に費やされる内的思考に対する抑うつバイアスを反映している可能性がある。その一方で、認知制御に関わる神経システムと、顕著性や情動の処理を支える神経システムの間の異常な結合性は、気分制御の欠陥に関連するかもしれない。これらの研究結果は、ネットワーク不全がうつ病の中核的な認知・感情障害の背景にあるとする神経認知モデルに関して、経験的基礎を提供する。

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うつ病・抑うつ症状に対する抗炎症治療の効果と有害作用:系統的レビューと無作為化臨床試験のメタ解析
    Ole Kohler, et al. JAMA Psychiatry 2014; 71: 1381-1391.
    Effect of Anti-inflammatory Treatment on Depression, Depressive Symptoms, and Adverse Effects: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials.

    論文要約:
    <重要性>
     いくつかの研究が抗炎症治療の抗うつ効果を報告してきたが、その結果は一貫性に乏しく、弊害をもたらす有害作用から、抗炎症薬の使用は禁忌となるかもしれない。
    <目的>
     抗炎症的介入の抗うつ効果と、あり得る有害作用を系統的にレビューすること。
    <データソース>
     次に述べるデータベース、およびその関連レビュー文献を検索することで、2013年12月31日より前に公表された試験が同定された:Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、EMBASE、PsychINFO、Clinicaltrials.gov。
    <研究選択>
     うつ病の基準を満たす人を含む抑うつ症状を持つ成人における、薬理学的抗炎症治療の有効性と有害作用を評価した、無作為化プラセボ対照試験。
    <データ抽出と統合>
     データは2人の独立した査読者によって抽出された。プールされた標準化平均値差(Pooled standard mean difference、SMD、訳注:代表的な効果量の一つで、実験群と統制群の2群をプールした標準偏差で、実験群と統制群の平均値の差を割ったもの)とオッズ比(odds ratios、ORs)が計算された。
    <主要アウトカムと測定>
     治療後の抑うつスコアと有害作用。
    <結果>
     14の試験(6262人の参加者)について報告している10の文献が包含された。すなわち、非ステイロイド系の抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs、NSAIDs)を評価した10試験(参加者4258人)と、サイトカイン阻害剤(cytokine inhibitors)を調べた4試験(参加者2004人)である。
     プールされた効果推定は、プラセボと比較して抗炎症治療が、抑うつ症状を減少させることを示した(SMD, -0.34; 95%信頼区間, -0.57~-0.11; I2統計量 = 90%)。この効果は、うつ病を持つ患者(SMD, -0.54; 95%信頼区間, -1.08~-0.01; I2統計量 = 68%)、および抑うつ症状を持つ患者(SMD, -0.27; 95%信頼区間, -0.53~-0.01; I2統計量 = 68%)を含む研究において観察された(訳注:I2統計量は異質性の指標で、異質性には臨床的異質性や統計学的異質性がある。0~100%の値をとり、大雑把な解釈が許されれば、40%以下なら異質性は小さく、60%以上なら大きい)。研究の異質性は、臨床的うつ病と抑うつ症状のどちらを含んでいたか、NSAIDsとサイトカイン阻害剤のどちらを使用したか、の相違によって説明されなかった。
     サブ解析は、寛解(OR, 7.89; 95%信頼区間, 2.94~21.17; I2統計量 = 0%)と反応(OR, 6.59; 95%信頼区間, 2.24~19.42; I2統計量 = 0%)に関して、選択的サイクロオキシゲナーゼ2[COX-2]阻害剤であるセレコキシブ(SMD, -0.29; 95%信頼区間, -0.49~-0.08; I2統計量 = 73%)の抗うつ特性を強く主張している。 有害作用を報告している6研究において、プラセボと比較して抗炎症治療の6週間後の胃腸系および心血管系イベント数、あるいは12週間後の感染数の増加の証拠はなかった。すべての試験は、内的妥当性に潜在的な問題を有していることによるバイアスの高いリスクと関連していた。
    <結論と関連性>
     我々の解析で、抗炎症治療、特にセレコキシブが、有害作用のリスクを増加させることなしに抑うつ症状を軽減することが示されたが、バイアスの高いリスク、および大きな異質性は、平均値推定を不確かなものにした。
     この研究は、うつ病の抗炎症治療の使用について、概念実証(Proof of concept[POC]:前臨床試験から予測したコンセプトをヒトで確認すること)を支持する。このような治療から利益を得ることができる下位集団の同定が、必要かもしれない。

    コメント:日本でCOX-2選択的阻害剤として臨床使用できるものが、セレコキシブ(Celecoxib, 日本における製品名はセレコックス)です。100mgと200mgの錠剤があり、胃腸系の副作用が少ないということで、疼痛治療のためにしばしば利用されます。疼痛にはある種の抗うつ薬が有効なことは周知の事実ですが、反対に抑うつにある種の鎮痛薬が有効という双方向的な関係性は驚きですね。
     ごく最近、「炎症で上昇するCRPの濃度が、気分状態に関わらず双極性障害において上昇していて、特にうつ病や正常気分よりも躁病で高い」というメタ解析論文が公表されました(Lancet Psychiatry 2016; 3: 1147-1156)。炎症と気分障害の関係は、ますます注目ですね。

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高齢者における人生の目的と身体機能の客観的測定の関連
    Eric S. Kim, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 16, 2017.
    Association Between Purpose in Life and Objective Measures of Physical Function in Older Adults.

    論文要約:
    <重要性>
     より高い人生の目的は、弱い握力と遅い歩行速度をきたす確率を低下させるとの仮説がある。なぜなら、目的は身体機能の低下に対して潜在的に保護的である広範な肯定的健康行動と生物学的過程に関連するからである。しかし、人生の目的と客観的身体機能の関連は調べられていない。
    <目的>
     十分に機能している高齢者において、より高い人生の目的が、加齢性の弱い握力と遅い歩行速度を発生させるより低いリスクと関連するか否かを評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     縦断的コホート研究のためのデータは、2006年と、2010年にもう一度、Health and Retirement Study(50歳以上の米国成人の国民代表研究)から収集された。データ解析は、2016年11月23日から2017年6月2日に実施された。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは、4年間の追跡期間における、弱い握力(評価:はい/いいえ)、または遅い歩行速度(評価:はい/いいえ)を発展させるリスクである。握力はSmedleyばね式握力計を用いて、歩行速度は回答者に通常の歩行ペースで2.5メートル歩かせることで評価された。
    <結果>
     この研究において、4486人の成人(2665人が女性、1821人が男性;平均[標準偏差]年齢、63.0[8.2]歳)のベースライン握力スコアと、1461人の成人(801人が女性、660人が男性;平均[標準偏差]年齢、70.8[6.5]歳)のベースライン歩行スコアは、ともに十分な機能を示していた。社会人工的要因を調整後、人生の目的の1標準偏差の増加はそれぞれ、弱い握力の13%のリスク減少(95%信頼区間、1%~23%)と、遅い歩行速度の14%のリスク減少(95%信頼区間、8%~20%)に関連していた。
     歩行速度との関連は、すべての共変量モデルにおいて維持されたが(全調整モデル:リスク比0.89;95%信頼区間、0.83~0.95)、握力との関連は、関連するベースラインの健康要因、抑うつ症状、そして健康行動を追加して調整した後は、統計学的有意性の保守的水準に達しなかった(全調整モデル:リスク比0.91;95%信頼区間、0.80~1.04)。
    <結論と関連性>
     人生の目的は、弱い握力と遅い歩行速度を発生させる低いリスクと前方視的に関連していた。しかし、結果は握力より歩行速度でより頑強であった。これらの結果から、変更可能な要因である人生の目的の意味は、高齢者における身体機能の維持に重要な役割を果たすかもしれない。

    コメント:このJAMA Psychiatryは、精神医学の総合専門誌ですが、人生の目的という心理的要素と、客観的な身体機能という組み合わせが、編集部の関心を呼んだのでしょう。“肯定的に生きる”ことは、心身両面にとって健康的なのですね。

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注意欠如・多動症(ADHD)と女性特有の課題:文献レビューと臨床的意義
    Nancy L. Nussbaum. Journal of Attention Disorders 2012; 16: 87-100.
    ADHD and Female Specific Concerns: A Review of the Literature and Clinical Implications.

    論文要約:かつて注意欠如・多動症(ADHD)は、圧倒的に男性に多い障害と考えられていた。これは小児期においては真実かもしれないが、現在までの研究によれば、ADHDを持つ女性の数は男性とほとんど同じであるかもしれない(Faraone et al, 2000)。ADHDの症状プロフィール、神経病理、そして臨床経過において、僅かであるが重要な性差が存在することを明確に示す研究が蓄積されつつある。ADHDを持つ男性と比べて、ADHDを持つ女性は多動・衝動症状よりも不注意症状の困難をきたしやすく、しばしば男性よりも明らかに遅くADHDの診断を受ける(Gaub & Carlson, 1997; Gershon, 2002a, 2002b)。新たに生まれている科学的証拠は、ADHDの神経病理に性差があることを示唆しており、女性におけるADHDを理解する上で重要な役割を果たしているホルモン因子があるかもしれない。研究により、重要な点においてADHDを持つ女性と男性は違うことが示されているものの、治療反応性の違いを評価している研究はほとんどない。ADHDの症状の出現と経過を考えると、ADHDを持つ女子と女性に対するケアの質の改善をうまく同定して促進するためには、これらの相違を認識した上での臨床実践と研究が必須である。

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注意欠如・多動症(ADHD)は次元的な潜在構造を持つか:分類分析
    David K. Marcus and Tammy D. Barry. Abnorm Psychol 2011; 120: 427-442.
    Does Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Have a Dimensional Latent Structure? A Taxometric Analysis.

    論文要約:注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造の理解は、この障害の因果モデルを構築するために重要である。ある研究者はADHDが次元的(dimensional)であると推定し、他の研究者は分類的(taxonic)であると仮定しているが、直接的にADHDの潜在構造を調べた研究は比較的稀である。著者らは、NICHD Study of Early Child Care and Youth Development(実質のケース数:667~1078)のデータを利用して、分類分析(taxometric analysis)を実施した。結果、不注意、多動性/衝動性、そしてADHDについて、多様な種々の分析と指標群にわたる次元的潜在構造が明らかとなった。さらに、関連する特徴との相関分析は、二分モデルよりも次元モデルの方がこれら基準測定と強い妥当性係数を持つことを示した。これらの結果は、ADHDの遺伝的基礎に関する最近の研究や、ADHDの現代モデルとも一致する。

    コメント:taxometric analysisは、日本語でtaxometric分析(または分類分析)と呼ばれるもので、Paul Meehl博士によって提唱された方法論とのことです(Niels Waller & Paul Meehl. Multivariate Taxometric Procedures: Distinguishing Types from Continua. SAGE Publications, 1998)。この論文の場合は、不注意とか多動性/衝動性とか、あるいはADHDという疾患とされている精神病理現象が、「連続的なのか非連続的なのか」を知るために用いられました。結果は、上述した通りでした。

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成人サンプルにおける注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造
    David K. Marcus, et al. J Psychiatr Res 2012; 46: 782-789.
    The Latent Structure of Attention Deficit/Hyperactivity Disorder in an Adult Sample.

    論文要約:子供および青年の注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造を調べた大多数の研究は、ADHDは次元的潜在構造を持つと結論している。言い換えれば、ADHDの症候学は連続体上に存在しており、ADHDを持つ若者と、臨床診断に至らない不注意や多動性/衝動性を分ける自然の境界、または質的な区分(すなわち、タクソン[taxon])は存在しない。成人のADHDは若者のADHDより少ないようであるが(より重症の成人ADHDタクソンを示唆している可能性がある)、研究者は成人のADHDの潜在構造を調べていない。この研究では、ADHD症状の自己記入式尺度に回答した成人サンプル600人を使用した。結果、分類分析は不注意、多動性/衝動性、ADHDについて、次元的潜在構造を明らかにした。これは、子供と青年のADHDを調べた以前の分類分析研究、およびADHDの多遺伝子・多因子的モデルに矛盾しない。

    コメント:taxometric analysisは、日本語でtaxometric分析(または分類分析)と呼ばれるもので、Paul Meehl博士(1998年)によって提唱された方法論です。本研究では、不注意とか多動性/衝動性とか、あるいはADHDという疾患とされている精神病理現象が、「連続的なのか非連続的なのか」を知るために用いられました。前年にこの研究グループは、子供と青年のADHDは次元的潜在構造を持つという結論を得ていましたが(David K. Marcus and Tammy D. Barry. Abnorm Psychol 2011; 120: 427-442)、同様に成人のADHDも次元的潜在構造を持ちました。

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注意欠如・多動症(ADHD)を持つ青年外来患者におけるパーソナリティ障害とⅠ軸併存症
    Hans Ole Korsgaard, et al. BMC Psychiatry 2016; 16: 175.
    Personality disorders and Axis I comorbidity in adolescent outpatients with ADHD.

    論文要約:
    <背景>
     注意欠如・多動症(Attention deficit hyperactivity disorder、ADHD)は、大きな社会的損失をもたらす生涯にわたる状態で、広範な併存症を有する。ADHDは女子よりも男子に2から5倍多いと推定されてきた。いくつかの研究は、ADHDとあるパーソナリティ障害を結びつける発達軌跡(developmental trajectory)を示唆している。 本研究では、青年外来患者サンプルにおけるADHDの有病率、よくあるⅠ軸障害、それらの性差を調べた。また、ADHDとパーソナリティ障害の関連、およびその関連がⅠ軸障害、年齢、性別による調整の影響をどのように受けるかを調査した。
    <方法>
     153人の青年からなるサンプルの年齢は14歳から17歳で、所定の受け持ち区域を持つ非専門的精神保健外来クリニックを受診した患者である。ADHD、素行症、および他のⅠ軸障害は、Mini International Neuropsychiatric Interview (MINI)を用いて評価された。パーソナリティ障害は、DSM-IVパーソナリティ障害のための構造化面接(SIDP-IV)を用いて評価された。
    <結果>
     青年の13.7%がADHDの診断に該当したが、性差はなかった。21.6%が少なくとも1つのパーソナリティ障害を持ち、17.6%が素行症を持ち、4.6%がADHDとパーソナリティ障害の両方の診断を受けた。ADHD診断を持つ青年では、パーソナリティ障害の症状数が有意に多かった(p = 0.001)。この関連は年齢、性別、および他のⅠ軸障害で調整しても有意に弱まることはなかった(p = 0.026)。反社会性(χ2 = 21.18, p = 0.002)と境界性(χ2 = 6.15, p = 0.042)のパーソナリティ障害は、ADHDを持つ男子よりも女子に有意に多かった。
    <結論>
     一般精神保健外来クリニックを受診した青年のサンプルにおけるADHDの有病率に、有意な性差を認めなかった。ADHDを持つ青年期の女子は、男子よりもパーソナリティ障害を多く持ち、反社会性と境界性のパーソナリティ障害に有意差を認めた。 本研究により、一般外来集団における女子のADHDは、かつて推定されていたよりも多い可能性が示唆された。ADHD症状を呈している青年期の女子においては、反社会性と境界性のパーソナリティ病理を評価する重要性を特に強調したい。

    コメント:ADHDを持つ男子よりも女子に多いパーソナリティ障害として、反社会性(p = 0.002)の方が境界性(p = 0.042)より有意確率が高い傾向があるのは、イメージと違って少し驚きでした。

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境界性パーソナリティ障害(BPD)における状態依存的クロス脳情報流
    Edda Bilek, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 2, 2017.
    State-Dependent Cross-Brain Information Flow in Borderline Personality Disorder.

    論文要約:
    <重要性>
     境界性パーソナリティ障害は(borderline personality disorder、BPD)は最もよくある、厄介で犠牲の大きい精神疾患の一つであり、反復する対人摩擦と不安定な関係が特徴であるが、その社会的相互性の欠陥の神経生物学的機構はよく分かっていない。
    <目的>
     BPDを持つ人々の対人交流困難を調べるために、2人の人間の間の社会的交互作用研究の最近の進歩を応用すること。
    <設計・設定・参加者>
     BPDのクロス脳情報流が、2012年3月25日から2015年12月4日の間、大学に設置されている2つの連結された機能的MRIスキャナー研究に参加したペアにおいて調べられた。参加者は共同注意タスクに取り組んだ。各ペアは健常対照者(HC)、およびDSM-IVのBPD基準を現在満たしている患者(cBPD、23人)、または2年かそれ以上寛解している患者(rBPD、17人)、または第二のHC(20人)からなり、各群は年齢と教育水準に関してつり合いがとられた。
    <主要アウトカムと測定>
     側頭-頭頂接合部(temporoparietal junction)ネットワーク(かつて健康な状態下で神経カップリング機能を担うことが示された)間の同期流(synchronized flow)を示した先行研究によりクロス脳・神経カップリングが計算された。この測定は独力で努力している対照ペアと比較して、真に相互作用している参加者のペア間のコンポーネントの時系列を対比させる独立成分分析(independent component analysis、ICA)から派生する。
    <結果>
     23人のcBPD女性(平均[標準偏差]年齢、26.8[5.7]歳)、17人のrBPD女性(平均[標準偏差]年齢、28.5[4.3]歳)、80人のHC群(平均[標準偏差]年齢、24.0[3.4]歳)を含む、2個体1組として調べられたサンプルにおいて、神経カップリングは障害状態と関連した(η2 = 0.17; P = .007)。一方、HCとHCのペアでは同期した神経反応がみられ、cBPDとHCのペアでは、ちょうど順列組合せに基づくデータ水準直上の有意に低い神経カップリングがみられた(η2 = 0.16; P = .009)。rBPDとHCのペアにおける神経カップリングと、HCとHCのペアにおける神経カップリングに違いはなかった。患者の神経カップリングは、小児期の逆境と有意に関連していた(T = 2.3; P = .03)。
    <結論と関連性>
     本研究により、BPDの中核的な診断・臨床特徴との神経相関が分かった。結果、ハイパースキャニングは、臨床社会神経科学(clinical social neuroscience)のための状態関連性バイオマーカーを提供するかもしれない。加えて、少なくともBPDの神経欠損は、パーソナリティ障害についての現在の仮定よりも可逆的である可能性がある。

    コメント:BPDの臨床的予後に関してより楽観的な見解を与える最後の結論、「少なくともBPDの神経欠損は、パーソナリティ障害についての現在の仮定よりも可逆的である可能性がある」は、本当にそうあってほしいですね。

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治療抵抗性統合失調症におけるクロザピンに関連する死亡と自傷
    Theresa Wimberley, et al. Am J Psychiatry, published online: July 28, 2017.
    Mortality and Self-Harm in Association With Clozapine in Treatment-Resistant Schizophrenia

    論文要約:
    <目的>
     この研究では、治療抵抗性統合失調症を持つ人におけるクロザピン治療に関連するあらゆる原因による死亡と自傷を評価した。
    <方法>
     1996年1月1日以降の一般人口に基づく治療抵抗性統合失調症を持つ2,370人のコホートが、死亡、自傷の初回エピソード、転出、または2013年6月1日まで観察された。臨床および社会人口学的共変量について調整された、経時的に変化する治療のコックス回帰モデルにおいて、あらゆる原因による死亡、および自傷の初回エピソードまでの時間が分析された。
    <結果>
     あらゆる原因による死亡率は、クロザピンを使用された患者より、クロザピンを使用されなかった患者において高かった(ハザード比: 1.88, 95%信頼区間: 1.16-3.05)。これは主に抗精神病薬治療がなされなかった期間によってもたらされたものであり(ハザード比: 2.50, 95%信頼区間: 1.50-4.17)、他の抗精神病薬を用いた治療期間における死亡率はより高かったが有意ではなかった(ハザード比: 1.45, 95%信頼区間: 0.86-2.45)。死亡増はクロザピン中断後の1年間に観察された(ハザード比: 2.65, 95%信頼区間: 1.47-4.78)。自傷率はクロザピンよりも非クロザピン抗精神病薬で高かった(ハザード比: 1.36, 95% 信頼区間: 1.04-1.78)。
    <結論>
     結果は、クロザピンで治療された治療抵抗性統合失調症を持つ人と比較して、クロザピンで治療されなかった人の死亡率は、およそ2倍高いことを明らかにした。さらに、結果はクロザピンに比べて他の抗精神病薬の自傷に関する有害な効果を示唆している。クロザピン中断後に観察された死亡増が、アドヒアランス不良や他の観察されていない要因によってどのくらい影響されるのか、最近のクロザピンから生じる有害作用、あるいはクロザピンの中断によって引き起こされる身体的・精神的健康の悪化によってどのくらい媒介されるのか、調査すべきこととして残っている。

    コメント:治療抵抗性統合失調症治療薬であるクロザピン(clozapine)は、商品名はクロザリル錠(25㎎錠と100㎎錠、ノバルティス社)です。本論文の結論のように、治療抵抗性の統合失調症に対して、他の抗精神病薬よりも高い有効性を発揮します。その一方で、骨髄機能を抑制して、血液中の白血球の数が極端に低下する重篤な副作用が出現することがあるので、日本では非常に厳格に管理された医療体制が確保された条件下で使用することができます。

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栄養ドリンクの消費とその後の若年成人期における薬物使用
    Amelia M. Arria, et al. Drug and Alcohol Dependence, published online: August 7, 2017.
    Trajectories of energy drink consumption and subsequent drug use during young adulthood.

    論文要約:
    <背景>
     カフェインを多く含む栄養ドリンクは青年と若年成人に人気があるが、縦断的な消費パターン、特に他の物質使用との関係についてはよく知られていない。
    <方法>
     栄養ドリンクと他の物質使用が、大学1年生(18歳)として最初に募集されたサンプル(1099人)において毎年評価された。人口統計変数、新規追求性、他のカフェイン消費、および21歳時の物質使用を一定に保ちつつ、推移の群は21歳から24歳の間の過去1年あたりの使用確率に基づき生成され、25歳時の物質使用のあり得る差異を比較した。
    <結果>
     21歳から25歳にかけて、栄養ドリンク消費の12カ月有病率、および消費者の使用頻度が減少した(重み付け有病率、62.5%→49.1%;使用頻度、35.2日/年→26.3日/年)。しかしながら、継続的消費の推移を示している人(51.4%)は、未使用の人(20.6%)、中間的な人(17.4%)、または止めた人(10.6%)を数で勝っていた。
     25歳時のコカイン使用、処方刺激薬の非医療的使用、およびアルコール使用障害のリスクは、どの推移の群に帰属するかと有意に関連していた。継続群と中間群はこれらアウトカムの最も高いリスクを示し、先立つ物質使用と他のリスク要因さえ説明できた。大麻やタバコは群への帰属と関連しなかった。
    <結論>
     このサンプルにおける栄養ドリンク消費の典型的パターンは、若年成人期を通して継続する使用であった。このような人は、有害な物質使用のアウトカムのリスクが高いようで、本結果は、コカイン使用と処方刺激薬の非医療的使用、そしてアルコール使用障害との特異性関係を示唆する。栄養ドリンクと物質使用の関係の背景にある機序を理解するために、さらなる研究が必要である。

    コメント:栄養ドリンクは英語でenergy drink、アメリカでも人気のようですね。日本でおなじみの商品もあるのでしょうか。成分を見ると大抵はカフェインが入っています。

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現行の向精神薬の命名法についてのレビュー、および神経科学に基づく命名法
(Neuroscience-based Nomenclature)の紹介

    Zohar J, et al. Eur Neuropsychopharmacol 2015; 25: 2318-25.
    A review of the current nomenclature for psychotropic agents and an introduction to the Neuroscience-based Nomenclature.

    論文要約:神経科学に基づく命名法(Neuroscience-based Nomenclature、NbN)は、その薬理学的プロフィールによって向精神薬を分類する新規のシステムである。NbNは現行の適応疾患に基づいた命名法を置き換え、より良い薬理学的意思決定のための最新で有益な枠組みを提供すべく開発された。NbNは合理的で透明性の高い処方を支援することを目的に、最新の関連情報・特定の科学的情報・規制および臨床に関する情報を提供する。この薬理学に先導された命名法は、薬理学的な領域および作用機序を強調するが、特定の向精神薬を選択する合理的理由を明確にすることで、薬剤アドヒアランスをも向上させるかもしれない。

    コメント:ここで提唱されている向精神薬の新しい命名法NbNについては、DEPRESSION JOURNAL 2017.8 Vol.5 No.2誌上に、日本語で解説されています。NbNでは次の4次元(dimension)を用いて向精神薬を分類・命名します:1)クラス(現在の知識と理解を反映させる)、2)適応疾患(主要な規制当局による)、3)有効性と副作用(臨床試験データに基づく)、4)薬理学(神経画像、動物実験、基礎研究の知見を含む)。NbNのWebサイトには簡便なアプリもあるそうです(http://nbnomenclature.org/)。

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抑うつエピソード中の脳における輸送タンパク密度(神経炎症マーカー)の役割
    Elaine Setiawan, et al. JAMA Psychiatry 2015; 72: 268-275.
    Role of Translocator Protein Density, a Marker of Neuroinflammation, in the Brain During Major Depressive Episodes.

    論文要約:
    <重要性>
     複数の主要な研究成果が、うつ病/大うつ病性障害の神経炎症仮説を支持している。第1に、ヒトおよび動物において、免疫システムの活性化はうつ病/大うつ病性障害で現れる病的行動を引き起こす。第2に、炎症の末梢性マーカーがうつ病/大うつ病性障害でしばしば報告されている。第3に、神経炎症性疾患は抑うつエピソードと高率に関連する。しかし、神経炎症仮説の根本的な制約は、抑うつエピソード中に脳の炎症が起きている証拠の乏しさである。その分布容積(distribution volume、VT)によって測定される輸送タンパク(translocator protein、TSPO)密度が、神経炎症の一つの重要な特徴である活性化ミクログリアで増加している。
    <目的>
     うつ病/大うつ病性障害に続発して抑うつエピソードにある患者の前頭前野皮質、前部帯状皮質、島において、輸送タンパクの分布容積(TSPO VT)が上昇しているか否かを確定する。
    <設計・設定・参加者>
     2010年3月1日から2014年2月1日までに行われた、3次医療を担う精神科病院における患者対照研究である。うつ病/大うつ病性障害に続発して抑うつエピソードにある20名の患者と、20名の健常対照者が、N-(2-(2-fluoroethoxy)benzyl)-N-(4-phenoxypyridin-3-yl)acetamideのPETスキャンを受けた。抑うつエピソードを持つ患者は、少なくとも6週間は服薬しなかった。その他の点において、すべての参加者は健康で喫煙しなかった。
    <主要アウトカムと測定>
     前頭前野皮質、前部帯状皮質、および島におけるTSPO VTの値。
    <結果>
     抑うつエピソードにおいて、測定したすべての脳領域においてTSPO VTは有意に上昇していた(多変量分散分析、F15,23 = 4.5 [P = .001])。TSPO VT上昇の大きさは、前頭前野皮質で26%(平均「標準偏差」TSPO VT、抑うつエピソード患者:12.5[3.6]、対照:10.0[2.4])、前部帯状皮質で32%(平均「標準偏差」TSPO VT、抑うつエピソード患者:12.3[3.5]、対照:9.3[2.2])、および島で33%(平均「標準偏差」TSPO VT、抑うつエピソード患者:12.9[3.7]、対照:9.7[2.3])であった。抑うつエピソードにおいて、前部帯状皮質のTSPO VTは、抑うつの症状の重症度と正相関した(r = 0.63 [P = .005])。
    <結論と関連性>
     この結果は、現在までの最も説得力のあるうつ病/大うつ病性障害脳における炎症、より具体的に述べればミクログリアの活性化の証拠を提供する。この結果は、ミクログリアの活性化を抑制する治療法がうつ病/大うつ病性障害に期待できることを示唆するがゆえに、治療の改善のために重要である。前部帯状皮質のTSPO VTと抑うつエピソードの重症度の正相関は、特定の領域における神経炎症が、抑うつエピソードの症状と重なる病的行動の一因になるかもしれないという概念に一致する。

    コメント:このグループは、本研究のあとに強迫症/強迫性障害(OCD)の神経回路における炎症も同じPETを用いて証明しています(Sophia Attwells, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 833-840)。神経炎症は、臨床診断に横断的に精神・神経疾患に関与している可能性がありますが、なぜ精神症候群の違いが生まれるのか、興味があるところです。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)における前脳部非対称:動機付け障害仮説の拡張
    Keune PM, et al. Clin Neurophysiol 2015; 126: 711-20.
    Frontal brain asymmetry in adult attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD): extending the motivational dysfunction hypothesis.

    論文要約:
    <目的>
     注意欠如・多動症(Attention-deficit hyperactivity disorder、ADHD)は、過剰な行動的接近傾向を特徴とする動機づけの機能障害が関係する。安静状態の脳波のアルファ帯域(8-13 Hz)における前脳部非対称は、全般的な動機付け傾向の神経基盤を表し、亢進した接近動機付けを示す異常な非対称が小児と成人のADHD患者で観察される。ADHD症状、抑うつ、およびアルファ非対称の間の関係、その時間的特徴と想定される性別特異性は、現在まで調べられていない。
    <方法>
     成人ADHD患者52人が、2週間あけて2回の安静時脳波記録に参加した。非対称測定は特性特異性を増すために2回の記録を併合させた。非対称、ADHD症状、および抑うつの間の想定される領域特異的関連、その性別特異性と再検査信頼性が調べられた。
    <結果>
     ADHD症状は接近関連性の非対称(相対的右前頭アルファパワーがより強い)と関連していた。接近関連性の非対称は女性で目立ち、また抑うつと関連した。後者の関連はADHD症状で媒介されていた。再検査信頼性は十分であった。
    <結論>
     高い信頼性を持って評価可能なアルファ非対称とADHD症状の関連は、動機付け障害仮説を支持する。非対称と抑うつの間の非定型的な関連を媒介するADHD症状は、ADHDに続発する抑うつの一因となるかもしれない。性別特異的所見については再現を要する。
    コメント:このテーマについては、「前頭部アルファ活動の非対称は、ADHDを持つ青年の認知的脱抑制の特異的バイオマーカーである可能性を示唆する」と結論したより新しい研究があります(Ellis AJ, et al. Neuropsychologia 2017; 102: 45-51)。

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前頭部アルファ活動の非対称は、注意欠如・多動症(ADHD)を持つ青年の抑制過程を予測する
    Ellis AJ, et al. Neuropsychologia 2017; 102: 45-51.
    Frontal alpha asymmetry predicts inhibitory processing in youth with attention deficit/hyperactivity disorder.

    論文要約:
    <序論>
     脳活動の非定型的な非対称は、注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)において観察される行動と注意の調節異常と関係付けられてきた。具体的には、左右前頭領域の脳活動の非対称はADHDのほかに、亢進した接近行動、衝動性、そして抑制困難といったADHD関連の症状と関係付けられてきた。脱抑制のようなADHD様の特性に対する前頭部非対称の役割を明確化することは、これら行動の背景に存在する神経生理学的過程についての情報を提供する。
    <方法>
     ADHDを持つ青年(25人)と、健康で定型発達を示す対照(25人)が、よく使われる行動抑制を測定するテストの1つであるGo/No-Go課題を遂行中に、脳波検査を受けた。加えて、電流源局在のための高度信号処理によって、正答試行と誤答施行の間の前頭部アルファ活動の非対称の背景にある信号発生源の位置を推定した。
    <結果>
     これはADHDにおいて、背外側前頭前野皮質(dorsal-lateral prefrontal cortex、DLPFC)が前頭部アルファ活動の発生に関与していることを示した最初の研究である。失敗した抑制試行の間、ADHDを持つ青年は定型発達を示す青年と比較して、より大きな前頭部アルファ活動の非対称を示した。加えて、ADHD群内において、後期処理段階(刺激後400~800ms)の前頭部非対称は、課題を通して、より多いコミッション・エラー(commission error:やってはいけないことをする、お手付きのこと)を予測した。
    <結論>
     これらの結果は、前頭部アルファ活動の非対称は、ADHDを持つ青年の認知的脱抑制の特異的バイオマーカーである可能性を示唆する。

    コメント:このように実験的に発見されたバイオマーカーが、臨床的に有用なバイオマーカーに発展してくれれば良いのですが・・・

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プロバイオティクスBifidobacterium longum NCC3001は、抑うつを軽減して脳活動を変える:過敏性腸症候群患者における予備的研究
    Pinto-Sanchez MI, et al. Gastroenterology 2017; 153: 448-459.
    Probiotic Bifidobacterium longum NCC3001 Reduces Depression Scores and Alters Brain Activity: A Pilot Study in Patients With Irritable Bowel Syndrome.

    論文要約:
    <背景と目的>
     プロバイオティクス(probiotics)は過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)の症状を軽減し得るが、精神医学的併存症に関する効果は知られていない。我々はIBS患者の不安と抑うつに対するBifidobacterium longum NCC3001 (BL)の効果を評価するために、前向き研究を行った。
    <目的>
     我々はカナダのMcMaster大学において、2011年3月から2014年5月に、IBSと下痢または混合した排便パターン(ローマⅢ基準に準拠)、および軽度から中等度の不安および/または抑うつ(Hospital Anxiety and Depression尺度に準拠)を有する成人44人のランダム化・二重盲検・プラセボ対照研究を行った。
     スクリーニング時に臨床病歴と症状が評価され、血液サンプルが収集された。患者はランダムにグループ分けされ、BL(22人)またはプラセボ(22人)を毎日6週間にわたり服用した。0週、6週、そして10週に、妥当性の確かめられた質問紙を用いて、患者の不安と抑うつ、IBS症状、生活の質、そして身体化の水準を確定した。0週と6週に便、尿、および血液のサンプルが収集され、機能的MRI検査が実施された。我々は脳賦活のパターン、便微生物叢、尿代謝物プロフィール、炎症の血清マーカー、神経伝達物質、そしてニューロトロフィンのレベルを評価した。
    <結果>
     6週と14週において、Hospital Anxiety and Depression尺度で2ポイントかそれ以上の抑うつスコアの減少を示した患者は、プラセボ群では22人のうち7人であったのに対して、BL群では22人のうち14人であった(P = .04)。不安またはIBS症状に対する有意なBLの効果はなかった。BL群の患者はプラセボ群と比較して、生活の質のスコアの増加を認めた。 機能的MRI解析は、プラセボと比べてBLが、扁桃体と前頭-辺縁領域を含む複数の脳領域における否定的な情動刺激に対する反応性を低下させたことを示した。両群は似たような便微生物叢、炎症の血清マーカー、ニューロトロフィンと神経伝達物質のレベルを示したが、BL群はメチルアミンと芳香族アミノ酸の代謝物のレベルが低下していた。10週において、プラセボに対してBLを摂取した患者は、抑うつスコアが減少していた。
    <結論>
     プラセボ対照試験において、我々はプロバイオティクスのBLが、IBS患者の抑うつスコアを低下させるが不安スコアは低下させないこと、そして生活の質を向上させることを見出した。これら改善は、このプロバイオティクスが辺縁系の反応性を低下させることを示す脳賦活パターンの変化と関連していた(ClinicalTrials.gov no. NCT01276626)。

    コメント:プロバイオティクスを銘打ったヨーグルトや飲料がいま人気ですね。

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高齢期の双極性障害に関する国際双極性障害学会・調査特別委員会からの報告書
    Sajatovic M, et al. Bipolar Disorder 2015; 17: 689-704.
    A report on older-age bipolar disorder from the International Society for Bipolar Disorders Task Force.

    論文要約:
    <目的>
     来るべき次の世代では双極性障害を持つ高齢者の絶対数、および一般人口に占める割合が増加するであろう。本稿は高齢期の双極性障害に関する国際双極性障害学会(ISBD)の調査特別委員会(Task Force、TF)の最初の報告書である。
    <方法>
     このTF報告書は、臨床的特徴の疫学、神経病理とバイオマーカー、身体的健康、認知、およびケア方法を含む、高齢期の双極性障害の特異的側面に取り組む。
    <結果>
     TF報告書には患者のケアの促進を目的とする、高齢期の双極性障害に関する専門家の意見が記載され、生涯にわたる双極性障害研究に関連する問題に光を当てている。双極性障害を持つ高齢成人に焦点を当てた研究と保健の取り組みはいまだ不足しているものの、ここ最近のデータは、いくつかの解答、革新的設問、高齢期発症の概念、医学的併存症、認知機能の障害や減退という困った問題に関する新しい見方を提供してきた。
    <結論>
     高齢期の双極性障害に関連する生物学的・臨床的・社会的基盤についての我々の理解を刷新することは、生涯にわたる双極性障害の完全なるマップを構築するために不可欠なステップである。

    コメント:詳細については、15ページにわたる報告書本体を読まねばなりません・・・

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18F-THK5351:アルツハイマー病における神経原線維病理を画像化する新規のPET用放射線トレーサー
    Harada R, et al. J Nucl Med 2016; 57: 208-14.
    18F-THK5351: A Novel PET Radiotracer for Imaging Neurofibrillary Pathology in Alzheimer Disease.

    論文要約:
    <序論>
     脳における神経原線維病理の画像化は、認知症の診断、疾患の進行の追跡、および抗認知症薬の治療効果の評価に役立つ。この画像化において使用される放射線トレーサーは、高感度、かつヒト脳内のタウ蛋白線維に特異的でなければならない。我々はアリルキノリン誘導体(arylquinoline derivatives)の化合物最適化(compound optimization)によって、新規のタウPETトレーサー、18F-THK5351を開発した。
    <方法>
     18F-THK5351の体外(in vitro)での結合特性、薬物動態、および安全性が調べられ、アルツハイマー病(Alzheimer disease、AD)患者について臨床研究が実施された。
    <結果>
     18F-THK5351は18F-THK5117よりも、AD脳から得た海馬ホモジネートに高い結合親和性と、白質組織からの早い解離を示した。ヒト脳サンプルにおいて、THK5351結合量はタウ蛋白の蓄積量と相関した。脳断片のオートラジオグラフィーは、THK5351がTHK5117よりも、神経原線維変化に選択的かつ高い信号背景比で結合した。マウスを用いた実験で、THK5351は望ましい薬物動態を示し、脱フッ素化はなかった。AD患者における最初のヒトPET研究で、18F-THK5351は18F-THK5117よりも早い薬力学、高コントラスト、低い皮質下白質停留を示した。
    <結論>
     18F-THK5351は、神経原線維病理の早期同定に有用なPETトレーサーである。

    コメント:18F-THK5351については同じ2016年に、皮質基底核症候群におけるタウ蛋白蓄積の生体イメージングが報告されています(Kikuchi A, et al. Neurology 2016; 87: 2309-2316)。

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18F-THK5351 PETを用いた皮質基底核症候群におけるタウ蛋白蓄積の生体画像化
    Kikuchi A, et al. Neurology 2016; 87: 2309-2316.
    In vivo visualization of tau deposits in corticobasal syndrome by 18F-THK5351 PET.

    論文要約:
    <目的>
     放射線トレーサー18F-THK5351を用いた陽電子断層撮影法(positron emission tomography、PET)が、皮質基底核症候群(corticobasal syndrome、CBS)を持つ患者の脳病変中のタウ蛋白蓄積の画像化に、利用可能か否か探求すること。
    <方法>
     我々は、CBDを持つある患者からの死後脳組織において、3H-THK5351の生体内結合を評価した。臨床PET研究では、CBSを持つ5人の患者における18F-THK5351の停留が、8人の年齢を合わせた正常対照者、および8人のアルツハイマー病(Alzheimer disease、AD)の患者のそれと比較された。
    <結果>
     3H-THK5351はCBSの死後脳組織内のタウ蛋白蓄積と結合することができた。臨床PET研究では、CBSを持つ5人の患者は、8人の年齢を合わせた正常対照者、および8人のAD患者と比較して、前頭、頭頂、および淡蒼球において有意に高い18F-THK5351の停留を示した。より高い18F-THK5351の停留は、反対側のより強い皮質機能異常とパーキンソニズムと関連した。
    <結論>
     18F-THK5351 PETは、CBS患者でタウ蛋白が蓄積しやすい場所における高いトレーサー信号を示した。18F-THK5351は、CBSにおけるタウ蛋白蓄積の生体イメージングのための、有望な候補トレーサーと考えるべきである。

    コメント:18F-THK5351については同じ2016年に、アルツハイマー病における神経原線維変化のタウ蛋白蓄積の生体イメージングが報告されています(Harada R, et al. J Nucl Med 2016; 57: 208-14)。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)治療におけるグループ心理療法、個人カウンセリング、メチルフェニデート、およびプラセボの効果:無作為化臨床試験
    Philipsen A, et al. JAMA Psychiatry 2015; 72: 1199-210.
    Effects of Group Psychotherapy, Individual Counseling, Methylphenidate, and Placebo in the Treatment of Adult Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    論文要約:
    <重要性>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は神経発達症(neurodevelopmental disorder)の一つであり、成人期における有病率は高い。成人のADHDにおいて心理療法の有効性を評価する必要性が認識されている。
    <目的>
     個人に対する臨床的管理(CM)と比較した認知行動療法的グループ心理療法(GPT)の効果、およびプラセボと比較したメチルフェニデート塩酸塩の効果を評価する。
    <設計・設定・参加者>
     ドイツの7つの研究センターからの、18歳から58歳の外来ADHD患者における前方視的・多施設・無作為化臨床試験。患者は2007年1月から2010年8月の間に募集され、治療は2011年8月に終結し、最後の追跡評価は2013年3月に行われた。
    <介入>
     GPTとCMのセッションは、最初の3カ月は毎週、その後の9カ月は毎月行われた。患者はメチルフェニデートかプラセボのいずれか一方を、1年間内服した。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは、ベースラインから3か月の集中治療の終了までの、コナーの成人ADHD評価尺度(Conners Adult ADHD Rating Scale、訳注:CAARSと略され、CAARS日本語版もある)のADHD指標(訳注:CAARSの下位尺度の一つで、治療の必要性を識別するのに有用と言われている)における変化であった(盲検化された観察者評価)。
     副次アウトカムは、1年後のADHD評価尺度、臨床全般印象度(Clinical Global Impression Scale)を用いた盲検化された観察者評価であった。
    <結果>
     スクリーニング前の1480人のうち、518人が組み入れの適切性を評価され、433人が無作為化され、419人が分析された。
     3か月後、すべての群のベースライン平均ADHD指標(20.6)は、GPYについては調整後平均17.6に、CMについては16.5に改善したが、有意な群間差はなかった。メチルフェニデート(調整後平均、16.2)はプラセボ(調整後平均、17.9)より優れていた(差、-1.7;97.5%信頼区間、-3.0~-0.4;P = .003)
     1年後、治療効果は基本的に安定して維持された。記述的分析は、メチルフェニデートがプラセボよりも、GPTに割り付けられた患者(差、-1.7;95%信頼区間、-3.2~-0.1;P = .04)、またはCMに割り付けられた患者(差、-1.7;95%信頼区間、-3.3~-0.2;P = .03)において優れていることを示した。抑うつに関しては、有意差は認められなかった。対照的に、有効性の臨床全般印象度においては、すべての測定時でGPIはCMより優れていた。
    <結論と関連性>
     主要アウトカムに関して、高度に構造化されたグループ介入は、個人に対する臨床的管理に勝ることはなかった。心理的介入は、プラセボとの比較においてメチルフェニデートと組み合わせた場合に、1年の期間のより良いアウトカムを示した。
    <試験登録>
    isrctn.org(識別子:ISRCTN54096201)

    コメント:どちらの側を中心と考えるにせよ、ADHD治療については、心理療法と薬物療法を一緒に行うと、より良い転帰につながるとする研究結果は他にもあるようです。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対するビタミン-ミネラル療法:二重盲検ランダム化プラセボ対照試験
    Rucklidge JJ, et al. Br J Psychiatry 2014; 204: 306-15.
    Vitamin-mineral treatment of attention-deficit hyperactivity disorder in adults: double-blind randomised placebo-controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の治療における栄養素の役割が国際的関心を集めている。しかし、大抵の治療はもっぱら食事制限や一度に一つの栄養物の補給に焦点を当ててきた。
    <目的>
     成人のADHD治療において、ω脂肪酸を含まないビタミンとミネラルを中心に構成される幅広い微量栄養素の処方の有効性と安全性を調べること。
    <方法>
     この二重盲検ランダム化プラセボ対照試験では、ADHDを持つ80人の成人が1対1の比で、8週間の微量栄養素(42人)またはプラセボ(38人)に割り当てられた(Australian New Zealand Clinical Trials Registryへの試験登録:ACTRN12609000308291)。
    <結果>
     Intent-to-treat分析は、自己および観察者によるADHD評価尺度に関しては、積極的治療に有利な有意差を群間に認めたが、臨床医によるADHD評価尺度では有意差はなかった。しかし、全体とADHD症状の両方に関して、臨床医はプラセボよりも微量栄養素を受けている参加者の方が、より改善していると評点した。事後解析では、ベースラインで中等度または重度のうつ病を持っていた参加者では、プラセボより積極的治療に有利な、気分のより大きな変化を認めた。有害事象について群間差はなかった。
    <結論>
     この研究は、安心できる安全性プロフィールをもって、成人のADHD症状の治療における微量栄養素の有効性に対する予備的証拠を提供する。

    コメント:本論文のように、RCTを含む確立された方法論で多様な治療法が検証されると良いですね。

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疾患横断的遺伝子発現解析における免疫特徴と疾患特異的パターン
    de Jong S, et al. Br J Psychiatry 2016; 209: 202-8.
    Immune signatures and disorder-specific patterns in a cross-disorder gene expression analysis.

    論文要約:
    <背景>
     最近の研究は、症候学と遺伝要因における神経精神疾患間の重なりを指摘している。
    <目的>
     小児と成人の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)、およびうつ病/大うつ病性障害(major depressive disorder、MDD)間のゲノミクスの重複を系統的に調べること。
    <方法>
     全ゲノム・血液遺伝子発現解析、および318人の遺伝的リスクスコア。参加者は、成人のADHD(93人)、小児のADHD(17人)、MDD(63人)、ASD(51人)、小児のADHD-ASDの重複診断(16人)に罹患している人、および健常対照(78人)であった。
    <結果>
     重み付け遺伝子共発現解析は小児ADHDとMDDの疾患特異的な特徴に加えて、MDDと成人ADHDの疾患状態と逆相関する2つの免疫関連遺伝子の共発現モジュールを明らかにした。多遺伝子リスクスコアと遺伝子発現特徴の間に有意な関連はなかった。
    <結論>
     我々の結論は、遺伝子および遺伝子発現レベルにおける疾患の重なりと特異性を示している。これらは精神疾患の確実な病態生理に寄与する新しい道筋を示し、可能性のある共通の遺伝的リスク要因を明らかにする。

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飲用水中のリチウムと認知症発症率の関連
    Lars Vedel Kessing, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 23, 2017.
    Association of Lithium in Drinking Water With the Incidence of Dementia.

    論文要約:
    <重要性>
     動物およびヒトの研究結果は、治療用量のリチウムが、学習と記憶を改善して認知症発症のリスクを軽減する可能性を示唆している。さらに予備的研究は、マイクロレベルを含む治療用量に満たないレベルのリチウムが、ヒトの認知に影響する可能性を示している。
    <目的>
     一般人口中の認知症の発症率が、飲用水中のマイクロレベルのリチウムへの長期的曝露によって異なるか否かを調べる。
    <設計・設定・参加者>
     このオランダ全国の一般人口に基づくネスト化された症例対照研究では、居住地自治体に基づく縦断的な個人の地理的データと、1970年1月から2013年12月に認知症の診断で病院を受診した50歳から90歳のすべての患者からの期間特定的データと結合された飲用水測定データ、およびオランダの一般人口からの年齢と性別を合わせた対照者10人のデータが調査された。1986年以降の飲用水中のリチウムへの平均曝露が、全研究対象について推定された。データ解析は、1995年1月1日から2013年12月31日に実施された。
    <主要アウトカムと測定>
     主要アウトカムは病院入院患者、または外来受診における認知症診断、副次アウトカムはアルツハイマー病、または血管性認知症の診断であった。一次解析では、リチウム曝露の分布が認知症患者と対照者間で比較された。
    <結果>
     合計73,731人の認知症患者と、733,653人の対照者(平均年齢、80.3歳;四分範囲、 74.9-84.6歳;44,760人の女性 [60.7%]と28,971人の男性 [39.3%])が本研究に含まれた。リチウムへの暴露は、認知症診断を持つ患者(中央値、11.5 ㎍/L;四分範囲、6.5-14.9 ㎍/L)と対照者(中央値、12.2 ㎍/L;四分範囲、7.3-16.0 ㎍/L;P < .001)の間で統計学的に有意に異なっていた。
     非線形的関連が観察され、認知症の発症率比(incidence rate ratio、IRR)は、2.0から5.0 ㎍/Lのリチウムに暴露された人と比べて、15.0 ㎍/L以上(IRR、0.83;95%信頼区間、0.81-0.85;P < .001)、および10.1から15.0 ㎍/L(IRR、0.98;95%信頼区間、0.96-1.01;P = .17)のリチウムに暴露された人で減少したが、5.1から10.0 ㎍/L(IRR、1.22;95%信頼区間、1.19-1.25;P < .001)の暴露では増加した。類似のパターンがアウトカムとして、アルツハイマー病、および血管性認知症で見出された。
    <結論と関連性>
     長期間にわたる飲用水中のリチウムへの暴露の増加は、非線形的な形で認知症発症の低下と関連するかもしれないが、居住自治体に関連する他の要因の交絡は除外できない。

    コメント:同じような疫学研究で、リチウムの抑うつや自殺に対する保護的効果が報告されていましたが、研究的関心は認知症にも波及したようです。

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ミトコンドリアDNAのハプログループ変異と自閉スペクトラム症(ASD)の関連
    Dimitra Chalkia, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 23, 2017
    Association Between Mitochondrial DNA Haplogroup Variation and Autism Spectrum Disorders.

    論文要約:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorders、ASD)は、対人的相互反応、社会的コミュニケーション、および反復的または限定的な行動によって特徴付けられる。複数の生理学的および生化学的研究が、ASD患者におけるミトコンドリアの酸化的リン酸化の欠陥を報告してきたが、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異の役割は、あまり追及されてこなかった。
    <目的>
     祖先のmtDNAの機能的多型を含むミトコンドリアの系統(ハプログループと呼ばれる)がASDのリスクにどう影響するか評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究では、以前にフィラデルフィア小児病院で得られたAutism Genetic Resource Exchangeコホート全ゲノム関連研究のデータを用いて、自閉症を持つ人とその家族が研究された。我々は2010年10月から2017年1月にそのデータを解析した。個人のmtDNAハプログループを決定するために、Illumina HumanHap 550 チップによって検索されたmtDNAの一塩基多型を使用した。Autism Genetic Resource Exchangeデータの家族構造を考慮して、mtDNAハプログループがASDのリスクと相関するか否かを決定した。
    <主要アウトカムと測定>
     ASDリスクの予測因子としての、ミトコンドリア・ハプログループのオッズ比
    <結果>
     本研究に含まれる自閉症を持つ患者1624人のうち、1299人(80%)は男子で、325人(20%)は女子であった。Autism Genetic Resource Exchangeの家族(4,041人、すなわち1,624人のASD患者と2,417人の健康な親と同胞からなる933家族)は、年齢、性別、人種/民族、または社会経済的地位に関係なく、以前に米国で募集された。
     最も多い欧州のハプログループHHVに対して、欧州ハプログループI、J、K、O-X、T、およびUはASDのリスクの上昇と関連し、そのオッズ比は1.55(95%信頼区間、1.16-2.06)から2.18(95%信頼区間、1.59-3)であった(調整済P < .04)。ゆえにmtDNAハプログループ変異は、重要なASDのリスク要因である。
    <結論と関連性>
     ハプログループI、J、K、O-X、T、およびUは欧州人口の55%を含むため、mtDNA系統はASDリスクの全体に有意な寄与をしているにちがいない。

    コメント:DNAは核以外にミトコンドリアにもあり、もっぱら母方から伝わります。ミトコンドリアのハプログループ(haplogroup:日本語では「単倍群」だそうです)は、今では世界中に拡散したホモ・サピエンスの起源を、アフリカのある女性(たち)に求めることができるという、いわゆる「ミトコンドリア・イブ」という言葉で有名となりました。ただし、ハプログループとか、ハプロタイプといった概念の正確な理解は、非専門家には少し難しいですね。

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長期入院から退院した重度精神疾患患者の早期死亡:日本における24年間の自然観察
    Shinsuke Kondo, et al. Br J Psychiatry Open Aug 2017, 3 (4) 193-195.
    Premature deaths among individuals with severe mental illness after discharge from long-term hospitalisation in Japan: a naturalistic observation during a 24-year period.

    論文要約:
    <背景>
     各国の重度精神疾患患者の早期死亡については、日本を含めて国によって収集されたデータはなく、構造的に過少報告されている。
    <目的>
     日本の重度精神疾患患者の過剰な死亡率を明らかにすること。
    <方法>
     遡及的に1992年から2015年の間の、東京郊外の非臨床的な地域ベースの精神保健サービス利用者の全死亡を調査した。
    <結果>
     調査期間中、調査対象条件を満たした登録者254人のうち、45人が死亡した。死亡は33例(73.3%)が自然死であった。失われた平均損失生存年数(mean years of life lost)は22.2年で、全標準化死亡比(overall standard mortality ratio、SMR)は3.28(95%信頼区間 2.40-4.39)であった。死因別SMRは、心血管疾患が5.09(95%信頼区間2.33-9.66)、自殺が7.38(95%信頼区間2.40-17.22)であった。
    <結論>
     日本は長寿では世界をリードしているものの、重度精神疾患を持つ人は身体疾患と自殺による早期死亡と死亡率の上昇に苦しんである。この報告されずにいた命の格差を公にすることが、重度精神疾患を持つ人の身体的ケアを改善する最初のステップである。

    コメント:この論文は『重度精神疾患患者の平均余命は20年以上短い』として、8月24日付のMedical Tribune誌にも日本語で紹介されています。重度精神疾患を持つ人では、一般の人よりも、心血管疾患による死亡が5倍、自殺による死亡が7倍多いということです。心血管疾患というのは、過去の研究でも決まって出てくる死因です。

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注意欠如・多動症(ADHD)を持つ未成年および成人患者におけるメチルフェニデートのドパミンシステムに対する年齢依存的効果:無作為化臨床試験
    Anouk Schrantee, et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 955-962.
    Age-Dependent Effects of Methylphenidate on the Human Dopaminergic System in Young vs Adult Patients With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    論文要約:
    <重要性>
     非常に多くの子供が、注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の治療ためにメチルフェニデート塩酸塩の処方を受けているが、ヒトのドパミンシステムに対するメチルフェニデートの年齢依存的な、場合によっては持続する効果については知られていない。
    <目的>
     ドパミンシステムに対するメチルフェニデートの効果が年齢に修飾されるか否かを確定し、大人でなくADHDを持つ若者のメチルフェニデート治療が、ドパミン投与への脳血流反応に対する持続的効果をもたらすという仮説を検証すること。
    <設計・設定・参加者>
     ランダム割り付け、二重盲検、プラセボ対照の試験(発達中の脳に対する向精神薬の効果:メチルフェニデート)で、2011年6月1日から2015年6月15日の間、オランダ・アムステルダムとその周辺地域にあるADHDセンターにおいて実施された。追加の包含基準は、男性、10から12歳、または23から40歳、精神刺激薬による治療を受けたことがないである。
    <介入>
     16週間のメチルフェニデート、もしくはプラセボによる治療。
    <主要評価項目と測定>
     薬理学的核磁気共鳴画像(pharmacological magnetic resonance imaging)を用いて非侵襲的に評価されるメチルフェニデートの急性投与に対する脳血流反応の変化であり、ベースラインと治療後の1週に測定された。データはintent-to-treat分析を用いて解析された。
    <結果>
     試験への組み入れに関する適切性をスクリーニングされた131人のうち、99人の患者がDSM-IVのADHD基準を満たし、50人がメチルフェニデート服用群に、49人がプラセボ服用群に無作為に割り付けられた。16週間のメチルフェニデート治療は、10から12歳の子供の視床において、メチルフェニデートに対する脳血流反応を増加させたが(平均差、6.5;95%信頼区間、0.4-12.6; P = .04)、大人またはプラセボ服用群では増加させなかった。線条体においてメチルフェニデート条件はプラセボ条件と、子供では有意に違ったが(平均差、7.7;95%信頼区間、0.7-14.8;P = .04)、大人ではそうではなかった。
    <結論と関連性>
     我々は前臨床的データを確認し、メチルフェニデート治療のヒト細胞外ドパミン線条体視床回路に対する年齢依存的効果を示した。社会的関連を考慮すると、これらのデータはより大きな集団での再現を必要とする。
    <試験登録>
     identifier: NL34509.000.10 and trialregister.nl identifier: NTR3103.

    コメント:子供と大人の間で、視床や線条体といった皮質下核へ投射するドパミンシステムに対するメチルフェニデートの長期効果には違いがあり、より子供で明確なようです。

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小児の注意欠如・多動症(ADHD)におけるサブタイプ間の臨床症状と持続処理課題(CPT)成績:6カ月間の自然経過研究
    Wang LJ, et al. BMC Psychiatry 2011; 11: 65.
    Clinical symptoms and performance on the Continuous Performance Test in children with attention deficit hyperactivity disorder between subtypes: a natural follow-up study for 6 months.

    論文要約:
    <背景>
     この研究の目的は、現実的な臨床設定において注意欠如・多動症(ADHD)の臨床症状と神経認知機能の改善の時間経過、およびADHDのサブタイプ分類を使ってADHDの症状改善の相違を決定することである。
    <方法>
     初診時にADHDの子供の親が、子どもの行動チェックリスト(The Child Behavior Checklist、CBCL)を完成させた。コンピュータによる持続処理課題(Continuous Performance Test、CPT)、NolanとPelhamのADHD尺度の第4版(SNAP-IV)、およびADHD評価尺度(ADHD-RS)が、ベースライン、1カ月、3カ月、および6カ月以降に順に実施された。薬物療法を含む患者のケアは、精神科医の判断で行われた。ADHD患者はDSM-IVのサブタイプ(不注意優勢型、多動性-衝動性優勢型、混合型)に分類され、さらに比較のためにCBCLの攻撃性尺度によって攻撃型と非攻撃型に分けられた。
    <結果>
     50人の患者の平均年齢(標準偏差)は7.84(1.64)歳で、うち15人が不注意優勢型で、11人が多動性-衝動性優勢型、24人が混合型であった。加えて、ADHD患者のうち28人が攻撃型、22人が非攻撃型に群分けされた。6カ月の治療の間、多動と不注意の臨床症状、およびCPTにおける衝動的遂行の有意な改善を認めた。DSM-IVと攻撃性の両方によるADHD患者のサブグループ化の間に、臨床的な多動症状の有意な差があった。CPTにおける注意散漫と衝動的遂行において、攻撃的な患者と比較して非攻撃的な患者は、ベースラインからの変化が有意に大きかった。
    <結論>
     CPTにおける衝動的な遂行と、臨床上の不注意次元と過活動次元を含むADHD症状は、実際的治療下の6カ月間に改善した。非攻撃的なADHD患者は、攻撃的な患者よりも、CPT成績の改善においてより高い潜在能力を持っているかもしれない。しかし、ADHDの異なる分類が、ADHD患者の臨床症状と神経認知能力の改善を予測するのに妥当であるか否かについては、さらなる研究が必要である。

    コメント:少し古い研究ですが、CPTの臨床的意義を示唆する論文です。

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自閉症における精神病:重複罹患コホートにおける両状態の特徴比較
    Larson FV, et al. Br J Psychiatry 2017; 210: 269-275.
    Psychosis in autism: comparison of the features of both conditions in a dually affected cohort.

    論文要約:
    <背景>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)を持つ人々により経験される精神病状態の表現型および特徴に関する情報は限られている。
    <目的>
     ASDと精神病を併存させている一群の人々(ASD-P)における自閉的および精神病的症状を記述して、このグループをどちらか一方のみを持っている人々と比較すること。
    <方法>
     116人のASD-P患者を研究した。彼らASD-PのASDの特徴を、ASDを持つが精神病の併存はない人々(ASD-NP)と比較し、ASD-Pの精神病の臨床特徴を、精神病だけを持つ人々と比較した。
    <結果>
     精神病だけを持つ人と比べてASD-Pを持つ人は、非定型精神病の診断がより多く、統合失調症の診断がより少なかった。ASD-NPを持つ人々と比べてASD-Pを持つ人は、常同的興味/行動がより少なかった。
    <結論>
     我々のデータは、併存する精神病と関連するASDの特異的サブタイプの存在を示唆する。本結果は、ASDを持つ人々における精神病は、特に感情的混乱に関してしばしば非定型的であるとする所見を支持する。

    コメント:日本における臨床経験からも、これは同意できる結果ですね。

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自閉スペクトラム症(ASD)の若者における非感情病性精神病性障害と双極性障害のリスク:地域住民における研究
    Selten JP et al. JAMA Psychiatry 2015; 72: 483-9.
    Risks for nonaffective psychotic disorder and bipolar disorder in young people with autism spectrum disorder: a population-based study.

    論文要約:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)を持つ人は、非感情病性精神病性障害(nonaffective psychotic disorder、NAPD)と双極性障害(bipolar disorder、BD)のリスクが高いか否かについては不明である。
    <目的>
     ASDを持つ人においてNAPDとBDのリスクが増加しているか否か、これらのリスクがASDを持つとは診断されていない同胞よりも高いか否かを検証する。
    <設計・設定・参加者>
     我々はスウェーデンのストックホルム郡に住む17歳以下のすべて人々(=ストックホルム若者コホート)をネストさせた患者対照研究を実施した。かつてASDを持つと診断されたコホート構成員、およびASDを持つとは診断されていない彼らの同胞のすべてが含まれた。各症例は、同年同月に生まれた同じ性別の対照者10人とマッチされた。スウェーデンの登録記録を用いて、症例、同胞、および対照が2011年12月31日まで追跡された。その時までに、最も年長の人は27歳に達した。
    <曝露>
     自閉スペクトラム症(ASD)で、16歳前、または28歳前に登録された。ASDは知的能力障害の有無で区別された。
    <主要評価項目と測定>
     年齢、性別、出生地の人口密度、その人または親の移住歴、聴覚障害、親の年齢、親の収入、親の教育水準、および親の精神疾患の既往で調整されたNAPDとBDのオッズ比を計算した。
    <結果>
     16歳前に登録された知的能力障害のないASD症例について、NAPDとBDの調整済オッズ比はそれぞれ5.6(95%信頼区間、3.3-8.5)と5.8(95%信頼区間、3.9-8.7)であった。一方、知的能力障害があるASD症例については、3.5(95%信頼区間、2.0-6.0)と1.8(95%信頼区間、0.8-4.1)であった。
     28歳前に登録された知的能力障害のないASD症例において、NAPDとBDの調整済オッズ比はそれぞれ12.3(95%信頼区間、9.5-15.9)と8.5(95%信頼区間、6.5-11.2)であった。一方、知的能力障害があるASD症例については、6.4(95%信頼区間、4.2-9.8)と2.0(95%信頼区間、1.0-3.9)であった。
     16歳前に登録されたASD症例の全同胞(ASD診断はない)について、NAPDとBDの調整済オッズ比は、聴覚障害で調整後はそれぞれ1.8(95%信頼区間、1.1-2.7)と1.7(95%信頼区間、1.1-2.6)であった。
    <結論と関連性>
     ASD診断は、NAPDおよびBDのリスクの相当な上昇と関連する。この結果は、これら障害に対する我々の理解に役立ち、ASDの管理に影響を与える。

    コメント: NAPDとBDの両方に関して、知的能力障害がないASD患者の方が、知的能力障害があるASD患者よりもオッズ比が高い傾向があることは興味深いです。例えば、28歳前の登録例について、NAPDとBDの調整済オッズ比は前者がそれぞれ12.3と8.5であったのに対して、後者では6.4と2.0でした。

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統合失調症および関連障害を持つ患者における暴力犯罪、自殺、早期死亡:スウェーデンにおける38年間の全住民調査
    Fazel S, et al. Lancet Psychiatry 2014; 1: 44-54.
    Violent crime, suicide, and premature mortality in patients with schizophrenia and related disorders: a 38-year total population study in Sweden.

    論文要約:
    <背景>
     統合失調症および関連障害を持つ人々は、暴力犯罪の有罪判決、自殺、および早期死亡を含む有害なアウトカムのリスク上昇を認める。しかし、これらアウトカムの発生率とリスク要因は、一般住民に基づき、それを標的とした介入を基礎として明確化される必要がある。我々は、これらアウトカムの発生率とリスク要因を明確にし、それらがアウトカムに共通するのか否か、統合失調症および関連障害に特異的であるのか否かを調べることを目的とした。
    <方法>
     我々は、1972年1月から2009年12月までのスウェーデンにおける、統合失調症および関連障害を持つ24,297人の患者の全住民コホート研究を実施した。患者は一般人口(485,940人)からの人々、さらに非罹患同胞対照(26,357人)と、年齢および性別について一致させた。第一に、我々は暴力犯罪の有罪判決、自殺、そして早期死亡の発生率を、暴力犯罪の判決、転出、死亡、または追跡の終了(2009年12月31日)のいずれかが最初に起こるまで追跡して調べた。第二に、我々はこれら有害アウトカムと、社会人口学的、個人的、家族的、および遠隔的リスク要因の関連を、男女別に、コックス比例ハザードモデルを用いて分析した。最後に、我々は1972年から2009年の間の有害アウトカムの時間的傾向を、患者と非罹患同胞を比較して評価した。全国の精神科施設の入院ベッドで過ごした夜の数の変化との関連性を分析した。
    <結果>
     初期診断から5年以内に、統合失調症および関連障害を持つ男性の13.9%、同病を持つ女性の4.7%が有害なアウトカムを示した(男性の10.7%、女性の2.7%が暴力犯罪の有罪判決を受け、男性の3.3%、女性の2.0%があらゆる原因による早期死亡をしていた)。研究期間において、一般住民対照と比較した場合のいずれかの有害アウトカムの調整済オッズ比は、男性患者で7.5(95%信頼区間、7.2-7.9)、女性患者で11.1(95%信頼区間、10.2-12.1)であった。診断前に存在した3つのリスク要因は、薬物使用障害、犯罪性、自傷のどの有害アウトカムも予測したが、非罹患同胞および一般住民においても同様であった。1973年から2009年の期間中、非罹患同胞と比較して、統合失調症および関連障害におけるこれらアウトカムのオッズ比は上昇した。
    <解釈>
     統合失調症および関連障害は、暴力犯罪、自殺、および早期死亡の相当な増加と関連した。これら3つのアウトカムの危険因子には、統合失調症および関連障害を持つ人に特異的なものと、一般住民に共通するものが含まれた。したがって、統合失調症および関連障害を持つ患者において相当高率にみられる有害アウトカムを減少させるためには、一般住民に基づき、これを標的とする戦略が必要かもしれない。

    コメント:本論文では有害なアウトカムとして、暴力犯罪、自殺、および早期死亡の増加が報告されましたが、3つ目の早期死亡に関しては、ごく最近、日本からも調査データが公表されました。『長期入院から退院した重度精神疾患患者の早期死亡:日本における24年間の自然観察』(Shinsuke Kondo, et al. Br J Psychiatry Open Aug 2017, 3 (4) 193-195.)です。

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混合性うつ病の認識と管理のためのガイドライン
    Stahl SM, et al. CNS Spectr. 2017 Apr;22(2):203-219.
    Guidelines for the recognition and management of mixed depression.

    概観とキーポイント:
    1. 双極性障害の一部、またはうつ病/大うつ病性障害として、「抑うつを持つ患者のすべてに、抗うつ薬が処方されるべきである」とは限らない。
    2. 抑うつエピソードのために抗うつ薬の処方を受けるすべての患者について、異常な行動活性化または精神運動賦活の徴候をモニターすべきである。
    3. 混合性の特徴を伴う抑うつエピソード患者に対する抗うつ薬の使用は、抑うつ症状を軽減しないかもしれないし、抑うつに伴う閾値下の躁症状を増悪させる潜在的危険をもたらすかもしれない。
    4. 混合性の特徴を伴う抑うつエピソード患者のために、抗うつ薬治療に加えて、抑うつエピソードの一部としての抑うつ症状を治療する際の有効性が示されている代替の向精神薬(例:リチウム、抗てんかん性の気分安定薬、非定型抗精神病薬)が検討されるべきである。
    5. 患者に尋ねなければ、抑うつ的な患者が(軽)躁症状を持っているかどうか、双極性障害の家族歴を持っているかどうか分からない。すべての患者にいつも聞きなさい!

    コメント:本ガイドラインの筆頭著者は、人気の精神薬理学の著書で有名なスタール博士です。他の著名な先生を含む総勢20名が名を連ねていますが、日本からは金沢市の竹島先生の名前があります。

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双極うつ病の治療におけるドパミン作動薬:系統的レビューとメタ解析
    Szmulewicz AG, et al. Acta Psychiatr Scand 2017; 135: 527-538.
    Dopaminergic agents in the treatment of bipolar depression: a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <目的>
     ドパミン作動薬(モダフィニル、アルモダフィニル、プラミペキソール、メチルフェニデート、アンフェタミン)の双極うつ病に対する効果を系統的に調べること。
    <方法>
     双極うつ病におけるドパミン作動薬治療の有効性と安全性を評価するために、ランダム化比較試験のメタ解析が実施された。二次解析では、ドパミン治療に関連した新規の躁病を調べるために、メタ解析の手続きによってランダム化比較試験と質の高い観察研究の両方の結果を統合した。
    <結果>
     9つの研究(1716人の患者)がランダム化比較試験のメタ解析に組み込まれた。双極うつ病に対するドパミン作動薬治療は、反応率(1671人、リスク比1.25、95%信頼区間1.05~1.50)と寛解率(1671人、リスク比1.40、95%信頼区間1.14~1.71)の両方の上昇と関連した。この治療に関連する気分交代リスクの上昇の証拠はなかった(1646人、相対リスク0.96、95%信頼区間0.49~1.89)。我々の二次解析(1231人)では、平均追跡期間7.5カ月の間の累積気分交代率は3%(95%信頼区間1.0~5.0)であった。
    <結論>
     予備的結果は、ドパミン作動薬が双極うつ病の治療に有用な選択肢である可能性を示唆し、短期間の追跡では、それに関係する気分不安定化のリスクが上昇する証拠はない。

    コメント:日本では上記のドパミン作動薬のうち、モダフィニルはナルコレプシー、プラミペキソールはパーキンソン病、メチルフェニデートは注意欠如・多動症の適応がありますが、うつ病や双極性障害には認められていません。

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命令幻聴への有害な従順をさせない認知行動療法(COMMAND):ランダム化比較試験
    Birchwood M, et al. Lancet Psychiatry 2014; 1: 23-33.
    Cognitive behaviour therapy to prevent harmful compliance with command hallucinations (COMMAND): a randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     精神病において命令幻聴に基づいて行為することは、その人や他の人々に重大な結果を引き起こすことがあり、臨床および公衆衛生上の懸念の主要な要因であるが、このリスク行動を減らすために利用可能な科学的証拠に基づく治療はない。したがって我々は、声を聞く人に害を与える知覚された声のパワーに抵抗する新規の認知療法を検証した。命令が追従されなければ、それによって聞く人の順守動機付けは低下する。
    <方法>
     単盲検のランダム化比較試験であるCOMMANDでは、英国の3つのセンターからの、自身または他者への危害の主要なエピソードにつながる命令幻聴が、少なくとも6カ月間続いている研究組み入れに適切な参加者が、1対1の比で、9カ月間の命令幻聴への認知症法+通常治療と、9カ月間の通常治療のみに割り付けられた。治療割り付けは評価者だけにマスクされた。主要評価項目は有害な従順で、分析はintention to treatにより、試験は登録された(登録番号:ISRCTN62304114)。
    <結果>
     18カ月の時点で、通常治療群の85人の参加者のうち39人(46%)が完全に声に従ったが、命令幻聴に対する認知療法+通常治療に参加した79人では22人(28%)であった(オッズ比0.45、95%信頼区間0.23-0.88、p=0.021)。9カ月の時点では治療効果に有意差はなかったが(オッズ比0.74、95%信頼区間0.40-1.39、p=0.353)、治療と追跡の間の交互作用は有意でなく、両追跡時点に共通の治療効果は0.57(0.33-0.98、p=0.042)であった。
    <解釈>
     これは命令する声に関連するリスク行動における臨床的に意味のある低下を示した最初の試験である。我々は次に、パワーの変化が変化の媒介要因であったか否かを明確にするだろう。パワーと従順を低下させる治療の最も影響力のある要素を同定するためには、さらなるより複雑な試験が必要である。
    <研究資金>
     UK Medical Research Council、およびNational Institute for Health Research

    コメント:この英国の研究グループによる書籍が、日本語に翻訳されています。
    『命令幻聴の認知行動療法(菊池安希子 監訳、星和書店、2010年)』

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)におけるニューロフィードバック、偽のニューロフィードバック、集団認知行動療法:ランダム化比較試験
    Michael Schönenberg, et al. Lancet Psychiatry, Published: 09 August 2017.
    Neurofeedback, sham neurofeedback, and cognitive-behavioural group therapy in adults with attention-deficit hyperactivity disorder: a triple-blind, randomised, controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     多くの研究が、注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の治療において、脳波フィードバック(EEG neurofeedback)が有益である可能性を示している。しかし、良質な比較研究の数は少なく、ニューロフィードバック技術は大いに議論の余地があると考えられている。本試験では、成人のADHDにおいて、標準的な脳波ニューロフィードバックのプロトコルを、偽(訳注:原文ではシャムsham)のニューロフィードバックと比較した有効性、およびメタ認知療法と比較した有用性を調べた。
    <方法>
     我々はドイツ・チュービンゲンのセンター(チュービンゲン大学)からの成人ADHDにおいて、認められた偽の方法を用いて、並行3重盲検のランダム化比較試験を行った。参加者は、ADHDのDSM-IV-TR基準を満たし、18歳から60歳で、未服薬であるか、変更する意図なく少なくとも2カ月間は定期的に服薬している場合、研究組み入れに適切とされた。我々は、統合失調症または統合失調感情障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、てんかんまたは外傷性脳損傷、物質乱用または依存、あるいは他の心理的治療を現在受けているか予定のある参加者を除外した。
     研究への組み入れが適切とされた参加者は、次の3群に無作為に割り付けられた:15週間に30回の真のθ波からβ波のニューロフィードバックセッションを受けるニューロフィードバック群、15週間にまず15回の偽のニューロフィードバックを受け、次に15回の真のθ波からβ波のニューロフィードバックセッションを受けるシャムニューロフィードバック群、または12週間で12セッションを受けるメタ認知集団療法群。参加者は性別、年齢、およびベースラインにおけるADHD症状の重症度によって層別化された、コンピュータによる最小化・無作為化の手続きによって、3つの介入法のうちの一つに均等に割り付けられた。
     参加者は自分がニューロフィードバックとシャムニューロフィードバックのどちらを受けているかについてはマスクされたが、メタ認知療法を受けている参加者は自分の治療法に気付いていた。臨床評価者(言い換えればアウトカムを評価する人)とニューロフィードバック訓練を行う研究スタッフは、ニューロフィードバックとシャムニューロフィードバックに関する参加者の無作為化状態のみマスクされた。
     主要評価項目は、治療前、治療中間点(8週後)、治療後(16週後)、治療6か月後に評価されたコナーズ成人ADHD評価尺度(Conners' adult ADHD rating scale)症状スコアであった。無作為化の後に少なくとも1回の観察を受けたすべての人を解析に含めた。この試験はClinicalTrials.govに登録されている(登録番号:NCT01883765)。
    <結果>
     2013年2月1日から2015年12月1日の間に、761人が研究組み入れの適切性を評価された。656人(86%)が除外され、118人(15%)がこの研究への参加が適切とされた。適切とされた参加者のうち、38人(32%)がニューロフィードバック群に、39人(33%)がシャムニューロフィードバック群に、41人(35%)がメタ認知療法群に無作為に割り付けられた。ニューロフィードバック群の37人(97%)、シャムニューロフィードバック群の38人(97%)、メタ認知療法群の38人(93%)が解析された。
     自己報告されたADHD症状は、治療前と6週間の追跡終了時の間で、治療条件とは関係なく(ニューロフィードバック vs シャムニューロフィードバック B=-0.89 [95% CI -2.14 to 0.37], p=0.168; ニューロフィードバック vs メタ認知療法 B=-0.30 [95% CI -1.55 to 0.95], p=0.639)、すべての治療群でかなり低下した(B=-2.58 [95% CI -3.48 to -1.68]; p<0.0001)。治療または試験に関連した重篤な有害事象の報告はなかった。
    <解釈>
     我々の結果は、ニューロフィードバック訓練が、ニューロフィードバックのシャム条件や集団心理療法よりも優れているとは言えないことを示している。どの3つの治療も等しく、ADHD症状を軽減する上で有効であった。この最初のランダム化シャム比較試験は、成人のADHD症状に対するニューロフィードバックの特異的効果を示さなかった。
    <研究資金>
     ドイツ研究基金(German Research Foundation)

    コメント:ADHDに対するニューロフィードバック訓練が注目されていますが、本研究の結果はその固有の効果を証明することはできませんでした。追加の研究がぜひ必要ですね。

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精神病体験とその後の自殺念慮・行動の関連:WHO世界精神健康調査からの国際比較分析
    Evelyn J. Bromet, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 30, 2017.
    Association Between Psychotic Experiences and Subsequent Suicidal Thoughts and Behaviors: A Cross-National Analysis From the World Health Organization World Mental Health Surveys.

    論文要約:
    <重要性>
     地域に基づく研究によると、精神病体験は自殺念慮・行動のリスク上昇と関連する。しかし、これらの関連が人生の経過を通して異なるのか、これらの関連に精神疾患が関与するのか否かについては不明である。
    <目的>
     生涯を通した精神病体験と後の自殺念慮・行動との時間的関係、および精神疾患の影響を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     WHO世界精神健康調査の19か国からの成人回答者33,370人について、精神病体験、その後の自殺念慮・行動、および21のDSM-IV精神疾患が評価された。精神病体験とその後の自殺念慮・行動の関連を調べるために、離散時間生存分析が使われた。
    <主要評価項目と測定>
     精神病体験を伴う自殺念慮・行動の有病率と発生率、およびオッズ比と95%信頼区間。
    <結果>
     参加者33,370人のうち、精神病体験を持つ人が2,488人で、自殺念慮、計画、企図の生涯有病率(標準誤差)は、それぞれ28.5%(1.3)、10.3%(0.7)、10.2%(0.7)であった。1つ、またはそれ以上の精神病体験を持つと報告した回答者では、前駆する、あるいは現在の精神疾患を調整後、その後の自殺念慮・企図のオッズ比は2倍に上昇した(自殺念慮:オッズ比、2.2;95%信頼区間、1.8-2.6;自殺計画:オッズ比、2.1;95%信頼区間、1.7-2.6;自殺企図:オッズ比、1.9;95%信頼区間、1.5-2.5)。精神病体験の数と、精神疾患で調整後も存続するその後の自殺念慮・企図には、有意な量反応関係があった。
     精神病体験は全ライフステージにわたって、その後の自殺念慮・企図の発生の有意な予測因子であったが、関連は12歳かそれ以下の年齢で最も強かった。前駆する精神疾患の調整後は、全人口のうち時間的に先行する精神病体験に関連する生涯の自殺念慮、計画、企図のリスク割合に寄与するは、それぞれ5.3%、5.7%、4.8%であった。
    <結論と関連性>
     精神病体験は、前駆する精神疾患では説明できない、生涯にわたるその後の自殺念慮・企図の可能性増加と関連する。これらの結果から、後の自殺念慮・企図を予測するために設計されたスクリーニング法に、精神病体験についての情報を含めることの重要性が明らかである。

    コメント:「精神病体験は全ライフステージにわたって、その後の自殺念慮・企図の発生の有意な予測因子であったが、関連は12歳かそれ以下の年齢で最も強かった」という結果には、少し驚きました。12歳かそれ以下というのは、日本で言えば小学生ですので。

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小児と青年で一般的な精神疾患に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、プラセボの有効性と安全性:系統的レビューとメタ解析
    Cosima Locher, et al. JAMA Psychiatry. Published online August 30, 2017.
    Efficacy and Safety of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors, Serotonin-Norepinephrine Reuptake Inhibitors, and Placebo for Common Psychiatric Disorders Among Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要約:
    <重要性>
     抑うつ障害(Depressive disorders、DDs)、不安障害(anxiety disorders、ADs)、強迫性障害(obsessive-compulsive disorder、OCD)、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)は、小児と青年で一般的な精神疾患である。
    <目的>
     小児と青年のDD、AD、OCD、およびPTSDの治療に関して、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、およびプラセボの比較有効性と安全性を調べること。
    <データソース>
     データベースの開始から2016年8月7日までの、PubMed、EMBASE、PsycINFO、Web of Science、Cochrane Databaseである。
    <研究選択>
     DD、AD、OCD、およびPTSDを持つ若者におけるSSRI、またはSNRIのランダム化臨床試験で、公表されたものと未公表のものが含まれた。他の抗うつ薬(例:三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬)を用いた試験は除外した。
    <データ抽出と統合>
     標準化平均値差(Hedgesのg値)で計算された効果量と、有害事象についてのリスク比(RRs)が、変量効果モデルで評価された。
    <主要評価項目と測定>
     介入前と介入後のデータ、平均変化データ、および有害事象データに関する、著者らによって定義された主要評価項目が、PRISMAガイドライン(訳注:PRISMAはPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysesの略、1999年のQuality of Reporting [QUORO]の改変で、メタ解析研究において記述すべき情報のこと)に従い、複数の観察者によって独立に抽出された。
    <結果>
     6,778人の参加者(女性、3484人 [51.4%];平均 [標準偏差] 年齢、12.9 [5.1] 歳)を含む36の試験(DD、17研究;AD、10研究;OCD、8研究、PTSD、1研究)がメタ解析への組み入れに適切であるとされた。SSRIsとSNRIsはプラセボと比べて有意に有益であったが、効果量は小さかった(g値、0.32;95%信頼区間、0.25-0.40;P < .001)。AD(g値、0.56;95%信頼区間、0.40-0.72;P < .001)は、DD(g値、0.20;95%信頼区間、0.13-0.27;P < .001)と比べて有意に大きい群間効果量を示した。この差異は主にプラセボ反応に起因し、DD患者(g値1.57;95%信頼区間、1.36-1.78;P < .001)はAD患者(g値1.03;95%信頼区間、0.84-1.21;P < .001)と比べて、有意に大きなプラセボ反応を示した。ADsに対するSSRIsの効果量は比較的大きかった(g値0.71;95%信頼区間、0.45-0.97;P < .001)。
     治療で出現した有害事象(RR、1.07;95%信頼区間、1.01-1.12;P = .01、またはRR、1.49;95%信頼区間、1.22-1.82;P < .001、報告方法の違いによる)、重篤な有害事象(RR、1.76;95%信頼区間、1.34-2.32;P < .001)、および有害事象による試験の中断(RR、1.79;95%信頼区間、1.38-2.32;P < .001)の報告は、プラセボを受けた参加者よりも抗うつ薬を受けた患者で多かった。
    <結論と関連性>
     プラセボと比較して、小児と青年においてSSRIsとSNRIsはプラセボより有益である。しかしながら、有益性は小さく、疾患特異的であり、他の疾患よりもADでより大きな薬剤-プラセボ差を認める。プラセボ反応は、特にDDで大きい。重篤な有害事象は、プラセボより有意にSSRIsとSNRIsに多い。

    コメント:効果の点においても、小児と青年への抗うつ薬投与は慎重であるべきですね。

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WHOによるDSM-5成人ADHDのための自己記入式スクリーニング尺度
    Ustun B, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 520-526.
    The World Health Organization Adult Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Self-Report Screening Scale for DSM-5.

    論文要約:
    <重要性>
     成人の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)はよくある疾患であるが、その機能障害は深刻で、通常は過少診断されているという認識が、地域、職場、およびプライマリー・ケアの現場で使う成人ADHDのスクリーニング尺度の開発を導いてきた。しかしながら、これらの尺度はすべて、最近開発されたDSM-5の基準よりも狭いDSM-IVの基準に準じている。
    <目的>
     スクリーニングのために広く使われるWHO成人ADHD自己記入尺度(World Health Organization Adult ADHD Self-Report Scale、ASRS)をDSM-5基準のために改訂をして、その動作特性を改善すること。
    <設計・設定・参加者>
     全29問の自己報告式ASRSに回答した2つの一般住民調査の参加者の確率下位サンプル(2001-2003年の世帯調査(119人)、および 2004-2005年のマネージド・ケア加入者調査(218人)で、どちらの下位サンプルもASRS陽性者を余計に抽出している)に対して、DSM-5の成人ADHDのための半構造化研究用診断面接が盲検的に施行された。2016年、ASRSスクリーニング尺度のDSM-5版を生成するために、最適な整数重み付けとスクリーニング質問数の制限を持つスクリーニング尺度を生成するために設計された機械学習アルゴリズム(Risk-Calibrated Supersparse Linear Integer Model)が、集合データに適用された。新しい尺度の正確度は、ニューヨーク大学のランゴン医療センター成人ADHDプログラム(NYU Langone)において評価を求めた患者から成る2011年から2012年の臨床サンプルと、2015年から2016年のプライマリー・ケアの対照者300人において確認された。データ解析は、2016年4月4日から2016年9月22日に行われた。
    <主要評価項目と測定>
     改訂されたASRSの感度、特異度、曲線下面積(area under the curve、AUC)、陽性的中率である。
    <結果>
     637人の参加者のうち、44人(37%)の世帯調査回答者、51人(23.4%)のマネージド・ケア回答者、および173人(57.7%)のNYU Langone回答者が、半構造化面接においてDSM-5の成人ADHDの基準を満たした。成人ADHDのDSM-5基準を満たした回答者のうち、123人(45.9%)が男性で、平均(標準偏差)年齢は33.1(11.4)歳であった。6つの質問によるスクリーニング尺度が、最初の2つのサンプルにおいてケースと非ケースを区別するのに最適であった。動作特性は、DSM-5成人ADHD臨床診断尺度一般人口有病率8.2%に重み付けされたデータにおける診断閾値で非常に良好であった(感度、91.4%;特異度、96.0%;AUC、0.94;陽性的中率、67.3%)。尺度をNYU Langone臨床サンプルに適用した場合、かなり高い有病率(57.7%)となるものの、動作特性は類似していた。
    <結論と関連性>
     新しいADHDスクリーニング尺度は短く、簡単に評点でき、さらに高い特異度と陽性的中率を持つ閾値で一般人口の患者の大多数を同定し、専門的治療設定でのスクリーニング法として使用可能であった。

    コメント:日本でもDSM-IVの成人ADHD基準に準じたASRSは使われていますね。

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レビー小体型認知症(DLB)の診断と治療・ケア:DLBコンソーシアムのコンセンサス・レポート第4版
    McKeith IG, et al. Neurology 2017; 89: 88-100.
    Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium.

    論文要約:
     レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies、DLB)コンソーシアムは、ここ10年広く使用されてきた以前のレポートを更新する形で、DLBの臨床的・病理的診断に関する推奨を改訂した。改訂DLBコンセンサス基準は今回、臨床特徴と診断バイオマーカーを明確に区別し、これらを確定し解釈する最適な方法についての指針を提供する。REM睡眠行動障害と123I- MIBG心筋シンチグラフィーに診断的重み付けを増やし、以前に報告されたDLBの特徴に関する本質的に新しい情報が組み込まれた。他の神経画像法、電気生理学的および検体検査の診断上の役割についても記述された。病理学的方法と診断の細かな変更が推奨された:アルツハイマー病の神経病理変化を考慮すること、かつて削除されたレビー関連病理の分類を加えること、黒質の神経脱落の評価を含めることである。DLBの無作為化比較試験が非常に少ないことから、臨床的管理に関する推奨は概ね専門家の意見に基づいている。
     ありふれた重要な臨床的障害としてのDLBの同定と認識についての以前の報告書以来、かなりの進歩が達成された。その期間、DLBはレビー小体病を伴う認知症(Major Neurocognitive Disorder with Lewy Bodies)としてDSM-5に導入された。背景に存在するDLBの神経生物学と病態生理学を解明する、対症療法的薬剤と疾患修飾的薬剤の両方の臨床試験を開発して実施する、世界中の患者と介護者が疾患とその予後、利用可能な最良の治療法、現在進行中の研究、そして適切な支援を得る方法についての情報を得る手助けをする喫緊の必要性がある。

    コメント:
     本論文にはDLBコンソーシアムのメンバーとして、5人の日本人の先生方が名を連ねています。本改訂に日本人研究者の業績が多く反映されているということです。DLBの臨床診断基準では、必須の中心的特徴として「進行性の認知機能低下により、生活に支障をきたしている」という認知症としての必須要件があり、さらにいくつかの中核的特徴と指標的バイオマーカーを要求します。
     先の論文要約に「REM睡眠行動障害と123I- MIBG心筋シンチグラフィーに診断的重み付けを増やし・・・」とありましたが、4つある中核的特徴の一つにREM睡眠行動障害が、3つある指標的バイオマーカーの一つに123I- MIBG心筋シンチグラフィーが含まれることになりました。「臨床特徴と診断バイオマーカーを明確に区別し・・・」とも書かれてありましたが、REM睡眠行動障害は臨床特徴、123I- MIBG心筋シンチグラフィーは診断バイオマーカーと考える、ということです。しかし、REM睡眠行動障害で認めうる「睡眠ポリグラフ検査で筋活動低下を伴わないレム睡眠」という検査所見は、指標的バイオマーカーとして別に含めるところは興味深いですね。
     Probable DLBは「ほぼ確実なDLB」とPossible DLBは「疑いDLB」ですが、DSM-5ではProbable DLBは「確実なDLB」となっています。どちらでもいい話ですが、病理で確かめられたDefinite DLBとの違いを認識していれば問題なしでしょう。

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自閉症とてんかん:地域住民ベースの全国コホート研究
    Sundelin HE, et al. Neurology 2016; 87: 192-7.
    Autism and epilepsy: A population-based nationwide cohort study.

    論文要約:
    <目的>
     てんかんを持つ人、および共通の原因を特定するために第一親等の親族における、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)のリスクを調べること。
    <方法>
     スウェーデン患者登録から、てんかんを持つ85,201人、およびその同胞80,511人と子孫98,534人を同定した。てんかんを持つ各人は年齢、性別、カレンダー期間、および郡をマッチさせた5人の対照者と比較され、同胞と子孫は対照の同胞と子孫と比較された。てんかんを持つ同胞と子孫は除外された。コックス回帰を用いて、将来のASD診断のハザード比を計算した。ロジスティク回帰が先行するASD診断のオッズ比を計算するために適用された。
    <結果>
     追跡期間中、てんかんを持つ1,381人(1.6%)、対照の700人(0.2%)がASDと診断された。てんかんを持つ人は将来のASDのリスクが増加しており(ハザード比10.49、95%信頼区間9.55-11.53)、小児期にてんかんの診断を受けた人で最も高かった。てんかん患者の同胞(ハザード比1.62、95%信頼区間1.43-1.83)も子孫(ハザード比1.64、95%信頼区間1.46-1.84)も、ASDのリスクが増加していた。子孫におけるリスクは、母親がてんかんを持つ場合に特に高かった(オッズ比1.91、95%信頼区間1.63-2.23)。てんかんはまた、先行するASD診断と関連した(オッズ比4.56、95%信頼区間4.02-5.18)。
    <結論>
     てんかんを持つ人は、ASDのリスクが増加していて、特にてんかんを小児期に発症した人で高い。さらに、ASDはてんかんを持つ人の同胞と子孫により多く、これは共通の原因を示唆している。

    コメント:ASDにおけるてんかんの併存は高いですが、その逆の調査です。

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専門家の診断クリニックを受診した成人アスペルガー症候群における自殺念慮および自殺計画または企図:臨床コホート研究
    Sarah Cassidy, et al. Lancet Psychiatry 2014; 1: 142-47.
    Suicidal ideation and suicide plans or attempts in adults with Asperger’s syndrome attending a specialist diagnostic clinic: a clinical cohort study.

    論文要約:
    <背景>
     成人のアスペルガー症候群はうつ病としばしば関連するが、この臨床グループで自己報告される自殺念慮および自殺計画または企図の生涯経験を探求した研究はほとんどない。我々は、英国における患者の臨床コホートにおける有病率を評価することを目的とした。
    <方法>
     我々はこの臨床コホート研究で、英国で、2004年1月23日から2013年7月8日の間に、ある専門家の診断クリニックにおいてアスペルガー症候群と新たに診断された成人からの臨床調査データを遡及的に分析した。患者は臨床評価の前に、自閉的特性と共感性の自己報告式測定とともに、うつ病、自殺念慮、および自殺計画または企図の生涯経験を記録する自己報告式の質問紙に回答した。我々は、一般住民および他の臨床グループにおける自殺念慮率が公表されているサンプルの自殺念慮率と比較した。また、うつ病、自閉的特性、共感性、および自殺念慮および自殺計画または企図の尤度との関連を評価した。
    <結果>
     研究期間に、374人の成人(256人の男性と118人の女性)がアスペルガー症候群と診断された。367人の回答者のうち243人(66%)が自殺念慮の自己報告を行い、365人の回答者のうち127人(35%)が自殺の計画または企図を、368人の回答者のうち116人(31%)がうつ病を自己報告した。アスペルガー症候群を持つ成人は、一般の英国住民サンプル(オッズ比9.6、95%信頼区間7.6-11.9、p<0.0001)、一つか二つ、またはそれ以上の身体疾患を持つ人々(p<0.0001)、あるいは精神病性の病気を持つ人々(p=0.019)と比べて、自殺念慮の生涯経験を報告する人が有意に多かった。うつ病を伴わないアスペルガー症候群と診断された人と比べて、うつ病とアスペルガー症候群をともに持つ人は、自殺念慮、および自殺計画または企図を報告しやすかった(p<0.0001)。
    <考察>
     我々の結果は、アスペルガー症候群を持つ成人の自殺念慮率は高いとする事例報告、およびこの疾患を持つ成人の自殺傾向に対する重要な潜在的リスクとしてのうつ病を支持している。アスペルガー症候群を持つ成人は、しばしば二次性のうつ病のリスク要因(例:社会的孤立や疎外、そして失業)を多く有するため、我々の結果は、この臨床グループにおけるリスクを軽減する適切なサービス計画と支援の必要性を強く主張する。

    コメント:本論文の最後の著者は、日本でも有名なSimon Baron-Cohen博士ですね。

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コクラン・レビュー:広場恐怖を伴う/伴わない成人のパニック症/パニック障害に対する心理療法と薬物療法
    Hissei Imai, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews. First published: 12 October 2016. Editorial Group: Cochrane Common Mental Disorders Group.
    Psychological therapies versus pharmacological interventions for panic disorder with or without agoraphobia in adults.

    分かりやすい言葉での要約:
    1. このレビューがなぜ重要か? パニック症/パニック障害はありふれた疾患であり、精神的健康に対して有害である。心理療法と薬物療法(ふつうは抗うつ薬、またはベンゾジアゼピン類)が、パニック症/パニック障害に対して有効である。しかし、これら2つの治療形態の優位性と認容性に関する最新のレビューはなく、このようなレビューはパニック症/パニック障害の治療計画の改善のために不可欠である。
    2. だれがこのレビューに興味を持つか? 成人の患者、精神保健サービスで働く専門家、および一般の臨床家。
    3. このレビューが答えようとしている疑問は何か?
      このレビューは次の疑問に答えることを目的とする。
      心理療法は抗うつ薬やベンゾジアゼピン類より有効か?
      心理療法は抗うつ薬やベンゾジアゼピン類より認容性が高いか?
    4. どのような研究がこのレビューに含まれるのか? 我々は、広場恐怖を伴う/伴わない成人のパニック症/パニック障害の治療のための、心理療法と抗うつ薬またはベンゾジアゼピン類を比較した、1950年から2015年9月までに公表されたすべての試験を見出すために、データベースを検索した。レビューに含まれるためには、研究が無作為化比較試験であり、広場恐怖を伴う/伴わないパニック症/パニック障害の明確な診断を有する人を含む必要があった。我々は、レビューに全部で966人の参加者からなる16の研究を含めた。これらの研究からのエビデンスの全体的な質を、「非常に低い」から「ほどほど」に評価した。
    5. レビューからのエビデンスは、私たちに何を教えてくれるのか? 治療の有効性と認容性に関して、薬剤に対する心理療法の優位性と劣位性は不明である。長期の有効性と生活の質に関する情報を報告している研究はなかった。
    6. 次に何をすべきか? レビューの著者らは、さらなる研究が、バイアスの少ない心理療法を使って、長期のアウトカムを評価し、研究バイアスのリスクに関連する情報を報告することを推奨する。

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成人患者の注意欠如・多動症(ADHD)治療におけるアトモキセチン錠と、浸透圧を利用した放出制御システムを応用したメチルフェニデート徐放錠のネットワークメタ解析
    Bushe C, et al. J Psychopharmacol 2016; 30: 444-58.
    A network meta-analysis of atomoxetine and osmotic release oral system methylphenidate in the treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder in adult patients.

    論文要約:
     アトモキセチン錠と浸透圧を利用した放出制御システム(osmotic release oral system 、OROS)を応用したメチルフェニデート徐放錠を比較する力を与える直接対決の臨床試験が欠落していることから、ネットワークメタ解析のような間接的証拠を含む方法による治療比較が必要となる。注意欠如・多動症(ADHD)を持つ成人におけるアトモキセチンとOROSメチルフェニデートの相対的治療効果を評価するネットワークメタ解析が実施された。ADHD特異的尺度によって測定される有効性の改善を要約し、標準化平均値差を計算するためにコーエンのd値を使用した。あらゆる原因による中断を解析した。
     結果、プラセボに対する効果量(標準化平均値差、95%信頼区間)について、アトモキセチン(0.46、0.36-0.56)とOROSメチルフェニデート(0.51、0.40-0.63)の間に有意な差を認めなかった(アトモキセチンとOROSメチルフェニデートのプラセボに対する効果量の標準化平均値差0.05、95%信頼区間-0.18-0.08)。すべての解析を通して、これらの薬剤で治療された患者は、プラセボで治療された患者よりも良く反応した。アトモキセチンとOROSメチルフェニデートの間に、中断率の有意な差を認めなかった(オッズ比0.85、95%信頼区間、0.53-1.35)。研究間の異質性は、全体として低かった。このネットワークメタ解析の結果は、アトモキセチンとOROSメチルフェニデートの成人における有効性に有意な違いはないことを示唆している。臨床ガイドラインには、これら最近のデータを反映させた推奨が求められるかもしれない。

    コメント:著者にEli Lilly社の研究者を含むネットワークメタ解析論文ですが、「アトモキセチンとOROSメチルフェニデートの成人における有効性に有意な違いはない」という結論です。

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自殺企図のリスクとメチルフェニデート治療の関連
    Kenneth K. C. Man, et al. JAMA Psychiatry. Published online July 26, 2017.
    Association of Risk of Suicide Attempts With Methylphenidate Treatment.

    論文要約:
    <重要性>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)を持つ患者は自殺を試みるリスクが高い。メチルフェニデート塩酸塩といった精神刺激薬は、ADHDに対する治療として最も一般的であるが、その治療目的の使用と自殺の関連は不明である。
    <目的>
     メチルフェニデートと自殺企図リスクの関連を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     2001年1月1日から2015年12月31日の間にメチルフェニデートを用いて治療された6歳から25歳の25,629人を同定するために、一般住民に基づくHong Kong Clinical Data Analysis & Reporting Systemからの電子診療録データベースが使われた。自殺を企図した人が解析に含まれた。患者の時間変動的特性を制御するために、自己対照症例シリーズデザインが使われた。
    <主要評価項目と測定>
     非曝露期間と比較した、患者がメチルフェニデートに暴露された期間の自殺企図の相対発生率。
    <結果>
     メチルフェニデートの処方を受けた25,629人の患者のうち、154人が研究期間内に自殺企図をはじめて記録し、これらの人のうち、111人(72.1%)は男性、ベースラインの平均(標準偏差)年齢は7.15(2.19)歳であった。メチルフェニデート治療の間の自殺企図の全発生率は1万人あたり9.27人であった。自殺企図のリスクの増加が、メチルフェニデート治療が開始される前の90日間に見出された(発生率比6.55、95%信頼区間3.37-12.72)。発生率比は、メチルフェニデート治療中のベースライン水準に回復する前の(発生率比1.35、95%信頼区間0.77-2.38)、メチルフェニデート治療の最初の90日間でも依然上昇していた(発生率比3.91、95%信頼区間1.62-9.42)。メチルフェニデート治療の最初の90日間のリスクを、それに先行する90日間と比較すると、自殺企図の発生は上昇していなかった(発生率比0.78、95%信頼区間0.26-2.35)。
    <結論と関連性>
     自殺企図の発生率は、メチルフェニデート治療の開始直前の期間においてより高かった。リスクはメチルフェニデート治療の開始直後の期間においても依然上昇しており、メチルフェニデート治療の中断の期間にベースライン水準に戻った。治療前に観察された自殺企図のより高いリスクは、医療受診を引き起こしてADHD治療の開始を決意させる新規の精神科的症状の反映かもしれない。ゆえに、この研究の結果は、メチルフェニデート治療と自殺企図の因果関係を支持しない。

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脳白質構造と自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)の関連
    Yuta Aoki, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 6, 2017.
    Association of White Matter Structure With Autism Spectrum Disorder and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder.

    論文要約:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)と注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の間の臨床的重複が増々認識されるようになっているが、背景にある脳機構については今も議論が絶えない。
    <目的>
     脳白質の組織化と、よくある2つの神経発達疾患、すなわちASDおよびADHDの関連を、範疇的および次元的アプローチを通して調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この調査は、ニューヨーク大学ランゴン医療センターの児童青年精神医学部門、外来アカデミック臨床・研究センターにおける拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging、DTI)の横断研究である。参加者はASDを持つ子供、ADHDを持つ子供、または定型発達の子供であった。データ収集は2008年12月から2015年10月まで続けられた。
    <主要評価項目と測定>
     主要測定は、線維束に基づく空間統計(tract-based spatial statistics)を経て分析されたボクセル単位のfractional anisotropy (FA)であった。加えて、ボクセル単位のDTI測定量であるradial diffusivity (RD)、mean diffusivity (MD)、axial diffusivity (AD)、mode of anisotropy (MA)を含めた。
    <結果>
     この横断的DTI研究では、年齢と性別を集団として一致させるように質を保障して、より大きなサンプル選ばれた174人の子供が分析された。質の管理後に、ASDを持つ子供69人 (平均 [標準偏差] 年齢、8.9 [1.7] 歳;男子、62人)、ADHDを持つ子供55人(平均 [標準偏差] 年齢、9.5 [1.5] 歳;男子、41人)、定型発達の子供50人(平均 [標準偏差] 年齢、9.4 [1.5] 歳;男子、38人)が分析された。
     範疇的分析は、主として脳梁におけるいくつかのDTI測定量(FA、MD、RD、AD)に対するASD診断の有意な影響を明らかにした。例えば、FA分析は脳梁後部における4,179ボクセルからなるクラスターを同定した(TFCE FEW corrected P < .05)。
     次元的分析は、診断に関わりなく、すべての人にわたって、ASD重症度と、脳梁とそれを超えるより拡大した部位(例:放線冠と下縦束)におけるFA、RD、MDとの関連を明らかにした。例えば、FA分析は全部で12,121個のボクセルを含むクラスターを明らかにし(TFCE FEW corrected P < .05)、それは社会的反応性尺度における親評点と有意に関連した。ASD特性のもう一つの独立した測定(children communication checklist第2版)を用いても、類似の結果を認めた。ADHD特性の総重症度はDTI測定量とは有意に関連しなかったが、不注意得点は、716個のボクセルサイズを持つクラスターの脳梁ADと関連した。これらすべての結果は、DTIPrepソフトウェアを用いた動きアーチファクトのアルゴリズム補正に対して頑強であった。
    <結論と関連性>
     次元的分析は、ASD特性および不注意と、脳白質組織化の指標との関連のより完全な描像を提供した。この診断横断的アプローチは、脳白質構造を神経発達的症状に結びつける次元的関係を明らかにすることができる。

    コメント:最近は精神疾患の神経画像研究でも、診断横断的アプローチが活発ですね。

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不安の予防における心理的および/または教育的介入の有効性:系統的レビュー、メタ解析、メタ回帰
    Moreno-Peral P, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 6, 2017.
    Effectiveness of Psychological and/or Educational Interventions in the Prevention of Anxiety: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression.

    論文要約:
    <重要性>
     我々の知る限り、多様な母集団における不安の予防のための心理的および/または教育的介入の有効性を評価する目的で実施された系統的レビューやメタ解析はない。
    <目的>
     多様な母集団タイプで、不安の予防のための心理的および/または教育的介入の有効性を評価すること。
    <データの出所>
     系統的レビュー、およびメタ解析が、開始から2017年3月までのMEDLINE、PsycINFO、Web of Science、EMBASE、OpenGrey、Cochrane Central Register of Controlled Trials、および他の情報源の文献検索に基づいて実施された。
    <研究選択>
     妥当性が検証された評価法による測定で、ベースラインにおいて不安がない多様な母集団において、不安の予防のための心理的および/または教育的介入の有効性を評価した無作為化臨床試験の検索が実施された。設定や言語の制約は設けなかった。適切性基準の評価は、我々のうちの2人によって行われた。
    <データ抽出と統合>
     データ抽出、およびバイアスのリスクの評価(Cochrane Collaborationの手法)は、我々のうちの2人によって行われた。プールされた標準化平均値差(standardized mean differences、SMDs)が、ランダム効果モデルを用いて計算された。異質性はランダム効果メタ回帰によって探索された。
    <主要評価項目と測定>
     不安症/不安障害症例の新規発生、あるいは妥当性が検証された評価法で測定された不安症状の減少。
    <結果>
     3273の論文要約がレビューされ、うち131が全テキストのレビューのために選ばれた。メタ解析計算は36の比較に基づいた。プールされたSMDは-0.31(95% CI, -0.40 to -0.21; P < .001)で、異質性はかなり高かった(I2 = 61.1%; 95% CI, 44% to 73%)。公表バイアスの証拠があったが、その効果量は調整後もほとんど変化しなかった(SMD, -0.27; 95% CI, -0.37 to -0.17; P < .001)。感度分析では、効果量に関する結果の頑強性が確認された。5つの変数を含むメタ回帰では、研究間変動の99.6%が説明され、より高いSMD(対照:待機リスト)(β = -0.33 [95% CI, -0.55 to -0.11]; P = .005)と、より小さいサンプルサイズ(対数)(β = 0.15 [95% CI, 0.06 to 0.23]; P = .001)の関連を示していた。バイアスのリスク、家庭医によって提供された介入、標準化された面接の使用とアウトカムの関連は観察されなかった。
    <結論と関連性>
     心理的および/または教育的介入は、評価されたすべての母集団において、不安予防に対して僅かではあるが、統計的に有意な有益性を認めた。より大規模なサンプルと積極的な関与を伴う対照を持つ研究がさらに必要であるものの、これらの結果は、不安予防プログラムがもっと開発され、実施されるべきであることを示している。

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家族リスクを持つ若者における双極スペクトラム障害の新規発症を予測する個人レベルのリスク計算法の評価
    Danella M. Hafeman, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 841-847.
    Assessment of a Person-Level Risk Calculator to Predict New-Onset Bipolar Spectrum Disorder in Youth at Familial Risk.

    論文要約:
    <重要性>
     双極スペクトラム障害(bipolar spectrum disorder、BPSD)の高いリスクにある個人の早期発見は、臨床的および研究的見地から重要である。以前の研究は双極性の前駆症状の存在を見出した一方で、個人についての予測的意味については評価していない。
    <目的>
     BPSDの家族リスクを持つ若者における、5年発症リスクを予測するリスク計算法を確立すること。
    <設計・設定・参加者>
     ピッツバーグ双極性子孫研究(the Pittsburgh Bipolar Offspring Study)は、双極Ⅰ型およびⅡ型障害を持つ親の子孫の、現在進行中の地域ベースの前向きコホート調査である。参加者は2001年11月から2007年7月の間に募集され、平均追跡期間は9年を超える。研究参加者の募集は終了したが、追跡はまだ続いている。今回の解析には、双極Ⅰ型もしくはⅡ型障害を持つ親の子孫(6から17歳)で、ベースラインではBPSDを発症していない参加者を含めた。
    <主要評価項目と測定>
     この研究では 気分と不安の測定、全般的な心理社会的機能、双極性の親の気分障害発症年齢、および各受診時年齢を含む時間-事象モデルが、どの程度BPSDの新規発症を予測するかを検証した。縦断データを十分利用するために、この研究では個人内に集積させることで各受診を個別に評価した。時間依存的曲線下面積(time-dependent area under the curve、AUC)を用いて、5年リスクを予測する識別が評価され、内部妥当性の評価は1000回のブートストラップ・リサンプル(bootstrapped resamples)を用いて行われた。補正はBPSDの新規発症の観測確率と予測確率の比較することで評価された。
    <結果>
     リスクを有する412人の子孫(202人[49.0%]:女性)の、平均(標準偏差)受診年齢は12.0(3.5)歳、BPSDの新規発症の平均(標準偏差)年齢は14.2(4.5)歳であった。そのうち、54人(13.1%)が追跡期間中にBPSDを発症し(18人が双極Ⅰ型かⅡ型障害)、これらの参加者には全部で1058回の受診があり、67(6.3%)受診が次の5年以内の新規BPSD発症に先行していた。過剰適合(overfitting、訳注:訓練データに対して学習されているが、未知データに対しては適合できていない状態)を考慮した妥当性検証を用いて、モデルは移行する受診(converting visit)と移行しない受診(nonconverting visit)の良好な識別を提供した(AUC, 0.76; bootstrapped 95% CI, 0.71-0.82)。
     アウトカムの重要な単変量予測因子(AUC range, 0.66-0.70)は、躁病、うつ病、不安、および気分不安定の次元的測定、心理社会的機能、親の気分障害発症年齢であった。
    <結論と関連性>
     このリスク計算法は、BPSDの家族リスクを持つ若者が、次の5年以内に新規のBPSDを発症する確率を評価する実際的手段を提供する。このような手段は、モニタリング頻度と治療オプションを教えるために臨床医によって、極めて高い移行リスクを持つ潜在的参加者をうまく同定するために調査研究のために利用されるかもしれない。

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特定の脳部位を標的とした経頭蓋磁気刺激(TMS)は統合失調症の幻声を鎮静させる
    Liam Davenport. Medscape Psychiatry 2017, September 07.
    Targeted TMS May Silence Voices in Schizophrenia: Coverage from the 30th European College of Neuropsychopharmacology (ECNP) Congress.

    レポートの一部要約:パリ発
     新しい研究によると、言語関連の脳領域に正確に導かれた反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)が、統合失調症患者の聴覚性幻覚または幻聴(auditory verbal hallucinations、AHV)を鎮静化するのに役立つかもしれない。その技術を検証する初めての無作為化比較試験の結果は、側頭葉のある領域を標的とする高頻度rTMSが、シャム(偽)治療と比べて有効にAHVを減少させることを示した。
     研究者の一人Sonia Dollfus博士(Service de Psychiatrie, Caen University Hospital, France)は、結果の意味について、“今や我々は、統合失調症のAVHに関連する特異的な解剖学的脳領域を発見したと、ある程度の確実性をもって言うことができる”と述べた。そして“第二に我々は、TMSが長期間にわたってこれらの患者を治療する最善の道であるか否かを理解する前に、長い道のりが横たわっているとしても、AVHに苦しむ少なくとも一部の人に高頻度TMSは有効であることを示した”と続けた。研究結果は、第30回 European College of Neuropsychopharmacology (ECNP) 会議にて発表された。

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経鼻投与のオキシトシンが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するかもしれない
    Liam Davenport. Medscape Psychiatry 2017, September 06.
    Intranasal Oxytocin May Prevent PTSD: Coverage from the 30th European College of Neuropsychopharmacology (ECNP) Congress.

    レポートの一部要約:パリ発
     一般に利用可能なホルモンの経鼻スプレーが、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)の発症を予防し、既にPTSDを持っている人の症状を軽減させるのに役立つ可能性を、複数の臨床研究が示している。オランダ・アムステルダム大学のアカデミック・メディカル・センター、Miranda Olff博士によれば、経鼻投与のオキシトシンは、ベースラインのトラウマ症状が高レベルにある救急診療部の患者における、PTSDの発症確率を有意に減少させた。研究結果は、第30回 ECNP会議にて発表された。

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コクラン・レビュー:精神病性うつ病に対する薬物療法
    Jaap Wijkstra, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews. First published: 30 July 2015. Editorial Group: Cochrane Common Mental Disorders Group.
    Pharmacological treatment for psychotic depression.

    分かりやすい言葉での要約:
     精神病性うつ病(Psychotic depression)は、精神病性の特徴(つまり妄想および/または幻覚)を伴う重度のうつ病である。精神病性うつ病に対する最も有効な薬物治療の周囲には「抗うつ薬単独、抗精神病薬単独、あるいは抗うつ薬と抗精神病薬の併用」と、不確実性が存在する。このレビューの目的は、精神病性うつ病の治療のために使用されてきた、様々な型の薬物治療の有効性を比較することである。我々はこれを、精神病性うつ病に対する薬物治療を調べたすべての無作為化比較試験(randomised controlled trials、RCTs)を解析することで行った。これらの試験は、多岐にわたる方法で検索された。
     結果、3659の研究が同定されたが、最終的にはたった12のRCTのみが我々の包含基準を満たした。これら試験には、全部で929人の参加者が含まれていた。これら試験から我々は、精神病性うつ病について、抗うつ薬と抗精神病薬の併用が、いずれか一方による治療より有効である証拠を見出した。しかしながら、情報は少ない人数の参加者からなる大変少ない数のRCTに由来するため、この結論に対する我々の確信には限りがある。加えて、RCT間で参加者のタイプや研究デザインが異なることは、それらの結果を一般化できないことを意味している。

    コメント:同様の結論は、過去の系統的レビューとメタ解析で示されていました(Farahani A and Correll CU. J Clin Psychiatry 2012; 73: 486-96)。日本うつ病学会の治療ガイドラインでも、精神病性うつ病に対しては抗うつ薬と抗精神病薬の併用が推奨されています。さらに、精神病症状が比較的軽度であれば、抗うつ薬単剤で治療を開始することもあり得るとして、効果不十分の場合に抗精神病薬を追加する、といった臨床の現状にそった記述もあります。

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統合失調症の初回エピソード患者の急性期治療に対する抗精神病薬:ペアワイズおよびネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
    Zhu Y, et al. Lancet Psychiatry 2017; 4: 694-705
    Antipsychotic drugs for the acute treatment of patients with a first episode of schizophrenia: a systematic review with pairwise and network meta-analyses.

    論文要旨:
    <背景>
     統合失調症の初回エピソードは、長きにわたって患者に苦痛と障害を与えるこの病気の、極めて重要な段階と言える。どの薬剤を使用すべきかについて、薬剤間のすべての直接的または間接的比較がなされていないため、依然として結論が出ていない。有効性と認容性のペアワイズおよびネットワークメタ解析を用いた系統的レビューを施行した。
    <方法>
     我々は、2016年11月17日までに公表された初回エピソード統合失調症の急性期治療に対する抗精神病薬の無作為化比較試験について、MEDLINE、Embase、PsycINFO、Cochrane Library、PubMed、Biosis、およびClinicalTrials.govを検索した。我々の主要評価項目は、症状の全体的変化であった。副次評価項目は、陽性および陰性症状、カテゴリー分類された治療反応、あらゆる理由の、そして治療が無効のための研究からの脱落、パーキンソン症状を治療する薬剤の使用、体重増加、鎮静、プロラクチン放出の増加、全般的機能、およびQOLの変化であった。我々は95%信頼区間(CI)と標準化平均値差(SMD)またはオッズ比(OR)を計算するための変量効果モデルを用いたメタ解析を行った。
    <結果>
     我々は、2669人の参加者を含む12の抗精神病薬の19の関連する無作為化比較試験を同定した。これらの研究のうち13は、主要評価項目に関するデータを示していた。
    症状の全体的減少については、アミスルピリド(SMD -0.37, 95% CI -0.61 to -0.14)、オランザピン(-0.25, -0.39 to -0.12)、ジプラシドン(-0.25, -0.48 to -0.01)、およ びリスペリドン(-0.14, -0.27 to -0.01)は、ハロペリドールと比較して有意に有効であったが、証拠の質は「非常に低い」から「ほどほど」であった。
     症状の減少について、アミスルピリドはクエチアピンより優れていた(SMD -0.25, 95% CI -0.50 to -0.01)。陰性症状の減少について、オランザピンはハロペリドールおよびリスペリドンより優れていた。
     すべての原因による中断という点において、いくつかの第2世代抗精神病薬はハロペリドールより優れていた。オランザピンは、パーキンソン症状を治療する薬の少なくとも一つの使用と関連し、クエチアピンは、ハロペリドール、アリピプラゾール、リスペリドン、およびオランザピンより少ないアカシジアと関連したが、また証拠の質は「非常に低い」から「低い」であった。モリオドンは、体重増加の点で、リスペリドン、ハロペリドール、およびオランザピンより、プロラクチン放出の増加の点で、リスペリドンより優れていた。
    <考察>
     ハロペリドールは初回エピソード統合失調症の急性期治療の次善の治療オプションであるようだが、第2世代抗精神病薬間の差はほとんど無かった。証拠は概して質が低く、各々薬剤に対する患者数は少なかった。従って、治療の選択は主にとして副作用によるべきである。
    <研究資金>
     German Federal Ministry of Education and Research.

    コメント:第2世代抗精神病薬の主作用については、「効果薬剤間の差はほとんど無い」といった結論が多い気がします。

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統合失調症における長期の抗精神病薬治療:無作為化比較試験の系統的レビューとネットワークメタ解析
    Zhao YJ, et al. Br J Psychiatry Open 2016; 2: 59-66.
    Long-term antipsychotic treatment in schizophrenia: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials.

    論文要旨:
    <背景>
     統合失調症と診断された患者の治療について、有害作用を最小化する際の再燃を予防する抗精神病薬の比較長期有効性は、臨床的関心事であり、このレビューの企画を促した。
    <目的>
     抗精神病薬の比較長期有効性を評価すること。
    <方法>
     我々は、統合失調症における再燃リスクを減少させるための抗精神病薬単剤治療の無作為化比較試験(RCT)報告について、電子データベースを系統的に検索した。18種類の抗精神病薬とプラセボの、ネットワークメタ解析を施行した。
    <結果>
     56報告、10,177患者の研究が含まれ、治療期間は平均48週(範囲:4~156週)であった。オランザピンはクロルプロマジン(odds ratio (OR) 0.35, 95% CI 0.14-0.88)またはハロペリドール(OR=0.50, 95% CI 0.30-0.82)より、フルフェナジンデカン酸エステルはクロルプロマジンより(OR=0.31, 95% CI 0.11-0.88)、再燃予防において有意に有効であった。フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドール、ハロペリドールデカン酸エステル、およびトリフルオペラジンは、オランザピンまたはクエチアピンより多くの錐体外路系有害作用を生じさせた。オランザピンは他の薬剤より多い体重増加と関連した。
    <結論>
     クロルプロマジンに対するオランザピンとフルフェナジンデカン酸エステルの明らかな優位性を除いて、大抵の薬剤は再発予防に関して中間的な有効性を示し、それらの間の差異は小さかった。定型抗精神病薬は有害な神経作用をもたらし、オランザピンは体重増加と関連した。本結果は、慢性の精神病性障害を持つ患者のための、エビデンスに基づく治療選択に貢献するかもしれない。

    コメント:本論文の要旨はシンプルで、統計量の記載は必要最小限です。このテーマに関連して、2017年に各国の著名な先生方による『統合失調症の臨床経過に対する抗精神病薬の長期効果』(Goff DC, et al. Am J Psychiatry 2017; 174: 840-849)が公表され、「脳体積の減少やドパミン受容体の過感受性を引き起こすではないか等、抗精神病薬による治療が統合失調症の長期的アウトカムへ負の影響を与える可能性への懸念が一部にあるが、その可能性は支持されない」と結論しています。
     ならばどの抗精神病薬を使えば良いのか、という臨床現場の切実な問いに対するこのネットワークメタ解析の答えは、「大抵の薬剤は再発予防に関して中間的な有効性を示し、それらの間の差異は小さかった」でした。

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キノコ消費と高齢日本人における認知症:大崎市民コホート2006研究
    Shu Zhang, et al. J Am Geriatr Soc 2017; 65: 1462-1469.
    Mushroom Consumption and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study.

    論文要旨:
    <背景>
     生体(in vivo)研究と体外(in vitro)研究の両方が、食用のキノコが認知障害に対する予防効果を持つ可能性を示してきた。しかしながら、キノコ消費と地域住民に見出される認知症(incident dementia:以下、偶発認知症と直訳する)の関係を調べたコホート研究はない。
    <目的>
     我々は、高齢日本人のある地域集団におけるキノコ消費と偶発認知症の関係を調べた。
    <設計>
     前向きコホート研究。
    <設定>
     大崎市民コホート2006研究。
    <参加者>
     東北日本の大崎市に住む65歳以上の住民13,230人。
    <測定>
     一日当たりのキノコ消費、他のライフスタイル要因、および認知症発症率。
    <結果>
     5.7年間の認知症発症率は、年8.7%であった。キノコを週に1回未満摂取した参加者と比較して、キノコを週に1から2回または3回以上摂取した参加者における偶発認知症の多重補正ハザード比(95%信頼区間)は、それぞれ0.95(0.80-1.10)と0.81(0.69-0.95)であった(P-trend <.01)。その逆連関は、追跡の最初の2年間に起きた参加者の認知症発症を除外した後も引き続き認めた。その逆連関は、野菜摂取の点で統計学的な違いはなかった(P-interaction = .10)。
    <結論>
     このコホート研究は、頻繁なキノコ消費が、あり得る交絡因子を調整後も、偶発認知症の低いリスクと有意に関連することを示唆している。

    コメント:東北大学の大崎市におけるコホート研究です。キノコのどのような成分がリスクを軽減させるのか、興味があるところです。

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行動上の症状を持つ入院患者に対する個別的活動プログラム(TAP-H)の実行可能性
    Laura N. Gitlin, et al. Gerontologist 2017; 57: 575-584.
    Feasibility of the Tailored Activity Program for Hospitalized (TAP-H) Patients With Behavioral Symptoms.

    論文要旨:
    <目的>
     行動障害のために入院した認知症患者への対処を改善するための個別的活動プログラム(Tailored Activity Program for Hospitals、TAP-H)の実行可能性を評価すること。
    <設計・方法>
     TAP-Hは、患者の興味と能力に合わせた活動を発展させる最大11回までの院内セッションからなる。介入実施者(作業療法士)がセッションの長さ、患者の関わり具合(N = 20)、活動を利用しようとするスタッフの意欲(N = 4)を計測した。家族へのインタビュー(N = 20)によって、入院時の患者の行動と、退院1カ月後のTAP-Hへの満足度を同定した。複数行動観察(63回のビデオセッション)の時系列デザインによって、標準活動(ベースライン)における感情的反応、言語的反応、非言語的行動反応が、治療セッションと比較された。
    <結果>
     患者一人あたりの治療セッションの平均回数は、8.00(標準偏差2.71、範囲3-13)であった。1回のセッションに費やされた平均時間は、38.18(標準偏差10.01、範囲19.09-57.50)であった。介入実行者は、治療セッションを通して高い患者の関与を観察した。観察データはベースラインから介入セッションにかけて、喜びと肯定的身振りが増加し、不安/怒り、否定的発話、および否定的な非言語的行動が減少したことを明らかにした。スタッフはプログラムに対する肯定的な気持ちが増し、家族は在宅で利用される活動の59.4%に対して高いプログラム満足度を表明した。
    <考察>
     TAP-Hは認知症患者の行動治療において、施設に基盤を置くスタッフを統合する特色ある共同的ケアモデルであり、結果として感情を改善し、否定的行動を減らした。TAP-Hは、日々の院内ケアと支払機構に導入することが可能である。不適切な薬物使用を減らす有効性と、入院中はスタッフ、退院後は家族によって継続される活動利用を強化する方略を評価する、さらなる努力がなされるべきである。

    コメント:超高齢化社会である今の日本において、このTAP-Hが目的とする「行動障害のために入院した認知症患者への対処」というのは、精神科病院で最も主要な入院理由の一つになっていますね。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対する認知行動療法(CBT)のメタ解析
    Knouse LE, et al. J Consult Clin Psychol 2017; 85: 737-750.
    Meta-analysis of cognitive-behavioral treatments for adult ADHD.

    論文要約:
    <目的>
     我々はこの増大する文献からの研究結果を、臨床や研究で最大利用する目的で、対照と比較しての効果および治療前後の効果を調べるために、成人の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)に対する認知行動療法(cognitive-behavioral treatment、CBT)研究のメタ解析を施行した。
    <方法>
     面接によって、または標準的評価尺度を用いて決定されたDSMのADHD基準を満たす成人を検証し、ベースラインと治療後におけるADHD症状、または関連する機能障害を測定した適切な研究を含めた。2015年12月までの利用可能な、公表または未公表の情報源より得た32研究からのデータを解析した。効果量計算は最大896人の参加者を含んだ。
    <結果>
     変量効果モデルを用いて、我々はCBTが治療前後については「中程度~大きい」効果(自己報告されたADHD症状: g = 1.00; 95% 信頼区間 [CI: 0.84, 1.16]; 自己報告された機能: g = .73; 95% CI [0.46, 1.00])を、対照との比較においては「小さい~中程度」の効果(自己報告されたADHD症状: g = .65; 95% CI [0.44, 0.86], 自己報告された機能: g = .51; 95% CI [0.23, 0.79])を持つことを見出した。効果量は、ほとんどのアウトカム測定で異質性を認めた。積極的な対照群(active control groups)を有する研究では、効果量はより小さかった。参加者の服薬状態も、治療前後の効果を薄める治療フォーマットも、より長期の治療も、よいアウトカムとは関連しなかった。
    <結論>
     成人のADHDに対する現行のCBTは、確立した治療とみなされている小児のADHDに対する行動療法と同程度の効果量を示している。ADHDを持つ成人について、経験的に支持された治療関連の変化原則を同定することに焦点を当てた、さらなる治療の開発が必要である。我々は、研究者がメタ解析的なレビューに従ったやり方で、今後の研究結果を報告することを奨める。

    コメント:精神科ではあまり注目されないJ Consult Clin Psycholという心理系の学術誌ですが、成人のADHDに対するCBTのメタ解析ということで、取り上げてみました。

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軽度認知障害または認知症を持つ高齢成人におけるコンピュータを用いた認知トレーニング:系統的レビューとメタ解析
    Hill NT, et al. Am J Psychiatry 2017; 174: 329-340.
    Computerized Cognitive Training in Older Adults With Mild Cognitive Impairment or Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis.

    論文要約:
    <目的>
     かつてのメタ解析において、コンピュータを用いた認知トレーニング(computerized cognitive training、CCT)は、高齢成人の認知に対する安全で有効な介入であることが示された。しかし、有効性は人口集団と認知領域によって異なり、軽度認知障害または認知症を持つ人におけるコCCTの有効性については知られていない。
    <方法>
     著者らは、軽度認知障害または認知症を持つ高齢成人におけるCCTの無作為化比較試験について、2016年7月1日までのMedline、Embase、PsychINFO、CINAHL、およびCENTRAL を検索した。全体的認知、個々の認知領域、心理社会的機能、および日常生活活動が、軽度認知障害と認知症について別々に集められた。
    <結果>
     17の試験における軽度認知障害の認知に対する全体的な効果は中等度であった(Hedgesのg値、0.35;95%信頼区間、0.20-0.51)。公表バイアスの証拠はなく、能動的な対照を用いた試験と受動的な対照を用いた試験の間の違いもなかった。全般的認知、注意、ワーキングメモリー、学習、および記憶(非言語的記憶を除く)、および心理社会的機能(抑うつ症状を含む)に対する、「小から中程度」の効果が見出された。
     認知症については、統計学的有意差を全体的認知と視空間技能に関して認めたが(k値、11;g値、0.26;95%信頼区間、0.01-0.52)、それは仮想現実、または任天堂Wiiの3つの試験によるものであった。
    <結論>
     CCTは、軽度認知障害を持つ人の全般的認知、選択的認知領域、および心理社会的機能に対して有効である。従って、この介入の認知症への移行に対する効果を調べるために、より長期的で大規模な試験が必要である。反対に、認知症を持つ人に対する有効性の証拠は弱く、没入型技術(immersive technology、訳注:取り組む人を取り囲んでトレーニングに没頭させる、仮想現実体験を提供するような技術)の試験に限られている。

    コメント:「CCTは軽度認知障害を持つ人の全般的認知、選択的認知領域、および心理社会的機能に対して有効」というのは良かったと思います。さすがに認知症に対しては・・・

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パニック症、全般性不安症、妊娠中のベンゾジアゼピン治療と不良な出産転帰の関連
    Yonkers KA, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 13, 2017.
    Association of Panic Disorder, Generalized Anxiety Disorder, and Benzodiazepine Treatment During Pregnancy With Risk of Adverse Birth Outcomes.

    <重要性>
     登録データによれば、母親のパニック症、または不安症は一般に、不良な妊娠転帰のリスクを増加させる。しかし、登録簿からの診断は不正確である可能性があり、薬物による治療や母体の物質使用といった潜在的交絡因子を考慮していないかもしれない。
    <目的>
     妊娠中のパニック症または全般性不安症、あるいはこれら状態の治療に使われる薬剤が、不良な母体または新生児の妊娠転帰と関連するか否かを確定すること。
    <設計・設定・参加者>
     2005年7月1日から2009年7月14日に実施されたこのコホート研究では、コネチカット州とマサチューセッツ州の137の産科医院で妊娠17週前に募集された女性が、妊娠28(±4)週と出産後8(±4)週に再度評価を受けた。精神医学的診断は、世界精神保健複合国際診断面接(World Mental Health Composite International Diagnostic Interview)への回答で決定された。評価ではまた、薬物を用いた治療、および物質使用、過去の不良な出産アウトカム、人口統計学的要因といった交絡因子に関する情報が収集された。
    <曝露>
     パニック症、全般性不安症、ベンゾジアゼピン類、またはセロトニン再取り込み阻害薬の使用。
    <主要評価項目と測定>
     母親については、早産、帝王切開、妊娠高血圧性疾患。新生児については、出生時低体重、深刻でない程度の呼吸補助、および人工呼吸器の使用。
    <結果>
     最終分析における2,654人の女性(平均[標準偏差]年齢、31.0[5.7]歳)のうち、大部分は非ヒスパニック系の白人で(1,957人[73.7%])、98人がパニック症、252人が全般性不安症を持つと診断され、67人がベンゾジアゼピン類、293人がセロトニン再取り込み阻害薬を用いて治療されていた。調整モデルにおいて、パニック症も全般性不安症も、母親または新生児の調査対象の合併症と関連しなかった。大抵の薬剤への暴露は、妊娠初期に起きていた。
     母親のベンゾジアゼピン類の使用は、帝王切開(オッズ比2.45、95%信頼区間1.36-4.40)、出生時低体重(オッズ比3.41、95%信頼区間1.61-7.26)、新生児に対する人工呼吸器の使用(オッズ比2.85、95%信頼区間1.2-6.9)と関連した。母親のセロトニン再取り込み阻害薬の使用は、高血圧性疾患(オッズ比2.82、95%信頼区間1.58-5.04)、早産(オッズ比1.56、95%信頼区間1.02-2.38)、深刻でない程度の呼吸補助の利用(オッズ比1.81、95%信頼区間1.39-2.37)と関連した。
     母親がベンゾジアゼピン類による治療を受けると、人口呼吸器の使用率は新生児1,000中61に増加し、妊娠期間は3.6日短縮する。母親がセロトニン再取り込み阻害薬による治療を受けると、妊娠期間は1.8日短縮し、新生児1,000中152人が新たに深刻でない程度の呼吸補助を受け、母親1,000中53人が新たに妊娠高血圧性疾患を経験する。
    <結論と関連性>
     パニック症と全般性不安症は、有害な妊娠合併症に寄与しなかった。女性は妊娠中に薬物による療法を必要とするかもしれないが、それは妊娠期間を少し短縮する可能性がある。セロトニン再取り込み阻害薬を用いた母体への治療はまた、妊娠高血圧性疾患および帝王切開による出産と関連した。

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米国成人における自殺企図の国民動向
    Mark Olfson, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 13, 2017. National Trends in Suicide Attempts Among Adults in the United States.

    論文要旨:
    <重要性>
     米国における自殺の最近の増加は、同時に自殺企図の国民的な増加が起こったのか否かを確定する、および社会人口統計学的および臨床的グループにおける自殺企図の動向を特徴づけることへの公衆衛生上および臨床上の関心を呼び起こした。
    <目的>
     米国における最近の自殺企図の傾向を記述すること。
    <設計・設定・参加者>
     2004年から2005年のNational Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC) のウェーブ2調査(訳注:ウェーブ1調査は2001年から2002年とのこと)からのデータ、および2012年から2013年のNESARC-IIIデータ。これらの国民代表調査では、自殺企図の発生と時期に関する同じ質問を、69,341人の21歳以上の成人に尋ねた。年齢、性別、および人種/民族で調整したリスク差(risk differences adjusted for age, sex, and race/ethnicity、ARDs)は、社会人口統計学的および精神疾患スペクトラムにわたる、2004-2005年調査から2012-2013年調査の自殺企図動向を評価した。追加の交互作用検定では、社会人口統計学的グループおよび精神疾患グループの水準間で、自殺企図有病率の動向の大きさが比較された。解析は2017年2月8日から2017年5月31日に実施された。
    <主要評価項目と測定>
     自己報告された面接前3年間の自殺企図。
    <結果>
     69,341人の参加者(42.8%:男性、57.2%:女性;平均[標準偏差]年齢、48.1[17.2]歳)からのデータでは、自殺企図を最近行った米国成人の重み付けパーセントは、2004-2005年調査の0.62%(34,629人のうち221人)から、2012-2013年調査の0.79%(34,712人のうち305人)に増加していた(ARD, 0.17%; 95% CI, 0.01%-0.33%; P = .04)。両調査において、自殺企図を最近行った大抵の成人は女性であり(2004-2005年調査で 60.17%、2012-2013年調査で60.94%)、50歳より若かった(2004-2005年調査で 84.75%、2012-2013年調査で80.38%)。自殺企図についてのARDは、65歳かそれ以上の年齢の成人より(0.06%; 95% CI, -0.02% to 0.14%; interaction P = .04)、21歳から34歳の年齢の成人で有意に大きかった(0.48%; 95% CI, 0.09% to 0.87%)。自殺企図についてのARDはまた、大学卒業者より(0.03%; 95% CI, -0.17% to 0.23%; interaction P = .003)、高等学校以上の教育を受けていない成人で有意に大きかった(0.49%; 95% CI, 0.18% to 0.80%)。ARDはまた、次の各状態を持たない成人より、反社会的パーソナリティ障害、暴力行為の既往、不安障害の既往、抑うつ障害の既往を持つ成人で有意に大きかった。
    <結論と関連性>
     米国成人における自殺企図の最近の全体的増加は、正規教育が少ない若年成人と、反社会的パーソナリティ障害、不安障害、抑うつ障害、および暴力の既往のある成人に不釣り合いに影響していた。

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統合失調症患者の寿命短縮と余命:系統的レビューとメタ解析
    Hjorthøj C, et al. Lancet Psychiatry 2017; 4: 295-301.
    Years of potential life lost and life expectancy in schizophrenia: a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     複数の研究とメタ解析が、統合失調症を持つ人の死亡率が一般人口より高いことを示してきたが、それらは標準化死亡比といった相対的な測定値を用いていた。我々は、統合失調症における死亡率増加のより直接的で絶対的な測定値である寿命短縮と余命を推定するために、系統的レビューとメタ解析を行った。
    <方法>
     我々は、統合失調症の潜在的寿命短縮と余命に関する公表された研究について、MEDLINE、PsycINFO、Embase、Cinahl、そしてWeb of Scienceを検索した。個々の研究からのデータは、メタ解析において重み付け平均として結合された。我々は、性別、地理的地域、公表の時期、およびバイアスのリスクについてサブグループ解析を行った(Newcastle-Ottawa尺度を用いた推定)。
    <結果>
     我々は(南アフリカを除く)人が居住するすべての大陸を網羅し、最大247,603人の患者を含む13の論文(アフリカn=1、アジアn=1、豪州n=1、欧州n=7、北米n=3)から11の研究を見出した。
     統合失調症は重み付け平均14.5年(95%信頼区間、11.2-17.8歳)の潜在的寿命短縮と関連し、女性(平均13.6年;95%信頼区間、11.2-15.8歳)より男性(平均15.9年;95%信頼区間、13.8-18.0歳)で大きかった。短縮はアジアの研究で最も小さく、アフリカの研究で最も大きかった。余命の総重み付け平均は64.7歳(95%信頼区間、61.1-71.3歳)で、女性(67.6歳;95%信頼区間、63.1-72.1歳)より男性(59.9歳;95%信頼区間、55.5-64.3歳)で低かった。余命はアジア(平均60.2歳)とアフリカ(平均46.3歳)で最も短かった。公表の時期とバイアスのリスクは結果にほとんど影響なかった。
    <考察>
     統合失調症の寿命短縮と余命に対する影響は相当なようで、年とともに減る様子はない。この死亡率の格差を減らすための介入および先駆的戦略の開発と実施が急務である。

    コメント:重要なのは、統合失調症の寿命短縮と余命に対する影響は「各研究の発表年とは関係ないが地域差がある」ということです。残念ながら、統合失調症の寿命短縮と余命に対する影響に本質的改善は認めません。アフリカにおける顕著な余命の短さは、この地域の全体的傾向でもあるので、統合失調症とは無関係かもしれません。北米と豪州で長いのは、医療と保健の水準が高いからでしょうか。

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全および特定の重度精神疾患患者における心血管疾患の有病率、発生率、死亡率:患者321万1,768人と対照1億1,338万3,368人のメタ解析
    Correll CU, et al. World Psychiatry 2017; 16: 163-180.
    Prevalence, incidence and mortality from cardiovascular disease in patients with pooled and specific severe mental illness: a large-scale meta-analysis of 3,211,768 patients and 113,383,368 controls.

    論文要約:
     重度精神疾患(統合失調症、双極性障害、およびうつ病/大うつ病性障害性)を持つ人は心血管疾患のリスクが高いようだが、包括的なメタ解析は実施されていない。我々は、重度精神疾患患者321万1,768人と対照1億1,338万3,368人(92研究)を比較する、心血管疾患、冠動脈疾患、脳卒中、一過性虚血発作または脳血管疾患、うっ血性心不全、末梢血管疾患、および心血管疾患関連死の有病率と発生率の大規模メタ解析を実施した。
     重度精神疾患患者(平均年齢50歳)における心血管疾患の有病率は、9.9%(95% CI: 7.4-13.3)であった。横断研究において、7つの交絡因子で調整後、重度精神疾患患者は対照より有意に高いオッズを心血管疾患(オッズ比, OR=1.53, 95% CI: 1.27-1.83; 11研究)、冠動脈疾患(OR=1.51, 95% CI: 1.47-1.55)、脳血管疾患(OR=1.42, 95% CI: 1.21-1.66)で示した。統合失調症を持つ人は冠動脈疾患、心血管疾患、およびうっ血性心不全のリスクが高く、うつ病/大うつ病性障害を持つ人は冠動脈疾患のリスクが高かった。
     重度精神疾患患者の心血管疾患の累積発生率は、中央値8.4年(範囲1.8-30.0年)の追跡で、3.6%(95% CI: 2.7-5.3)であった。縦断研究において、6つの交絡因子の中央値で調整後、重度精神疾患患者は対照者より有意に高い心血管疾患の発生率を示した(ハザード比, HR=1.78, 95% CI: 1.60-1.98; 31研究)。発生率はまた、冠動脈疾患(HR=1.54, 95% CI: 1.30-1.82)、心血管疾患(HR=1.64, 95% CI: 1.26-2.14)、うっ血性心不全(HR=2.10, 95% CI: 1.64-2.70)、および心血管疾患関連死(HR=1.85, 95% CI: 1.53-2.24)で高かった。
     統合失調症、双極性障害、およびうつ病/大うつ病性障害を持つ人はすべて、対照者より心血管疾患関連死のリスクが高く(p=0.008)、体格指数が高く(p=0.008)、そしてベースラインの心血管疾患の有病率が高かった(p=0.03)。さらに、心血管疾患の発生率でなく(p=0.21)有病率が(p=0.007)、より最近実施された研究で上昇していた。
     この大規模メタ解析は、重度精神疾患を持つ患者では心血管疾患のリスクと心血管疾患死が有意に高く、体格指数の上昇、抗精神病薬の使用、および心血管疾患スクリーニングと管理に対する喫緊の臨床的関心を必要としていることを確認した。

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統合失調症患者における抗精神病薬、抗うつ薬、およびベンゾジアゼピンへの累積的曝露と死亡率:観察的追跡研究
    Tiihonen J, et al. Am J Psychiatry 2016; 173: 600-6.
    Mortality and Cumulative Exposure to Antipsychotics, Antidepressants, and Benzodiazepines in Patients With Schizophrenia: An Observational Follow-Up Study.

    論文要約:
    <目的>
     ここ数年、向精神薬に関連する死亡は大きな注目を集めているが、死亡リスクと抗精神病薬の累積的負荷の関係は知られていないし、死亡率と抗うつ薬またはベンゾジアゼピンの累積的曝露との関係については尚更そうである。著者らは全国的データベースを用いてこれらの関係を調べた。
    <方法>
     スウェーデンにおいて統合失調症診断を持つ16歳から65歳までの人(N=21,492)全員を同定するために、著者らは前方視的に収集された全国的データベースを使用した。あらゆる原因による死亡率と特定の原因による死亡率が、2006年から2010年までの、抗精神病薬、抗うつ薬、およびベンゾジアゼピンの累積的な低・中・高用量の曝露の関数として計算された。
    <結果>
     薬剤の非曝露と比較して、中用量(調整済ハザード比=0.59, 95% CI=0.49-0.70)と高用量(調整済ハザード比=0.75, 95% CI=0.63-0.89)の抗精神病薬の両方が、かなり低い全死亡率と関連した。
     中用量(調整済ハザード比=0.85, 95% CI=0.73-0.98)、および高用量、さらにより低い用量(調整済ハザード比=0.71, 95% CI=0.59-0.86)でさえ、抗うつ薬への暴露はより低い死亡率と関連した。ベンゾジアゼピンへの暴露は、死亡率と量反応関係にあった(調整済ハザード比:最大1.74 [95% CI=1.50-2.03])。
    <結論>
     薬剤の非曝露と比較して、中用量および高用量の抗精神病薬と抗うつ薬の使用は、15から40%低い全死亡率と関連し、ベンゾジアゼピンの慢性的な高用量の使用は、最大70%高い死亡リスクと関連した。不安症状と抑うつ症状を持つ患者は、内在する死亡リスクを持つ可能性があるので、ベンゾジアゼピンについての本結果のある程度は、残りの交絡因子に帰することができるかもしれない。

    コメント:認知症の発症についてリスク上昇が問われているベンゾジアゼピンですが、本研究は統合失調症の全死亡リスク上昇に対する疑いです。

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アルツハイマー病の前臨床段階におけるパーソナリティ変化
    Personality Change in the Preclinical Phase of Alzheimer Disease.
    Terracciano A, et al. JAMA Psychiatry. Published online September 20, 2017.

    <重要性>
     行動とパーソナリティの変化は、認知症診断のための一つの基準である。しかし、これらの変化が疾患の臨床的発症の前に始まっているか否かは不明である。
    <目的>
     神経症傾向(または情動不安定性、neuroticism)の増加、誠実性(または勤勉性、conscientiousness)の低下、および他のパーソナリティ変化が、軽度認知障害(MCI)または認知症の発症以前に起きるのか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     対象は、ボルチィモア加齢縦断研究(the Baltimore Longitudinal Study of Aging)に自発的に参加した高齢成人2,046人の地域住民コホートである。この研究では、最初の評価時点において認知障害を認めず、36年間もの長い間(平均[標準偏差]、12.05[9.54]歳)追跡された参加者から、1980年から2016年7月13日の間に得られたパーソナリティと臨床の評価を調べた。自己評価式パーソナリティ尺度は、診断コンセンサス会議では考慮されなかった。
    <主要評価項目と測定>
     アルツハイマー病、および他の認知症の前臨床的段階において、5つの主要な次元、すなわち神経症傾向(neuroticism)、外向性(extraversion)、開放性(openness)、協調性(agreeableness)、そして誠実性(conscientiousness)の各々について6つ、全部で30の側面を評価する240の質問項目からなる改訂NEOパーソナリティ検査(the Revised NEO Personality Inventory、訳注:上記の5因子モデルに基づく世界的に有名なパーソナリティ検査)で自己評価されたパーソナリティ特性の変化。
    <結果>
     2,046人の参加者のうち、931人(45.5%)が女性で、最初の評価時点の平均(標準偏差)年齢は62.56(14.63)歳であった。24,569人年の間、軽度認知障害が104人(5.1%)に診断され、194人(9.5%)のアルツハイマー病を含む、いかなる原因による認知症は255人(12.5%)に診断された。
     年齢、性別、人種、および教育水準を考慮したマルチレベルモデルは、いくつかの特性の切片について有意な差を見出した。認知症を発症した人は神経症傾向(β = 2.83; 95% CI, 1.44 to 4.22; P < .001)が高く、誠実性(β = -3.34; 95% CI, -4.93 to -1.75; P < .001)と外向性(β = -1.74; 95% CI, -3.23 to -0.25; P = .02)が低かった。
    しかし、パーソナリティの変化(傾きslope)は、非障害群とアルツハイマー病群の間に有意な差はなかった。軽度認知障害を発症した人の傾き(例:neuroticism: β = 0.00; 95% CI, -0.12 to 0.12; P = .98; conscientiousness: β = -0.09; 95% CI, -0.23 to 0.05; P = .18)と、いかなる原因による認知症を発症した人の傾き(例:neuroticism: β = 0.02; 95% CI, -0.06 to 0.10; P = .49; conscientiousness: β = -0.08; 95% CI, -0.16 to 0.00; P = .07)もまた、障害を持たない参加者のそれに類似していた。
    <結論と関連性>
     軽度認知障害または認知症の発症に先立つ、前臨床段階でのパーソナリティ変化の証拠は見出されなかった。これらの結果は逆の因果仮説(訳注:軽度認知障害、または認知症の背景にある神経病理過程の結果、その人のパーソナリティが変化するという仮説)への反証となり、認知症のリスク要因としてのパーソナリティ特性を支持する証拠を強固なものとする。

    コメント:パーソナリティは軽度認知障害または認知症の前駆症状というより、リスク要因らしいという結論。因子モデルに基づくパーソナリティ質問紙には、NEO以外にいくつか種類がありますが、神経症傾向が高い、誠実性が低い、外向性が低いといったパターンは経験的上、不安や抑うつを含む内在化障害(internalizing disorders)を持つ患者さんでしばしば観察されますね。

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欧州10カ国におけるコーヒー消費と死亡率:多国コホート研究
    Gunter MJ, et al. Ann Intern Med 2017; 167: 236-247.
    Coffee Drinking and Mortality in 10 European Countries: A Multinational Cohort Study.

    論文要約:
    <背景>
     異なるコーヒー調整法を持つ多様な欧州住民におけるコーヒー消費と死亡率の関係は不明である。
    <目的>
     コーヒー消費が、あらゆる原因による死亡、および特定の原因による死亡に関連するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     前向きコホート研究、欧州10カ国、EPIC (欧州における癌と栄養の前方視調査)に登録された52万1,330人。
    <主要評価項目と測定>
     多変量Cox比例ハザードモデルを用いたハザード比(HRs)と95%信頼区間(CIs)である。コーヒー消費と肝機能・炎症・代謝の健康の血清バイオマーカーとの関連が、EPIC Biomarkersにおいて評価された(n = 14,800)。
    <結果>
     平均16.4年の追跡期間中、41,693件の死亡があった。コーヒー消費の最高四分範囲の参加者は、コーヒー非消費者より統計的に有意に低いあらゆる原因による死亡率を示した(男性: HR, 0.88 [95% CI, 0.82 to 0.95]; P for trend < 0.001; 女性: HR, 0.93 [CI, 0.87 to 0.98]; P for trend = 0.009)。消化器疾患による死亡率については、逆の関連がまた観察された(男性: HR, 0.41 [CI, 0.32 to 0.54]; P for trend < 0.001; 女性: HR, 0.60 [CI, 0.46 to 0.78]; P for trend < 0.001)。
     女性では、コーヒー摂取と循環器疾患による死亡率(HR, 0.78 [CI, 0.68 to 0.90]; P for trend < 0.001)、および脳血管疾患による死亡率(HR, 0.70 [CI, 0.55 to 0.90]; P for trend = 0.002)に統計的に有意な逆の関連を、卵巣がんとは有意な正の関連を認めた(HR, 1.31 [CI, 1.07 to 1.61]; P for trend = 0.015)。
     EPIC Biomarkersサブコホートでは、コーヒーのより多い消費は、より低い血清ALP、AST、γ-GTPと、女性ではより低いCRP、リポ蛋白、および糖化ヘモグロビンレベルと関連した。
    <制約>
     ベースラインの8年以内に死亡した参加者を除外した後も結果は変わらなかったが、逆の因果が結果を歪めたかもしれない。コーヒーの摂取習慣の評価は一度だけだった。
    <結論>
     コーヒー摂取は多様な原因による死亡リスクの低下と関連したが、この関係は国ごとに異なることはなかった。

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注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造:分類分析
    Haslam N, et al. Aust N Z J Psychiatry 2006; 40: 639-47.
    The latent structure of attention-deficit/hyperactivity disorder: a taxometric analysis.

    論文要約:
    <目的>
     豪州疫学研究から選択された1,774人の子供(6~12歳)と1,222人の青年(13~17歳)からなるサンプルにおいて、注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の潜在構造が、範疇的(categorical)と次元的(dimensional)のどちらとして最もうまく理解されるかを検証すること。
    <方法>
     診断面接と親評価によって評価されたADHD症状の測定結果が、2つの分類分析的手法(taxometric procedures、訳注:taxometric analysis「分類分析」)、すなわちMAXEIGとMAMBACによって調べられた。
    <結果>
     行動遺伝学研究と同じく、結果は「潜在カテゴリーがADHDの背後に存在するとする見解」を支持しなかった。
    <結論>
     ADHDは子供から青年の連続体として最適にモデル化され、それゆえ明確な機能障害がそれを引き起こしていると仮定することはできない。ゆえに診断閾値の設定は、例えば障害の程度や治療の必要性といった実用的な理由から決められるべきである。

    コメント:taxometric analysisは、日本語でtaxometric分析(または分類分析)と呼ばれるもので、Paul Meehl博士によって提唱された方法論とのことです(Niels Waller & Paul Meehl. Multivariate Taxometric Procedures: Distinguishing Types from Continua. SAGE Publications, 1998)。2006年に発表された本論文は、ADHDに関する最も初期の分類分析研究です。

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クリニック受診サンプルにおける注意欠如・多動症(ADHD)の潜在構造
    Frazier TW, et al. Neuropsychology 2007; 21: 45-64.
    The latent structure of attention-deficit/hyperactivity disorder in a clinic-referred sample.

    論文要約:
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)が不注意と遂行機能障害の連続体なのか、あるいは自然のカテゴリーなのかという疑問については、十分研究されていない。神経心理学的評価のために受診した437人からの主観的報告と神経心理学的データが、潜在クラス分析(latent class analysis)と分類分析(taxometric analysis:mean above minus below a cut [MAMBAC]、maximum eigenvalue [MAXEIG]、およびlatent mode [LMODE])を用いて解析された。
     結果、複数の手法と指標セットにわたって、ADHDのタクソンの存在を支持する有意な証拠を示さなかった。同様に、ADHDのサブタイプが質的違いを示している証拠はなかった。これらは、現在の診断的概念化が不注意と遂行機能障害に関連する問題を持つ人を正確に同定して特徴付けることに対して不適切であることを示唆している、あるいはネガティブな結果は不適切な指標選択の結果かもしれない。次元モデルは、機能障害のリスクを持つ人の正確な同定をより促進する可能性がある。

    コメント: 2007年に発表された本論文では、ADHDの症状と神経心理学的データに対して、潜在クラス分析と分類分析が実行されました。両分析法は次のサイトで詳解されています。
    https://www.slideshare.net/yoshitaket/ss-56356699
    https://www.slideshare.net/yoshitaket/taxometric-analysis

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不注意と多動の背景にあるメカニズム:注意欠如・多動症(ADHD)の次元性を支持する神経認知的証拠
    Salum GA, et al. Psychol Med 2014; 44: 3189-201.
    Mechanisms underpinning inattention and hyperactivity: neurocognitive support for ADHD dimensionality.

    論文要約:
    <背景>
     分類分析や行動遺伝学研究は、注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)が、範疇(category)よりむしろ次元(dimension)として最も上手くモデル化されることを示している。我々は、臨床閾値以下および全臨床範囲にある人の基礎的な情報処理(basic information processing、BIP)と抑制に基づく遂行機能(inhibitory-based executive function、IB-EF)において推定されるADHD関連の欠陥の存在を検証することによって、これらの分析を拡張した。次元モデルと同様に、我々はADHD関連の欠陥はスペクトラム全体を通して表れ、その欠陥の程度は臨床表現型の重症度に線形的に関連するであろうと予測した。
    <方法>
     全部で1,547人の子供(6から12歳)が研究に参加した。不注意レベルと多動レベルの各々に基づいて、子供を無症候群、閾値以下の最小限群、閾値以下の中等度群、そして臨床的ADHD群に分類するために、発達と健康アセスメント(the Development and Well-Being Assessment、DAWBA)が用いられた。神経認知能力は、二者選択の反応時間課題(two-choice reaction time task、2C-RT) と(認知的)葛藤コントロール課題(conflict control task、CCT)を用いて評価された。BIPとIB-EFの測定値は、反応時間と誤差データを分解する拡散モデルを用いることで得た。
    <結果>
     BIPの欠陥は閾値以下の最小限、閾値以下の中等度、そして臨床的ADHDとされた被験者に、不注意次元について2C-RTとCCTの両方の課題で、多動・衝動性次元については2C-RT課題で見出された。欠陥の大きさは、ADHDの表現型が重症になるに従い線形的に増加した。IB-EFはADHDとは関連しなかった。
    <結論>
     BIPにおける欠陥は、ADHDの臨床閾値以下でも臨床水準でも起きている。この関係の線形的特性は、診断閾値が離散的な病態生理学的状態を表しているというより、臨床的および社会的困難の点から定義されるADHDの次元モデルへの支持を与える。

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60歳以上の中高年の治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾールを用いた増強薬物療法の有効性、安全性、および認容性:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
    Lenze EJ, et al. Lancet 2015; 386(10011): 2404-12.
    Efficacy, safety, and tolerability of augmentation pharmacotherapy with aripiprazole for treatment-resistant depression in late life: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     治療抵抗性うつ病/大うつ病性障害(major depression、以下「うつ病」)は、高齢者において一般的で生命を脅かし得る病気であるが、増強薬物療法のベネフィットとリスクについてはよく分かっていない。我々は、アリピプラゾールがプラセボより高い寛解達成率と関連するか否かを評価することを目的とした。
    <方法>
     我々は、治療抵抗性うつ病を有する(Montgomery Asberg Depression Rating Scale [MADRS]スコアで15点以上)60歳以上の成人に対するアリピプラゾール増強療法の有効性と安全性を検証するために、米国とカナダの3つのセンターで、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。
     前試験において、うつ病がベンラファキシン徐放錠(一日150-300㎎)で寛解しなかった患者が、無作為に1対1の比で、12週間のアリピプラゾール(目標用量一日10㎎[最高15㎎])、またはプラセボに割り付けられた。コンピュータが発生させたランダム化は一括してなされ、試験場所で層別化された。
     主要エンドポイントは、最後の連続する2回の評価時点における10点以下のMADRSスコア(および、ランダム化フェーズの開始時点のスコアより少なくとも2ポイントの減少)として定義される寛解で、intention to treat(ITT、訳注:包括解析)で分析された。本試験はClinicalTrials.gov(番号:NCT00892047)に登録されている。
    <結果>
     2009年7月20日から2013年12月30日までに、我々は468人の研究組み入れに適切な参加者を集めた。寛解に達しなかった181人(29%)が、ランダムにアリピプラゾール(n=91)、またはプラセボ(n=90)に割り付けられた。
     寛解を達成した参加者の割合は、アリピプラゾール群がプラセボ群より高かった(40 [44%] vs 26 [29%] 参加者; オッズ比 [OR] 2.0 [95% 信頼区間1.1-3.7], p=0.03; number needed to treat [NNT、訳注:治療必要例数] 6.6 [95% 信頼区間3.5-81.8])。
     アカシジアが、最も多いアリピプラゾールの有害作用であった(アリピプラゾール、91人の参加者のうち24人[26%];プラセボ、90人中11人[12%])。また、アリピプラゾールはプラセボと比べて、パーキンソニズムとより関連したが(アリピプラゾール、86人の参加者のうち15人[17%];プラセボ、81人中2人[2%])、治療中の自殺念慮(アリピプラゾール、61人の参加者のうち13人[21%];プラセボ、65人中19人[29%])、または他の安全性に関する測定変数は関連しなかった。
    <考察>
     第一段階の抗うつ薬を用いても、うつ病が寛解に至らなかった60歳以上の成人において、アリピプラゾールの追加は寛解を達成して維持するのに有効である。認容性への懸念は、アカシジアとパーキンソニズムの可能性であった。
    <研究資金>
    National Institute of Mental Health、UPMC Endowment in Geriatric Psychiatry
    Taylor Family Institute for Innovative Psychiatric Research、National Center for Advancing Translational Sciences、The Campbell Family Mental Health Research Institute

    コメント:本来は統合失調症の治療薬である抗精神病薬は、“横断的に重症”であるとみなされる精神病性うつ病に対して抗うつ薬と併用することが推奨されています(Farahani A & Correll CU. J Clin Psychiatry 2012; Wijkstra J, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews; 日本うつ病学会の治療ガイドライン2016)。本論文は、最初の抗うつ薬が不成功に終わった後という意味で“縦断的に重症”(治療抵抗性)に関しての研究です。アリピプラゾール増強療法の認容性への懸念の筆頭は、やはりアカシジアですね。

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ベンゾジアゼピンおよびZドラッグの処方と、股関節(大腿骨)骨折のリスク:系統的レビューとメタ解析
    Donnelly K, et al. PLoS One 2017; 12: e0174730.
    Benzodiazepines, Z-drugs and the risk of hip fracture: A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     高齢者の股関節(大腿骨)骨折(Hip fractures)は、死亡リスクの上昇、QOLの低下、および疾病罹患の増加につながる。ベンゾジアゼピン(Benzodiazepine)は、股関節(大腿骨)骨折の発生率上昇と関連し、結果としてZドラッグ(Z-drugs、訳注:薬剤名の頭文字がZで始まる睡眠薬の俗称)が急速に臨床医の好む睡眠薬処方になりつつあるが、その使用に関するデータは限られている。我々は、股関節(大腿骨)骨折のリスクを、Zドラッグとベンゾジアゼピンで比較し、このリスクがより長期の使用で異なるかを調べた。
    <方法と結果>
     我々は、文献の系統的レビューとメタ解析を実施した。ベンゾジアゼピンまたはZドラッグ、および股関節(大腿骨)骨折のリスクを含む2015年5月までの研究を同定するために、MEDLINEとSCOPUSが検索された。包含された各々の研究の質が評価された。股関節(大腿骨)骨折の相対リスクは、汎用逆分散法(generic inverse variance method、GIVM)と変量効果モデル(random effects model)を用いて、睡眠薬の利用期間をサブグループとして計算された。
     結果、ベンゾジアゼピンとZドラッグの両方が、股関節(大腿骨)骨折のリスク上昇と有意に関連した(ベンゾジアゼピン、RR = 1.52, 95% CI 1.37-1.68;Zドラッグ、RR = 1.90, 95% CI 1.68-2.13)。ベンゾジアゼピンとZドラッグの短期間の使用はまた、最も高い股関節(大腿骨)骨折のリスクと関連した(ベンゾジアゼピン、RR = 2.40, 95% CI 1.88-3.05;Zドラッグ、RR = 2.39, 95% CI 1.74-3.29)。
    <結論>
     ベンゾジアゼピンとZドラッグの両方が、高齢者の股関節(大腿骨)骨折のリスク上昇と関連する強い証拠があり、双方のリスクに違いはほとんどない。これらの薬剤を新規に処方される患者は、股関節(大腿骨)骨折の最大のリスクにある。臨床医と政策立案者は、特にこれら薬剤を新規に使用する人において、転倒と股関節(大腿骨)骨折のリスクの上昇をよく検討すべきである。

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うつ病におけるケタミン(Ketamine)使用と関連する副作用:系統的レビュー
    Short B, et al. Lancet Psychiatry, Published online: 27 July 2017.
    Side-effects associated with ketamine use in depression: a systematic review.

    論文要約:
     これは、うつ病治療におけるケタミンの単回および反復投与後の安全性に関する初めての系統的レビューである。我々がMEDLINE、PubMed、PsycINFO、およびCochrane Databasesを検索したところ、288の論文を見出し、うち60論文が包含基準を満たした。うつ病患者の治療において、プラセボ投与後と比べてケタミン(Ketamine)の急性投与後は、精神医学的、精神異常発現性の、心血管系に関係する、神経学的および他の副作用がより頻繁に報告された。
    我々の結果は、ケタミンに曝露された他の患者グループ(例:慢性疼痛患者のグループ)においては報告されているものの、長期間の使用と安全性、および反復投与後についての評価が非常に少ないといった報告バイアス(selective reporting bias)を示唆している。我々は、ケタミンの長期間の恒常的使用の安全性を評価するために、ケタミンの複数回投与と長期間の追跡を含む大規模臨床試験の実施を推奨する。

    コメント:ケタミン(Ketamine)は麻酔薬で、日本では静脈注射剤および筋肉注射剤として使用されます。理化学研究所の研究によると、ケタミンはセロトニン1B受容体に作用し、意欲に関わる脳領域でセロトニン1B受容体を活性化するそうです(URL参照)。確かにケタミンに急性の抗うつ効果はありそうですが、長期使用についてはリスクとベネフィットの確認作業が必須ですね。

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睡眠改善の精神健康への効果(OASIS):無作為化比較試験の媒介分析
    Freeman D, et al. Lancet Psychiatry. Published: 06 September 2017.
    The effects of improving sleep on mental health (OASIS): a randomised controlled trial with mediation analysis.

    論文要約:
    <背景>
     睡眠困難は、精神健康問題の発生に寄与する原因の一つかもしれない。これが真実なら、睡眠の改善は心理的健康に有益であろう。我々は「不眠の治療が妄想と幻覚の減少につながるか否か」を確認することを目的とした。
    <方法>
     我々は、26の英国の大学において単盲検の無作為比較試験(OASIS)を実施した。単純ランダム化を用いて不眠を持つ大学生を、不眠に対するデジタル認知行動療法(CBT)を受ける群と通常のケアを受ける群のどちらかに、無作為に1対1の比で割り当てた。治療の割り当ては研究チームに隠蔽された。オンライン評価が0週、3週、10週(治療終了)、22週に行われた。主要評価項目測定は、不眠、妄想、および幻覚の体験であった。Intention-to-treat分析が行われ、試験はISRCTNに登録された(ISRCTN61272251)。
    <結果>
     2015年3月5日から2016年2月17日までの間に、我々は参加者3,755人を、不眠のデジタルCBTに1,891人、通常診療に1,864人、無作為に割り当てた。
     通常診療と比較して10週の睡眠介入は、不眠(調整後の差 4.78, 95%信頼区間 4.29 to 5.26, コーエンのd値 1.11; p<0.0001)、妄想(調整後の差 -2.22, 95%信頼区間 -2.98 to -1.45, コーエンのd値 0.19; p<0.0001)、幻覚(調整後の差 -1.58, 95%信頼区間 -1.98 to -1.18, コーエンのd値 0.24; p<0.0001)を有意に減らした。不眠は妄想と幻覚の変化の媒介要因であった。有害事象の報告はなかった。
    <考察>
     我々の知る限り、これは精神健康問題に対する心理的介入の最大規模の無作為化臨床試験である。それは「不眠が精神病体験、および他の精神健康問題を発生させる原因である」という強力な科学的証拠を提供する。本結果を、学生全体に一般化できるか否かについては検証を要する。乱れた睡眠の治療に、精神健康対策上のより高い優先度を与える必要があるかもしれない。

    コメント:ウェルカム・トラストからの研究資金を受けて実施された研究で、なかなか興味深い結果です。ちなみにWellcome Trustとは、英国に本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体で、米国出身の製薬長者のサー・ヘンリー・ウェルカムの財産を管理するために1936年に設立されたそうです(Wikipedia)。ウェルカムは人名ですので、welcome(間投詞:ようこそ)とは違ってエル2つです。

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自閉スペクトラム症(ASD)を持つ幼児における知能指数の潜在クラスの証拠
    Munson J, et al. Am J Ment Retard 2008; 113: 439-52.
    Evidence for latent classes of IQ in young children with autism spectrum disorder.

    論文要約:
     自閉症(autism)は現在、非常に異なる重症度レベルを持つ連続的な状態(spectrum condition)と考えられ、知能指数(IQ)は自閉症における異質性の主要な側面の一つとして常に記述されている。IQに基づく一つ以上の明確な自閉症の亜型の可能性を調べるために、潜在クラス分析(latent class analysis)と分類分析(taxometrics)の両方法が、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)を持つ456人の子供のサンプルにおいてMullen知能指数を分類するために利用された。
     我々は両方法を用いて、IQに基づく複数の亜型の証拠を見出した。グループは、知的機能のレベルと言語的vs.非言語的能力のパターンの点で異なっていた。結果は、知的能力の重症度、認知的な強みと弱み、および自閉症状の重症度の点において異なる、自閉症の明確な亜型概念を支持している。

    コメント:少し前の研究ですが、自閉症やASDと呼ばれる神経発達症に関して、潜在クラス(latent class)やタクソン(taxon)を見出そうとする試みは多くありません。

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レビュー:高齢者におけるせん妄―診断と治療の進歩
    Esther S. Oh, et al. JAMA 2017; 318: 1161-1174.
    Delirium in Older Persons: Advances in Diagnosis and Treatment.

    キーポイント:
    <臨床的疑問>
     ここ6年間に、どのような進歩が高齢者におけるせん妄の診断、予防、および管理にもたらされたか。
    <レビュー結果>
     せん妄の認識とリスクの層化のために、短時間スクリーニング尺度と改訂せん妄重症度評価尺度が開発された。せん妄予防には非薬物的な多構成的ストラテジーが有効である。せん妄の薬理学的管理については、利益が損益を上回るとは言えず、推奨は安全性へのリスクとなる重度の焦燥を持つ患者の治療に限る。
    <臨床的含意>
     せん妄のスクリーニングと診断の進歩は、せん妄の認識とリスクの層化を改善し、非薬物的なせん妄予防の導入は、高齢者のアウトカムを大きく改善する可能性がある。

    論文要約:
    <重要性>
     せん妄は、注意と認知の急性の障害と定義される。それは、高齢患者によく見られる深刻かつしばしば致死的となる状態である。よく過少診断されるものの、せん妄はその人の機能とQOLに対する深刻な有害作用に加えて、かなりの医療費をもって社会に対する広範な影響をもたらす。
    <目的>
     せん妄の診断と治療の最先端を要約し、本領域を進歩させるための今後の研究にとって重要な分野に光を当てる。
    <証拠のレビュー>
     2011年1月1日から2017年3月16日までの過去6年間について、統制語(controlled vocabulary)とキーワード用語(keyword terms)の組み合わせを用いて、Ovid MEDLINE、Embase、およびCochrane Libraryが検索された。せん妄は高齢者により多いので、焦点は高齢者集団の研究に当てられた。もっぱら集中治療室(ICU)で行われた研究や、英語以外の言語の文献は除外された。
    <レビュー結果>
     包含された127の研究のうち、25が臨床試験、42がコホート研究、5つが系統的レビューとメタ解析、そして55が他のカテゴリーであった。全部で11,616人の患者が治療研究に含まれた。
     診断の進歩には、3分間診断評価(the 3-Minute Diagnostic Assessment)、4つのAテスト(4 A’s Test)、および家族混乱評価法(the Family Confusion Assessment Method)のような本人以外の評価といった高い感度と特異度を持つ短時間スクリーニング尺度の開発がある。混乱状態評価法-重症度スコア(the Confusion Assessment Method-Severity Score)のような重症度の測定は、治療反応のモニタリング、リスクの層化、および予後推定の助けとなり得る。
     不動性、機能低下、視覚/聴覚障害、脱水、および睡眠剥奪のようなリスク要因に焦点を当てた非薬物的アプローチは、せん妄の予防に有効であり、せん妄の治療にも推奨される。科学的証拠に基づく、せん妄の薬理学的治療についての今回の推奨では、患者または医療スタッフの安全にリスクを与えるか、重要な治療行為を妨げる脅威となる重篤な焦燥の治療に限る抗精神病薬や他の鎮静系薬剤の使用を奨めている。
    <結論と関連性>
     診断の進歩が、せん妄の認識とリスクの階層化を可能とする。薬理学的アプローチを用いたせん妄予防の有効性が立証されているものの、せん妄の薬理学的介入および治療には一貫性に欠けるところがまだある。

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統合失調症における15の抗精神病薬の比較有効性と認容性:複数の治療法のメタ解析
    Leucht S, et al. Lancet 2013; 382: 951-962.
    Comparative efficacy and tolerability of 15 antipsychotic drugs in schizophrenia: a multiple-treatments meta-analysis.

    <レビューと普及のためのセンター(CRD)の要約>
     抗精神病薬はその特性の多くの点において異なっており、第1世代と第2世代に群分けすることはできず、ここで示された階層は、臨床医が抗精神病薬の選択を個々の患者の必要性に適合させるのに役立つと著者らは結論した。包含された研究間のかなりの大きな相違、および結果の一般化の限界といった制約から、これら結論の信頼性を確定することは困難であった。
    <著者らの目的>
     統合失調症の治療における15の抗精神病薬の有効性と認容性を評価すること。
    <検索>
     2009年8月までのコクラン統合失調症グループの特定登録が検索され、発表済および未発表の研究について、2012年9月までの5つの追加の電子的情報源が検索された。検索用語が報告された。米国食品医薬品局(FDA)のウェッブサイト、他のレビューの文献リスト、および製薬会社のウェッブサイトが検索された。
    <研究選択>
     適切な研究とは、統合失調症または関連障害(統合失調感情障害、統合失調症様障害、または妄想性障害)を持つ人の無作為化比較試験(randomised controlled trial、RCT)。試験は経口投与の抗精神病薬(単剤治療として)を、他の抗精神病薬またはプラセボと比較したものでなければならなかった。15の適切な抗精神病薬がレビュー一覧に挙げられた。陰性症状が優位である、併存身体疾患がある、または治療抵抗性がある患者の試験、および安定状態にある患者の試験はレビューから除外された。中華人民共和国で実施された試験は、潜在的にバイアスを持つ傾向があると考えられたので除外された。関心主要評価項目は、6週間の治療後の症状の全体的変化の平均であった。あらゆる理由による中断、体重増加、抗パーキンソン薬の使用を含む6つの関心副次評価項目があった。
     包含された研究は1955年から2012年の間に公表された。患者の平均年齢は38.4歳であった。報告があったものでは、平均罹病期間は1年から40年、治療期間は4週から78週にわたった。研究には第1世代抗精神病薬(ハロペリドール、クロルプロマジン)、第2世代抗精神病薬(アミスルピリド、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、セルトラリン、ジプラシドン、ゾテピン)、およびプラセボが含まれた。少なくとも2人の査読者が独立に研究への包含をスクリーニングした。不一致は両査読者の合意、または3人目の査読者に意見を求めることで解決した。
    <研究の質の評価>
     試験のバイアスのリスクは、盲検化、シーケンス生成、割り当ての隠匿、アウトカムデータの完全性、選択的報告、および他のバイアスに関して基準を持つコクランのバイアスリスク査定法に従って評価された。少なくとも単盲検で、シーケンス生成や不明瞭な割り当て隠匿のための高いバイアスリスクがない試験だけがレビューに含まれた。5人の査読者のうち2人がバイアスのリスクについて評価した。
    <データ抽出>
     症状の全体的変化の平均(陽性・陰性症状評価尺度PANSSまたは簡易精神症状評価尺度BPRS)が標準偏差とともに抽出された。データは可能であればintention-to-treatに基づいて抽出された。6週間の治療後のデータが抽出されたが、これらのデータが利用不可能な場合は4から12週間の間のデータが抽出された。標準偏差が報告されていない場合は、原著論文の著者らに欠損データについて連絡をとるか、標準偏差を他のデータから推定した。少なくとも2人の査読者が独立にアウトカムデータを抽出した。
    <統合の方法>
     変量効果モデルを用いて、ペアごとの直接比較がなされた。連続的な評価項目が、Hedgesの調整済g値を用いて標準化平均差(standardised mean differences、SMD)を計算するために結合された(-0.2のSMD:「小さい small」、-0.5:「中くらい medium」、-0.8:「大きい large」)。二値的な評価項目が、オッズ比(OR)を計算するために結合された。プールされた95%信頼区間(confidence intervals (CI)、または確信区間(credible intervals、CrI)が計算された。有害必要症例数(numbers needed to harm、NNH)と治療必要症例(numbers needed to treat、NNT)が計算された。
     標準化平均差、オッズ比、および95%確信区間を結合して治療の直接比較または間接比較を評価するために、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた階層ベイズモデルが使われた。各々の介入を、不確かさを持たずに常に最良となる架空の介入と比べる累積順序確率の下での外観を用いて治療効果に順位付けするために、以前発表した方法が使われた。一貫性は直接的証拠と間接的証拠の比較を通して評価された。
     統計学的異質性は森林プロット(forest plots)の視覚的判定を通して、およびI²統計量を用いて評価された。主要評価項目に対する事前感度分析(a priori sensitivity analyses)が、単盲検研究、高用量と低用量を比較した研究、および初回エピソード集団における研究を除外することで行われた。メタ回帰(meta-regression)と事後感度分析(post-hoc sensitivity analyses)が行われた(レビューの中で報告)。公表バイアス(publication bias)は漏斗プロット(funnel plots)を用いて評価された。
    <レビューの結果>
     本レビューには212のRCT(43,049人の患者)が含まれた。大抵の試験は盲検化、無作為化、および割り当て隠匿についてのバイアスは低いか、不明瞭であった。およそ半分が、不完全なアウトカムデータと選択的報告について高いバイアスのリスクにあった。たった一つの試験が、すべての基準について低いバイアスのリスクにあった。包含された研究における全体の脱落割合は35%であった。
     プラセボと比較してすべての抗精神病薬は、症状改善の点において統計学的に有意に有効であった。効果量は-0.33から-0.88にわたった。累積順序確率下の外観は、クロザピンを最も効果的な薬剤に位置付けた。あらゆる理由による中断(薬剤認容性の測度)について、ゾテピンを除くすべての薬剤は統計学的に有意にプラセボより良かった。オッズ比は0.43(アミスルピリド:NNT=6)から0.80(ハロペリドール:NNT=20)にわたった。
     ハロペリドール、ジプラシドン、およびルラシドンを除くすべての薬剤は、プラセボより有意に体重が増加した。効果量はアリピプラゾールの-0.17からオランザピンの-0.74にわたった。錐体外路副作用は、プラセボ、セルチンドール、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、イロペリドン、アミスルピリド、およびアセナピンの間で統計学的有意差はなかった。ハロペリドールは、他のあらゆる抗精神病薬より有意に錐体外路副作用が多かった(有意な結果の効果量:0.06から0.52、NNH:5から11)。ゾテピン、クロルプロマジン、ルラシドン、リスペリドン、およびパリペリドンは、他の抗精神病薬と比べて最少の忍容にあった。クロザピンは他の薬剤およびプラセボと比べて錐体外路副作用がより少なかった(累累積順序確率下の外観によると1番に位置付けられた)。
     ある程度の不一致が直接比較と間接比較の結果の間に存在したが、著者らは結果を変更するほど十分に大きな矛盾であるとは考えなかった。他にメタ回帰と感度分析からの結果があり、レビューで報告された。漏斗プロットによると、公表バイアスの証拠があった。
    <著者らの結論>
     抗精神病薬はその特性の多くの点において異なっており、第1世代と第2世代に群分けすることはできない。包含された研究間の本質的な相違と結果の一般化の限界といった制約から、これら結論の信頼性を確定することは困難であった。ここで示された階層は、臨床医が抗精神病薬の選択を個々の患者の必要性に適合させるのに役立ち、臨床診療ガイドラインの改善につながるであろう。
    <CRDによる解説>
     このレビューの臨床的疑問と包含基準は明確に定義されている。文献の包括的検索がなされていて、これはデータ欠損の可能性を減らす未発表データの検索を含んでいた。試験の質は以前に発表された基準を用いて評価されたが、大抵の試験はある程度のバイアスのリスクにあると思われた。レビュー過程の各段階は二重に実施され、それは査読者の過誤とバイアスの潜在的危険を最小化した。科学的証拠の基礎は大きいが、研究間に相当のばらつきがあった。著者らは、ばらつきの潜在的要因を調べようとして少なからぬ追加分析を行った。いくつかの直接的間接的比較を評価するために、多様な方法が使われた。これらの結果を解釈する時には、間接比較を取り囲む内在する不確実性を考慮すべきである。
     著者らは、薬剤間の有効性の相違が小さく、特にその効果量を副作用の効果量と比較した場合に小さいことを認めた。彼らは結果を、統合失調症を持つ若者、陰性症状優位の患者、治療抵抗性の患者、および安定した患者に一般化できないことを認めた。著者らは、調整変数として脱落割合を含めたメタ回帰が、統合失調症の試験における高減少と関連する潜在的バイアスを除外することができなかったことに言及した。これは大規模な科学的証拠を含む包括的レビューである。著者らは、(小さな効果量を含む)いくつかの証拠の制約を認めた。著者らの結論は、多様な抗精神病薬間の違いを反映している。しかし、研究間で相当な違いがあり、間接比較を取り囲む不確実性、および結果の一般化に制約があることから、どの集団がどの程度の利益を受けるかについては不明確であった。このため、著者らの結論の信頼性を決定することは困難であった。
    <診療と研究に対するレビューの示唆>
     診療に関して、著者らは「薬剤間の有効性の相違は臨床的意義がある」と言えるほどおそらく十分に大きいと述べた。研究に関して、著者らは「今後の複数治療のメタ解析は長期試験に焦点を当てる可能性がある」と述べた。
    <研究資金>
     2人の著者が欧州研究評議会(European Research Council)の補助金を受けている。

    コメント:2013年と少し前のメタ解析レビュー論文です。上記は「効果のレビューの要約データベース(DARE):質評価済レビュー[Internet]」からの抜粋で、文字通りレビューの質についての解説が加えられています。

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統合失調症における局所脳構造の異質性と均質性:メタ解析
    Brugger SP and Howes OD. JAMA Psychiatry. Published online September 27, 2017.
    Heterogeneity and Homogeneity of Regional Brain Structure in Schizophrenia: A Meta-analysis

    キーポイント:
    <設問>
     初回エピソード統合失調症の患者は、マッチさせた健常対照者と比べて、より大きな局所脳体積の個人間変動を持つか?
    <結果>
     統合失調症を持つ患者では、被殻、側頭葉、および視床の体積が、これら構造の平均体積の群間差を考慮したとしても、有意により大きい変動を認めた。反対に患者は健常対照者と比較して、前帯状皮質の体積の有意に小さな変動を認めた。
    <含意>
     統合失調症における多数の脳領域において観察されたより大きな体積変動は、神経生物学的異質性に一致する。前帯状皮質の体積のより小さな変動は、この領域の変化が疾患サブタイプ間で共有される障害の中核的特徴を示しているのかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     統合失調症は平均局所脳体積の変化と関連するが、この障害にみられる臨床的異質性が神経生物学的レベル、例えば、対照者との比較におけるこれら脳領域の個人間変動の相違に反映されているか否かは不明である。
    <目的>
     初回エピソード統合失調症を持つ患者が、平均体積差に加えて、より大きい局所脳体積の変動を示すか否かを調べること。
    <データソース>
     データベースの開始から2016年10月1日までのMEDLINE、EMBASE、PsycINFOにおける、磁気共鳴画像を用いて患者と対照における局所脳体積を報告した研究が調べられた。
    <データ選択>
     磁気共鳴画像を用いて初回エピソード統合失調症を持つ患者と健常対照における局所脳体積を報告した症例対照研究が選択された
    <データ抽出と統合>
     効果量を計算するために各々測定について平均と分散が抽出され、多変量メタ解析に使うために結合された。
    <主要評価項目と測定>
     変動比(variability ratio、VR)と変動比係数(coefficient of variation ratio、CVR)を指標とする、対照群との比較における患者の局所脳体積測定の相対的変動。平均差を定量するためにHedgesのg値が使われた。
    <結果>
     初回エピソード統合失調症を持つ3,901人の患者(32.6%が女性)と4,040人の対照(39.9%が女性)からの測定を報告する全部で108の研究が本解析に含まれた。被殻(VR, 1.13; 95% CI, 1.03-1.24; P = .01)、側頭葉(VR, 1.12; 95% CI, 1.04-1.21; P = .004)、視床(VR, 1.16; 95% CI, 1.07-1.26; P < .001)、および第Ⅲ脳室(VR, 1.43; 95% CI, 1.20-1.71; P < 1 × 10-5)の体積変動は有意に患者でより大きかった。一方、前帯状皮質の体積変動は有意に患者でより小さかった(VR, 0.89; 95% CI, 0.81-0.98; P = .02)。これらの結果は測定評価項目の選択に頑強であった。尾状核と前頭葉の体積変動が変化している証拠はなかった。
     側脳室(g = 0.40; 95% CI, 0.29-0.51; P < .001)と第Ⅲ脳室(g = 0.43; 95% CI, 0.26-0.59; P < .001)の平均体積は患者でより大きく、扁桃体(g = -0.46; -0.65 to -0.26; P < .001)、前帯状皮質(g = -0.26; 95% CI, -0.43 to -0.10; P = .005)、前頭葉(g = -0.31; 95% CI, -0.44 to -0.19; P = .001)、海馬(g = -0.66; 95% CI, -0.84 to -0.47; P < .001)、側頭葉(g = -0.22; 95% CI, -0.36 to -0.09; P = .001)、および視床(g = -0.36; 95% CI, -0.57 to -0.15; P = .001)の平均体積は患者でより小さかった。尾状核または被殻の平均体積の変化の証拠はなかった。
    <結論と関連性>
     多数の脳構造の平均体積の変化に加えて、統合失調症は側頭葉、視床、被殻、および第Ⅲ脳室の有意により大きい変動と関連しており、これら領域における神経生物学的異質性に一致するが、前帯状皮質体積の変動はより小さかった。この結果は、前帯状皮質体積のより高い均質性を意味し、この領域の有意に小さい体積を考えると、ここが疾患によって侵される中核的領域であることを示唆している。

    コメント:比較的単純な局所脳体積の変動比や変動比係数といった指標の算出から、統合失調症の病態に対するこのような推測ができるとは、なかなか思いつきませんね。

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うつ病/大うつ病性障害の治療のための全身温熱療法:無作為化臨床試験
    Janssen CW, et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 789-795.
    Whole-Body Hyperthermia for the Treatment of Major Depressive Disorder: A Randomized Clinical Trial

    論文要約:
    <重要性>
     現在の抗うつ薬の限界から、うつ病/大うつ病性障害(major depressive disorder:以下、うつ病)に対する新規の治療を同定する必要性が強調される。以前のオープン試験では、単一セッションの全身温熱療法(whole-body hyperthermia、WBH)は抑うつ症状を減少させたが、プラセボ対照の欠如から、観察された抗うつ効果が温熱それ自体によるか、介入の非特異的側面による可能性があった。
    <目的>
     シャム(見せかけの治療)条件と比較して、全身温熱療法が特異的抗うつ効果を持つか否かを検証し、単回治療による抗うつ効果の持続を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     全身温熱療法とシャム条件を比較する6週間の無作為化・二重盲検の研究が、2013年2月から2015年5月までの間に、大学付属の医療センターで行われた。スクリーニングと評価項目評価を行うすべての研究スタッフに対して、無作為化状態は隠匿された。
     スクリーニングされた338人のうち、34人が無作為化され、30人が研究介入を受け、29人が少なくとも1回の介入後評価を提供し、有効性の修正包括解析(modified intent-to-treat efficacy analysis)に包含された。参加者は身体的に健康で、年齢は18から65歳、うつ病の診断基準を満たし、向精神薬の使用はなく、ベースラインの17項目ハミルトンうつ病評価尺度は16点かそれ以上であった。
    <介入>
     単一セッションの全身温熱療法、および強烈な暑さを除くすべての側面を模倣したシャム条件。
    <主要評価項目と測定>
     介入後のハミルトンうつ病評価尺度の群間差。
    <結果>
     平均(標準偏差)年齢は、全身温熱療法群で36.7(15.2)歳、シャム群で41.47(12.54)歳であった。介入直後、全身温熱療法に無作為割り付けされた参加者の15人(93.7%)に対して、シャム治療に無作為割り付けされた参加者では10人(71.4%)が、自分は全身温熱療法を受けたと信じた。
     シャム群と比べて全身温熱療法群では、6週間にわたって有意にハミルトンうつ病評価尺度スコアが減少した(全身温熱療法 vs シャム; 第1週: -6.53, 95% CI, -9.90 to -3.16, P < .001; 第2週: -6.35, 95% CI, -9.95 to -2.74, P = .001; 第4週: -4.50, 95% CI, -8.17 to -0.84, P = .02; and 第6週: -4.27, 95% CI, -7.94 to -0.61, P = .02)。これらの評価項目は、ベースラインの予測スコアの群間差による潜在的調整効果を考慮したとしても依然有意であった。両群の有害事象は一般的に軽度であった。
    <結論と関連性>
     全身温熱療法は、安全で即効性のある長期の治療的利益を有する抗うつ療法である。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子:NCT01625546)

    コメント:ヘッケルHT3000温熱療法装置(Heckel HT3000 Hyperthermia Device)を使用して全身を温める方法については、「温熱療法に無作為割り付けされた参加者は、胸部レベルでは赤外線、下肢レベルでは赤外線加熱コイルによって、中核(深部)体温が摂氏38.5度、つまり中強度の全身温熱療法の上限に達するまで加温された」と説明されていました。

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青年の注意欠如・多動症(ADHD)の治療:系統的レビュー
    Eugenia Chan, et al. JAMA 2016; 315: 1997-2008.
    Treatment of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Adolescents: A Systematic Review

    <重要性>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は青年に高頻度にみられ、しばしば成人期まで持続するが、治療に関する大抵の研究は小児において実施されたものであり、青年のADHD治療についてはよく知られていない。
    <目的>
     青年におけるADHDの薬理学的・心理社会的治療についてのエビデンス(evidence、科学的証拠)をレビューすること。
    <エビデンスのレビュー>
     CINAHL Plus、MEDLINE、PsycINFO、およびERICのデータベースと、系統的レビューのコクラン・データベースにおいて、1999年1月1日から2016年12月31日の間に公表された青年のADHD治療に関する論文が検索された。収集された論文の文献リストをマニュアル検索することで、さらなる研究が同定された。研究の質は、マクマスター大学の効果的な公衆衛生実践のためのプロジェクト(McMaster University Effective Public Health Practice Project)における基準で評点された。治療推奨のエビデンスレベルは、エビデンスに基づく医療のためのオックスフォードセンター(Oxford Centre for Evidence-Based Medicine)の基準に準拠した。
    <結果>
     12歳から18歳の青年のADHDに対する薬理学的・心理社会的治療の参加者2,668人を含む、16の無作為化臨床試験と1つのメタ解析が含まれた。有効性のエビデンスは、徐放性のα2-アドレナリン作動薬であるグアンファシンまたはクロニジン(研究なし)より、徐放性のメチルフェニデートとアンフェタミン類の精神刺激薬、およびアトモキセチンでより強かった。有効性の主要評価項目であるADHD評価尺度の総得点(スコア範囲、0 [least symptomatic:最低の症状水準] to 54 [most symptomatic:最高の症状水準])については、精神刺激薬と非精神刺激薬の両方が、絶対ポイントで14.93から24.60の臨床的に意味のある減少をもたらした。行動療法的、認知行動療法的、および社会技能訓練的テクニックを結合させた心理社会的治療は、親評価のADHD症状、併存する情動または行動症状、および対人機能について「小:small」から「中:medium」サイズ(Cohenのd値における標準化平均差の範囲:0.30-0.69)の改善を示した。心理社会的治療は、宿題の完成やプランナー(planner)の活用といった学業や組織化技能の改善とより強固に関連した(Cohenのd値における標準化平均差の範囲:0.51-5.15)。
    <結論と関連性>
     科学的証拠は、青年のADHD症状を軽減する徐放性のメチルフェニデートとアンフェタミンの製剤、アトモキセチン、および徐放性グアンファシンの使用を支持している。行動随伴性操作(behavior contingency management)、動機付け強化(motivational enhancement)、および学業と組織化、社会技能(social skills)の訓練技術を取り入れた心理社会的治療は、ADHD症状に対する一貫しない効果、および学業と組織化技能に対するより大きな利益と関連した。薬理学的治療と心理社会的治療の併用を含む、青年におけるさらなる治療研究が必要である。

    コメント:adolescentsは「青年期(adolescence)の人、若者」で、青年期とは「思春期(puberty)から成人期(adulthood)までの過渡期をさしますが、具体的には何歳から何歳までなのでしょうか。この研究では12歳から18歳と定義していますが、この過渡期の心理社会的延長を反映してか、心理学の文献の中で12歳から22歳までを青年期としている記述を見たことがあります。一方、成人のADHDについては、「徐放性のメチルフェニデートとアトモキセチンの有効性に有意な違いはない」(J Psychopharmacol 2016; 30: 444-58)とか、「成人のADHDに対する認知行動療法は、小児のADHDに対する行動療法と同程度の効果量を示している」(J Consult Clin Psychol 2017; 85: 737-50)といった肯定的な結論を導いたメタ解析もあります。

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有酸素運動は統合失調症を持つ人の認知機能を改善する:系統的レビューとメタ解析
    Firth J, et al. Schizophr Bull 2017; 43: 546-556.
    Aerobic Exercise Improves Cognitive Functioning in People With Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-Analysis.

    論文要約:
     認知欠損は統合失調症を持つ人に広範にみられるが、治療オプションは限られている。運動の神経認知面への有益性に対する関心が増しているが、先行研究の包括的評価はなされていない。ゆえに我々は、統合失調症に対する運動介入の認知的アウトカムを調べたすべての比較試験のメタ解析を実施した。その開始から2016年4月までの、主要な電子データベースにわたる系統的検索により研究が同定された。メタ解析は、プールされた効果量(Hedgesのg値)と95%信頼区間(CIs)を計算するために使用された。我々は、385人の患者に関する認知的アウトカムデータを持つ10の適格な試験を同定した。
     統計学的異質性なく(I2 = 0%)、運動は有意に全般的認知を改善した(g = 0.33, 95% CI = 0.13-0.53, P = .001)。無作為化比較試験である7つの研究の効果量のg値は、0.43であった(P < .001)。メタ回帰分析は、より多い運動量は、より大きい全般的認知の改善に関係することを示した(β = .005, P = .065)。また、身体活動の専門家による指導が行われた介入は、より効果的であった(g = 0.47, P < .001)。運動は、ワーキングメモリー(g = 0.39, P = .024, N = 7, n = 282)、社会認知(g = 0.71, P = .002, N = 3, n = 81)、注意/覚醒度(g = 0.66, P = .005, N = 3, n = 104)を有意に改善したが、処理速度、言語的記憶、視覚的記憶、推論・問題解決への効果は有意ではなかった。
     このメタ解析は、「運動は、特により高レベルの運動量を用いて介入すると、統合失調症を持つ人の認知機能を改善する」ことを支持するエビデンスを提供する。統合失調症を持つ人の認知、および運動のより広い健康への有益性を改善するなら、専門的に指導された運動を提供することに、もっと焦点を当てるべきである。


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成人の注意欠如・多動症(ADHD)の脳波における間欠性律動性δおよびθ活動の増加
    Endres D, et al. Epilepsy Behav 2017; 75: 60-65.
    Increased rates of intermittent rhythmic delta and theta activity in the electroencephalographies of adult patients with attention-deficit hyperactivity disorder.

    論文要約:
    <序論>
     成人の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は、一般的な神経発達症である。(傍)てんかん性の病態機序を持つ患者の下位集団において、これは間欠性律動性δまたはθ活動(intermittent rhythmic delta or theta activity、IRDA/IRTA)によるのかもしれない。
    <参加者と方法>
     完全データ駆動型の分析を用いて、我々はADHDを持つ97人の成人患者と30人の対照者の、安静時脳波におけるIRDA/IRTAの出現率を比較した。過呼吸前のIRDA/IRTA出現率と、過呼吸差(過呼吸前後のIRDA/IRTA出現率の差)を、線形モデルを用いて群間比較した。
    <結果>
     我々は、過呼吸前のADHD患者におけるIRDA/IRTA出現率の有意な上昇を見出したが(F=4.209, p=0.042)、過呼吸差に有意な群間差はなかった(F=2.46, p=0.119)。
    <考察>
     ADHD群における過呼吸前のIRDA/IRTA出現率の上昇は、局所領域ネットワークの抑制を介した(傍)てんかん性の短期的効果(例:衝動性)、および脳結合性の再構築を介した長期的効果(例:認知欠損)かもしれない。

    コメント:興味深い結果ですが、その再現性の検証を要する予備段階の研究でしょうか。

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成人の高機能自閉スペクトラム症(ASD)における間欠性律動性δおよびθ活動の変化
    Endres D, et al. Front Hum Neurosci 2017; 11: 66.
    Altered Intermittent Rhythmic Delta and Theta Activity in the Electroencephalographies of High Functioning Adult Patients with Autism Spectrum Disorder.

    論文要約:
    <背景>
     自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder、ASD)は、しばしばてんかんと関連する。先行研究はまた、てんかんを持たないASD患者における脳波異常の出現率の上昇を示してきた。この研究の目的は、間欠性律動性δおよびθ活動(intermittent rhythmic delta and theta activity、IRDA/IRTA)事象の出現率を、ASDを持つ高機能の成人患者と、マッチさせた健常対照者の間で比較することであった。
    <対象と方法>
     19人のASD患者と19人のマッチさせた対照のルチーンの脳波記録が、IRDA/IRTAについて、閾値を固定した完全データ駆動型の分析を用いてスクリーニングされた。過呼吸前後のIRDA/IRTA出現率、および過呼吸誘発性のIRDA/IRTA出現率差(過呼吸差)が分析された。群間差測定について、我々はウイルコクソンの順位和検定を用いた。
    <結果>
     有意に増加した過呼吸差がASD群で見出された(p = 0.0497)。しかし、過呼吸前(p = 0.564)と過呼吸後(p = 0.163)のIRDA/IRTA出現率に群間差はなかった。
    <結論>
     過呼吸前のIRDA/IRTAに関するいかなる群間差も認めなかったことは、我々がてんかんを持たない成人患者の小さなサンプルにおける二次性でない高機能自閉症だけを調べたという事実と関連するのかもしれない。有意に増加した過呼吸差は、局所領域ネットワークの抑制を介する短期的障害、およびてんかん性脳症を介する長期的効果を引き起こす可能性がある神経細胞ネットワークのわずかな不安定性のマーカーとみなせるかもしれない。

    コメント:過呼吸前のIRDA/IRTA出現率と過呼吸誘発性のIRDA/IRTA出現率差について、彼ら自身のADHD研究と結果が対照的であることは興味深いですが、やはり結果の再現性検証が必要ですね。

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長時間作用型の注射抗精神病薬と関連する死亡リスク:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析
    Kishi T, et al. Schizophr Bull 2016; 42: 1438-1445.
    Mortality Risk Associated With Long-acting Injectable Antipsychotics: A Systematic Review and Meta-analyses of Randomized Controlled Trials.

    論文要約:
     長時間作用型の注射抗精神病薬(Long-acting injectable antipsychotics、LAI-APs)は、内服薬に対していくつかの有利性を持つものの、市販直後調査(early post-marketing phase vigilance period)期間に日本で報告された死亡例は、安全性への懸念を引き起こした。我々は、LAI-Apsが統合失調症患者の死亡率に影響するか否かを評価するために、一連のメタ解析を実施した。あらゆる理由による死亡(主要評価項目)、および自殺による死亡を比較するために、3つに分類されるランダム化比較試験(randomized controlled trial、RCT)のメタ解析を行った。すなわち、1)個々の、およびプールされたLAI-APs 対 プラセボ、2)個々の、およびプールされたLAI-APs 対 内服抗精神病薬(oral antipsychotics、OAP)、3)LAI-APsどうしの1対1の比較である。リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)が計算された。我々は52のRCTを同定した(53比較; 参加者総数 = 17,416, LAI-APs = 11,360, OAP = 3,910, プラセボ = 2,146; 平均研究期間[週]: LAI-APs vs プラセボ = 28.9, LAI-APs vs OAPs = 64.5)。
    1. プールされたLAI-APsも個々のLAI-APsも(アリピプラゾール、フルフェナジン、オランザピン、パリペリドン、リスペリドン)、あらゆる理由による死亡(プールされたLAI-APs: RR = 0.64, P = .37)、および自殺による死亡(プールされたLAI-APs: RR = 0.98, P = .98)の発生率に関して、プラセボと異なることはなかった。しかしながら、短期間のRCT(13週以下)に限ったサブグループ・メタ解析では、あらゆる理由による死亡の発生率に関して、LAI-APsはプラセボより低い傾向を示した(RR = 0.29, P = .08)。
    2. プールされたLAI-APs(アリピプラゾール、フルフェナジン、ハロペリドール、オランザピン、パリペリドン、リスペリドン、ズクロペンチキソール)は、あらゆる理由による死亡、および自殺による死亡に関して、プールされたOAPsと異なることはなかった(プールされたLAI-APs: RR = 0.94, P = .91)。個々のLAI-APsとOAPsは、似たような死亡リスクと関連した。
    3. 個々のLAI-APs の1対1の比較データは不十分であった。結論として、LAI-APsとプラセボ、またはOAPsの間に、あらゆる理由による死亡と自殺による死亡に関して、有意な差はなかった。

    コメント:ランダム化比較試験の臨床試験については、このようなメタ解析結果でした。

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精神疾患における死亡率と世界の疾病負荷への含意:系統的レビューとメタ解析
    Walker ER, McGee RE and Druss BG. JAMA Psychiatry 2015; 72: 334-341.
    Mortality in Mental Disorders and Global Disease Burden Implications: A Systematic Review and Meta-analysis

    <重要性>
     精神疾患を持つ人々の超過死亡率を理解する潜在的重要性にも関わらず、精神疾患全体の死亡率を定量する包括的なメタ解析は実施されていない。
    <目的>
     精神疾患を持つ人々の死亡率の系統的レビューとメタ解析を実施し、死亡類型、診断、および研究特徴ごとの死亡リスクを調査すること。
    <データソース>
     我々は、EMBASE、MEDLINE、PsychINFO、およびWeb of Scienceを、その開始から2014年5月7日まで、組み入れに値するとされた論文の文献リストを含めて検索した。我々の検索ストラテジーには、精神疾患(例:mental disorders、serious mental illness、severe mental illness)、特定の疾患(例:schizophrenia、depression、anxiety、bipolar disorder)、および死亡率についての用語が含まれた。我々はまた、組み入れに値するとされた論文を引用した論文を同定するために、Google Scholarを利用した。
    <研究の選択>
     一般集団、または同じ研究からの精神疾患を持たない対照と比較した精神疾患の死亡率推定を報告している英語のコホート研究が含まれた。2人の査読者が独立に、タイトル、要約、および本文をレビューした。同定された2481研究のうち、203論文が適格性基準を満たし、それは6つの大陸の29か国を代表した。
    <データ抽出と統合>
     1人の査読者がすべてのデータの全部の抽出を行い、2人の査読者が正確性を確認した。
    <主要評価項目と測定>
     死亡率推定(例:標準化死亡率比、相対リスク、ハザード比、オッズ比、潜在的損失生存年数)を、精神疾患を持つ人々と一般集団または精神疾患を持たない人々で比較した。我々は、あらゆる理由による死亡、自然死、および非自然死について死亡率比をプールするために、変量効果メタ解析モデルを使った。また、潜在的損失生存年数を調べて、精神疾患による死亡の人口寄与リスクを推定した。
    <結果>
     あらゆる理由による死亡について、精神疾患を持つ人におけるプールされた死亡率の相対リスクは2.22(95% CI, 2.12-2.33)であった。これらのうち135研究が、対照集団よりも精神疾患を持つ人々において死亡率が有意に高いことを示していた。
     精神疾患を持つ人々の死亡の67.3%が自然死、17.5%が非自然死、残りがその他の、あるいは不明の原因によるものであった。潜在的損失生存年の中央値は10年であった(24研究)。我々は、全世界の死亡の14.3%(1年間に約800万人の死亡)が精神疾患によると推定した。
    <結論と関連性>
     これらの推定値は、精神疾患が全世界で最も多い死亡原因に位置付けられることを示す。世界の疾病負荷を定量してそれに取り組む上で、予防可能な死亡における精神疾患の役割を良く考える必要がある。

    コメント:最近、精神疾患における(自然死、非自然死を問わない)死亡に関する研究報告が増えていますね。「潜在的損失生存年の中央値は10年、全世界の死亡の14.3%が精神疾患による」と推定された“数字”には、やはりインパクトがあります。

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残遺うつ病における難治性不眠のための短期睡眠行動療法:評価者盲検ランダム化比較試験
    Watanabe N, et al. J Clin Psychiatry 2011; 72: 1651-8.
    Brief behavioral therapy for refractory insomnia in residual depression: an assessor-blind, randomized controlled trial.

    論文要約:
    <目的>
     不眠はうつ病の薬物療法後もしばしば持続し、うつ病の完全なる寛解への障壁となる。この研究では残遺うつ病と難易性不眠について、通常診療に対する短期行動療法の相加的価値を調べることを目的とした。
    <方法>
     37人の外来患者(平均年齢:50.5歳)が、既存の通常診療(treatment as usual、TAU)単独、または通常診療+短期睡眠行動療法(1回1時間、週1回で4セッション)に無作為に割り付けられた。不眠重症度指標(Insomnia Severity Index、ISI:主要評価項目)スコア、睡眠パラメータ、GRID-ハミルトンうつ病評価尺度(GRID-HAMD、訳注:1960 年にMax Hamiltonが開発し、現在広く使われているうつ病評価尺度の改訂版で、尺度の項目ごとに、程度と頻度の二つの次元を互いに独立して考慮に入れることが出来るように作成されたもの)スコアが、盲検化された評価者によって評価され、不眠とうつ病の両方についての寛解率が、4週および8週の経過時点で収集された。患者は2008年2月18日から2009年4月9日の間に募集された。
    <結果>
     8週において、短期睡眠行動療法+通常診療は、通常診療単独より有意に低いISIスコアを示した(P < .0005)。併用療法の睡眠効率もまた、有意に通常診療単独のそれより有意に良かった(P = .015)。GRID-HAMD総スコア(P = .013)と3つの睡眠項目を除外したGRID-HAMDスコア(P = .008)の両方に関して、併用群の有効性を支持する有意差が観察された。通常診療単独と比較して併用療法は、不眠(50% vs 0%、治療必要数 = 2 [95% CI, 1-4])とうつ病(50% vs 6%、治療必要数 = 2 [95% CI, 1-5])の両方に関して高い寛解率をもたらした。
    <結論>
     残遺うつ病と難治性不眠を持つ患者において、不眠に対する短期行動療法を通常診療に加えると、統計学的に有意で臨床的に意味のある相加的有益性をもたらす可能性がある。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子:NCT00610259)

    コメント:この短期睡眠行動療法(brief behavioral therapy for insomnia、bBTi)に関しては、本論文の筆頭著者の渡辺範雄先生が、『自分でできる「不眠」克服ワークブック:短期睡眠行動療法自習帳』(創元社、2011年8月)という本を出しています。睡眠日記と睡眠環境の説明や、刺激コントロール法と睡眠制限法の解説があります。

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うつ病に併存する不眠症に対する認知行動療法の費用対効果:ランダム化比較試験の分析
    Watanabe N, et al. Psychiatry Clin Neurosci 2015; 69: 335-43.
    Cost-effectiveness of cognitive behavioral therapy for insomnia comorbid with depression: Analysis of a randomized controlled trial.

    論文要約:
    <目的>
     不眠症に対する認知行動療法の有効性が確認されたものの、普及は利益と費用のバランスによる。この研究は、4週間・毎週の個人セッションからなる不眠症に対する認知行動療法の費用対効果を調べることを目的とした。
    <方法>
     我々は日本の外来クリニックにおいて、4週間の経過を追跡する4週間のランダム化比較試験を実施した。DSM-IVに従ってうつ病/大うつ病性障害性と診断され、かつ慢性不眠症に苦しむ37人の患者が、既存の医療単独、または既存の医療+不眠症に対する認知行動療法に、無作為に割り付けられた。有効性は、観察されたハミルトンうつ病評価尺度の総得点のブートストラップ(bootstrapping)によって推定される8週間の時間にわたる質調整生存年(quality-adjusted life year、QALY)として評価された。不眠症に対する認知行動療法と既存の医療に対する直接医療費も評価された。我々は増分費用効果比を算定した(incremental cost-effectiveness ratio、ICER;訳注:[新しい薬または治療法の費用-既存の薬または治療法の費用]÷[新しい薬または治療法の効果-既存の薬または治療法の効果]の計算式によって求められる値で、既存の薬または治療法をやめて、新しい薬または治療法を用いたときに、どれだけの効果が得られるかを示す)。
    <結果>
     8週間にわたる研究において、既存の医療に加えて不眠症に対する認知行動療法を受けたグループは、既存の医療のみを受けた群より有意に高いQALYを示し(P = 0.002)、その増分は0.019(標準偏差0.006)であったが、有意に高い直接的医療費は示さず、その増分は254(標準偏差203)米ドルであった。増分費用効果比は、13,678米ドル (95% 信頼区間: -5,691 to 71,316)であった。不眠症に対する認知行動療法の併用は、もう1年のQALYを政策立案者が60,000米ドルを支払うなら95%の見込みで、40,000米ドルを支払うなら90%の見込みで得ることを示した。
    <結論>
     不眠症に対する認知行動療法の併用は、残遺する不眠症と付随するうつ病を持つ患者に対して費用対効果がある可能性が高い。

    コメント:質調整生存年(QALY)や増分費用効果比(ICER)の評価を含む精神医学研究を初めて読んでみました。同じ著者による不眠症に対する認知行動療法の元の論文は以下と思います(Watanabe N, et al. J Clin Psychiatry 2011; 72: 1651-8. Brief behavioral therapy for refractory insomnia in residual depression: an assessor-blind, randomized controlled trial)。

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うつ病の初期の重症度と認知行動療法の効果:ピル・プラセボ対照試験の個々の参加者データのメタ解析
    Furukawa TA, et al. Br J Psychiatry 2017; 210: 190-196.
    Initial severity of depression and efficacy of cognitive-behavioural therapy: individual-participant data meta-analysis of pill-placebo-controlled trials.

    論文要旨:
    <背景>
     抗うつ薬治療については、ベースラインの重症度の影響が調べられてきたが、ピル・プラセボとの比較における認知行動療法(cognitive-behavioural therapy、CBT)については、適切に研究されていない。
    <目的>
     うつ病を持つ成人において、直接対面する方法をとる個人または集団CBTを、ピル・プラセボ対照と比較したすべてのランダム化比較試験(randomised controlled trials、RCT)からの、CBTの有効性に対する介入前の重症度の影響に関するエビデンスを統合すること。
    <方法>
     系統的レビュー、および変量効果として試験効果を含めた混合モデルを用いた個々の参加者データのメタ解析である。欠損データを取り扱うために、多重代入法が用いられた。
    <結果>
     我々は5つのRCTを同定し、その5つすべての個人レベルデータにアクセスできた。分析の結果、CBTとピル・プラセボ間のハミルトンうつ病評価尺度の変化の差は、ベースライン重症度によって影響されていなかった(interaction P = 0.43)。モデルから有意でない交互作用項を除くと、CBTとピル・プラセボ間の差の標準化平均差は-0.22であった(95% CI -0.42 to -0.02, P = 0.03, I2 = 0%)。
    <結論>
     うつ病に苦しむ患者は、広範囲のベースライン重症度にわたって、CBTから多くの恩恵を期待できる。この結果は、患者とその臨床家による個別化治療の意思決定に役立つ可能性がある。

    コメント:CBTはせいぜい中等度までのうつ病に有効と思っていましたが、「(重度も含む)広範囲のベースライン重症度にわたって有効」というのは少し驚きです。今回は個々の参加者データのメタ解析という点が重要です。

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双極性障害における活動性(activation):系統的レビュー
    Scott J, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 189-196.
    Activation in Bipolar Disorders: A Systematic Review.

    論文要約:
    <重要性>
     気分変動に伴う亢進した活動と活力は、DSM-5において躁と軽躁の主要な症状として認識されている。広範な既存の研究によると、この改訂は妥当と言えるかもしれないが、科学的証拠の系統的統合はまだ報告されていない。活動性(activation)という用語は、内在する生理的変化から出現する客観的(観察可能な運動活動)水準、および関連する主観的(活力)水準として理解されている。
    <目的>
     双極性障害における活動性が、統計学的に異常であり気分と明瞭に区別されるか否かを確かめ、活動性のダイナミクスにおける、意義ある個人間差および個人内差を同定するために、双極性障害における活動性の臨床像についての研究を系統的にレビューすること。
    <証拠のレビュー>
     1970年1月1日から2016年9月30日までのMEDLINE、PsycINFO、EMBASE、CINAHL、PubMedのデータベースの系統的レビューにより、1)躁病と双極うつ病の次元および因子構造のデータ駆動型分析、2)他の臨床サンプルまたは健常対照サンプルと比較した双極性障害患者の、リアルタイム客観モニタリング、あるいは日中活動の即時評価を報告している縦断研究に関する、可能性のある3284文献から56の研究が同定された。
     文献リストの手作業による検索、専門学術誌、ウエッブサイト、出版された会議録、および学位論文要旨と他の研究者に連絡することで、灰色文献(訳注:一般の出版市場に流通しない政府や学術機関、企業等により発行される出版物のこと)と追加解析、および適切であれば元データを含めることが可能となった。質の評価は、アメリカ国立衛生研究所の質評価ツールを用いて実施された。
    <結果>
     29の双極性障害の因子構造分析、実験的サンプリングまたは生態学的経時的評価法(ecological momentary assessment、EMA)からの3つの活動データ、および20のアクチグラフィー(actigraphy)研究と4つの実験中心の研究を含む全部で56の研究が、レビューに包含される適切性基準を満たした。
     各々の研究結果を統合すると、最も頑強な結果は、健常対照および他の比較群と比べて、双極性障害を持つ患者では、活動性の平均レベルは正常気分とうつ病相でより低いということであった(11研究)。7つの生態学的および実験的研究は、他との比較における双極性障害患者の、組織立っていないか予測が難しい行動パターン、および馴化の相対的欠如を示していた。因子分析研究は、気分と活動性が双極性障害の確かな次元であることを支持するかなり一貫したエビデンスを提供していた。個人間と個人内の活動パターンを調べた10の研究が、活動の平均レベルよりむしろ、活動性の頑強性、変動性、予測性、または複雑性における差異が、躁病を上手く特徴付けることを示唆していた。
    <結論と関連性>
     データの制約内で、この利用可能なエビデンスの統合は、DSM-5における双極性障害の基準Aとしての活動性の亢進を広く支持する。双極性障害における活動性の重要性は、一世紀以上もの間、認識されていたが、このレビューは、この重要な構成概念が十分研究されてこなかったこと、もっと系統的で質の高い研究を必要とする主題であることを示す。

    コメント:比較的地味な結論ですが、この疾患における重要課題を扱ったレビューです。

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小児と青年の注意欠如・多動症(ADHD)に対する徐放性グアンファシンを含む薬物療法の比較有効性と安全性:異なる治療薬の比較
    Joseph A, et al. Eur Child Adolesc Psychiatry 2017; 26: 875-897.
    Comparative efficacy and safety of attention-deficit/hyperactivity disorder pharmacotherapies, including guanfacine extended release: a mixed treatment comparison.

    論文要約:
     この研究は、6歳から17歳の小児と青年における注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)に対する薬物療法の臨床的有効性と安全性を比較した。系統的文献レビューが、小児と青年のADHDにおける単剤薬物療法のランダム化比較試験(randomized controlled trial、RCT)を同定するために実施された。ADHD評価尺度の第4版(ADHD-RS-IV)を用いた症状変化、臨床全般印象度(CGI-I)の反応割合、あらゆる理由による中止、および有害事象に関連する中止を比較するために、ベイジアン・ネットワークメタ解析(Bayesian network meta-analysis)が実施された。36のRCTが解析に含められた。
     ADHD-RS-IV総得点のベースラインからの平均変化[=実薬-プラセボ](95%確信区間)は、リスデキサンフェタミンメシル酸塩(lisdexamfetamine dimesylate)が-14.98 (-17.14, -12.80)、徐放性メチルフェニデート(methylphenidate extended release)が-9.33 (-11.63, -7.04)、徐放性グアンファシン(guanfacine extended release)が-8.68 (-10.63, -6.72)、アトモキセチン(atomoxetine)が-6.88 (-8.22, -5.49)であった。CGI-Iの反応割合[=実薬 vs.プラセボ]の相対リスク(95%確信区間)は、リスデキサンフェタミンメシル酸塩が2.56 (2.21, 2.91)、徐放性メチルフェニデートが2.13 (1.70, 2.54)、徐放性グアンファシンが1.94 (1.59, 2.29)、アトモキセチンが1.77 (1.31, 2.26)、速放性アンフェタミンが1.62 (1.05, 2.17)であった。非中枢刺激薬による薬物療法では、ADHD-RS-IV総得点の変化(事後確率:93.91%)とCGI-Iの反応割合(事後確率:76.13%) を比較した場合、徐放性グアンファシンがアトモキセチンより有効であった。
     この研究は、リスデキサンフェタミンメシル酸塩が、徐放性グアンファシン、アトモキセチン、メチルフェニデートより高い有効性を持つことを見出した。アトモキセチンと比べて徐放性グアンファシンは、両者の確信区間が重複しているものの、より有効である高い事後確率を示した。

    コメント:成人のADHDについては、徐放性メチルフェニデートとアトモキセチンの有効性に有意な違いはないと結論したメタ解析がありますが(J Psychopharmacol 2016; 30: 444-58)、この6歳から17歳の小児と青年におけるADHDのメタ解析の結果は、上記の通りでした。リスデキサンフェタミンメシル酸塩は、徐放性メチルフェニデート(商品名:コンサータ)、メチルフェニデート(商品名:リタリン)と同じく中枢(精神)刺激薬に、徐放性グアンファシン(商品名:インチュニブ)とアトモキセチンは非中枢(精神)刺激薬に分類されます。日本ではリスデキサンフェタミンメシル酸塩はまだ使用できませんが、2017年4月に塩野義製薬が日本における承認を申請したそうです。

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小児と青年の注意欠如・多動症(ADHD)の薬理学的・非薬理学的治療:ランダム化試験のネットワークメタ解析を用いた系統的レビュー
    Catalá-López F, et al. PLoS One 2017; 12: e0180355.
    The pharmacological and non-pharmacological treatment of attention deficit hyperactivity disorder in children and adolescents: A systematic review with network meta-analyses of randomised trials.

    論文要約:
    <背景>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は、小児において最もよく診断される精神疾患の一つであり、その管理には多様な治療が用いられる。我々は小児と青年のADHD治療のための、薬理学的・心理学的・補完代替医療(complementary and alternative medicine)的介入の有効性と安全性を比較することを目的とした。
    <方法と結果>
     我々はネットワークメタ解析を用いた系統的レビューを実施した。2016年4月7日までのPubMedとCochrane Libraryにおける検索を通して、公表済および未公表情報から、3週間以上の経過を観察したランダム化比較試験が同定された。対象とする介入は、薬理学的(中枢刺激薬、非中枢刺激薬、抗うつ薬、抗精神病薬、他の無許可医薬品)、心理学的(行動療法、認知訓練、ニューロフィードバック)、および補完代替医療(食事療法、脂肪酸、アミノ酸、ミネラル、薬草療法、ホメオパシー、身体活動)であった(訳注:ホメオパシーは同種[類似]療法、同毒療法とも呼ばれ、健康な人に投与するとある症状を引き起こす薬を、その症状がでている患者に極少量、投与して治療するという治療法)。主要評価項目は、有効性(治療への反応)と認容性(あらゆる理由による中止)であった。副次的評価項目は、有害事象(認容性)による中止、および重篤な有害事象と特定の有害事象であった。オッズ比と95%確信区間を見積もるために、変量効果ベイジアン・ネットワークメタ解析が実施された。我々は介入を種別および個別に分析した。ADHDを有する26,114人の参加者を登録した190のランダム化試験が、複合ネットワークに含まれた。
     種別には、行動療法、中枢刺激薬、および非中枢刺激薬が、プラセボより有意に有効のようであった。中枢刺激薬と行動療法の併用は、中枢刺激薬、または非中枢刺激薬より優れているようであった。中枢刺激薬は、行動療法、認知訓練、および非中枢刺激薬より優れているようであった。行動療法、中枢刺激薬、およびそれらの併用は認容性の最も高いプロフィールを示した。中枢刺激薬と非中枢刺激薬の認容性は良好であった。
     個別には、メチルフェニデート、アンフェタミン、アトモキセチン、グアンファシン、およびクロニジンが、プラセボより有意に有効のようであった。メチルフェニデートとアンフェタミンは、アトモキセチンとグアンファシンより有効のようであった。メチルフェニデートとクロニジンは、プラセボやアトモキセチンより認容性が良好のようであった。 有効な薬理学的治療の大部分が、危害(食思不振、体重減少、および不眠)と関連したが、重篤な有害事象のリスク増加は観察されなかった。認知訓練、ニューロフェードバック、抗うつ薬、抗精神病薬、食事療法、脂肪酸、および他の補完代替医療を支持するエビデンスはなかった。総合的結果は、臨床的・方法論的異質性、小規模な試験サンプルサイズ、短期間の経過追跡、および高品質のエビデンスの欠如による制約を受けた。
    <結論>
     ADHDの管理のための、薬理学的・非薬理学的治療には臨床的な違いがあるかもしれないが、治療法についての不確実性と、利益、コスト、および潜在的危害の間のバランスを治療開始前に考慮すべきである。小児と青年におけるADHDの複数の治療を扱う高品質なランダム化試験が喫緊に必要である。
    <試験登録>
     PROSPERO(番号:CRD42014015008)

    コメント:成人のADHDについては、徐放性メチルフェニデートとアトモキセチンの有効性に有意な違いはないと結論したメタ解析がありますが(J Psychopharmacol 2016; 30: 444-58)、この小児と青年におけるADHDのメタ解析の結果は、薬理学的治療については「メチルフェニデートとアンフェタミンは、アトモキセチンとグアンファシンより有効」のようでした。また、「中枢刺激薬と行動療法の併用は、中枢刺激薬や非中枢刺激薬の単独より優れている」ようでした。

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成人の注意欠如・多動症(ADHD)に対する認知行動療法(CBT):系統的レビューとメタ解析
    Jensen CM, et al. Atten Defic Hyperact Disord 2016; 8: 3-11.
    Cognitive behavioural therapy for ADHD in adults: systematic review and meta-analyses.

    論文要約:
     注意欠如・多動症(ADHD)を持つ成人における既存の治療と比較したCBTの有効性の系統的レビューとメタ解析を実施した。2014年3月28日を最後とする文献を系統的に探索し、標準化平均差(standardised mean differences、SMD)と95%信頼区間を計算した。
     CBTは患者評価ではADHDの症状の軽減に有効であったが(SDM -1.0, 95% CI -1.5 to -0.5)、臨床家評価では有効ではなかった。抑うつと不安の症状は自己報告でも(抑うつ:SMD -1.0, 95% CI -1.6 to -0.5;不安:SMD -1.0, 95% CI -1.3 to -0.3)、臨床家評価でも(抑うつ:SMD -0.9, 95% CI -1.7 to -0.2;不安:SMD -0.9, 95% CI -1.6 to -0.1)有意に減少した。臨床全般印象度(clinical global impression)スコアはCBTに無作為割り付けされたグループでより改善した(SMD -1.0; 95% CI -1.6 to -0.4)。 CBTはADHDを持つ成人患者に影響を及ぼすいくつかの領域において有効のようである。

    コメント:この2016年のメタ解析によれば、SMDは-1.0(ADHD症状)から-0.9(抑うつ・不安症状)でしたが、「成人のADHDに対するCBT」については2017年にもメタ解析がなされていて(Knouse LE, et al. J Consult Clin Psychol 2017; 85: 737-750)、治療前後のg値は1.00(ADHD症状)と1.00(機能)、対照との比較のg値は0.65(ADHD症状)と0.51(機能)でした。

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1日のコーヒー摂取量が多い人ほど全死亡率が有意に低下する
    欧州心臓病学会(ESC 2017、8月26~30日)での報告:
     以前に「コーヒー摂取は多様な原因による死亡リスクの低下と関連したが、この関係は国ごとに異なることはなかった」と結論した欧州10カ国、EPIC (欧州における癌と栄養の前方視調査)に登録された52万1,330人の前向きコホート研究(Gunter MJ, et al. Ann Intern Med 2017; 167: 236-247)を紹介しました。
     今回は地中海諸国で初の大規模調査として、スペインはHospital de NavarraのAdela Navarro氏らが、スペインの中年大卒者、およそ20,000人を対象とした前向きコホート研究から「1日のコーヒー摂取量が多い人ほど全死亡率が有意に低下する」と発表しました。Cox比例ハザードモデルによる回帰分析によると、1日4杯以上コーヒーを摂取している群では、コーヒーを(ほとんど)摂取していない群に比べて、全死亡リスクが64%も低下したそうです(調整ハザード比0.36、95%信頼区間0.19-0.70)。この傾向は特に45歳以上で強く見られたといいますから、個人的には嬉しい結果です(10月5日付Medical Tribune誌より)。

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コクランレビュー:認知症を持つドライバーの移動性と安全性を維持するための運転評価
    Martin AJ, Marottoli R and O'Neill D. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 31 May 2013, edited by Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group.
    Driving assessment for maintaining mobility and safety in drivers with dementia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
     世界中で高齢者の割合は増加しており、結果として高齢ドライバーの数も上昇中である。高齢者は移動の際は個人所有の自動車に頼ることが多く、認知障害を持つ高齢ドライバーの評価の重要性を増しつつある。我々は2つの理由から、自動車運転の評価に関する文献をレビューした。第1に、評価が認知症を持つ人に役立つか否か、良い運転技術が運転を継続させるか否かを確認したいと思った。第2に、評価が道路交通事故の予防に役立つか否かを発見したいと思った。
     結果、多くの著者が認知症を持つドライバーの運転技能、神経心理学的成績、および運転行動を調べてきたが、これらのアウトカムを前向きに評価して追跡するために、ドライバーを無作為割り付けした研究を、我々は見出せなかった。これは、利益が前方視的には立証されていないため、運転評価の文献を臨床現場に適用する際には注意が必要であることを強調する。それはまた、輸送・移動性を最大限に維持して道路交通事故を最小化する、新規および既存のドライバー評価モデルを前方視的に検討する必要性を示している。

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アルツハイマー病に対するメマンチン(memantine):最新の系統的レビューとメタ解析
    Kishi T, et al. J Alzheimers Dis 2017; 60: 401-425.
    Memantine for Alzheimer's Disease: An Updated Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     アルツハイマー病に対するメマンチン(memantine)の臨床的有益性は、また結論が出ていない。
    <目的>
     我々は、アルツハイマー病におけるメマンチンの有効性と安全性の最新の系統的レビューとメタ解析を実施した。
    <方法>
     我々は、アルツハイマー病に対するメマンチンのランダム化試験を含めた。認知機能スコア、行動障害スコア、あらゆる理由による中止が主要評価項目として使われた。変量効果モデルに基づく効果量が、メタ解析において評価された。
    <結果>
    3 0の研究が同定された(総参加者7,567人;メマンチン vs. プラセボ:研究数 = 11、参加者3,298人;メマンチン + コリンエステラーゼ阻害剤 vs. コリンエステラーゼ阻害剤:研究数 = 17、参加者4,175人)。
     プラセボと比較して、メマンチンは認知機能スコアと行動障害スコアにおいて有意な改善を示した(認知機能スコア:標準化平均差(SMD) = -0.24, 95% 信頼期間 (95% CIs) = -0.34, -0.15, p < 0.00001, I2 = 35%;行動障害スコア:SMD = -0.16, 95% CIs = -0.29, -0.04, p = 0.01, I2 = 52%)。中等度から重度のアルツハイマー病患者のみを含めた感度分析では、考慮に値する異質性を認めることなく、行動障害を減らす点において、メマンチンはプラセボより優れていた。
     コリンエステラーゼ阻害薬と比較して、メマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬の併用は、行動障害をより大きく減らして(SMD = -0.20, 95% CIs = -0.36, -0.03, p = 0.02, I2 = 77%)、認知障害を改善させる傾向を示した(SMD = -0.11, 95% CIs = -0.22, 0.01, p = 0.06, I2 = 56%)。しかし、二重盲検・プラセボ比較試験だけの感度分析では、コリンエステラーゼ阻害薬と比較して、メマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬の併用は、考慮に値する異質性を認めることなく、行動障害の有意な減少を示した(SMD = -0.11, 95% CIs = -0.21, -0.01, p = 0.04, I2 = 40%)。(コリンエステラーゼ阻害薬の1つである)ドネペジルの研究だけで感度分析を実施すると、考慮に値する異質性を認めることなく、認知機能の改善の点で、メマンチンとドネペジルの併用はドネペジル単独より優れていた。あらゆる理由による中止は、グループ間で違いはなかった。
    <結論>
     今回のメタ解析は、アルツハイマー病治療におけるメマンチンの単独使用またはコリンエステラーゼ阻害薬との併用の信頼できる有効性と安全性を示している。

    コメント:一般に薬剤の併用は有害作用増加のリスクがあり、また併用群は中等度から重度のアルツハイマー病患者さんですので、転倒などのリスクが懸念されますが、あらゆる理由による中止がグループ間で違わなかったことは良かったと思います。

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咽頭連鎖球菌感染症と精神疾患の関連:全国調査でPANDAS仮説の重要な側面を検証する
    Orlovska S, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 740-746.
    Association of Streptococcal Throat Infection With Mental Disorders: Testing Key Aspects of the PANDAS Hypothesis in a Nationwide Study.

    <重要性>
     連鎖球菌感染症は、強迫症/強迫性障害(obsessive-compulsive disorder、OCD;以下、)強迫症)およびチック症群/チック障害群(tic disorders;以下、チック症)の発症と関係付けられてきた。すなわち、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infection、PANDAS)と呼ばれる概念である。しかし、この関連を調べた過去の研究は小規模なもので、結果は一貫していない。
    <目的>
     咽頭連鎖球菌感染症後の、精神疾患、特に強迫症とチック症のリスクを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     デンマークの全国登録の1996年1月1日から2013年12月31日までの、最長17年の追跡データを用いて、住民ベースのコホート研究が実施された。デンマーク国民健康サービス登録から、連鎖球菌テストの登録個人情報が提供された。データ解析は、2016年1月1日から2017年2月28日に実施された。
    <主要評価項目と測定>
     いずれかの精神疾患(any mental disorder)、強迫症、またはチック症の診断についての全国精神疾患中央登録において個人が追跡され、発症率比(Incidence rate ratios、IRRs)がポアソン回帰分析で計算された。
    <結果>
     本研究に含まれた18歳未満の子供1,067,743人(女子:519,821人、男子:547,922人)のうち、638,265人が連鎖球菌テストを受け、うち349,982人が少なくとも1回はテスト陽性であった。
     連鎖球菌テスト陽性の人はテスト陰性の人よりも、いずれかの精神疾患のリスクが上昇していて(n = 15 408; IRR, 1.18; 95% CI, 1.15-1.21; P < .001)、特に強迫症(n = 556; IRR, 1.51; 95% CI, 1.28-1.77; P < .001)とチック症(n = 993; IRR, 1.35; 95% CI, 1.21-1.50; P < .001)で上昇していた。
     さらに、連鎖球菌感染症後は非連鎖球菌感染症後よりも、いずれかの精神疾患と強迫症のリスクが上昇していた。
     にもかかわらず、非連鎖球菌感染症に罹患した人も、いずれかの精神疾患(n = 11 315; IRR, 1.08; 95% CI, 1.06-1.11; P < .001)、強迫症(n = 316; IRR, 1.28; 95% CI, 1.07-1.53; P = .006)、およびチック症(n = 662; IRR, 1.25; 95% CI, 1.12-1.41; P < .001)のリスクが上昇していた。
    <結論と関連性>
     PANDAS仮説の重要な側面を調べたこの大規模調査は、咽頭連鎖球菌感染症に罹患した人では、精神疾患、特に強迫症とチック症のリスクが上昇していたことを見出した。連鎖球菌によらない咽頭感染症も、連鎖球菌による感染症より弱いとはいえ、強迫症といずれかの精神疾患のリスク上昇と関連していたことは、小児の急性発症神経精神症候群の診断概念の重要な要素を支持すると言えるかもしれない。

    コメント:いま成人ではうつ病の炎症仮説が話題ですが、本研究は前から提唱されていた小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(PANDAS)の概念を支持する大規模調査です。テスト陽性者における、いずれかの精神疾患の発症率比1.18と比べて、強迫症の1.51はやはり高いですね。しかし、そもそもデンマークには「連鎖球菌テストの登録や全国精神疾患中央登録というものが存在して、調査研究に利用できる」ということが驚きです。

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微小血管障害と中高年期のうつ病の関連:系統的レビューとメタ解析
    van Agtmaal MJ, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 729-739.
    Association of Microvascular Dysfunction With Late-Life Depression: A Systematic Review and Meta-analysis.

    <重要性>
     中高年期のうつ病の病因的因子は未だによく分かっていない。最近のエビデンスは、微小血管障害がうつ病と関連していることを示しており、これは予防および治療と密接な関わりを持つかもしれない。しかし、この関連は系統的にレビューされたことがない。
    <目的>
     末梢および脳の微小血管障害と、中高年期のうつ病の関連を調べること。
    <データ源>
     MEDLINEとEMBASEにおいて、その開始から2016年10月16日までに公表された微小血管障害とうつ病の関連を評価した縦断研究について、系統的な文献検索が行われた。
    <研究選択>
     3人の独立した研究者が、合意に基づく研究選択を行った。包括基準は研究母集団が40歳かそれ以上、妥当性のあるうつ病の同定法、妥当性のある微小血管障害の測定法である。
    <データ抽出と統合>
     この系統的レビューとメタ解析は、PROSPERO (CRD42016049158)に登録され、PRISMAおよびMOOSEガイドラインに従って報告される。データの抽出は、1人の研究者によって行われた。
    <主要評価項目と測定>
     微小血管障害に関する次の5つの推定値、すなわち内皮機能の血漿マーカー、アルブミン尿、皮膚と筋肉の微小循環測定、網膜細動静脈径、および脳小血管疾患が、うつ病を持つ、あるいは持たない参加者において検討された。変量効果モデルを用いたジェネリック逆分散法(generic inverse variance method)を使って、データは統合されたオッズ比(pooled odds ratios、OR)として報告された。
    <結果>
     全部で712の研究が同定され、48の研究がメタ解析に採用された。43,600人の参加者からのデータ、9,203人のうつ病を持つ参加者、および72,441人年(平均追跡3.7年)が利用可能であった。
     より高いレベルの血漿内皮マーカー(可溶性細胞間接着分子-1:OR, 1.58; 95% CI, 1.28-1.96)、白質高信号(OR, 1.29; 95% CI, 1.19-1.39)、脳微小出血(OR, 1.18; 95% CI, 1.03-1.34)、および脳(微小)梗塞(OR, 1.30; 95% CI, 1.21-1.39)が、うつ病と関連した。利用可能な研究のうち、アルブミン尿および網膜血管径とうつ病の有意な関連を示す報告はなかった。縦断データは、白質高信号と偶発うつ病の有意な関連を示した(OR, 1.19; 95% CI, 1.09-1.30)。
    <結論と関連性>
     このメタ解析は、微小血管障害の末梢と脳の様式が、中高年期の(偶発)うつ病の発症可能性と関連することを示している。この結果は、微小血管障害がうつ病の予防と治療の潜在的標的を提供するかもしれないことから、臨床的意義を持つ。

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不安症、強迫症、および心的外傷後ストレス障害における抗うつ薬中止後の再燃リスク:再燃予防試験の系統的レビューとメタ解析
    Batelaan NM, et al. BMJ 2017; 358: j3927.
    Risk of relapse after antidepressant discontinuation in anxiety disorders, obsessive-compulsive disorder, and post-traumatic stress disorder: systematic review and meta-analysis of relapse prevention trials.

    論文要約:
    <目的>
     抗うつ薬に反応した不安症/不安障害(anxiety disorder;以下、不安症)患者における抗うつ薬中止後の再燃リスクと再燃までの時間を調べ、再燃リスクが不安症の種類、抗うつ薬の種類、中止の様式、治療と追跡の期間、併存症、および心理療法の容認と関係するか否かを探索すること。
    <設計>
     再燃予防試験の系統的レビューとメタ解析。
    <データ源>
     PubMed、Cochrane、Embase、臨床試験登録を、その開始から2016年7月まで。
    <研究選択>
     抗うつ薬に反応した不安症患者を含み、患者をランダムに抗うつ薬の継続かプラセボへの置換に割り付けて二重盲検化して、再燃率または再燃時間を比較した適格な研究。
    <データ抽出>
     2人の独立した評価者が、研究を選択してデータを抽出した。再燃のオッズ比、再燃時間のハザード比、およびグループごとの再燃者率の推定に、変量効果モデルが使われた。様々なカテゴリー変数と連続型変数の効果が、それぞれサブグループ分析とメタ回帰分析で探索された。バイアスはコクラン(Cochrane)の方法で評価された。
    <結果>
     メタ解析には、最長1年の追跡で再燃を調べた28の研究(n=5233)が含まれた。研究にわたって、バイアスのリスクは低いと考えられた。
     抗うつ薬の中止は、抗うつ薬の継続より再燃の確率を高めた(要約オッズ比3.11, 95%信頼区間2.48-3.89)。サブグループ分析とメタ回帰分析は、統計学的有意差を示さなかった。再燃までの時間(n=3002)は、抗うつ薬が中止された時により短かった(要約ハザード比3.63, 95%信頼区間2.58-5.10; n=11 studies)。
     要約再燃者率は、プラセボ群で36.4%(30.8-42.1%; n=28 studies)、抗うつ薬群で16.4%(12.6-20.1%; n=28 studies)であったが、再燃者率は研究間で相当ばらつき、追跡期間の違いが最もあり得る要因と思われた。脱落はプラセボ群でより高かった(要約オッズ比1.31, 1.06-1.63; n=27 studies)。
    <結論>
     最長1年の追跡で、抗うつ薬の中止は治療継続と比べて、反応者におけるより高い再燃者率となった。1年の期間後についての証拠の欠如を、1年後の抗うつ薬の中止を奨める明確な助言と解釈すべきではない。不安症の慢性化を考えると、治療は再燃者率、副作用、および患者の嗜好を含む長期的配慮によって方向付けされるべきである。

    コメント:精神科臨床における不安症の場合は、一般に抗うつ薬が長く続いてしまう傾向があり、どうしたものかと思っていました。上記の結果は、「抗うつ薬に反応後の1年間くらいは継続してもよい」とする根拠になりそうです。

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軽度認知障害(MCI)患者におけるうつ病の有病率:系統的レビューとメタ解析
    Ismail Z, et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 58-67.
    Prevalence of Depression in Patients With Mild Cognitive Impairment: A Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要約:
    <重要性>
     うつ病は軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)を持つ人に一般的にみられ、認知症に進行する確率をより高くするかもしれない。MCIを持つ人におけるうつ病の有病率の推定値は、臨床的判断と公衆衛生政策の両方を導くために必要であるが、公表された結果は一貫性と正確性を欠く。
    <目的>
     MCIを持つ人におけるうつ病の有病率の正確な推定値を提供し、報告された結果の異質性の理由を同定する。
    <データ源>
     Medline、Embase、およびPsycINFOを用いて、そのデータベースの開始から2016年3月までの文献検索が行われた。包含論文の引用文献に対するGoogle Scholar検索を含む、全包含論文の手作業による検索が行われた。
    <研究選択>
     次の条件を満たす論文が採用された:(1)英語で公表されている、(2) MCI患者を主要な研究対象群として報告している、(3)うつ病または抑うつ症状を妥当性のある測定法を用いて報告している、(4)MCI患者におけるうつ病の有病率を報告している。
    <データ抽出と統合>
     データを正副の2度抽出して、すべての要約、全テキスト、および他の情報源がレビューされた。MCI患者におけるうつ病の全有病率が、変量効果モデルを用いて統合された。異質性は層別化と変量効果メタ回帰を用いて探索された。
    <主要評価項目と測定>
     MCI患者におけるうつ病の有病率が、百分率として95%信頼区間と共に報告された。推定値はまた、母集団の源(地域ベース/臨床ベース)、うつ病の診断方法(臨床家が実施/提供者ベース/自己報告)、およびMCIの診断方法(認知測定/全般的測定、健忘型/非健忘型)によって層別化された。
    <結果>
     5687の固有の要約のうち、255が全テキストのレビューに選ばれ、20,892人の患者からなる57の研究が包含基準を満たした。MCI患者におけるうつ病の全統合有病率は32%(95%信頼区間、27-37)で、推定値の間に有意な異質性を認めた(I2 = 90.7%)。
     母集団の源によって層別化された場合、MCI患者におけるうつ病の有病率は地域ベースのサンプルでは25%(95%信頼区間、19-30)、臨床ベースのサンプルでは40%(95%信頼区間、32-48)と、有意な差を認めた(P < .001)。一方、うつ病を診断するために使われた方法も、MCI診断やMCIサブタイプの決定のために使われた基準も、有病率推定に有意な影響を与えなかった。
    <結論と関連性>
     MCI患者におけるうつ病の有病率は高い。報告された文献の異質性に寄与する要因はサンプルの起源であり、臨床ベースのサンプルではよりうつ病の有病率が高い。

    コメント:臨床ベースのサンプルにおけるうつ病の有病率が40%という結果は、とても高くて少し驚きです。

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陽電子断層撮影法による双極性感情障害と統合失調症の疾患横断的ドパミン仮説の検証
    Sameer Jauhar, et al. JAMA Psychiatry. Published online October 11, 2017.
    A Test of the Transdiagnostic Dopamine Hypothesis of Psychosis Using Positron Emission Tomographic Imaging in Bipolar Affective Disorder and Schizophrenia.

    論文要約:
    <重要性>
     ドパミン仮説は、ドパミン異常が診断に関わりなく精神病の根底にあることを示唆しており、これは双極性感情障害と統合失調症におけるドパミン調節異常を意味するが、研究領域基準(research domain criteria、RDoC)とも一致する。しかし、この仮説は精神病を伴う双極性障害と診断された人において、直接的に調べられたことはなかった。
    <目的>
     ドパミン合成能が精神病を伴う双極性障害において上昇しているか否か、およびこれが統合失調症とマッチされた対照とどう異なるのかを検証し、ドパミン合成能が診断クラスに関係なく、精神病症状の重症度と関連するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この陽電子断層撮影法(positron emission tomography、PET)を用いた横断的症例対照研究は、都心部(ロンドン、イングランド)における初回エピソード精神病サービスの設定で実施された。ドパミン合成能を調べるために、60人(22人の双極性精神病、うち18人が抗精神病薬未経験か未服薬;16人の統合失調症、うち14人が抗精神病薬未経験か未服薬、および22人のマッチされた対照者)が研究に参加し、18F-DOPA PETを受けた。陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、および機能の全体的評価(GAF)を含む標準化された臨床評価が導入された。研究期日は2013年3月から2016年11月であった。
    <主要評価項目と測定>
     ドパミン合成能(Kicer)と臨床評価(PANSS、YMRS、およびGAF)。
    <結論>
     参加者の平均(標準偏差)年齢は、双極性精神病22名(男性13名)は23.6(3.6)歳、統合失調症16名(男性14名)は26.3(4.4)歳、対照(男性14名)は24.5(4.5)歳であった。
     線条体のドパミン合成能(Kicer)に有意な群間差を認めた(F2,57 = 6.80, P = .002)。Kicerは対照(平均 [標準偏差], 12.16 [0.92] × 10-3 min-1)と比べて、双極性群(平均 [標準偏差], 13.18 [1.08] × 10-3 min-1; P = .002)と統合失調症群(平均 [標準偏差], 12.94 [0.79] × 10-3 min-1; P = .04)の両方で有意に上昇していた。双極性群と統合失調症群の間に、線条体Kicerの有意な差を認めなかった。
     現在の精神病エピソードを体験している双極性と統合失調症の混合サンプルにおいて、Kicerは陽性の精神病症状の重症度と有意に正相関した(n = 32, r = 0.52, P = .003)。現在の精神病エピソードを経験している双極性障害の人では、Kicerと陽性の精神病症状の重症度の間に有意な正相関を認め(n = 16, r = 0.60, P = .01)、それは躁症状の重症度の調整後も有意であった。
    <結論と関連性>
     これらの結果は、精神病の病因論におけるドパミン機能障害の診断横断的役割と一致しており、双極性障害と統合失調症に対する可能性のある新規薬剤としてのドパミン合成能を示唆している。

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統合失調感情障害(1)単極性うつ病および統合失調症と比較した統合失調感情障害の特徴と異質性:系統的文献レビューとメタ解析
    Rink L, et al. J Affect Disord 2016; 191: 8-14.
    Characteristics and heterogeneity of schizoaffective disorder compared with unipolar depression and schizophrenia - a systematic literature review and meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     統合失調感情障害(schizoaffective disorder、SAD)患者と単極性うつ病(unipolar depression、UD)患者の疾患特性の比較は、単極性うつ病が統合失調感情障害の最も重要な鑑別診断の一つであるにもかかわらず稀である。また、疾患特性のばらつき(異質性)は比較されたことがない。我々は統合失調感情障害、単極性うつ病、そしてもう一つの重要な診断としての統合失調症の間で、疾患特性とその異質性を比較した。
    <方法>
     標本抽出バイアスを減らすために、我々は統合失調感情障害、単極性うつ病、および統合失調症の患者を同時に比較した研究を系統的に探索した。我々は変量効果Mantel-Haenszelモデルを用いて、異質性の測度として統合標準偏差を使って人口統計と疾患経過・精神病理のパラメータを推定し比較した。
    <結果>
     以前のメタ解析(Medlineでスクリーニングされた765論文、 EMBASEで スクリーニングされた2738論文、およびPsycINFOでスクリーニングされた855論文)によって見出された155論文から、我々はRDC、DSM-III、DSM-III-R、DSM-IV、またはICD-10に従って診断された患者3,714人を含む24研究を選択した。
     ほとんどすべての重要な特性において、統合失調感情障害サンプルは、やや統合失調症よりの傾向を持ちつつ、単極性うつ病と統合失調症の間に収まった。平均すると、単極性うつ病患者は、疾患発症時において有意により高齢で(単極性うつ病: 33.0歳, 統合失調感情障害: 25.2, 統合失調症: 23.4)、女性であることがより多く(59% vs. 57% vs. 39%)、既婚であることがより多かった(53% vs. 39% vs. 27%)。また、BPRS、GAS、およびHAMDで測定された精神病理はより重度ではなかった。人口統計学的および臨床的変数について、単極性うつ病の異質性は統合失調感情障害のそれよりおよそ5%大きく、統合失調症患者のサンプルは最も低い統合異質性を示した。類似の状況が、異質性の測度として変動係数を用いた感度分析で見られた。
    <制約>
     双極性障害に対して単極性うつ病の患者を含む研究はほとんどない。DSM-5に基づく研究を含めることはできなかった。
    <結論>
     以前の研究で双極性障害について示されたことが、本研究では単極性感情障害に関して認められている。すなわち、統合失調感情障害は統合失調症と感情障害の間に収まり、重要な疾患特性に関して量的差異が認められ、それらは統合失調感情障害の概念的妥当性を支持する。我々の予想とは反対に、異質性は単極性うつ病より統合失調感情障害で大きいことはなく、統合失調症よりかなり高くもない。したがって、統合失調感情障害診断の低い信頼性は、統合失調感情障害の疾患特性の高いばらつきに帰することはできない。

    コメント:臨床的に精神病エピソードと気分エピソードを同時に持つ患者さんはそう珍しくなく、なかなか治療が難しい人がいますが、操作的に診断することも、けっこう難しい印象があります。「統合失調感情障害診断の低い信頼性は、統合失調感情障害の疾患特性の高いばらつきに帰することはできない」ならば、別の要因の影響力を十分検討する余地がありそうです。

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統合失調感情障害(2)統合失調感情障害と診断された患者における診断の変更:再診断研究の系統的レビューとメタ解析
    Santelmann H, et al. Bipolar Disord 2016; 18: 233-46.
    Diagnostic shift in patients diagnosed with schizoaffective disorder: a systematic review and meta-analysis of rediagnosis studies.

    論文要約:
    <目的>
     統合失調感情障害(schizoaffective disorder、SAD)の診断は臨床実践において十分確立されているものの、理論的基礎については議論が絶えない。我々は、統合失調感情障害患者の診断変更の範囲と方向を分析した。
    <方法>
     我々は、異なる時点の2回の診断評価を記載しているすべての研究(再診断研究)について、Medline、EMBASE、およびPsycINFOを系統的に検索し、診断変更を定量するためにメタ解析的方法を用いた。複数の事前および事後サブグループ分析(例、評価者の盲検化)とメタ回帰(例、公表年)が実施された。
    <結果>
     我々はスクリーニングされた4,415論文から31研究を含めた。すなわち、統合失調感情障害からの診断変更に関する27研究と、統合失調感情障害への診断変更に関する23研究である(期間の中央値は2年であった)。1回目の評価で統合失調感情障害と診断された患者のうち全部で36%が変更され、19%が統合失調症、14%が感情障害、6%が他の障害であった。2回目の評価で統合失調感情障害と診断された患者のうち、55%が異なる診断を1回目に受けていて、初期の診断で多かったのは感情障害(24%)、統合失調症(18%)、および他の障害(12%)であった。
    <結論>
     統合失調感情障害における診断変更はかなり多い。精神科医はその疾患の経過中に診断を再評価して、治療を調整する必要がある。統合失調感情障害の診断は、感情障害より統合失調症に若干多く変更され、統合失調感情障害へ再診断された患者では、感情障害より統合失調症と診断された人が少ない。したがって、診断レベルでは機能性精神病の経過中に統合失調症に向かう傾向があるようだ。

    コメント:最後の結論の「機能性精神病の経過中に統合失調症に向かう傾向」については、臨床経験とも一致するように思いました。

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統合失調感情障害(3)統合失調症、双極性障害、および単極性うつ病の比較した統合失調感情障害のテスト-再テスト信頼性:系統的レビューとメタ解析
    Santelmann H, et al. Bipolar Disord 2015; 17: 753-68.
    Test-retest reliability of schizoaffective disorder compared with schizophrenia, bipolar disorder, and unipolar depression--a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <目的>
     統合失調感情障害はよくある診断で、その信頼性が現在検討されている。統合失調感情障害の診断信頼性を、その主要な鑑別診断と比較した。
    <方法>
     我々は、統合失調症、双極性障害、および単極性うつ病と比較した統合失調感情障害診断のテスト-再テスト信頼性に関するすべての研究について、Medline、EMBASE、およびPsycINFOを系統的に検索した。コーエンのカッパ(Cohen's kappa)係数、および診断の有り無しの一致(positive and negative agreement)を記述し比較するために、メタ解析的方法を用いた。加えて、複数の事前・事後サブグループ分析と感度分析を実施した。
    <結果>
     スクリーニングされた4,415研究のうち、49研究が包含された。統合失調感情障害のテスト-再テスト信頼性は、統合失調症(42研究中の39)、双極性障害(33研究中の27)、および単極性うつ病(35研究中の29)より一貫して低かった。統合失調感情障害とその他の診断の間のカッパ係数の平均差はおよそ0.2で、統合失調感情障害のカッパ係数の平均は0.50(95%信頼区間: 0.40-0.59)であった。
     3つの主要鑑別診断に対する統合失調感情障害の診断信頼性(二値的:小さい vs.大きい)についての結果は疑いなく同質的であったが、連続的測定量の異質性は、サブグループ分析と感度分析をしたとしてもかなり大きかった。
    <結論>
     臨床診療と研究において、統合失調感情障害の比較的低い診断信頼性を、この障害を正確に診断する努力を増すことにつなげるべきである。

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統合失調感情障害(4)統合失調症、双極性障害、および単極性うつ病の比較した統合失調感情障害の評価者間信頼性:系統的レビューとメタ解析
    Santelmann H, et al. Schizophr Res 2016; 176: 357-363.
    Interrater reliability of schizoaffective disorder compared with schizophrenia, bipolar disorder, and unipolar depression - A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
     統合失調感情障害は臨床診療上よくある診断であるが、疾病分類学的位置づけについては、その概念化がなされて以来ずっと議論されてきた。診断信頼性が十分であることは重要であるが、統合失調感情障害は評価者間信頼性が低いことが報告されてきた。しかし、系統的レビューとメタ解析的方法に基づくエビデンスは欠如している。
     Medline、Embase、およびPsycInfoにおける高感度の文献検索を用いて、我々は統合失調感情障害、双極性障害、および単極性うつ病と比較した、統合失調感情障害の評価者間信頼性を測定した研究を同定した。スクリーニングされた4,126の登録のうち、我々は異なる評価者によって診断された患者7,912人について報告している25の研究を含めた。
     統合失調感情障害の評価者間信頼性は中くらいで(コーエンのカッパのメタ解析による推定値は0.57[95%信頼区間:0.41-0.73])、その主要鑑別診断の信頼性よりかなり低かった(カッパの差は0.22と0.19)。かなりの異質性があったが、分析の結果、統合失調感情障害の評価者間信頼性は圧倒的多数の研究において一貫して低かった。結果は、サブグループ分析と感度分析(例、診断マニュアルの使用)、メタ回帰(例、公表年)と公表バイアス分析において頑強性を維持した。臨床的には、統合失調感情障害と診断された患者の診断を再評価する特段の重要性を強調する。また、それらは評価者間信頼性が低いとする広く行き渡った臨床的印象を定量し、テスト-再テスト信頼性が低いと報告した以前のメタ解析と合致する。

    コメント:以上、統合失調感情障害(1)から(4)は、Department of Psychiatry and Psychotherapy, University of Cologne Medical Schoolの研究者の論文でした。ドイツ語でUniversität zu Kölnのケルン大学は、ヨーロッパ最古の大学の一つで設立は1388年、神聖ローマ帝国4番目の大学だそうです。

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コクランレビュー:統合失調症に対するリチウム
    Leucht S, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 28 October 2015, edited by Cochrane Schizophrenia Group.
    Lithium for schizophrenia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
    <レビューの設問>
     薬剤としてのリチウム単独が、統合失調症と統合失調症様の疾患に対して有効な治療であるか否かを調査すること。抗精神病薬の追加治療として上乗せした時に、リチウムが有効な治療であるか否かを調べること。
    <背景>
     統合失調症持つ人はしばしば、疾患の2つの主要な症状タイプ、すなわち声を聞く/物を見る(幻覚)と奇妙な信念(妄想)の急性症状を持つ。慢性症状の例は、気分低下/うつ病、社会的引きこもり、および記憶の問題である。統合失調症の主たる治療は抗精神病薬である。しかし、統合失調症を持つ多くの人がこれらの薬剤に十分反応せず、疾患のある種の症状は、抗精神病薬が投与されたとしても残遺し得る。これらの症例では多様な追加薬物が使用されるが、その一つがリチウムである。リチウムはその人の気分を安定させるので、統合失調症に対する抗精神病薬の追加治療として使用される。リチウムは躁病とうつ病を軽減することができる。
    <研究の特性>
     2012年の再検索で、基準を満たす2研究が新たに同定されたが、2015年の検索では、追加すべき研究は見出されなかった。このレビューは現時点で、全部で763人の参加者からなる22のランダム化研究を含む。その研究では、統合失調症または類縁疾患を持つ人が、リチウムまたはプラセボ(偽薬)、リチウムまたは抗精神病薬、あるいはリチウム+抗精神病薬、あるいは抗精神病薬単独に無作為に群分けされた。
    <重要な結果>
     このレビューの結果は、「リチウムそれ自体が統合失調症または統合失調感情障害を持つ人に対して有効であることを示す良質なエビデンスはない」ことを示している。抗精神病薬の追加治療としてのリチウムの有効性を支持するいくつかの質の低いエビデンスはあるが、この結果は決定的ではない。(腎臓や甲状腺の問題といった)リチウムの副作用に関する研究はほとんどない。
    <根拠の質>
     大抵の研究は小規模で短期間であり、十分な報告ではない。レビューの著者らは、主要評価項目のエビデンスの質は「低い」か「とても低い」と評点した。大規模かつ良く設計された試験が必要である。

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コクランレビュー:統合失調症に対するベンゾジアゼピン
    Dold M, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 14 November 2012, edited by Cochrane Schizophrenia Group.
    Benzodiazepines for schizophrenia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
     抗精神病薬は精神疾患に苦しむ人に対する主要な治療法であるが、精神健康問題を持つ多くの人が抗精神病薬に十分反応しない。抗精神病薬は陽性症状(例、幻声や幻視)についてはうまく治療するものの、陰性症状(例、感情喪失、不活発)についてはそうではない。加えて、抗精神病薬は運動障害、体重増加、不眠、めまいといった厄介な副作用を引き起こすことが時にある。従来の抗精神病薬に十分反応しない人では、精神科医はそれ自体がうまく働くかもしれない異なるタイプの薬剤に変更するか、新しい薬または元の抗精神病薬治療の補助薬を加えるかの選択に直面する。
     ベンゾジアゼピンは、単独または従来の抗精神病薬と併用で投与されることがある。それらは鎮静、静穏、筋緊張の緩和をもたらすため、不安、睡眠の問題、けいれん、アルコール離脱、および急性の精神健康問題のため焦燥している人を静めるのに役立つ。このレビューは2,657人からなる34の研究を見出した。それはベンゾジアゼピンを、唯一の薬剤として単独で使用の場合、あるいは統合失調症を持つ人に対するもう一つの薬剤との組み合わせで使う場合に比較した。34研究からの情報は全般に乏しく、不完全で、報告は不十分である。その34の研究は短期間でサイズが小さい。
     本レビューは、「ベンゾジアゼピンを単独または併用で使用することを支持するエビデンスはほとんどない」ことを示す。しかし、ベンゾジアゼピンは人を静穏化させる鎮静特性を持っており、短時間の焦燥抑制に役立つ。特に従来の抗精神病薬と組み合わせて使用される追加治療としてのベンゾジアゼピンを含む、さらなる研究が必要である。

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コクランレビュー:統合失調症に対するバルプロ酸
    Yijun Wa, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 24 November 2016, edited by Cochrane Schizophrenia Group.
    Valproate for schizophrenia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
    <レビューの設問>
     統合失調症および統合失調症様の疾患の治療として、バルプロ酸を抗精神病薬に追加する効果をレビューすること。
    <背景>
     統合失調症の主たる治療は抗精神病薬である。この治療にも関わらず、およそ30%の人がいくつかの疾患の徴候を経験し続ける。ときどき他の薬剤が、その人が経験している症状を軽減させる目的で抗精神病薬に加えられる。バルプロ酸はそのような薬剤の一つで、通常はてんかんの治療と双極性障害を持つ人の気分の安定化のため、そして統合失調症と気分障害の両方を持つ人(統合失調感情障害)に対して使われる。
    <研究の特性>
     本レビューに含まれるのは、関連データベースの電子検索を通して見出された全部で2184人の参加者からなる26研究である。抗精神病薬への追加としてバルプロ酸の有効性を調べたすべての試験である。2つの研究を例外として、研究は小規模で、その大部分は短期間であり十分な報告ではなかった。
    <重要な結果>
     包含された試験からのデータによると、抗精神病薬に加えてバルプロ酸の投与を受けた参加者は、抗精神病薬に加えてプラセボの投与を受けた参加者より良好な臨床的反応を示した。しかし、この有利性はより低い質の試験が分析から除外されると失われた。また、バルプロ酸は興奮と焦燥の制御において有効性を示した。併用療法の認容性と全般的耐性は治療グループ間で類似しており、より多い体重増加を引き起こすことはなかったが、バルプロ酸の追加はより強い鎮静とめまいを起こした。生活の質に関する効果を報告する試験はなかった。
    <エビデンスの質>
     エビデンスは限られており、確かな結論を導くことはできなかった。関心主要評価項目について、本レビューの著者らはエビデンスの質は「低い」または「かなり低い」と判断した。その理由はレビューされた研究の方法論的問題のためである。それらの大部分が小規模、かつ短期間であり、参加者または関係者に盲検化されていなかった。統合失調症を持つ人の抗精神病薬治療にバルプロ酸を追加する場合の臨床効果を適切に確認するために、大規模、二重盲検、そして長期のランダム化試験がなされるべきである。

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コクランレビュー:統合失調症に対するカルバマゼピン
    Leucht S, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 2 May 2014, edited by Cochrane Schizophrenia Group.
    Carbamazepine for schizophrenia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
     統合失調症を持つ人はしばしば声を聞いたり物を見たり(幻覚)、変わった信念を持つ(妄想)。また、アパシー、疲労、意欲欠如、まとまりのない思考や行動を経験する。これらの症状は、統合失調症を生涯にわたって多くの人々に悪影響を与える重篤な疾患とする。統合失調症の主たる治療は抗精神病薬である。しかし、この薬は大多数の人々を治療する上でうまく働くとはいえ、5から15%の患者はひどい症状に苦しみ続ける。これらの人については、1)薬剤の投与量を変更する、2)他の抗精神病薬に切り換える、3)抗精神病薬ではない薬剤を追加するといったいくつかの治療オプションが利用可能である。
     カルバマゼピンは1950年代にてんかんを治療するために初めて使われた。それは、高揚した気分と低下した気分が変動する人(例えば、双極性感情障害)では、気分安定薬としても使われる。カルバマゼピンの副作用には、協調運動障害、頭痛、および傾眠がある。
     このレビューは、統合失調症を持つ人々に対するカルバマゼピンの有効性に焦点を当てる。コクラン統合失調症グループの試験登録の検索が2012年7月に実施され、283人の参加者からなる10の研究が同定された。その中で、カルバマゼピンは非実薬(“偽”の、またはプラセボ治療)、抗精神病薬、あるいはカルバマゼピン+抗精神病薬と比較された。しかし、10の研究のすべてが小規模で、それらの研究中の情報の水準は低かった。したがって、カルバマゼピンが統合失調症を持つ人々の症状と副作用、または類似の精神健康問題を軽減するか否かについて、エビデンスは欠如している。統合失調症を持つ人々の治療としてカルバマゼピンを推奨する前に、より強いエビデンスを提供する規模がより大きく良く設計された試験が必要である。

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小児期のいじめ体験の精神健康への同期的・長期的寄与:脆弱性とレジリエンスの役割
    Singham T, et al. JAMA Psychiatry. Published online October 4, 2017.
    Concurrent and Longitudinal Contribution of Exposure to Bullying in Childhood to Mental Health: The Role of Vulnerability and Resilience.

    <重要性>
     いじめ体験は不良な精神健康と関連する。しかし観察された関連が、いじめ体験の精神健康に対する直接の有害的寄与をどの程度反映するのかについては、非因果的な関係が遺伝的および環境的交絡(例、前から存在する脆弱性)から生じる可能性もあり、未だ不明である。いじめ体験の精神健康への寄与の範囲を決定することは、一次および二次介入との関連から重要な関心事と言える。
    <目的>
     因果推論を強化する双生児間差デザイン(twin differences design)を用いて、小児期および青年期のいじめ体験の精神健康に対する同期的・長期的寄与を特徴付けること。
    <設計・設定・参加者>
     参加者は1994年1月1日から1996年12月31日の間に、イングランドとウェールズで生まれた住民出生記録からの住民ベースのコホートである双生児早期発達研究(Twins Early Development Study)から集められた。データ収集は2005年12月1日から2013年1月31日に、参加者が11歳から16歳の時に行われた。データ解析は2016年1月1日から2017年6月20日に実施された。
    <曝露>
     参加者は11歳と14歳の時に、仲間からのいじめ多次元尺度(Multidimensional Peer-Victimization Scale)に回答した。
    <主要評価項目と測定>
     11歳と16歳の時の精神健康評価には、不安、抑うつ、多動性・衝動性、不注意、素行の問題、および精神病様体験(例、猜疑的な思考、または不合理な認知)が含まれた。
    <結果>
     最終サンプルに含まれた11,108人の双生児(5,894人の女子と5,214人の男子)の最初の評価時の平均年齢は11.3歳、最後の評価時の平均年齢は16.3歳であった。最も顕著な双生児間の差の推定値(一卵性)は、11歳児のいじめ体験の、その時の不安、抑うつ、多動性・衝動性、不注意、および素行の問題に対する病因的寄与と整合した。時間経過とともに効果は減少し、不安(β = 0.27; 95% CI, 0.22-0.33)に対するかなりの同期的寄与は2年間持続したが(β = 0.12; 95% CI, 0.04-0.20)、5年間は持続しなかった。猜疑的な思考と不合理な認知への直接的寄与は5年間にわたり持続した。
    <結論と関連性>
     これは双生児間差デザインと複数の情報提供者・尺度データを用いて、小児期のいじめ体験の精神健康に対する寄与を特徴付けた現時点で最大の研究である。小児期のいじめ体験の精神健康に対する直接の有害的寄与の明白な証拠が提供される。結果はまた、小児期のいじめ体験の一部は、前から存在する脆弱性の症状として理解され得る可能性を示す。最後に、多くの評価項目について時間経過に伴い効果が消失したことは、いじめを受けた子供におけるレジリエンスの可能性に光を当てる。いじめを受けることを減らすプログラムに加えて、前から存在する脆弱性へ対処して、レジリエンスへ注目することが有益かもしれない。

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精神病を持つ人はどのくらい運動をしないで座りがちか:系統的レビューとメタ解析
    Stubbs B, et al. Schizophr Res 2016; 171: 103-9.
    How sedentary are people with psychosis? A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <目的>
     座って行う行為(sedentary behavior、SB)は、心血管疾患と死亡率の独立したリスク要因である。我々は、精神病を持つ人のSBレベルと予測因子を調査するためにメタ解析を行った。
    <方法>
     主要な電子データベースが、その開始から2015年9月まで、統合失調症スペクトラムおよび双極性障害を含む精神病を持つ人において自己報告式質問紙または客観的測定(例:加速度計)を用いてSBを測定した論文について探索された。変量効果メタ解析とメタ回帰分析が実施された。
    <結果>
     精神病を持つ2,033人を含む30研究が適格とされた。平均年齢は41.3歳(範囲25.1-60)、63.2%が男性(範囲35-89%)、体格指数(body mass index、BMI)は28.7(範囲25.9-32.1)であった。トリム・フィル分析(trim and fill analysis)によると、精神病を持つ人は660.8分(95%信頼区間 523.2-798.4, 参加者数=2033)、または一日11.0時間(95%信頼区間8.72-13.3)を座っていることに費やすことが示された。SBの客観的測定(一日12.6時間, 95%信頼区間8.97-16.2, 研究数=7, 参加者数=254)は、自己報告式SB(一日6.85時間, 95%信頼区間4.75-8.96, 研究数=6, 参加者数=1779)より有意に高いSBレベルを記録した(p<0.001)。精神病を持つ人は対照より有意に多くSBに従事し(g値=1.13, 95%信頼区間0.496-1.77, P<0.001, 精神病を持つ参加者数=216, 対照者数=159)、これは平均差2.80時間/日に等しい。多変量メタ回帰は、SBの客観的測定が、高いレベルの運動をしないで座りがちな傾向を予測することを確認した。
    <結論>
     精神病を持つ人は、日中に非常に高いレベルの座って行う行為(sedentary behavior、SB)に従事しており、現行の自己報告式質問紙はSBを過小評価しているかもしれない。SBが心血管疾患の独立した予測因子であることを考えると、今後はSBの予防をもっぱら目的とする調査が必要である。

    コメント:「座って行う行為」の英語名sedentary behavior(SB)を、この論文で初めて知りました。自分自身のSBも相当な高レベルと思われ、心配になりました。

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統合失調症を持つ人はどのくらいの身体活動に携わるべきか:系統的レビュー、比較メタ解析およびメタ回帰
    Stubbs B, et al. Schizophr Res 2016; 176: 431-440.
    How much physical activity do people with schizophrenia engage in? A systematic review, comparative meta-analysis and meta-regression.

    論文要約:
    <目的>
     身体活動は統合失調症を持つ人の健康アウトカムを改善する。統合失調症を持つ人がどのくらい身体活動(physical activity、PA)に取り組んでいて、何が身体活動への参加に影響するかについては、よく分かっていない。我々は、統合失調症を持つ人のPAレベルと予測因子を調査するためにメタ解析を行った。
    <方法>
     主要な電子データベースが、その開始から2016年2月まで、初回エピソード精神病(first episode psychosis、FEP)を含む統合失調症を持つ人において自己報告式質問紙または客観的測定(例:加速度計)を用いてPAを測定した論文について探索された。変量効果メタ解析とメタ回帰分析が実施された。
    <結果>
     統合失調症を持つ3,453人(平均年齢は40.0歳で、64.0%が男性)からなる35研究が適格として含まれた。軽度のPAへの従事は一日80.44分(95%信頼区間68.32-92.52, 参加者数=2658)、中程度から活発なPAへは一日47.1分(95%信頼区間31.5-62.8, 参加者数=559)、活発なPAへは一日1.05分(95%信頼区間0.48-1.62, 参加者数=2533)であった。統合失調症を持つ人は対照より有意に少なく中程度のPA(g値=0.45, 95%信頼区間 -0.79~-0.1, p=0.01)と活発なPA(g値=-0.4, 95%信頼区間 -0.60~-0.18)に従事した。外来患者で客観的測定と自己報告式質問紙を比較した研究においては、軽度から中等度のPAレベルはより高く、しかし活発なPAレベルはより低かった。56.6%が推奨される「週に150分の中程度のPA」を満たした。メタ回帰分析において、抑うつ症状と高年齢は活発なPAが少ないことと関連した。
    <結論>
     我々のデータは、統合失調症を持つ人は対照より有意に少ない中程度から活発なPAに従事していることを確認した。その強度に関係なく、PAの増加を目的とする介入が統合失調症を持つ人に示唆されたが、確立された健康上の利益を考えると、中程度から活発なPAをもっぱら増すことが優先されるべきかもしれない。

    コメント:この研究グループは先に『精神病を持つ人はどのくらい運動をしないで座りがちか』という系統的レビューとメタ解析を発表しています(Stubbs B, et al. Schizophr Res 2016; 171: 103-9)。確立された健康上の利益からは中程度から活発なPAについては、(50歳以上の成人の認知機能に関して)「中から高強度の、有酸素およびレジスタンス運動を、1回あたり45分以上、1週間になるべく多く行うとよい」という意見があります(Northey JM, et al. Br J Sports Med, 24 April 2017)。

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双極性障害を持つ人の身体活動と座って行う行為:系統的レビューとメタ解析
    Vancampfort D, et al. J Affect Disord 2016; 201: 145-52.
    Physical activity and sedentary behavior in people with bipolar disorder: A systematic review and meta-analysis.

    論文要約
    <背景>
     双極性障害(bipolar disorder)を持つ人の死亡率は、一般人口のそれよりおよそ2から3倍高い。身体活動(physical activity、PA)の欠如と座って行う行為(sedentary behavior、SB)は、心血管疾患と早期死亡の独立したリスク要因である。
    <目的>
     我々は、双極性障害におけるPAとSBのレベルとその予測因子を調べるために、メタ解析を実施した。
    <方法>
     主要な電子データベースが、その開始から2016年2月まで、双極性障害において自己報告式質問紙または客観的測定(例:加速度計)を用いてPAとSBを測定した論文について探索された。変量効果メタ解析とメタ回帰分析が実施された。
    <結果>
     双極性障害を持つ279人(男性が129人)を含む6研究が適格とされた(平均年齢:43.9歳、範囲:32.0-51.5歳)。トリム・フィル分析(trim and fill analysis)によると、双極性障害を持つ人は総計210.1分(95%信頼区間 146.3-273.9分)/日を身体的に活発に、日中の613.3分(95%信頼区間389.9-836.6分)を座って過ごすことが示された。双極性障害を持つ人と対照の間で、一日総PAに有意な差を認めなかった(g値= -0.62, 95%信頼区間= -1.55-0.31, I2 = 88.5%, 参加者数 BD = 82, controls = 86)。PAの客観的測定は、自己報告されたPAより有意に低いレベルを記録した(P=0.03)。メタ回帰は、高い年齢と高いBMIが低いPAレベルを予測することを示した。
    <制約>
     双極性障害を持つ人のSBを評価する研究は、非常に限られた数しかなかった。

    <結論>
     双極性障害を持つ成人は、日中に高レベルの座って行う行為(sedentary behavior、SB)に従事している。SBが心血管疾患の独立した予測因子であることを考えると、今後はSBの予防をもっぱら標的とするライフスタイル介入が必要である。

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うつ病を持つ人の身体活動と座って行う行為:系統的レビューとメタ解析
    Schuch F, et al. J Affect Disord 2017; 210: 139-150.
    Physical activity and sedentary behavior in people with major depressive disorder: A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     低レベルの身体活動(physical activity、PA)と座って行う行為(sedentary behavior、SB)は、うつ病/大うつ病性障害(major depressive disorder:以下、うつ病)を持つ人の心血管疾患と早期死亡の独立したリスク要因である。
    <目的>
     うつ病を持つ人におけるPAとSBのレベルとその予測因子を調べること。
    <方法>
     電子データベースが、その開始から2016年4月まで、うつ病を持つ人において自己報告式質問紙または客観的測定(例:加速度計)を用いてPAとSBを測定した論文について探索された。変量効果メタ解析とメタ回帰分析が実施された。
    <結果>
     うつ病を持つ2901人を含む24研究が適格とされた(女性:78.4%、平均年齢:54歳、範囲:21-77歳)。うつ病を持つ人は一日126.0分(95%信頼区間91.9-160.1分)のあらゆるタイプのPAに従事し、日中の8.5時間(95%信頼区間7.51-9.62分)を座って過ごした。対照と比較して、うつ病を持つ人は総PAがより短く(標準化平均差=-0.25, 95%信頼区間=-0.03 to 0.15)、中程度から活発なPAがより少なく(標準化平均差=-0.30, 95%信頼区間=-0.40 to 0.21)、より高いレベルのSBに従事した(標準化平均差=0.09, 95%信頼区間=0.01-0.18)。
     推奨されるPAガイドラインに満たないうつ病を持つ人の割合は、67.8%(13研究)であり、PAの自己報告より客観的な測定を用いた研究でより高かった(62.1% 対 85.7%, p=0.04)。うつ病を持つ人は、推奨されるPAガイドラインを満たすことが対照より少なかった(オッズ比= -1.50, 95%信頼区間= -1.10~-2.10)。
    <制約>
     大抵の分析で異質性が明らかであった。
    <結論>
     うつ病を持つ成人は、低いレベルのPAと高いレベルのSBに従事している。PAとSBが死亡率の独立した予測因子であることから、今後はSBの予防とPAの採用と維持の両方を標的とするライフスタイル介入が必要である。

    コメント:以上、統合失調症を含む精神病(Stubbs B, et al. 2016_1; 2016_2)、双極性障害(Vancampfort D, et al. 2016)、およびうつ病(Schuch F, et al. 2017)を持つ人における身体活動(physical activity、PA)、および座って行う行為(sedentary behavior、SB)について、同じ著者らによる4つの論文要約を続けて紹介しました。

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非定型の特徴を持つうつ病と肥満関連免疫代謝調節異常の遺伝的関連
    Yuri Milaneschi, et al (CHARGE Inflammation Working Group and the Major Depressive Disorder Working Group of the Psychiatric Genomics Consortium).
    JAMA Psychiatry. Published online October 18, 2017.
    Genetic Association of Major Depression With Atypical Features and Obesity-Related Immunometabolic Dysregulations.

    <重要性>
     うつ病/大うつ病性障害性(major depressive disorder、MDD:以下、うつ病)と肥満は共有する免疫代謝機構に由来する可能性があり、活動期における食欲および/または体重の増加を特徴とする非定型の特徴を伴ううつ病で特に明白である。
    <目的>
     食欲/体重基準に従って層別化されたうつ病患者のサブグループが、肥満関連特性(体格指数[BMI]およびC反応性蛋白[CRP]とレプチン[leptin]のレベル)と遺伝的に重複する程度について相違を有するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この多施設研究は、精神疾患ゲノムコンソーシアム(Psychiatric Genomics Consortium)の14のデータセットからの全ゲノム遺伝子型および表現型を収集した。データセットは、確定された精神医学的診断と全ゲノム遺伝子型データを有する26,628人の参加者を含む症例対照・コホート・住民ベース研究から集められた。BMIに関するデータは15,237人の参加者で利用可能であった。2015年9月28日から2017年5月20日にかけて、データが収集され分析された。
    <主要評価項目と測定>
     DSM-IVうつ病の生涯診断は構造化診断面接法でなされた。うつ病を持つ患者は、DSM-IVの食欲/体重症状における変化(増加または減少)に従ってサブグループに層別化された。
    <結果>
     データは11,837人のうつ病を持つ参加者と14,791人の対照者を含み、全部で26,628人の参加者は59.1%が女性、40.9%が男性であった。うつ病の参加者のうち、5,347人(45.2%)が食欲/体重減少サブグループ、1,871人(15.8%)が食欲/体重増加サブグループに分類された。
     共有する遺伝的多型は、2サブグループの遺伝性のおよそ10%を説明した。食欲/体重増加サブグループは、BMIと強い正の相関(相関係数[標準誤差])を示し(相関係数[標準誤差], 0.53 [0.15]; P = 6.3 × 10−4)、食欲/体重減少サブグループは逆相関を示した(−0.28 [0.14]; P = .06)。さらに、食欲/体重減少サブグループはBMI(オッズ比, 1.18; 95%信頼区間, 1.12-1.25; P = 1.6 × 10−10)、CRPレベル(オッズ比, 1.08; 95%信頼区間, 1.02-1.13; P = 7.3 × 10−3)、およびレプチンレベル(オッズ比, 1.09; 95%信頼区間, 1.06-1.12; P = 1.7 × 10−3)の増加について、より高い多遺伝子的リスクを有していた。
    <結論と関連性>
     非定型的抑うつ症状と肥満関連特性の表現型の関連は、うつ病患者における共有病態生理機構に由来する可能性がある。うつ病と肥満という重大な能力障害を引き起こす両症候群を併せ持つ患者にとって、免疫代謝調節異常を効率よく標的とする治療の開発が有益かもしれない。

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神経症傾向は公衆衛生上の非常に大きな意味を持つパーソナリティの基本領域である
    Benjamin B. Lahey, et al. World Psychiatry 2017; 16: 142–144.
    Validity and utility of the general factor of psychopathology.

     精神病理(psychopathology)は、第1次元(first‐order dimensions)に体系化される多様な症状として理解することができ、それは各症状が相関するためである。重要なことは、これら第1次元自体も強固に相関する1。これら相関はカテゴリー的な分類学にとっては問題であるが2、精神病理の本質について重要な情報を提供する3, 4, 5。第1次元間の相関の程度は様々であり、ある種の次元間のより強い相関は2次因子、具体的には内在化因子と外在化因子を生起させる6
     しかしながら、これら2次因子は精神病理の次元間の相関を完全には捉えていない。むしろ、2次の内在化・外在化因子それ自体がかなり相関する。我々は、内在化因子と外在化因子の相関は、各々の第1次元が負荷を持つ精神病理の一般因子(general factor)によって説明できることを支持するエビデンスを提供し7、結果は生涯にわたって何度も再現された4。大部分の研究はよくある精神病理型だけを調べているが、いくつかの研究において双極性障害、統合失調症、および自閉症が精神病理の一般因子と強く関連したことは、この因子が確かに一般的であることを示す4
     精神病理の一般因子が有用であると結論する前に、我々はそれが単なる系統的な測定誤差のアーチファクトでないことを確かめる必要がある。一般因子はほぼ確実に部分的には、すべての精神病理次元に関して同じ情報提供者が報告していることに由来する厄介な相関の反映であるが、一般因子が有用性を有するためには、加えて本質的な何かを捉えていなければならない。我々はこの問題に対して理性的に取り組んできたが4、究極的にはそれは基準妥当性の実証的問題に還元される。もし一般因子が測定アーチファクト以上のものであるなら、それはその定義から外れるが、その妥当性の中核をなす変数と有意な相関を持つであろう。重要なことに、一般因子は認知能力の測定値と否定的情動性の素因的次元と強固に相関する。さらに、内在化と外在化の精神病理、人口統計的要因、および知能を制御すると、症状と機能が異なる情報提供者によって測定された時でさえも、一般因子は現在および将来の適応水準を強固に予測する4
     一般因子は精神病理学の本質に関する研究を促進して、究極的には予防と治療を改善するだろうか。我々は、精神病理の第1次元は原因を共有しているため相関するという仮説を立てた。小児、青年、および成人の大規模な双生児および同胞の研究によると、一般因子は中程度に遺伝性で8、第1次元の間の表現型相関は共有される遺伝的影響に概ね起因し、大部分の第1次元の次元特異性に影響するのは遺伝的分散の半分以下である5
     これらの結果は、精神病理の遺伝的リスク要因はしばしば多形質発現的に機能するという見解を支持し、かつて思いもよらないほど大きな多形質発現性が示唆されが、これは精神病理のすべての次元のリスクを非特異的に増加させるかなりの割合の遺伝要因による。これは、ICDやDSMの委員会よりも遺伝相関から最適な表現型を決めることで遺伝研究が促進されることを意味する。具体的には、もし強固に一般因子と関係するある遺伝的変異と、代わりに例えばうつ病との関連が検証されるならば、すべての症例がその変異を有していても個々の人は高レベルのあらゆる他の次元の精神病理を呈するから、それらは当り(hits)でなく外れ(misses)として捉えられるだろう。
     精神病理の一般因子はまた、精神病理の第1次元がそれ自体は完全に固有な精神病理を個々には持たないことを意味する。いくつかの神経生物学的システムが複数の次元の精神病理の根底に非特異的に存在すると仮定しない、より高次の因子レベルにおいては、精神病理の次元は非常に強く相関し、遺伝および環境の影響を非常に多く共有する。 我々は最近、第1次元の強固な相関構造を特異的な病因的影響が増していく階層性に起因させた精神病理の正式な因果的分類を提案した4。このモデルでは、いくつかの非特異的な病因的因子が、一般因子を介して異なる程度で精神病理のすべての第1次元のリスクを増加させる。他の非特異的な病因的因子は内在化または外在化領域内のすべての第1次元のみのリスクを増加させ、各々の第1次元自体は固有の因果的影響を持つ。
     この因果的分類は、単なる因果的影響の共有以上のものを取り扱う。また、それは等しく重要とされる、精神病理の各々第1次元の根底にある原因と機序の異質性に関する新しい仮説を支持する。各々の第1次元は異なる次元が相関しているのとまさに同じ理由から、その原因と機序において異質的である。つまり、精神病理の各々第1次元への病因的影響は、大体においてそれらが(少なくとも)3つの別個の概ね直交する起源から起こるために異質である。精神病理のどの次元でも高レベルの症状を呈する人は、一般因子を介して精神病理のすべての次元について多形質発現的にリスクを上昇させるリスク遺伝子型だけを持つかもしれない。同じ症状を持つ他の人は、すべての外在化(または内在化)次元についてリスクを上昇させる遺伝子型だけを持つかもしれないし、別の人はその症状次元に特異的な遺伝子型のみを持っていてもよい。その他の多くの人は、これら起源の各々に由来する遺伝子型の多様な組み合わせを持つだろう。第1次元が個別に研究されるなら、結果は遺伝的影響の手におえないくらいの異質性である。各々の第1次元を様々な原因と機序に分割することを試みるより、高次表現型をモデル化する方が、このように多様な因果的影響とその関連機序をその起源において同定するためにはずっと有効のはずだ。
     この因果的分類は、一見して多様な精神病理の原因と機序をどう概念化して研究するかについて大変革の必要性を示唆する。そのような研究の現在の標準は症例対照サンプルである。それらは次元特異的な原因を同定するために最適化されるが、精神病理の第1次元間のバイアス相関が高次表現型のモデル化を複雑化あるいは不可能とさせてしまう。対照的に、精神病理の高次因子をモデル化するための、すべての精神病理次元の十分な変動を含む大規模な代表サンプルは、どの階層レベルに対しても情報を提供することができるのである。

    参考文献
    1. Krueger RF, Markon KE. Ann Rev Clin Psychol 2006;2:111-33.
    2. Meehl PE. Clin Psychol Sci Pract 2001;8:507-19.
    3. Angold A, Costello EJ. J Child Psychol Psychiatry 2009;50:9-15.
    4. Lahey BB, Krueger RF, Rathouz PJ et al. Psychol Bull 2017;143:142-86.
    5. Lahey BB, Van Hulle CA, Singh AL et al. Arch Gen Psychiatry 2011;68:181-9.
    6. Achenbach TM, Conners CK, Quay HC et al. J Abnorm Child Psychol 1989;17:299-323.
    7. Lahey BB, Applegate B, Hakes JK et al. J Abnorm Psychol 2012;121:971-7.
    8. Waldman ID, Poore H, Van Hulle C et al. J Abnorm Psychopathol 2016;125:1053-66.
    9. Pettersson E, Larsson H, Lichtenstein P. Mol Psychiatry 2016;21:717-21.
    10. Kendler KS. Am J Psychiatry 2005;162:1243-52.

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神経症傾向は公衆衛生上の非常に大きな意味を持つパーソナリティの基本領域である
    Thomas A. Widiger, et al. World Psychiatry 2017; 16: 144–145.
    Neuroticism is a fundamental domain of personality with enormous public health implications.

     神経症傾向(neuroticism)とは、怒り、不安、自意識、苛立ち、情動不安定、抑うつを含む否定的感情を経験しがちな特性をいう。高いレベルの神経症傾向を持つ人は、環境ストレスに対して下手なやり方で反応し、普通の状況を脅威に解釈して、小さな欲求不満をどうしようもなく圧倒されると体験することがある。神経症傾向は十分確立された経験的妥当性を持つパーソナリティの特性領域一つであり、その遺伝性、小児期における先行性、生涯を通した時間的安定性、および民族を超えた普遍性を支持するかなり豊富な研究がある1, 2
    神経症傾向は公衆衛生上の非常に大きな意味を持つ3。それは不安、気分、物質、身体症状、摂食障害を含む広範で多様な精神病理に対する素因的脆弱性を提供する1, 4。不適応的物質使用の多くの例が、神経症傾向からの落胆、不安、不快気分、および情動不安定を鎮めようとしたり消し去ろうとしたりする努力である。不安と抑うつ気分の状態の臨床的に意味のあるエピソードは、神経症傾向の特性、または気質と生活ストレスとの相互作用としてしばしば表れるであろう1
     神経症傾向はまた、心臓の問題、免疫機能の破綻、喘息、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、あるいは死亡リスクの増加をも含む広範な一連の身体的病気と関連する2。神経症傾向と身体的問題の関連は、神経症傾向がこれらの状態の発症脆弱性に加えて、その重大性が増悪しやすい素因やそれらの治療への反応不良性となるという点で、直接的でもあり間接的でもある。
     神経症傾向はまた、嫌悪感、過度の心労、職業上の失敗、および結婚への不満を含むQOLの低下と関連する5。高レベルの神経症傾向は、感情的なとらわれ、疲労と消耗、および注意散漫による低い職務遂行能力の一因になるだろう。神経症傾向の身体疾患に対する過酷な影響と同様に、高レベルの神経症傾向は夫婦関係への実害と、その感覚に客観的根拠がない場合でさえ結婚生活に対する不満の主観的感覚をもたらし、さらには配偶者の実際の欲求不満や引きこもりを招くことがある。
     非常に多くの否定的なライフアウトカムに対する神経症傾向の寄与を考慮して、通常の医療受診において臨床的に意味のある神経症傾向について、一般住民をスクリーニングにかけることが推奨されてきた1, 6。利用可能な治療法がない状況でのスクリーニングは問題となるかもしれないが、神経症傾向は薬理学的介入に対して反応性がある1。薬物療法は神経症傾向のパーソナリティ特性のレベルを有効に低下させることができる。Barlowら7はまた、統一プロトコル(Unified Protocol、UP)といわれる経験的妥当性を有する神経症傾向の認知行動療法を開発した(訳注:このバーロウ教授のUPについては、『不安とうつの統一プロトコル―診断を越えた認知行動療法』という翻訳本があります)。彼らは、現行の心理療法が障害特異的症状(disorder-specific symptoms)に焦点を当てることに特化し過ぎていることを示した。統一プロトコルは診断横断的(transdiagnostic)に設計されている。様々な一連の身体と精神の健康管理上の問題に対する神経症傾向の影響を知って、統一プロトコルの著者らは「神経症傾向を直接治療し、その発症をも予防することが本質的に重要」と再三述べている7
     神経症傾向は基礎科学としてのパーソナリティ研究の始まりから長年にわたって認識されてきたもので、心理学の中で同定された最初のパーソナリティ領域である可能性さえある1。極めて多様な精神と身体の機能不全に対するその中心的重要性を考えると、神経症傾向がパーソナリティ、パーソナリティ障害、および精神病理の卓越したモデルの中に明白に位置付けられていることは驚くに値しない。
     神経症傾向は、5因子モデルまたはビッグファイブに含まれる一般のパーソナリティの基本領域の一つである2。それはまた、DSM-5の新しい尺度とモデルのための第3章にある次元的特性モデルに含まれている8。この特性モデルは、離脱(detachment)、精神病性(psychoticism)、対立(antagonism)、脱抑制(disinhibition)、および否定的感情(negative affectivity)を含む5つの広領域からなる。DSM-5には、「これら5つの広領域は、ビッグファイブまたはパーソナリティの5因子モデルとして知られ、広範に妥当性と再現性が確認されているパーソナリティモデルにおける5領域の不適応的病理型である」と記されている8
     神経症傾向は、ICD-11のために提案されたパーソナリティの次元的特性モデルにおける否定的感情領域(negative affective domain)と類似している9。最後にそれはまた、国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health)の診断横断的な研究領域基準(Research Domain Criteria、RDoC)の中に、恐怖、苦痛、葛藤、および喪失体験といった概念を包含するRDoC 陰性価(negative valence)として明確に存在する10。RDoC 陰性価は神経症傾向に等しいと示唆することは不正確であろうが、両者が密接な位置関係にあることは自明である。
     現在、精神病理、パーソナリティ障害、およびパーソナリティの一般因子にかなりの関心が寄せられている。障害と機能不全(概ね一般因子を規定する)の程度が苦痛と落胆のレベル(=高率に事例化につながりやすい)と関連する範囲内において、神経症傾向がそれら一般因子における分散のかなりの割合を説明することを我々は提案したい。 まとめると、神経症傾向は非常に多くの公衆衛生上の意味を持つパーソナリティの基本領域であり、それは精神病理学および身体健康管理上の広範な問題に影響を与えている。それは多くの意味のある有害な生活アウトカムの発生と、それらに適切に取り組む能力の障害に寄与する。それは重要で意義深いパーソナリティ領域の1つであると長く認識されてきたもので、パーソナリティ障害、より一般的には精神病理の基本領域であると益々みなされている。

    参考文献
    1. Widiger TA. In: Leary MR, Hoyle RH (eds). Handbook of individual differences in social behavior. New York: Guilford, 2009:129-46.
    2. Tackett JL, Lahey BB. In: Widiger TA (ed). The Oxford handbook of the five factor model. New York: Oxford University Press (in press).
    3. Lahey BB. Am Psychol 2009;64:241-56.
    4. Bagby RM, Uliaszek AA, Gralnick TM et al. In: Widiger TA (ed). The Oxford handbook of the five factor model. New York: Oxford University Press (in press).
    5. Ozer DJ, Benet-Martinez V. Annu Rev Psychol 2006;57:401-21.
    6. Widiger TA, Trull TJ. Am Psychol 2007;62:71-83.
    7. Barlow DH, Sauer-Zavala S, Carl JR et al. Clin Psychol Sci 2014;2:344-65.
    8. American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 5th ed. Arlington: American Psychiatric Association, 2013.
    9. Tyrer P, Reed GM, Crawford MJ. Lancet 2015;385:717-26.
    10. Sanislow CA, Pine DS, Quinn KJ et al. J Abnorm Psychol 2010;119:631-9.

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生涯にわたる精神病理の階層的・因果的分類
    Benjamin B. Lahey, et al. Psychological Bulletin 2017; 143: 142-186.
    A hierarchical causal taxonomy of psychopathology across the life span.

    論文要約:
     我々は、精神病理(psychopathology)の複数次元に共通なことも各次元に固有なこともある遺伝的影響と環境的影響を区別する多変量行動遺伝研究のレビューにおいて同定された共通の因果的影響パターンに基づく精神病理の分類(taxonomy)を提案する。第1次元(first-order dimension)は表現型レベルにおける症状間の相関と定義され、第1次元間の相関は同様により高次の領域(higher-order domain)(例:内在化internalizingまたは外在化externalizingの精神病理)を定義する。我々は、第1次元間の強固な表現型相関はより特異的な原因的影響の階層性(hierarchy)の反映であると仮定する。いくつかの非特異的病因は精神病理の一般因子(general factor)を介して、様々な程度で精神病理のすべての第1次元のリスクを増す。他の非特異的病因は、より特異的な高次領域内のすべての第1次元に対するリスクのみを増す。さらに、各々の第1次元は自身に固有の因果的影響を持つ。家族構成員に共通の遺伝的・環境的影響は非特異的な傾向があるが、その一方で各人に固有の環境的影響はより次元特異的である。我々は、精神病理に対する因果的影響は性別と発達過程によって調節されると仮定している。この因果的分類はまた、各々の第1次元の異質性(heterogeneity)を理解する新しい枠組みを提供する。類似の症状を呈する異なる人が、3つのレベルの原因的階層の各々からの原因的影響の異なる組み合わせに影響されるかもしれない。さらに、我々は提案された因果的分類を疾患横断的(transdimensional)心理生物過程に関連付け、それはまた各々の精神病理次元の異質性に影響を与える。この因果的分類は、精神病理の原因、心理生物学、予防、および治療についての研究戦略を変更する必要性を意味する。

    コメント:本論文は次の解説論文に引用されています:『精神病理の一般因子の妥当性と有用性Validity and utility of the general factor of psychopathology』(Benjamin B. Lahey, et al. World Psychiatry 2017; 16: 142–144)

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統合失調症の陰性症状のための認知機能改善療法:ネットワークメタ解析
    Cella M, et al. Clin Psychol Rev 2017; 52: 43-51.
    Cognitive remediation for negative symptoms of schizophrenia: A network meta-analysis.

    ハイライト:
    • これは統合失調症を持つ人の陰性症状に対する認知機能改善療法(Cognitive Remediation、CR)の効果に関する最初の研究である。
    • 結果はCRの陰性症状に対する小から中程度の効果を示している(効果量 g = − 0.30)。
    • 陰性症状の減少は経過観察中に維持される(効果量 g = − 0.36)。
    • より強固な方法を用いた研究はより大きな陰性症状の減少を示す(効果量 g = − 0.40)。
    • CR条件と対照条件に無作為割り付けされた人で脱落率に違いがないことは、この介入が受け入れ可能なものであることを示す。

    論文要約:
     認知機能改善療法(Cognitive Remediation、CR)は、統合失調症を持つ人の認知的困難を標的とする治療である。最近の研究によれば、CRはまた、陰性症状に対する肯定的効果をもつ可能性がある。このメタ解析はCRの陰性症状への効果を調査する。統合失調症を持つ人における陰性症状のアウトカムを報告するCRについてのすべてのランダム化比較試験を同定するために、系統的検索が利用された。ベースライン、治療後、および経過観察中の陰性症状レベル、サンプルの人口統計変数、治療期間が抽出された。研究の方法の質と異質性が評価された。陰性症状の標準化平均変化(standardized mean change)がHedgesのg値を用いて計算され、主要評価項目として使用された。検索の結果、2,511人の参加者に関する結果を報告する45の研究が同定され、うち15は経過観察中のアウトカムを報告していた。
     従来の治療(treatment as usual、TAU)と比較して、CRは治療後の陰性症状の減少と関連し(最も保守的なモデルにおけるg=-0.30; 95% CI: -0.36, -0.22)、この効果は経過観察中により大きかった(g=-0.36; 95% CI: -0.51, -0.21)。脱落率は条件間で等しかった。ネットワークメタ解析は、CRがTAUおよびTAU+能動的対照(active control)または補助療法(adjunctive treatment)より優れていることを確認した。公表バイアスの証拠はなかった。より厳密な方法を用いた研究は、より大きな陰性症状の減少と関連していた(g=-0.40; 95% CI: -0.51 to -0.30)。陰性症状はCRの第1の標的とは考えられていないが、この介入は陰性症状クラスターに対して小から中程度の有益な効果を持つ可能性がある。今後の研究は、陰性症状の減少に関与する能動的機序と、統合失調症における認知と陰性症状の関連性の詳細を探索すべきである。

    コメント:Cognitive remediation (therapy)については、この研究グループによる『統合失調症の認知機能改善療法、ティル・ワイクス(著), クレア・リーダー(著), 松井三枝(訳)、金剛出版 (2011/7/13) 』という翻訳本が出ています。

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統合失調症の認知機能改善:系統的レビューとメタ解析の方法論的再評価
    Bryce S, et al. J Psychiatr Res 2016; 75: 91-106.
    Cognitive remediation in schizophrenia: A methodological appraisal of systematic reviews and meta-analyses.

    論文要約:
    <目的>
     系統的レビューとメタ解析は、統合失調症の認知機能改善(cognitive remediation、CR)の有益性を評価するうえで主要なエビデンス資料である。これらの研究は科学的文献を厳格に統合するように設計されるが、方法論上の高い質は保障できない。本レポートの目的は以下であった:1)統合失調症のCRに関する系統的レビューとメタ解析の使用をレビューすること、2)この介入の主要評価領域に対する有益性を調べた公表レポートの方法論的再評価を行うこと、および3)方法上の質と報告上の質の一致を検討すること。
    <方法>
     関連文献について電子データベースが検索された。21のレビューが包含基準を満たし、方法論上の質を評価する妥当性が確かめられた尺度であるAMSTARチェックリストに準拠して評点された。また、5つのメタ解析がレビュー行為の質(quality of conduct)と報告の質(quality of reporting)を比較するPRISMA声明に準拠して評点された。
    <結果>
     大部分の系統的レビューとメタ解析は強みを共有していて、方法論上の質は中程度の水準の範囲に含まれた。しかしながら、大抵のレビューによって対処されていない潜在的弱点の一貫した領域があった。これにはプロトコル登録の欠如、独立したデータ抽出、および合意手続きに関する不確実性が含まれた。さらに、行為の質は報告の質と必ずしも同等でない可能性があり、これらの方法を独立して考慮することが重要かもしれない。
    <結論>
     統合失調症のCRに関するレビューは価値あるエビデンス資料である。しかしながら、これらレポートの方法論上の質については再検討が必要かもしれない。レビュー行為の質を高めることは、研究文献を信頼して解釈するために必須である。


コクランレビュー:高齢者のうつ病に対する継続および維持療法
    Wilkinson P and Izmeth Z. Cochrane Database of Systematic Reviews, first published on 9 September 2016, edited by Cochrane Common Mental Disorders Group.
    Continuation and maintenance treatments for depression in older people.

    論文要約(著者の結論のみ):
     この改訂コクランレビューは、元の2012年のレビューの結果を支持する。高齢者におけるうつ病の再発予防において抗うつ薬を継続することの長期的利益と損益は明確でなく、このレビューに基づいて確固とした治療推奨を行うことはできない。抗うつ薬を12カ月間継続することは、損益を増すことなしに有益であるようだが、これはたった3つの小規模な研究、比較的少ない参加者、広い範囲の抗うつ薬クラスの使用、および臨床的に異質な母集団に基づいている。他の時点での比較は統計学的有意性に達しなかった。心理学的治療と併用療法についてのデータはあまりにも限られていて、利益と損益に関していかなる結論も導き出すことはできなかった。これらの結論に達する上で使われたエビデンスの質は低く、したがって本レビューは臨床家および患者に対して、最良の診療、および特定の患者特性に対する介入の適用に関して明確なガイドラインを提供することはない。特に、高齢者のうつ病の維持・継続療法における薬理学的または心理学的介入を評価した新しい研究はなかった。高齢者と65歳に満たない成人の両方を含む、以前のレビュー以降に実施された研究を知ってはいるが、これらは本レビューの検討事項の枠外にあった。我々は高齢者、特に併存する医学的問題を持つ超高齢者をもっぱら募集する研究の必要性が今も存在すると信じる。しかし、これらの研究はやる意義はあるが実施は難しい可能性があり、今のところは資金提供者によって優先的に扱われないかもしれない。


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双極うつ病に対する低および高用量第二世代抗精神病薬の利益と損益のメタ解析
    Bartoli F et al. J Psychiatr Res 2017; 88: 38-46.
    Benefits and harms of low and high second-generation antipsychotics doses for bipolar depression: A meta-analysis.

    論文要約:
     この系統的レビューとメタ解析の目的は、第二世代抗精神病薬(second-generation antipsychotics、SGA)の低用量と高用量の違いが、双極うつ病の急性期治療に関する臨床的利益と損益の相違に関連するか否かを検証することであった。我々は、双極うつ病に対する同一SGAの異なる用量を用いた単剤治療を比較する臨床試験を含めた。一日当たりのSGA用量が低用量と高用量の定義に使われた。臨床的利益の評価項目は、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度に基づく症状改善、反応率、および寛解率であった。臨床的損益の評価項目は、あらゆる理由による中止、および有害作用に関連した中止であった。
     クエチアピン(quetiapine;4試験)、カリプラジン(cariprazine;1試験)、ルラシドン(lurasidone;1試験)、およびジプラシドン(ziprasidone;1試験)の低用量と高用量を検証する7つの臨床試験データは、症状改善、反応率、および寛解率に関して、検討されたSGAの低用量と高用量の間に差がないこと、および研究間に有意な異質性を認めないこと(I2 = 0%)を示した。単独のSGAに基づくサブグループ分析は、低用量と高用量の間で等しい臨床的有益性を確認したが、あらゆる理由による中止(p = 0.01)と有害作用に関連した中止(p = 0.001)に関しては、低用量に有利な臨床的損益の差異を認めた。
     要約すれば、このメタ解析は「症状改善、反応率、および寛解率に関して利益差はないが、検討されたSGAの低用量よりも高用量の処方において明確なデメリットが存在する」ことを示している。研究の統一された方法論の強みは、我々の結果の信頼性を増す。急性期の双極うつ病の管理を最適化するために、これらデータは個々の患者特性(例:臨床的緊急性や有害作用に対する感受性)に統合される必要がある。

    コメント:本論文は、第二世代とはいえドパミン阻害薬(dopamine antagonist)である抗精神病薬に関するメタ解析ですが、双極うつ病についてはモダフィニル(ナルコレプシー治療薬)、プラミペキソール(パーキンソン病治療薬)、およびメチルフェニデート(注意欠如・多動症治療薬)といったドパミン作動薬(dopamine agonist)についてのメタ解析もあります(Szmulewicz AG et al. Acta Psychiatr Scand 2017; 135: 527-538)。


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治療抵抗性双極うつ病:電気けいれん療法vs.アルゴリズムに基づく薬物療法のランダム化比較試験
    Schoeyen HK et al. Am J Psychiatry 2015; 172: 41-51.
    Treatment-resistant bipolar depression: a randomized controlled trial of electroconvulsive therapy versus algorithm-based pharmacological treatment.

    論文要約
    <目的>
     電気けいれん療法(Electroconvulsive therapy、ECT)は、多くの臨床家に治療抵抗性双極うつ病に対する最も有効な治療法であると考えられているが、著者らが知る限り、ランダム化比較試験は行われていない。そこで、治療抵抗性双極うつ病におけるECTとアルゴリズムに基づく薬物療法の有効性評価を比較した。
    <方法>
     この多施設ランダム化比較試験は、ノルウェーの7つの急性期ケア精神科入院クリニックにおいて実施され、治療抵抗性うつ病を持つ73人の双極性障害患者を含んだ。患者は、ECTとアルゴリズムに基づく薬物療法のどちらかに無作為に割り付けられた。ECTは1週3セッションで最長6週間、刺激電極は右片側に配置され、短パルス刺激を用いた。
    <結果>
     線型混合効果モデル分析は、ECTがアルゴリズムに基づく薬物療法より有効であることを示した。6週の治療期間の終了時点の平均スコアは、アルゴリズムに基づく薬物療法群よりECT群で低く、その差はMontgomery-Åsbergうつ病尺度では6.6ポイント(SE=2.05, 95% CI=2.5-10.6)、30項目Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician-Ratedでは9.4ポイント(SE=2.49, 95% CI=4.6-14.3)、双極性障害のための臨床全般印象度では0.7ポイント(SE=0.31, 95% CI=0.13-1.36)であった。反応率は、アルゴリズムに基づく薬物療法を受けた群(35.0%)よりECT群(73.9%)で有意に高かったが、寛解率は両群で差がなかった(薬物療法群、30.0%;ECT群、34.8%)。
    <結論>
     この困難な臨床的条件では、選択された治療によらず寛解率は低いままであった。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00664976.


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小脳回路内の構造的変化は一般精神疾患の一般易罹患性と関連する
    Romer AL et al. Molecular Psychiatry advance online publication, 11 April 2017. Structural alterations within cerebellar circuitry are associated with general liability for common mental disorders.

    論文要約:
     精神健康研究の集積は、カテゴリー的な障害にわたって共有される診断横断的な次元的特徴へ焦点をシフトさせることを促進する。このシフトを支持して最近の研究は、広範な精神疾患に対する共有リスクの背景に存在する、時にp因子と呼ばれる精神病理の一般易罹患性因子を同定した。この一般易罹患性因子の神経相関を同定することは、精神疾患の共通起源を特徴づけることの重要性を実証し、p因子がリスクに関与する機序を我々が理解し始める手助けとなるだろう。
     ここで、1,246人の大学生のボランティアサンプルからの横断的データを用いて、p因子の再現を初めて行い、高解像度の多様な構造神経画像を用いて、より高いp因子スコアを持つ人は、特に橋内のfractional anisotropy低値を指標とする白質経路の構造的完全性が減少していることを示した。全脳解析はさらに、より高いp因子スコアは後頭葉と、認知的制御を支える前頭前野領域と機能的連絡がある左小脳小葉VIIbの灰白質体積の減少と関連することを明らかにした。橋における小脳からの入力優位性に一致して、橋の白質完全性が、より高いp因子スコアと関連する小脳の灰白質体積と有意に正相関することを観察した。
     我々の解析結果は、情報の基本的な統合、協調、および監視に関連する中核的機能を支える大脳皮質-小脳回路の構造的変化が、一般精神疾患の一般易罹患性に関与する可能性について初めての証拠を提供する。


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胎児期のアセトアミノフェンへの曝露と注意欠如・多動症(ADHD)のリスク
    Ystrom E et al. Pediatrics 2017; 140(5): e20163840.
    Prenatal Exposure to Acetaminophen and Risk of ADHD.

    論文要約:
    <目的>
     母親の妊娠中のアセトアミノフェン使用および父親の妊娠前のアセトアミノフェン使用と、子の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の関連を、ADHDの家族リスクおよびアセトアミノフェン使用の適応症を調整して推定すること。
    <方法>
     ノルウェー母子コホート研究からの112,973人の子の診断(ADHDを持つ2,246人を含む)を、ノルウェー患者登録から得た。我々はCox比例ハザードモデルを用いて、ADHD診断のハザード比(HR)を推定した。
    <結果>
     母親の妊娠前のアセトアミノフェン使用、ADHDの家族リスク、およびアセトアミノフェン使用の適応症を調整後、我々は妊娠第1期(HR = 1.07; 95% 信頼区間 [CI] 0.96-1.19)、妊娠第2期(HR = 1.22; 95% CI 1.07-1.38)、および妊娠第3期(HR = 1.27; 95% CI 0.99-1.63)における母親の出産前のアセトアミノフェン使用との弱い関連を観察した。29日以上の母親のアセトアミノフェン使用のHRは2.20であった(95% CI 1.50-3.24)。8日未満の使用はADHDと負に関連した(HR = 0.90; 95% CI 0.81-1.00)発熱および感染のための22から28日のアセトアミノフェンの使用はADHDと関連した(HR = 6.15; 95% CI 1.71-22.05)。父親と母親のアセトアミノフェンの使用は同じようにADHDと関連した。
    <結論>
     母親の妊娠中の短期間のアセトアミノフェン使用は、子のADHDと負に関連した。母親の妊娠中の長期間のアセトアミノフェン使用は、アセトアミノフェン使用の適応症、ADHDの家族リスク、および他の潜在的交絡因子を調整後も、ADHDとかなり関連した。

    コメント:本研究に関与していないMark L. Wolraich博士は、次のようなコメントを述べ注意を喚起しています:「これらの結果から、胎児期のアセトアミノフェンへの曝露とADHDのリスクの因果関係が確立されたわけではないがその可能性が示唆されたので、さらなる研究が必要である。妊娠期のアセトアミノフェンの使用を、もっと注意深く考えるべきかもしれない。」


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炎症性バイオマーカーと統合失調症のリスク:2サンプル・メンデル無作為化研究
    Hartwig FP et al. JAMA Psychiatry. Published online November 1, 2017.
    Inflammatory Biomarkers and Risk of Schizophrenia: A 2-Sample Mendelian Randomization Study.

    論文要約:
    <重要性>
     炎症性バイオマーカーと、統合失調症を含む精神疾患の正の関連が観察研究で報告されてきた。しかし、従来の観察研究は逆の因果関係や他の交絡因子とったバイアスを持つ傾向があり、統合失調症リスクに対する炎症性バイオマーカーの効果の理解に制約を与える。
    <目的>
     炎症性バイオマーカーが統合失調症の発症リスクに対して効果を持つか否かを評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     推測を改善する操作(手段)変数としての炎症性バイオマーカーに関連する遺伝的変異を用いた2サンプル・メンデル無作為化研究。異なる研究デザインを持ついくつかの疫学的研究を含む候補遺伝子研究または全ゲノム関連研究の大規模コンソーシアムからの要約関連結果が使用された。遺伝子-炎症バイオマーカー関連は1,645から80,000人以上に及ぶ統合サンプルにおいて推定され、遺伝子-統合失調症関連は30,000以上の症例と先祖を照合させた45,000以上の対照において推定された。そのコンソーシアムに含まれた大部分の研究において、参加者の祖先はヨーロッパで、およそ50%は男性であった。すべての研究は成人において行われ、年齢は18から80歳以上と幅広い範囲にわたった。
    <曝露>
     C反応性蛋白(C-reactive protein、CRP)、インターロイキン1受容体拮抗薬(interleukin-1 receptor antagonist、IL-1Ra)、可溶性インターロイキン6受容体(soluble interleukin-6 receptor、sIL-6R)の血中(循環)濃度の遺伝的上昇。
    <主要評価項目と測定>
     主要評価項目は統合失調症の発症リスクで、統合失調症または統合失調感情障害を持つ人が症例として含まれた。多くの研究が解析に寄与したことから、診断には異なる方法が使われた。
    <結果>
     18のCRP遺伝的操作変数を用いた統合オッズ比は、CRPレベルが2倍になる毎に0.90(変量効果:95% CI, 0.84-0.97; P = .005)であり、異なるメンデル無作為化法と、より保守的な操作変数セットを用いても、一貫した結果が得られた。sIL-6Rのオッズ比は、そのレベルが2倍になる毎に1.06(95% CI, 1.01-1.12; P = .02)であった。IL-1Raの推定値は操作変数の間で一貫せず、統合推定値は不正確でありゼロに中心を置いた。
    <結論と関連性>
     メンデル無作為化仮定のもと、我々の結果は、統合失調症リスクに対するCRPの保護的効果と(少なくとも一部はCRPによって潜在的に媒介される)sIL-6Rのリスク上昇効果を示唆する。このような効果は、若年期における感染感受性の上昇の結果である可能性がある。


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中年期の全身炎症マーカーは高年期の脳体積と関連する:ARIC研究
    Walker KA et al. Neurology, published online before print November 1, 2017.
    Midlife systemic inflammatory markers are associated with late-life brain volume: The ARIC study.

    論文要約
    <目的>
     全身炎症と神経変性の時間的関係を明確にするために、我々は中年期におけるより高レベルの血中炎症マーカーが、高年期のより小さい脳体積と関連するか否かを、大規模な二人種の前方視的コホート研究を用いて調べた。
    <目的>
     全身炎症マーカー(フィブリノーゲン、アルブミン、白血球数、von Willebrand因子、第Ⅷ因子)の血漿レベルが、コミュニティにおける動脈硬化のリスク研究に参加した1,633人(平均年齢[標準偏差]53[5]歳、60%が女性、27%がアフリカ系米国人)のベースラインにおいて評価された。すべての炎症マーカーを用いて、各々参加者の総合炎症スコアが作成された。我々は24歳以降に、エピソード記憶と3テスラMRIを用いた局所脳体積を評価した。
    <結果>
     中年期における総合炎症スコアの標準偏差の増加のそれぞれが、24歳以降は、1,788 mm3大きい脳室(p = 0.013)、110 mm3小さい海馬(p = 0.013)、519 mm3小さい後頭葉(p = 0.009)、および532 mm3小さいアルツハイマー病関連領域(p = 0.008)の体積と、エピソード記憶の低下(p = 0.046)と関連した。中年期の炎症マーカーの上昇を認めない参加者(第4四分位)と比較すると、3つかそれ以上のマーカーの上昇を認める参加者では、海馬およびアルツハイマー病関連領域の体積が平均して5%小さかった。中年期の炎症と更年期の脳体積の関連は、年齢と人種によって修飾を受けた。中年期においてより高いレベルの全身炎症を持つより若い参加者と白人の参加者は、脳体積の減少を示す傾向がより強かった。
    <結論>
     我々の前方視的研究の結果は、全身炎症の神経変性と認知的老化に対する早期の原因的役割を支持するエビデンスを提供する。


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前駆期アルツハイマー病を持つ人に対する特定の複数栄養素を用いた24カ月間の介入(LipiDiDiet):ランダム化・二重盲検比較試験
    Soininen H, et al. Lancet Neurology, Published: 30 October 2017.
    24-month intervention with a specific multinutrient in people with prodromal Alzheimer's disease (LipiDiDiet): a randomised, double-blind, controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     栄養は修正可能なアルツハイマー病の重要なリスク因子である。複数栄養素Fortasyn Connectの先行試験は、アルツハイマー病による軽度認知症に対する有益性を示した。LipiDiDietでは、前駆期アルツハイマー病の認知と関連測定に対するFortasyn Connectの効果を調べた。ここで我々は、24カ月間の試験結果を報告する。
    <方法>
     LipiDiDietは、24カ月間のランダム化比較・二重盲検・並行群・多施設試験(フィンランド、ドイツ、オランダ、およびスウェーデンの11施設)であり、任意選択の12カ月二重盲検の延長を含んだ。その試験は、国際ワーキンググループ1の基準(IWG-1 criteria)に従い定義された前駆期アルツハイマー病の人を募った。参加者は無作為に1対1に、実薬製品(Fortasyn Connectを含む 125 mLの飲料を1日1回)と対照製品に割り付けられた。無作為化はコンピュータによって生成され、施設場所について層別化された4つのブロックが集約された。すべての研究スタッフと参加者は、治療割り付けについて隠蔽された。主要エンドポイントは、神経心理学的テストバッテリー(neuropsychological test battery、NTB)の得点変化であった。分析は修正intention to treatによった。安全性解析には、少なくとも1つの研究製品用量を消費したすべての参加者を含めた。この試験はオランダ試験登録に登録されている(番号:NTR1705)。
    <結果>
     2009年4月20日から2013年7月3日に、スクリーニングされた382人の参加者のうち311人が無作為に実薬製品(n=153)または対照製品(n=158)に割り付けられた。NTB主要エンドポイントの平均(標準偏差)変化は、実薬製品では−0.028(0.453)、対照製品では−0.108(0.528)で、推定平均治療差は0.098(95%信頼区間:−0.041~0.237;p=0.166)あった。対照群の低下は、24カ月の事前研究で推定された−0.4よりも小さかった。66人(21%)の参加者が研究から脱落した。重篤な有害事象が実薬群では34人(22%)、対照群では30人(19%)の参加者で生じたが、本研究介入に関係しているとみなされた人はいなかった。
    <解釈>
     介入は、前駆期アルツハイマー病における2年間のNTB主要エンドポイントに対する有意な効果を示さなかった。しかし、この母集団の認知低下は予想よりもずっと少なく、主要エンドポイントの検出力が十分でなかったことを示していた。認知と機能と海馬萎縮を測定する疾患進行の副次エンドポイントに関して、グループ間差が観察された。もっと大きなサンプルサイズ、より長い期間、あるいはこの前認知症母集団に感受性のある主要エンドポイントを持つ栄養学的アプローチの追加研究が必要である。

    コメント:ある種の栄養素が入った飲料は、アルツハイマー病の前駆状態にある人に制限付きの利益をもたらすかもしれませんが、専門家は確固たる結論を導き出すことに対して注意を喚起しています。


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米国の高齢成人における孤独・抑うつ・認知機能
    Donovan NJ et al. Int J Geriatr Psychiatry 2017; 32: 564-573.
    Loneliness, depression and cognitive function in older U.S. adults.

    <目的>
     高齢成人における孤独と認知機能の相互関係を調べること。
    <方法>
     1998年から2010年のUS Health and Retirement Studyに参加した65歳以上の男女8,382人のデータを解析した。参加者は1998年から2010年の間の2年に1度、8項目のうつ病(抑うつ状態)自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression scale)によって決定される孤独と抑うつ(なし/弱い/強い)、認知(単語リストの記憶課題と、他者評価の記憶と全般的認知機能に基づいて抽出された記憶スコア)、健康状態、および社会人口統計的特徴の評価を受けた。我々は、社会人口統計的因子、ソーシャルネットワーク、健康状態、および抑うつを逐次的・累積的に制御する個々のモデルにおいて孤独と認知機能の相互関係を調べるために、反復測定分析を用いた。
    <結果>
     ベースラインの孤独は、社会人口統計的因子、ソーシャルネットワーク、健康状態、および抑うつとは関係なく、12年間の認知低下の加速を予測した(β = −0.2, p = 0.002)。時間と相互作用する抑うつの調整後、抑うつの高低のカテゴリーは、より速い認知低下と関係し、孤独の推定効果は辛うじて有意となった。相互的に、ベースラインのより低い認知は、調整後分析において経時的に測定された孤独のより高い確率と関連した(オッズ比1.3, 95%信頼区間1.1–1.5, p = 0.005)。さらに、認知は孤独の経時変化を予測しなかった。
    <結論>
     広範囲の認知能力の調査から、孤独と抑うつ症状は認知の悪化と関連するリスク因子のようであるが、低い認知機能は孤独を経時的に悪化させることにはつながらない。


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認知的に正常な高齢成人における高次皮質のアミロイド蓄積と孤独の関連
    Donovan NJ et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 1230-1237.
    Association of Higher Cortical Amyloid Burden With Loneliness in Cognitively Normal Older Adults.

    <重要性>
     認知的に正常な高齢者における感情と行動の症状は、軽度認知障害の発症に先立つ前臨床的段階のアルツハイマー病(Alzheimer disease、AD)の病理の直接的現れかもしれない。孤独とは、認知と機能の低下、および偶発AD認知症のリスク増加と関連する社会的・感情的孤立を自覚した状態をいう。我々は、「孤独がADの生体研究バイオマーカーであるの皮質アミロイドの蓄積増加と関連するかもしれない」とする仮説を立てた。
    <目的>
     皮質アミロイド蓄積が、認知的に正常な高齢成人のより強い孤独と関連するか確かめる。
    <設計・設定・参加者>
     認知的に正常な地域住民79人のハーバード老化脳研究データを用いた症例対照分析である。ピッツバーグ化合物Bを用いた陽電子放出断層撮影法(PiB-PET)で確定される皮質アミロイド蓄積の連続的合算測定値が、年齢、性別、アポプロテインE ε4(APOEε4)、社会経済的状況、抑うつ、不安、およびソーシャルネットワーク(アミロイドおよびAPOEε4との相互作用が無いか有る)について調整された線型回帰モデルにおいて、孤独との関連性が調べられた。
     我々はまた、各々がサンプルの32%(n = 25)を構成するアミロイド陽性群と孤独群に共通の共変量を制御したロジスティック回帰を用いて、高いアミロイド蓄積と孤独(孤独な群)の関連を定量した。
    <主要評価項目と測定>
     3項目からなるUCLA孤独尺度(可能な範囲は3から12ポイントで、より高い得点はより強い孤独を示す)で確定される孤独である。
    <結果>
     79人の参加者には43人の女性と36人の男性が含まれ、平均(標準偏差)年齢は76.4(6.2)歳であった。PiB-PETによる平均(標準偏差)皮質アミロイド蓄積は1.230(0.209)で, UCLA孤独尺度の平均(標準偏差)得点は5.3(1.8)であった。22人(28%)がAPOEε4陽性のキャリア状態で、25人(32%)が皮質PiB分布容積1.2以上のアミロイド陽性群に入った。年齢、性別、APOEε4、社会経済的状況、抑うつ、不安、およびソーシャルネットワークを調整すると、より多いアミロイド蓄積はより強い孤独と有意に関連し、アミロイド陰性群の人と比較して、アミロイド陽性群の人は7.5倍(95%信頼区間:1.7-34.0倍)、「孤独でない」より「孤独である」に分類された(β = 3.3, 偏相関係数 = 0.4, P = .002)。さらに、高いアミロイド蓄積と孤独の関連は、非キャリアーよりAPOEε4のキャリアーでより強かった。
    <結論と関連性>
     我々は、認知的に正常な高齢成人における孤独と皮質アミロイド蓄積の間の新規の関連を報告し、孤独が前臨床的ADに関連する神経精神症状であることを示す。この仕事が、孤独に関係する神経基盤と疾患メカニズムへの新しい研究に情報を与え、ADの早期発見と介入研究を促進するかもしれない。


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うつ病/大うつ病性障害性に対する抗うつ薬治療へのZ睡眠薬の追加の有効性と認容性:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析
    Kishi T, et al. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 2017; 267: 149-161.
    Efficacy and tolerability of Z-drug adjunction to antidepressant treatment for major depressive disorder: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.

    論文要約:
     うつ病/大うつ病性障害性(major depressive disorder、MDD:以下「うつ病」)患者におけるZ睡